機神咆吼デモンベインSS
『魔導探偵でござる』

by うぇんでぃご。

<プロローグ>
 ここは知る人のみぞ知る、我が探偵事務所
 その寂れた事務所に来客が来た。
 覇道財閥総帥、覇道瑠璃こと姫さん直々のおでまし。
 その用事は当然のごとく、俺達にとっては嬉しい内容。
「――仕事の依頼です。大十字さん」

「えーっと、つまり・・・この「大江戸サムライシティ」の怪奇事件を調査して欲しいってことか?」
 姫さんたちの話を聞き、資料に一通り目を通した所でテーブルに紙の束をおいた。
 調査書自体は少なめだが、そこに書いてある内容は驚愕的なものだった。
 なんでもアーカムの一角にある「大江戸サムライシティ」
 極東の島国の歴史的な文化を一同に集め、日本の文化を楽しむ事ができる一種のレジャー施設だ
 そこで今、不可解な事件が連続しておきているらしい
「なぜ英語圏のど真ん中にそんなレジャースポットがあるのだ・・?」
 もっともなのだが主旨が違う質問を投げかけたのは、俺の相棒、魔導書「アル・アジフ」
 ソファの上で腕と足を組み、どっかりとした態度で居座っている。
 その質問に、表情を変えずに覇道家の執事、ウィンフィールドが答えた。
「大旦那様の考案です。大旦那様は日本の出身なので、アーカムシティが波に乗り出した頃ご建設なさったのですよ」
「そういえば・・・大十字さんは日本の出身でしたか」
 俺への最初の依頼のときの調査書を思い出したのか
 姫さんはややぁといった風に言った。
「ああ、まぁな・・・でも姫さんも日本出身だろ?」
 その質問に、わずかに顔に暗い影を落としながら瑠璃は答える。
「いえ、わたくしはこの町で生まれたので日本には数回しかいったことがありませんわ」
「あっ・・・わりぃ、やなこと聞いちまったな」
 場に流れる重い空気。
 う〜ん――気まずいなぁ
 やがて、その空気を払うように、アルが報告書を読みながらしれっと言った。
「小娘、この事件の目撃証言、間違いはないのだろうな?」
「・・・全くっ!場の空気を読まない冷酷な紙束ですわねっ!」
「間違いはありません。我が覇道財閥の情報網を駆使した、確かな情報だけをまとめてあります」

 そこに記されていた事件の全貌――
 事件の最初の犠牲はシティスタッフの女性
 夜に、宿泊用の施設から本部のセンターへ戻る道中で殺された。
 その死体は、まるで命そのものを奪われたように骨まで干からびていたという。
 それから同じような犯行が現在までに15件ほど起こっている。
 事件が行われるのは決まって夜。毎晩に一人ずつだ。
 しかし襲われる人物に共通性は見当たらず、操作は難航していた。
 そしてある時から、妙な噂が流れ始めた。
 “化け狐”
 なんでも、夜のシティに金色の尾をなびかせたキツネが夜な夜な人の命を喰らっているという。
 だが、その目撃証言らしきものが出た日と犯行時刻は確かに一致していた。
 真夜中に江戸の町を駆け回る金色のキツネ・・・
 今のシティはその噂で持ちきりらしい。

「おいアル、これってやっぱ・・・」
「うむ、魔術師に間違いないな」
 報告書を読み終えたアルが断言する。
 魔術師となれば・・・やはり『ブラックロッジ』の一員か
「放っちゃおけねぇよな。やっぱ」
「うむ。この干からびているというのは恐らく生命力を根こそぎ吸い取っているのだろう。だとしたら何か強力な魔術を使役しようとするかもしれぬ」
 そういわれて、俺はこの前のインスマウスで起きたダゴン召還を思い出した。
 奴らは『実験』と言っていた。ならばこの土地でも何かしようとすることも十分あり得る。
「よし。姫さん、この仕事引き受けるぜ」
「・・・わかりました。お願いします大十字さん」
「私からもお願いします。大旦那様が残した土地・・・なんとしても守ってください」


 その頃・・・
 アーカムのはずれの一角、青年がこめかみを抑えてうずくまっていた。
 東洋の顔立ちの凛々しい青年だ。
 その手には一冊の本が握られている。
 本を掴む左腕は、もがくように震えていた。
 額に脂汗を浮かべた青年は苦しそうに呟く
「まだだ・・・私は、使命を成就・・するまでは、グ・・屈したりは・・しないッ!」
 その叫びをあざ笑うかのように、手の中の本は妖しい輝きを――金色の光を発した。
「ギギっ・・・!ぐがあああああああああ!」
 森の中に響く声は、決して誰の耳にも届かない―――

 同刻――
 一組の少年少女が、導かれるようにアーカムシティへ降り立った。
「間違いない・・・この街にいる」
「うん、鈍感な私にもわかるよ。しかも前より強力になってるみたい・・・」
「急ぐぞ、もしかしたらもうなにか事件になっているかもしれない」
「うんっ」

 役者はそろい、舞台も整った。
 物語の時計は密かに動き始める・・・・・

1.<江戸浪漫の旅>

「なんだか・・・懐かしいような違和感があるような変な感じだな」
 灰色の着流しに身を包んだ俺は、町並みを見ながら呟いた。
 傍らには長髪を結い上げ、空色の着物を着たアルが珍しそうに周囲を観察している。
 最初、その姿に見とれた俺に「欲情するなよ」と言ったことはお約束。
「おお!九郎、立ち食いそばだぞ!あっちにはみたらし団子も!」
 って、なんでひたすら食い気に走るかなこいつは
 だがそういう俺も飲食店にばかり目が言ってしまう。
 尺だが・・・仕方がない。

「アルは日本に来たことなんてないよな?」
「うむ、妾はこのような文化は初めてだな。なかなかおもしろい所ではないか」
 アルがさっき買ったみたらし団子をぱくつきながら呟く。
「ん〜っ・・この服って結構動きにくいのね〜。とくに胸の辺りが・・・」
「サムライサムライ―!」
「切り捨てごめん−!」
「(きょろきょろ)」
「・・・・って、なんでライカさんとガキンチョどもが以前と同じく当然のようにいるんだぁーっ!!」
 インスマウスの時と同じく、俺の周りには教会の四人が当然のようにいる。
 その叫びに、紺色の着物を着たライカさんが当然のように答えた。
「楽しいことは皆で分け合うものです。九郎ちゃんとアルちゃんだけで行くなんて不公平よ」
 そして、ほぼ睨むような目つきで一言
「それとも、私たちと一緒よりアルちゃんと二人きりのほうがよかったのぉ?」
 ・・・はい、すいません。負けましたよ。
 俺は諦めて町並みに視線を戻す。
「うおりゃーっ!」
 ――ドスッ
 突然、俺の背中辺りに、固いものが勢いよく突きつけられた。
 見ると、新撰組の格好をしたジョージが俺の背中に向かっておもちゃの刀で渾身の刺突を繰り出していた。
「お命ちょうだいっ!」
「ゲフゥッ!!」
 続けざまに、俺の横っ面に同じ格好のコリンが刀を振る。
 隣では、萌黄色の着物を来たアリスンがおどおどと立っていた
「が〜〜〜〜っ!この糞ガキどもっ!貴様らは縛り首にしたあと煮立った油に突っ込んでゴエモンよろしくこんがり唐揚げにしてくれるわっ!」
「「にげろ〜っ!!」」
 外に来ても、このやりとりは相変わらずである。
「ん?どうした?」
 難しい顔をしたライカに、アルが語りかける。
「うん、今気付いたんだけど・・・たしか新撰組って京都だったわよねぇ?」
「覇道鋼造の勘違いではないか?」
「さぁ・・・?」
「というか、なぜ汝がわかるのだ」
「・・・・・(汗)」


「大十字さん!やって来たからにはちゃんと仕事をしてください!」
 むすったれた姫さんがすっかり観光気分の俺達を責める。
 だが、しっかり自分も名前と同じ瑠璃色の着物を着ていた。
 周りには執事さんと一人のメイド。
 今回はオペレーターの三人ではなく、いつも紅茶を持ってくる稲田というメイドだった。
 手にもった日本刀だけが、この街に合っている。
「だがな小娘、化け狐が出るのは夜だ。それに確固とした目撃証言が得られない今は、夜まで待つしかあるまい」
「そうだぜ姫さん、こういう体験なかなか出来ないぞ?」
 そう言って俺は近くの甘味どころを指差した。
「ほら、緋毛氈に日傘、そこでお団子とお茶を楽しむっていうのもなかなか風流だろう?」
 だが、そこに座っている人物を見た俺は笑顔が固まった。
「う〜ん。やはり団子はゴマがいちばんなのである。 ズルズルズル〜っ(お茶をすする音)」
「博士、そういう抹茶の飲み方は無作法ロボ。・・・・あっ」
「「あっ」」
 見事に、変態科学者と俺の声が重なった。
 そこにいたのは変態科学者ドクターウェストと人造人間のエルザだった。
 ウェストは青色の甚平を身に着け、エルザは山吹色の着物を着ている。
「なななななにぃ!そこにいるのは我がにっくき宿敵、大十字九郎!アルアジフ!まさにアーカムの恨みを江戸で晴らすなのであるっ!」
「それを言うなら『江戸の仇を長崎で討つ』ロボ。順番が逆だロボ。つまらねぇことわざ使うんじゃねぇロボ」
「つーか何でてめぇらがこんな所にいやがるっ!まさか今回の化け狐事件もてめぇらの仕業か!」
「化け狐?そんなセンスの無いこと我輩がするわけなかろう!今回は我輩の誕生会をかねた社員旅行である!」
「た、誕生会だとぉ!?てめぇ今何歳なんだよ変態科学者!」
「よくぞ聞いた!今の我輩はぴっちぴちのハタ―「たしか今年で齢43歳ロボ」
 ウエストの年齢査証を遮ってエルザが暴露した。
 ・・・意外とオッサンだな」
「それ、お前にだけは言われたくないと思うぞ」
 いくらなんでも約1000歳が43歳にむかってオッサン呼ばわりは変だと思う。
 その言葉が強烈だったのか、ウェストは路上でしゃがみながら「の」の字を地面に書きつづけていた。
 時折「まだぴちぴちなのである・・・」という音が聞こえるが無視する。
「さぁダーリン!邪魔者は撃沈したロボ!エルザと一緒に今晩は悪代官プレイで一夜を過ごすロボよっ!」
「だからなんでそういうマニアックな知識しか身についてないんだっ!」
「吹き飛べ、不届き者がっ!」
 ――ズドォーン!
 アルの放った魔力弾に、ウェストとエルザは100mほど先の水掘へとふっ飛ばされた。
 ・・・もう会わない事を祈る。

 こうして、大江戸シティでの時間は過ぎていった―――


 アキコは今日、とても疲れていた。
 なにしろ今日団体で来たお客様の宴会の接客が大変だったのだ。
 なかでも一番ひどかったのがまだ20になっているかわからない女性だ。
 すでに一升瓶をラッパ飲みし、周りのほかのお客様はまるで殺人犯でも見るような目(二人ほど除く)でその女性をみていた。
 あとで聞いた話だと、その女性は覇道財閥の総帥だというから驚きだった。
(今日は早めに帰って寝たいなぁ・・・)
 ふと、道脇に見慣れない光景があった。
(なんだろう・・・花火?)
 そこには、煌々とかがやく金色の光があった。
 正確には金色の光を放つ物体が、こちらに向かってきていた。
 その光景に、社内で聞いた噂を思い出す。
 “化け狐”
(〜〜〜〜っ!?)
 気が付くと、女性はもう本能で逃げていた。

(――っ!?なんだ、この気配はっ!?)
 夜、やっと姫さんの酒盛りから開放された俺達は部屋に戻った直後、莫大な魔力を感じた。
「っ、九郎!」
 アルも気付いたらしく、俺に目配せする
「ああ、この馬鹿でかい魔力・・・間違いねぇ、魔術師だ!」
「行くぞっ!」
 すぐに窓を開け、マギウスとなり夜の町へ飛び立つ

 その頃、大江戸シティの一角
「・・・来た!」
「この魔力・・・間違いない、行くぞ」
「了解っ」
 すると、少女の体が変化し、巨大なカラスへと変化した。
 少年はその足に捕まり、金色の光へ向かって飛び立った。

 to be continued・・・・


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