−オリジナル story−

『貴方の守護霊いたします』
by Sin

第5話 いつもいっしょに


 友佳梨の守護霊をする事になった俺だが……初っぱなからトラブルは続出だ。

「あ、あのぉ……お兄ちゃん……」
「なんだ?」
「その…あの……えと……」
「だからなんだ?」
「………その…ト…」
「ト?」
「ト……イレ……行っても……いい?」
「なんだ、そんなことか。別に俺に断る事じゃないだろ? 好きに行けばいい」
「う、うん」

 そう言って慌てて駈けて行く友佳梨。
 だが……

「きゃあぁぁぁぁぁっ!」

 ずででででででで………

「お〜お〜、見事にケツで10段は下りたな」
「ふみぃ……いたたたたぁ……」
「お、さすがに打たれ強いな。おい、ケツは大丈夫か?」
「はぅ〜割れたかも〜」
「それは、元々だ。それよりさっさと行かないと……」
「あ、あわわわわっ!」
 レイジの言葉に再び慌てて駈け出す友佳梨。
 
 やがて、バタンと言う音と共に友佳梨の声も途切れる。
 その時だった。

 ズズ………

「ん?」

 ググ……ッ……」

「な、なんだっ!?」

 唐突になにかの力がレイジの身体を引っ張り始める。

「う………うわっ!?」

 その力は更に増し、あまりの強大な威力にレイジの身体は一気に引きつけられた。

「い、いったいなんなんだこれはっ!?」

 必死にその辺にある物に掴まろうとするが、次々とすり抜けてしまう。

「こなくそぉぉぉっ!!」

 気力を目一杯振り絞り、壁にしがみついた時だった。

 バチンっ! と言う激しい音と共に、レイジの手の触れた部分が青白い火花を散らす。

「なにがどうなってやがる!! だあぁぁぁっ、くそぉぉぉっ!!」

 更に足も踏みしめると、同じように火花が散る。

 その時だ。

 少し先に見えるトイレから水の流れる音が聞こえて、友佳梨が出てくると少し引きつける力が弱まった。

「なっ……」

 更に近づいて来るにつれ、力はどんどん弱まり……

「にゃ? お兄さん、なにしてるの?」

 そう言われて振り返った時には、すっかり引きつけられることもなくなっていた。


「なにが、どうなってやがんだ……」

 訳が解らず、自分の手と、壁にしっかりと残った手形を見比べて戸惑いの色を浮かべるレイジ。
 だが、ふと思いついたことに愕然とする。

「まさか……」
「はにゃ?」
 不思議そうに自分を見つめている友佳梨の様子に溜息をつくが、とりあえず思いついたことを試してみることにした。

「友佳梨。しばらくそこにいろ」
「あ、はぁい」

 その返事と同時に、レイジは全速力で友佳梨の部屋へ。そして更に窓を開けて外へ……出ようとしたところで再びあの力が。

「ぉわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 今度は掴まるところもなかったので、レイジは一気に壁を突き抜けて1階へ。
 母親のいる居間を突き抜け、押入さえも突き抜けて廊下……立ち尽くしている友佳梨の下に引き寄せられた。

「だ、誰か、止めてくれ〜〜〜っ!!」
「ほぇ?」
 ふと、目の前の壁から聞こえた言葉に首を傾げてじーっと覗き込む友佳梨。

 その瞬間、壁を突き抜けてきたレイジが目の前に……

「―――――っ!?」
「にゃ……にゃぁぁぁっ!?」

 あまりの急接近に、どちらも逃げる間などある訳なく……

 派手な音と共に、額を打ち付けた。

「――ぃっ……つぅぅぅっ!!」
「はぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ…………」

 思わず頭を抱えるレイジ、そして友佳梨は仰向けにひっくり返って目を回している。

「…………くぅぅっ、効いたぁぁぁ……おい、大丈夫か?」
「ふにゃぁ……痛かったよぉ……」

 涙目で答える友佳梨。
 その額をそっと撫でてやりながら、レイジは自分の考えに確信を持っていた。

「えへへ……お兄さん……優しい……」
 撫でられて気持ちよさそうな表情をしていた友佳梨は、嬉しそうに微笑むとそう言って満面の笑みを浮かべた。
 レイジはそんな友佳梨の様子に照れくさくなって、照れ隠しに友佳梨の頬をつつく。
 だが…それは逆効果だった。

 ふにっ……

「うぉ……な、なんだ、これ……女ってこんなに柔らかいものなのか……?」

 初めて感じる感触に、面白くなってふにふにとつついてしまう。

「うにゅ? にゃ……にゃははっ、お兄さん、くすぐったいよぉ」
「あ、悪ィ……」

 自分のしていたことが更に照れくさくなってしまい、真っ赤になって手を離すレイジ。

 友佳梨は嬉しそうに、そして少し恥ずかしそうに頬を赤くして微笑んでいる。

「えへへ……お兄さん、友佳梨のほっぺ、好き?」
「べ、別にそう言う訳じゃ……」
「でも、ほっぺ触ってる時のお兄さんって、すっごく楽しそうだったよ〜?」
「う……」

 思わず言葉を失うレイジ。

「と、とにかく、部屋に戻るぞっ!」
「あ、うん」

 急いで駆け上がるレイジと、その後を、とてて〜と駆け上がってくる友佳梨。
 まあ、結局上がりきる前に、2回墜ちたのだが……

 ともあれ、なんとか部屋に落ち着いたレイジは、あれだけ墜ちたにもかかわらず、一切怪我のない友佳梨の様子にでっかい汗を浮かべながら、自分の考えを話し始めた。

「とりあえず、言っておくが…」
「にゃ?」
「どうやら、俺は、お前から離れることができないみたいだ」
「ど〜ゆ〜こと?」
「さっきやって見せただろ? お前を置いてこの部屋に戻ってきた。そしてそこから出ようとした瞬間、お前に引き寄せられて、さっきの正面衝突だ。多分、ある程度の距離が離れると、勝手にお前の傍に引き寄せられちまうみたいなんだ」
「ふ〜ん、大変だねぇ」
「他人事みたいに言ってんじゃねぇよ。それに、離れられないって事は、色々まずいことだってあるんだぞ?」
「え、どんな?」
「さっきみたいなトイレ行きたい時だとか、後は……着替える時とか……風呂入る時とか……」
「えっと……じゃあ、お風呂にお兄さんと一緒に入っちゃうって事?」
「………ま、まぁ……そう言うことだな……どの程度離れたら引き寄せられるのか解らないけど、少なくともお前が入っている間、ずっと脱衣所辺りにいないといけないと思う」
「………(ぽっ)」  
 レイジの言葉に、ゆっくり視線を落とすと、頬を赤らめる友佳梨。
 指はモジモジと絡まり、恥ずかしそうな視線で上目遣いにレイジを見つめる。

「え、えと、えと、えと、えと………」
「……パニクるのは解るし、色々言いたいのも解るが……とりあえずそれが現実だ」
 そう言うレイジの顔も赤い。

「それに、もしさっきみたいにどこかにしがみついていたとしても、そんなに長い時間もたねぇよ。精々10分が限界だ。それ以上になったら、俺がもたないか、こっちの壁の方がもたない。それに……」

 その時、階下から悲鳴が……

「い、嫌ぁぁっ、手形、手形がこんな所にぃっ!! お化け!? 幽霊!? 心霊現象〜〜〜っ!? はぅっ!」

 ばたり……という音。

「……と、まあ……こういう事になりかねない……」
「……あ、あはは〜」

 さすがにでっかい汗を浮かべて、笑うしかない友佳梨。

 結局その場はそれ以上話すことができず……

 そしてその日の夜……

「え、えと…服脱ぐ間、外出ててくれる……?」
「解ってる。できるだ……けぇぇっ!?」
 いきなり発せられる引き寄せる力。
 今から服を脱ごうとしていた友佳梨をまるで押し倒すかのような勢いでぶつかってしまう。
 急接近で見つめ合う瞳。

「わ、悪ィ……い、いきなり引きつけられて……」
「………(ぽ〜っ)」
 僅かにボタンが外れて乱れた襟元。
 赤らめた頬で見つめてくる視線はどこか潤んでいて……
 襟元から覗く白い肌の色に思わず目が引きつけられる、レイジ。

「お……にい……さん?」

 その声に正気を取り戻す。

 顔が一気に真っ赤に染まり、大慌てで離れた。

「わ、悪ィ! ど、どうやら、少し離れるだけでも引き寄せられちまうみたいだ。だ、だから、俺、そっち向いてるから、き、気にしないで入ってくれ」
「……う、うん…」
 そうは言われても恥ずかしいことに変わりはなく、背を向けたレイジの様子を恐る恐る窺いながら、服を脱いでいく。
 
 レイジの方も、衣擦れの音に想像をかき立てられて、顔を赤くする。

 それは風呂に入った後も同様で……

 背後で身体を洗う友佳梨の様子が気になって仕方がない。
 だが、振り返る訳にも行かず、かき立てられた想像に鼓動が激しく高鳴っている。

 そして友佳梨も、いつ見られてしまうか解らない怖さと、逆にちょっとした期待感で、胸を高鳴らせていた……



次回予告
 レイジだ。
 まったく、いくら守護霊だからってあそこまでずっと側にいるこたぁねぇだろうに……
 おかげで友佳梨の入浴姿に…って、んな事考えてたらやべぇって!
 と、とりあえず、頑張ってやってくしかねぇな。
 トラブル続きの守護霊生活。
 なんであそこまでって思うくらいに友佳梨の周りにはトラブルだらけだ。
 ったく、こうなりゃ意地でも守ってやる。
 
 次回、貴方の守護霊いたします、第6話。
 
 『あくうん・ふうん・あめあられ』

 って、このままじゃ俺の方が先に死ぬんじゃね〜か!?


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