−オリジナル story−

『貴方の守護霊いたします』
by Sin

第4話 出逢ったあの子は超絶不運!


「あのぉ…お兄さん、だぁれ?」
 小首を傾げて聞いてくる少女。
 だが、レイジは驚きのあまり言葉を返せない。

「ほえ? もしも〜し? お〜〜〜い」
 何度となく呼びかけられて、ようやく気付いたレイジは戸惑いながらも少女に問いかける。
「あ、ああ、えっと……俺のこと、見えるのか?」
「ほえ〜?」
「だ、だから……俺の姿、見えてるのか?」
「うん。両目とも2.0だもん」
 そう言ってにっこりと微笑む少女。
 全く迷いのない答えに、レイジの額にはでっかい汗が…
「い、いや、そういう事じゃないと思うけど……」
「ほえ? う〜〜〜んと……」
「……あ、あのさ……俺、幽霊なんだけど……?」
「ほぇ〜〜え? 幽霊?」
「そう。だから普通は見えない筈なんだけど……」
「ふみゅぅ…」
「……やっぱり……見えてるよな……会話成立してるし……」
「うん♪」 
「…俺が見えてなかっただけなのか? 幽霊ってこうやって普通に見えて、会話したりぶつかったりできるものなのか? うぅぅぅっ、誰か教えてくれーーーっ!!」
「ほえ?」
 その時、唐突に部屋の扉が開いた。

「何騒いでるの。お隣まで丸聞こえよ」
「あっ、ママ。えっとね、お兄さんとお話ししてたの」
「お兄さん?」
「うん、このお兄さん」
 そう言って少女がレイジを指さす。
「あ、え、えっと、お、お邪魔してます…」
 この人にも見えているのかとレイジは慌てて挨拶したが…
「なにバカなこと言ってるの。誰もいないじゃない」
「いるよ〜ほら、ここ〜」
 何度もレイジを指さす少女だったが、母親は全く見えていないらしく、首を傾げるばかり。
「うにゅ〜〜〜っ、ほら、このお兄さんっ!!」
 そう言うと、少女はいきなりレイジに抱きつこうとした。
 だが……

「え?」
 戸惑いの声と共に、その手は虚しく通り過ぎて……

 べちゃ……という鈍い音と共に、少女は顔面から転けた。

「ちょ、ちょっと、友佳梨。大丈夫?」
「ほえぇぇぇぇぇ………」

 母親に抱き起こされると、その少女−友佳梨−は、グルグルと目を回していた。

「…やっぱり、ぶつかれないよな? って事は、やっぱり俺は幽霊って事で……じゃあ、なんでさっきは……」
「ほら、しっかりしなさい、友佳梨。もう、ホントにドジなんだから……一体何をしようとしてたの? なにもない所にいきなり飛びつくなんて……」
 そう言われて、友佳梨はまだグルグル回っている頭をぶんぶん振ると、再びレイジを見つめた。

「うぅぅぅぅ、お兄さん、なんで避けるの〜〜?」
「いや、俺、避けてないし」
「避けたよ〜〜痛かったよ〜〜〜」
「だ、だから、それは避けたからじゃなくて……」
「今度は避けちゃやだよ〜えいっ!」
 再び飛びつく友佳梨。
 だが、今度はレイジの腹を突き抜けるようにして背後のベッドに顔面から滑り込む。

「ふみゅっ!? あ、熱、熱、熱〜〜〜〜い!!」
 大慌てで顔を擦る友佳梨。その様子にレイジはもう笑って良いやら呆れて良いやら解らず、大口を開けて唖然と見つめていた。
「……友佳梨、あなた……大丈夫? その……頭強く打ったとか……」
 心配気にそう聞いてくる母親はとりあえず置いておいて、友佳梨は膨れっ面と涙目でレイジを睨む。だが、可愛いを通り越して幼くすら見える彼女がそんな表情で睨んでも、全く怖くない。

「うぅぅぅぅぅぅぅっ! お兄さんっ!! なんで通り抜けるの!?」
「だ、だから、俺って……その……幽霊って奴だから……」
「………ユーレイ? それって、ひゅ〜〜どろどろ〜〜ってあれ?」
「別に、ンな音させてねえけど、その幽霊」
「………なんでお昼間から出るの?」
「まあ…仕事だから……」
「…ほえ?」
「仕事。多分……お前の守護霊って奴」
 レイジの言葉に友佳梨はしばらく考え込んでいたが、結局答えは出なかった様子で更に首を傾げた。

 その時、不意にレイジの耳に聞き覚えのある声が……

『あははははは、さすが超絶不運少女』
「その声…殺奈か!?」
『ぴんぽーん。ひとつ言う事忘れてたから〜』
「言う事?」
『その子ね、超絶不運の持ち主だから』
「超絶不運?」
 聞き覚えのない言葉に首を傾げるレイジ。

『どんな事でもね、必ず自分が被害を受けるって悪運の事(はぁと)』
「はぁ?」
 説明して貰ってもやはり要領を得ない。

『まあ、論より証拠。レイジ、その子の頭、軽く小突いてみて』
「……訳解らんけど……とりあえず、了解……」
 そう言って、レイジは母親と話す友佳梨の背後に立つと、いきなり後頭部をすぱんっと叩く。当然通り抜けるものと思っていたので、少々勢いよくやったのだが……

「はうっ!?」
 叩かれた勢いのまま、友佳梨はその場に突っ伏した。
 しかもまた顔面から……

「な、な、なんでっ!?」
 叩いたレイジの方が訳が解らず、自分の手と友佳梨を見比べて目を丸くしている。

『だから、超絶不運。どんな事でも必ず自分が被害を受けるの。例えそれが幽霊相手の事でもね』
「………ンな無茶苦茶な……」
 驚きも呆れも通り越して、ただ呆然と友佳梨の様子を見つめるレイジ。
 
「は、はうぅぅぅ……」
 しばらくして、呻きながら起きあがってくる友佳梨。
 叩かれた後頭部ではなく、打ち付けた額を抱えて涙目で恨めしそうにレイジを見つめた。

「痛いよ〜〜なんで叩くの〜〜?」
「い、いや、俺もまさか当たるとは……その……わ、わりぃ……」
「もぉ……プンプンだよ〜〜」
 そう言って怒ってみせるが、全く怒っているように見えないのはご愛敬だろう…

『あはは、んじゃ、そう言う事で。後の事よろしく〜。その子、守ってあげてね〜』
「ちょ、ちょっと待てぃっ!! どうやって『自分から被害に向かってまっしぐら(はぁと)』な奴を守れって言うんだ!? てゆーか、守れるのか、これ?」
『いちお〜』
「い、一応って……」
 お気楽な殺奈の言葉に、レイジのこめかみにはびしっと青筋が浮かぶ。

『まあ、被害を受けそうになったら、とことんレイジが身体を張って守ってあげるしかないね〜。あ、いくら君でも、あんまり酷いダメージ受けたら消滅しちゃうから気を付けてね〜』
「消滅って……だぁぁぁっ、テメエはなんでそう他人事って感じで軽くっ!!」
『他人事だもん(はぁと)んじゃ、まったね〜』
「お、おい、待て、待てぇぇぇぇぃ!! く……っ……一体俺にどうしろと……」
 溜息をついて顔を上げたレイジの目の前に唐突に友佳梨の姿が。

「のわっ!?」
 思わぬ大接近に仰け反ったレイジは、足下に転がっていた電池に足を取られてひっくり返る。
 その瞬間……

 ぼふっ……とレイジの身体がベッドに沈んだ。

「……え…?」
 戸惑うような母親の声。

「い、今、ベッドが勝手に……」
「勝手にじゃないよ。お兄ちゃんがベッドに転んだんだよ〜〜」
「………え、ええと……そこに……どなたか居られるんですか?」
「いるけど……どうやったら伝わるんだ?」
 母親の言葉にそう呟いて辺りを見回したレイジは、ふと机の上にあるパソコンに気がついた。

「ひょっとして……」
 思い立ってパソコンの電源を入れてみる。
 通り抜けるかと思われた手はしっかりとパソコンに触れていて、その電源を入れる事が出来た。

「ひっ……パ、パソコンが勝手に……」

 起動したパソコンに向かって、レイジの手が文字を入力していく。
 
− います、ここに

「………ひ、ひぃぃぃぃっ!! お、おばけっ!?」
「お兄ちゃんは、幽霊って言ってるよ〜」
「あ、あわ、あわわ……はぅッ……」

 ぱた…

「あ…お母さん、気絶しちゃった……」

 そう言う友佳梨に、レイジはもはや笑うしかない。

「ははは……ったく……こいつはとんでもない仕事引き受けちまったな……」
「お母さ〜ん、しっかりしてよ〜〜〜」

 溜息と共に溢れたレイジの呟きは、誰に届く事もなく虚しく響くだけだった……



次回予告
 はわわっ、え、えと、えと、友佳梨だよ〜
 突然空から降ってきたお兄ちゃんに、友佳梨はビックリ。
 でも、なんで他の人には見えないんだろう…

 お兄ちゃんと過ごす毎日は刺激がいっぱい。
 どんなドキドキが待ってるんだろう……あはっ♪
 いつも、どこでも守ってくれるんだもんね。どこでも……ねっ(はぁと)

 次回、貴方の守護霊いたします、第5話。
 
 『いつもいっしょに』

 いつも、一緒だよ…
 …○○○の中でも……ねっ、お兄ちゃん?

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