−オリジナル story−

『貴方の守護霊いたします』
by Sin

第2話 あの世のお仕事


「静かだ…まるでなにも無いかの様に…」
 真っ暗な空間に、少年の声が響く。
 だが、誰もいないかと思われたその空間に、唐突に気配が生じる。

「んなこと言ってる暇があるなら、とっとと起きろ〜〜〜っ!!」

 ぐわぁぁあぁぁぁん!

 そんな音が聞こえてきそうな程の凄まじい衝撃を脳天に受けて、少年は声もなく悶絶する。しばらく頭を抱えて蹲っていたが、やがて痛む頭をさすりながら、身を起こした。

「あ、起きた(はぁと)」
「起きた(はぁと)じゃねぇっ! なんなんだ、今のは一体っ!!」
「あ、これ? ネボスケ霊専用の目覚ましハンマー、トールくん」
 そう言って殺奈は肩に担いだ巨大なハンマーをぶぅんと振り回した。
「だわぁっ! あ、あぶねぇっ!!」
「大丈夫だって。アンタ、もう死んでるから当たっても死ぬことないし。全身バラバラになっても治るから、痛いだけよ」
「痛いだけ…って……んどわぁっ!!」
 思わず身を屈める。
 その直後、少年の頭のあった場所をトールくんが風を切って通り過ぎた。

「…かわさなかったら……」
 砕け散る自分の顔面を思い浮かべて、少年の顔色が青くなる。
「ほらほら、逃げちゃ駄目だって」
「逃げるわっ! ってゆーか、目覚ましハンマーじゃなかったのかよっ!!」
 少年の言葉に、綾女はキョトンとして目を瞬かせる。
 しばらくの沈黙…そして…
「………あ」
 ポツリと漏れた一言と、額に浮かぶでっかい汗。

「『あ』ってなんだ、『あ』って! テメエ…とことん、すっかり、完璧に当初の目的忘れてやがったな!」
「まあ、君はちゃんと起きたわけだし…うん、結果オーライ(はぁと)」
 殺奈はにっこり微笑むと、そう言ってポイッとトールくんを虚空に投げ上げる。
 するとその姿はボンヤリと霞み、やがて完全に消えてしまった。

「なっ…」
「さてと…気持ちよく起きたところで、これからの君の予定について説明するわ」
「今の…なにがどうなって…ってゆーか、気持ちよくってどこが!? ……って、ちょっと待て、予定?」
「あぁ、もう! これも忘れてるわけね。君にはもう何度も説明したから、いい加減覚えて欲しいんだけど……」
 そう言うと、今度は虚空からパンフレットのような物を取り出す。

「はい、『あの世の暮らし案内書』本当は君みたいに何度も来てる人に只で配りたくないんだけど…これだって、私達のポケットマネーをやりくりして作ってるんだから」
「……な、なんか、色々言いたいんだが…あまりに突っ込みどころが多すぎて、何も言えんぞ」
 妙に疲れた声で言う少年に殺奈はパンフレットを開くと、またどこからともなく出した指示棒でパンフレットを指し示す。
「んじゃ、黙って聞いててね。とりあえず基本から。ここは、現世で死んだ人が来る場所。それは解ってるわよね?」
 まだよく解っていなかったが、とりあえず少年は頷いておく。

「で、ここでは転生ポイントを溜めて貰う為に、色々お仕事をして貰うってわけ」
「質問」
「はい、どーぞ」
「転生ポイントって…なんだ?」
「名前通りよ。ここに来た君達が、別の物に生まれ変わるのに必要なポイント。例えば、アリとかハエとかだと、30ポイントで、バッタとかチョウチョだと70ポイントみたいに、転生したい物に必要なポイントを溜めれば、それに転生できるって仕組みよ」
「ちなみに……人間だと?」
「まあ、哺乳類は概ね同じだけど…大体2500万ポイントくらいね。猿とか、象なんかも同じ位よ。一番多いのがゾウガメ…かな? 4000万ポイントだったはずだけど…」
 そう言いつつ、手元の手帳らしき物を調べて、確認する殺奈。

「うん、間違いないわね。で、どう? 解って貰えた?」
「……ホントは色々言いたいが……とりあえずは…」
「よし。じゃ、次はお仕事について」
「お、おう」
「あの世に来たからって、何もしなくていい訳じゃないの。それどころか、ちゃんと働いてポイントを溜めて転生しないと、10年後には消滅することになってるから。ちなみに、ポイントを稼がない日が三日続いたら、消滅することになるから気を付けてね」
 にっこり微笑む綾女だったが、少年はその話の内容に顔色を変えることしかできない。

「それでお仕事なんだけど……怨返しとか……してみる?」
「恩返し?」
「違う違う、怨返し。人の恨みとか、憎しみとかの力って、もの凄いでしょ? それってあの世にも悪い影響を与えちゃうのよね。で、あの世に向かってきた怨念を束ねて、その怨念の元になってる人……つまり、恨まれるようなことをしている人に、返すお仕事」
 明るく言われても、内容的に笑える物ではない。
 ただ、1つ気になって聞いてみた。

「……それって、返された人はどうなるんだ?」
「フフ……そこから後は私達の、お・し・ご・と(はぁと)」
 死神の仕事……流石に少年も、その内容を聞く気にはならなかった。

「あんまり乗り気じゃないみたいねぇ……」
「まあ……ね……」
「じゃあ……君って喧嘩強かったよね?」
「負け知らずだったな。まあ、毎回刺されて死んでるって事は、これまでも似たような物だったんだろ?」
「まあね。ただ、段々強くなりすぎてる気もするけど……転生までにかかる時間も、どんどん短くなっていったし……あ、そうだ!」
「な、なんだ?」
 戸惑う少年に、殺奈は微笑んで言った。

「君、守護霊やってみる気ない?」

 それは、少年の運命を大きく変える分岐点であったのだが……
 今はまだ、誰も知らない……





次回予告
 はぁ〜い、殺奈で〜す♪
 ほらほら君、そんな嫌そうな顔しないの。失礼だぞ、プンプン。

 でも、100年の内に5回も会う事になるなんて、君と私って相性良いのかも〜
 な〜んて、ね。
 ほら、グズグズしてるから消滅タイムリミットまであとちょっと…
 君が今回どんな道を選ぶのか、楽しみにしてるよ。さあ、どうする?


 次回、貴方の守護霊いたします、第3話。
 
 『出会いは……脳天直撃?』

 覚えてる……?
 …君の名前は……

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