−オリジナル story−

『貴方の守護霊いたします』
by Sin

第3話 出会いは…頭突き!?


「守護霊?」
 唐突な殺奈の言葉に、少年は戸惑って聞き返す。

「そ。どんな生き物にも必ず守護霊って付いてるんだけど、最近、どーも悪い霊が増えちゃったみたいで、結構被害が出てるのよ。やられちゃった守護霊は消滅しちゃうし…で、守護霊を失った人は不運の連続に見舞われて、あっけなくあの世へ……だから、守護霊を失っている人の新しい守護霊になってくれる人を探してるってわけ」
「かなり危険そうだな……」
「まあね。だけどその分、転生ポイントは他に比べて5〜10倍は早く溜まるわよ」
 あまりに現世で聞き覚えのある言葉に、思わず力の抜ける少年。

「危険手当か?」
「そういう事ね」
「……なんとなく、あの世の概念が思いっきり崩れていく気がする……」
「まあ、ここだって現世で死んだ人達が存在しているわけだから、そんなに現世と違ってもね」
「そうなんだけどさ…」
 脱力したまま起きあがれない少年を突いて苦笑する殺奈。
 
「…ん〜と…じゃあ、こう言い換えれば納得できる? 『善行』…つまりここのお仕事ね。それを繰り返して『徳』…これは転生ポイント…を溜め、魂の浄化を行った上で現世に転生する。ま、こんな感じかな」
「そう言われると、なんとなく解る気がするぞ…」
 少年のその返事に殺奈はホッとした様子を見せた。
 そんな様子を怪訝そうに見ている少年に殺奈は苦笑する。

「よかった。で、どうする? やってみる?」
「あとで辞めるって事は…」
「できるけど、後任が決まるまでは待ってね。じゃないとその担当している人がこっちの住人になっちゃうから」
「………もう少し時間をくれ…」
「いいよ」

 そう言ってにこやかに微笑んだ殺奈は懐から懐中時計を取り出すと、その針とにらめっこを始めた。
「………なにしてるんだ?」
「ん? ああ、君の魂があとどのくらい保つか数えてたの。ちなみに、あと7分以内に仕事決めないと、消滅だから。そういうことでよろしく〜」

 耳を疑う言葉に、呆然とする少年。
「あれ? どうしたの?」
「か、稼がない日が3日続いたら……じゃなかったのか?」
「うん。だからあと7分で、君がこっちに来てから3日。あ、もうあと6分ね」
「ちょ、ちょっと待てよっ!!」
「あと5分〜♪」
「早過ぎ!?」
「あと4分〜♪」
 歌うように告げる非情なまでの殺奈の声。
 ふと気付くと周りには殺奈の持っていた物と似たような鎌が、支えもなく無数に浮かんでいる。しかもその数は増える一方。

「消滅まで、3分〜♪」
「ひょっとして、消滅って……」
「欠片のひとつも残さずにバラバラだから、痛みなんて感じてる暇ないよ」
「………洒落になんねぇ……」
 笑顔で言い切る殺奈に、少年の全身から冷や汗が溢れてくる。

「は〜い、あと1分」
「なっ、2分はどうした、2分は!?」
「面倒だから飛ばした〜♪」
「飛ばすなっ!」
「は〜い、残り10秒〜♪ 念仏は唱えたかなぁ?」
「………い、言いたいことは山ほどあるけど…」
「ご〜よん〜さん〜にぃ〜いちぃ〜♪」
「やってやるよ! とりあえず一番危険な奴の担当にしろ!!」
 少年がそう言い放った瞬間、周りを取り囲んでいた鎌は一斉に消え去り、地上に向かって一筋の光が差した。

「うんうん、そう言ってくれると思ってた。と言うわけで、君は今日からあの子の守護霊ね。ほら、見える?」
 そう言って殺奈が指さす先を見ると、先程の光に照らされている中学生くらいの少女が1人見えた。

「あいつか? 俺は一番危険な奴にしろと……」
「これまでに、守護霊18人。死神3人。みんなあの子と関わりを持って消滅したわ」
「……なんでそんなに……?」
「それは逝って…行ってのお楽しみ〜」
「なんだ、今の言い直しは? 文字にしないと分からない意味深な物を感じたぞ!?」
「じゃ〜あね〜」
「ま、まて、おい、殺奈ぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
 急に遠退いていく殺奈の姿に慌てて駆け寄ろうとするが、近づくどころかあっという間に見えないくらいに離れてしまう。
 と、その時……
 
「あ、そうそう。忘れちゃってるかもしれないけど、君の名前…『レイジ』だからね〜」

 どこからともなく響いてきた声。
 最後にその声を聞いて、少年−レイジ−の意識は途絶えた。


 ぼんやりとした意識の中…
 レイジは自分が墜ちていることを感じていた。

 延々と墜ち続けて…終わることが無いかのように感じたその時……

 レイジは頭をなにかに激しく打ち付けてその場にひっくり返った。
 なにやらその瞬間に、「はうっ!?」という声がしていたが…

「いってぇぇっ! な、なんで霊の俺が痛みなんて…」
 まるで頭の中で鐘を打ち鳴らされているみたいな衝撃にふらふらと立ち上がったレイジは、ふと、目の前に倒れる人影に気付いた。

「……え? なんで…人が…?」
「はぅぅぅぅぅぅ……おめめぐるぐるぅぅぅ……」
「と、とりあえず生きてるみたいだな…お、おい、大丈夫か?」
 呼びかけて、ふと自分が霊であることを思い出して苦笑する。

「聞こえるわけないよな……俺死んでるんだし……」
「ほえ〜? だぁれ?」
 突然振り返られて硬直するレイジ。

「み、見えるわけ…無いよな?」
「えっと……誰?」
 小首を傾げて見つめている少女。
 その姿に、レイジは見覚えがあった。

「君は……」

 ほんの少し前…あの世から照らされた光に浮かび上がった少女…
 まさに彼女こそ、その少女だった。

 2人の運命が今、ここに交差する。
 
「ほえ?」

 本人には、まったく緊張感ないのだが…



次回予告
 痛〜っ……あ、え〜と…レイジだ。
 ったく、なんでいきなり脳天直撃食らうんだよ…
 幽霊の自信なくすぞ、俺は…

 いきなり出逢っちまった俺達。
 これから一体どうしろって言うんだよ…
 それにしても……なんなんだ、この女…普通じゃねえぞ…
 誰か、ちゃんと説明しやがれ〜っ!!


 次回、貴方の守護霊いたします、第4話。
 
 『出逢ったあの子は超絶不運』

 マジかよ…洒落にならねえぞ、こんなの……

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