機神咆吼デモンベインSS
『魔導探偵でござる』

by うぇんでぃご。

5.<『無垢なる剣』と『輝ける狩人』>

「うおおおおおおおおおぉっ!!」
渾身の鉄拳が、イオドエクセルに向かって振り下ろされる
次々と起こる金属と金属がぶつかりあう轟音があたりの空気を震撼させる
連続で打ち出される拳は二本の腕にことごとく阻まれ、残っている二つの拳がデモンベインに叩きつけられた
コクピットを揺らす衝撃
予想より重いその一撃に、デモンベインの体勢が崩れた。
「畜生っ、パイロットが龍馬の兄貴じゃ、派手な技は使えねぇ・・・!」
「だが、長引かせるのも不利だ!」
イオドエクセルが、四本の手にそれぞれ剣、斧、メイス、鎌を顕現させる
「"神狩り"・・行け!」
それらを軽く空中に放り投げると、四つの武器はそれぞれ数十に増え、次々にデモンベインへと飛来してきた。
直ちに『旧き印』を展開して結界を張り、飛来する武器を防ぐ
「っこのやろぉっ!!」
バルザイの偃月刀を召還し、イオドエクセルに向かって投擲する
偃月刀は、向かってくる武具を切り裂きながら金色の機体へ襲い掛かった。
だがイオドエクセルは僅かに身を反らし、刃をかわす。
こちらもすぐさまクトゥグア・イタクァを召還し、乱射した。
熱気と冷気の弾丸が金色の機体へ降り注ぐ
するとイオドエクセルの体から、マギウススタイルの時と同じように、金色のマントが飛び出した。
マントは襲ってくる弾丸の軌道を捻じ曲げ、デモンベインへと跳ね返す
「ぐううううっ!!」
イタクァの弾丸はこちらで軌道を曲げてそらしたが、軌道修正できないクトゥグアの弾丸は容赦なくデモンベインの機体を抉っていった
モニターに次々と光るエラーサイン、幸いながら致命的なダメージは無かった
「どうすればいいっ!?あの中から龍馬の兄貴を引き剥がさないことには、一方的にやられるだけじゃねぇかっ!?」
「鬼械神の中から術者だけを切り離すなど聞いた事も無いぞ!?とりあえず、再起不能になるまで攻撃するしかない!」
「よし・・・・やるぜアル、脚部シールド開放!」
脳内をかけめぐる莫大な量の情報
デモンベインの二機のシールドが煌々と光る
「断鎖術式、壱号ティマイオス、弐号クリティアス!!」
脚部のシールドが唸りを上げ、デモンベインがイオドエクセルに向かって突進する

「「アトランティス・ストライク!!」」

大地を震撼させる衝撃波があたりに広がる
金を貫く鮮烈な光
右足は期待の胴体に突き刺さった。

「「ヴォーテックス!!」」

デモンベインの左足が、イオドエクセルの頭部を粉砕した
次は右足が左前足を粉々に砕く
右、左、右、左、右――
次々と繰り出される一撃に、イオドエクセルの金色の装甲は、ひしゃげ、ひび割れ、爆砕した。
「ガアアアアアアアアアアアアアアア!!」
イオドエクセルは建物を派手に巻き込みながら、倒れ伏した


二つの影を見上げながら、龍馬は倒れ伏していた
あばら骨は半分以上が折れ、内臓は傷つき、両手両足ともにいうことを聞かない
包帯は、染みが拡大したり新しいのができたりでさらに紅くなっていた
――寒い
――冷たい
――苦しい
――寂しい
いつも手の中にあったぬくもりが、ない
もう、滑り落ちてしまった
大切だったはずなのに、当たり前すぎて忘れていた
失ってから気付くなんて、遅い
遅すぎる。酷なほどに
「珊瑚・・・・すまん・・・・」
届くはずがない
それでも、ポツリと出た謝罪の言葉
それは自分へのいましめか、それとも後悔か
体が重く、まぶたも重い
ゆっくりと、静かに、目を閉じる
(地獄でも何処でも連れてってくれ・・・)
そのとき、温かな何かが、優しく身体を包み込んだような気がした。
懐かしい・・・この、感じは・・・?
「――っ!?」
俺は、目を覚ました。
冷たい土に、濃紺の夜空、漆喰の壁
(生き、てる・・・)
頭がボーっとする
すこし貧血になっているみたいだ。
「龍馬、起きた?」
「珊瑚・・・・」
気付くと傍らに、巫女服の少女がいた。
体育座りしながら、戦いを見守っている
「――お前、知ってたのか?兄貴が・・・お前を、人間にしたかった・・って」
紫の双眸が、火花を散らす2対の巨人を見つめる
翠のたてがみを揺らす巨人が、金色の機体を圧倒している
「いままで、私が会った術者は私をただの道具として扱ってた…私を人間として
扱ってくれたの、龍馬たちが初めてだったんだよ」
遠い目をしながら、珊瑚は続けた
「私、しばらくしてから考えてたんだ。人間だったらいいのに・・・なんで私、本なんだろう・・・って、ずっと――」
ぽつりぽつりと、嗚咽交じりの声が聞こえる。
「・・・そんなの、関係ない」
自然と、口が動いていた。
「お前は・・・俺の唯一のパートナーだろ、いままでも、これからも――」
ゆっくりと起き上がりながら、続ける
「人間だろうが本だろうがどうでもいい、俺はお前が居ないと・・・ダメなんだ」
珊瑚は、そっと俺の胸に顔をうずめ、嗚咽の混じった声で呟いた
「龍馬――大好き」


建物を巻き込んで倒れたイオドエクセルは、ピクリとも動かない
「・・・やったか!?」
「あ・・・が・・は・・・ハハハハハハハハハ!」
いたるところが破損しているというのに、イオドエクセルは派手に高笑いをした
なんだ、機能がおかしくなったのか?
「ソノ・・・・からだ・・・・ヨコセエエエエエエエエエエエエエエエエ!!」
突然、イオドエクセルがいくつもの帯となって、デモンベインに絡みついた
それは俺達が受けた魔力吸収に良く似ている
「まずい・・・彼奴、デモンベインと妾たちをのっとるつもりだ!」
魔術文字がデモンベインの機体をかけめぐり、その姿を徐々に銀色から金色に変えていく
コックピットの光景が、蒼から金色に変わっていく

俺は一瞬、ウェストが作ったパチもんデモンペインを思い出した。
・・・あ゛−嫌なもん想像しちまったっ!!

ともかく、こんな奴にデモンベインをのっとられる訳にはいかない!
――疾らせろ、巡らせろ、自分の理解を
探せ、探れ、『黄衣の王』を 龍馬の兄貴を

・・・こいつだっ!!

デモンベインコクピットにも流れ込んできた魔術文字
その一つを強引に引っ張り出す
すると、その魔術文字から人の腕が飛び出てきた。
そのまま引っ張ると、それは浅葱の袴を着た青年だった。
こいつが、龍馬の兄貴だろう
「あとは・・・そこだぁっ!!」
イタクァの弾丸をある魔方陣に向けて撃つ
メキッという板が軋んだような音とともに、デモンベインの色が一気に元に戻る
デモンベインを侵食していた光の帯が、イオドエクセルを元の位置に再び構成した
「ば・・バカな・・・!」
「あんま人間なめんじゃねぇよ、黄ばんだ紙クズめ」
その一言に、イオドエクセルの機体が僅かに後退した
「姫さん!レムリア・インパクトを!」
「了解っ!ヒラニプラシステムを発動、言霊を暗号化、ナアカルコードを構成せよ!――ナアカルコード、送信!」
モニターの向こうには、未だに浴衣姿の姫さんがいた。
急いできたのか、着乱れていてすこし色っぽい
「何鼻の下を伸ばしておる九郎! 一気に決めるぞ! ナアカルコード受信確認、術式解凍!」
デモンベインの全身が淡く発光する
後方に浮かぶ五芒星

光り射す世界に 汝ら暗黒住まう場所無し――
渇かず飢えず 無に還れ!
「レムリア・インパクト!」

デモンベインがその右掌をイオドエクセルに叩きつけた
異界の無限熱量が金色の機体を闇へと包み込む
「昇華!」

「―――――!」

最後の声は、もはや声とも呼べぬ断末魔だった
シティを騒がせていた根源『黄衣の王』は今、完全に消えたのだった.

to be continued


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