−オリジナル story−

『貴方の守護霊いたします』
by Sin

第1話 あの世よいとこ一度はおいで♪


 夜もすっかり更けた街の一角。
 今にも消えそうな街灯が瞬くその場所で、数人の少年達が怒声を上げていた。

「テメェ・・ナメてんじゃねぇぞ!!」
「ぶっ殺せ!!」

 闇の中に響く鈍い音。
 だがそれは、囲まれている側ではなく、囲っている側から起こっていた。

「ったく・・喧嘩ふっかけてくるなら、もうちょっと頑張れよなぁ・・10人でかかってきて、5分保たねえってのは、どういう事だよ・・」

 呆れ果てたような言葉。
 しかしそれに応えられる物は誰もいなかった。

 強い。圧倒的に強い。
 連戦連勝、無敵無敗。

 彼はこれまで一度たりとも喧嘩で負けたことはなかった。

 だが、それ故に多くの敵も作ってしまっている。
 その一部がこうして徒党を組んで襲ってきたのだが・・結果はこの通りだ。

「はぁ・・つまらねぇ・・強いってのも・・退屈なもんだな・・」

 敗北を知らない少年・・だが、そう呟いたのが彼にとって最後の言葉となった。


 暗闇・・果てしなく深い深淵・・・
 音もなく、光もなく・・何もない・・

「・・・・?」

 なんとなく奇妙な感じがして、少年は目を開ける。
 途端に世界が喧噪を取り戻した。

「・・あれ? 俺・・いつ寝たっけ?」

 周りを見回す。
 どうやら少し先に人集りが出来ているようだ。

「ま、行ってみるか・・」

 そう言って彼が向かった先・・そこには・・

「怖いわねぇ・・」
「暴走族同士の喧嘩?」
「この辺の不良に恨み買ってたらしいわよ・・」
「怖いわねぇ・・」

 おばさん達の世間話にしばらく耳を傾けていた少年だったが、やがて、その現場へとたどり着いた。
 そして見た物は・・
 全身を滅多刺しにされた『少年』の死体がおびただしい量の出血とともに、その場に転がっていた。

「・・・・え? これ・・俺? ・・・ちょ、ちょっと待てよ・・じゃ、じゃあ、ここにいる俺は・・?」
 訳が解らず首を傾げる少年の背後から、不意に何者かの声がかけられた。

「あの世よいとこ一度はおいで〜♪ ・・って、なんだ、また君かぁ・・」

 慌てて振り返る少年。
 するとそこには、黒い着物を着た女性が大きな鎌を担いで溜息をついていた。

「な、なんだ、お前・・・それに、またって・・・俺はあんたに会うのは初めてだぞ?」
「相変わらず失礼な奴ねぇ・・それと、あんたに会うのって、もう5回目よ。この100年の間にね」
「なっ・・」
 溜息混じりに言われた言葉に、少年は絶句。
 だが、立ち直りが早いのか、直ぐさまこめかみの辺りをピクピクさせて女性を睨み付けた。
「ほんと〜に、戦国時代でもないのに、100年の間に5回も死ぬってどういう事よ・・全く・・しかも全部が相手に刺されてなんて・・」
 ぶつぶつと呟く女性。

「忘れてるみたいだから、とりあえず自己紹介・・私は殺奈。死神よ」
 再び絶句。
 あまりの事に、流石に今度は立ち直って来れない様子だ。

「・・・・で、死神が俺になんの用だ?」
「決まってるじゃない。死神のお仕事は・・」
 ゆっくりと掲げられる巨大な鎌。
 そして・・
「当然、魂の回収よ」
 そう言うと、殺奈は担いでいた巨大な鎌を少年に向けて振り下ろした。




次回予告
 ある日突然、死んでしまった俺。
 そんな俺の前に現れた殺奈と名乗る女にトドメをさされた…筈だったんだが…
 目を覚ますとそこは見慣れぬ風景…
 ここは…一体……

 次回、貴方の守護霊いたします、第2話。
 
 『あの世のお仕事』

 幽霊暮らしも、楽じゃないぜ。

戻る         TOP         次へ