機神咆吼デモンベインSS
『魔導探偵でござる』

by うぇんでぃご。

4.<金色の野望>

テーマパークの中心に立てられた大きな古城
その天守閣の屋根の上、膝を抱えた小柄な人影があった。
巫女服を纏った銀髪の少女、珊瑚
『惨之七秘聖典』――『サンの七秘聖典』の日本語版写本
彼女は、その化身
「わたしって・・・やっぱりただの魔導書なのかな・・・」
少女は考える。
その生の意味を
いままで過ごした500年という年月を
様々な所有者の下で暮らした日々を
そして、数え切れないほどの闘いを
「りゅうま・・・・わたし・・・もし・・私が――
その先は嗚咽と共に風に流れていった
無駄だと知りながらも、呟きつづける
常に共にあった人の名を

夜の闇の街
交差する黒と金
戦いは熾烈を極めた。
刹那の隙も許さぬ攻防
飛び散る火花と弾ける魔力
「せりゃあああっ!!」
マギウス・ウィングの斬撃がマントの刺突を全て切り裂く
これで何度目かと思う対峙
ふいに、一度も喋らなかった『黄衣の王』が口を開いた。
「噂にたがわぬ力だな、アル・アジフ。そしてその所有者」
声自体は、美声の青年という感じだった。だが口調がどうも古臭い
まるで、マスターテリオンを髣髴とさせる喋りだ。
「・・今しゃべってんのは、所有者のほうか?それとも本のほうか?」
「この『黄衣の王』の意思だ。声を発するまで支配するのに今まで手間取ったが
な。ククク――」
「――もう完全に、支配しておるようだな、所有者を」
「じゃあさっさと倒して、開放しねぇとな」
俺は拳を構える
だが、『黄衣の王』から思いがけない一言が発せられた。
「何を言う、私はこの契約者とある誓約を交わしている。その代わりとして肉体
を借りているだけだ」
「なに?」
肩に乗っているアルが、驚いて聞き返す
「我の望みを叶えるかわりに、この者の望みを我が叶える・・・そういう誓約だ」
「望み…?人殺してまで何を企んでやがる!!」
「誰にでもあるものだ、他人を犠牲にしてでもかなえたい願いがな・・・お前達
もあるだろう?」
「・・・貴様、まさか邪神復活の儀式でもするつもりか?」
「いい線をいっているが、違うな。ある意味では、自分を生き返らせる事に等しい」
「何だと!?ならば何を蘇らせるつもりだ!!」
「落ち着けアル。どっちみち、コイツを倒せば済む話だ!」
「フッ、来るか・・・・」
俺は一歩前へ踏み出す。
すると突然、周囲に風が巻き起こった。
「なっ!?こ、これはっ!?」
「いい時間稼ぎにはなった・・・お前達も我が望みの糧となれ!!」
ばらけていく魔導書のページ
一瞬で眼前に巨大なマントが広がり、俺達に巻きついた。
体から急速に吸い取られていく魔力
「う・・・畜生っ!油断したかっ!?」
「くっ・・・うつけがぁ!」
「言い争ってる・・場合かぁ・・!!」
その間にも魔力は既に三分の一を吸い取られている。
これではもう時間の問題だ。
「ちくしょう、クトゥグア・・・!」
指先に編まれる魔力
だが、すぐに霧散してしまった。
これでは呪法兵装も召還できない
それに魔力も、半分を切っていた。
「打つ手なしか・・っ!」

その瞬間

閃光が煌き、身体に巻きついていたマントが一瞬で細切れになった。
その場に膝をつく俺達。
すでにマギウス・スタイルは解け、アルもいつもの少女の姿に戻っている。
俺達の前にいたのは
「――龍馬っ!?」
そこには二刀流を構え、上半身に包帯を、さらしのように巻いた龍馬がいた。
・・・おかしい、一人だ。
あの『サンの七秘聖典』の精霊である少女、珊瑚がいない
「さすがはマスターオブネクロノミコンにアル・アジフ。全てとはいかないまで
も、これだけの魔力を有していたか・・・これは想像以上だな。これならば、す
ぐにでも始められそうだ」
「そんなこと、俺がさせない!! 覚悟しろ・・・『黄衣の王』っ!!」
一気に距離を詰める。
初太刀を横に振りぬくも、かわされる。
向かってくる布の槍を横転で避け、間を縫うようにして向かっていく
刀を神速の速さで振りぬき、斬りつける
だが布の槍の反動を利用したバックステップで、『黄衣の王』は大きく距離をとる
『黄衣の王』が地面に魔方陣を描くと、周りの地面が次々に隆起して龍馬を襲った
龍馬は魔術で結界を張ったが、いとも簡単に突き破られてしまった。
土の柱が龍馬の全身を容赦なく打ち付ける。
「ぐあっ!!」
「その程度で挑むとは・・愚かな」
見ると、龍馬の目前まで『黄衣の王』が迫っていた。
バックステップで距離を取ろうとするが、マントに足を掴まれ、投げ飛ばされる
龍馬の体は漆喰の壁に叩きつけられた。
「――しばらく戦ってきたが・・・これで終わりだな」
龍馬は、壁に身体を預け足を投げ出したた状態で、荒い息を繰り返していた
口の端からは血が伝い、頭からも赤い筋が頬まで走っていた
包帯には赤黒い染みが広がっている
『黄衣の王』はおもむろに龍馬の首を掴んで目の高さまで持ち上げる
「この身体・・・お前の兄も愚かだった。簡単な口約束で、あっさりと身体を譲
り渡しおった・・・まさか、ただ利用されているだけともしらずに・・・・」
掴んでいた手がいきなり離れ、龍馬が力なく地面に落ちる
「まったくおもしろい男だ、訳のわからぬ不可能な事を我に願った。そのような
方法など存在するわけがないだろうに。まったく、つくづくおもしろい奴だったな」
腰に手をあて、おおげさに高笑いする『黄衣の王』
足元の龍馬は拳を握ったまま、体を震わせている
「兄貴の・・願い、を・・・利用した・・だと・・!?」
「この際、教えておこうか。お前の兄はな――『魔道書の精霊を人間にする方法が
知りたい』といったのだ」
「っ!!!?」
「最初に聞いた時はあまりの馬鹿馬鹿しさに笑いをこらえる事で精一杯だった
な、クックックッ・・!そんな方法ある訳がないのになぁ!アハハハハハハハ!!」
その態度に、俺の中の血がこれまでにないぐらい沸騰する
「あの野郎・・・許せねぇ!」
『黄衣の王』の口が、ニィッとつりあがる
「――そこで見ているがいい、我が悲願達成の瞬間を!」
暗い闇の空中に現れる召還陣
破滅の印・・・『黄色の印(イエローサイン)』
圧倒的なプレッシャー
震える大気
巨大な何かが、顕れようとしている
この感じは――鬼械神!?

「ウェニ・ディアボレ、ディスカルケア・メ……レデケ、ミセル……バガビ・ラ・カ・バカベ・・ラマク・カビ・アカバベ・・カレリョス……」

祝詞が紡がれる

「数多の時空を翔ける古き神よ 獲物を見定め駆り立てる者よ 汝は輝ける狩人なり」

掌を天に掲げ、叫ぶ
マントから、一斉に魔術文字が溢れ出す

「討滅せよ――イオドエクセル!」

耳をつんざくような鳴動と共に、魔方陣が妖しく煌く
輝く光と共に顕れたのは
四本腕を持つ上半身に肉食獣を思わせる四肢の足
全身を金色の装甲で覆う鋼の巨人
『黄衣の王』が鬼械神≪イオドエクセル≫
「どぉだぁ!!あはははははははは!! ハハーァハハハハハハ!!」

俺は拳を握り、叫ぶ
「――アル!いくぜ、デモンベインだ!!」
「うむ・・やるぞ、九郎!!」
全身に魔力をかき集め、再びマギウス・スタイルへと変貌する
印を結び、聖句を紡ぐ

憎悪の空より来たりて――
正しき怒りを胸に――
我らは魔を断つ剣を執る!
汝 無垢なる刃、デモンベイン!!

夜空から伝わる圧倒的な重厚感
『旧き印(エルダーサイン)』と共に空間が歪む
空を裂き、顕れる
神殺しの刃、人が作りし神、刃金を纏う破壊の巨人
魔を断つ、無垢なる剣
≪デモンベイン≫

無垢なる剣と輝ける狩人が、今向かい合う


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