デモンベイン&リリカルなのはSS
機神飛翔リリカルベインA's-Strikers
 〜ミッシングリンク〜 改訂版

by アンヅ♂

「さて………… 粗方の準備が整ったところで、この術の初歩段階の準備に入るとしよう。では、今日は助手である我が主、九郎よ。患者をここにつれて参れ。」

「へいへい………… 」

白衣に小さな丸眼鏡と一本三つ編みといった出で立ちのアルさんに、同じく白衣で瓶底眼鏡をかけて髪をぼさぼさ頭に変えられた九郎さんが私の乗った車いすを押して、私の知らない形の魔法陣が画かれた中央にあるベットへと移動させる。さっき、九郎さんに聞いたのだけど、アルさんはなにかと形から入りたがるとのこと。


Episode-0 Phase-3


さっきこの病室に入ってアルさんの準備を見学していた時だった。

「こういった大手術をするのだから、女医のふん装は至極当たり前。そして、女医には助手。よって、今回九郎は妾の助手としてこの格好をせよ。」

アルさんが魔法陣を描きおえた辺りで、急に駆け寄ってきて、私に術の準備とか心構えを教授していた九郎さんとこに来てそう言った。もちろん、九郎さん、

「いきなり、なんだよそれ聞いてねぇって! だいたい術は手伝うとは言ったがそんな恥ずかしい格好するとまでは言ってねぇ! つうか、そのいかにも悲しみに装う様に子犬が懇願するような目で見るのは止めい!」」

と反論。でも、九郎さん口げんかは弱い上にアルさんにはとことトン甘いらしく、ものの数分もせずに陥落。で、しぶしぶ今の格好。だから、四六時中すごい嫌そうな顔してるから、とても、

「似合ってますよ。」

とは言えないわけで………… だって、本当に似合ってるんだもん。でもそれ言ったらたぶん間違いなく、九郎さん部屋の片隅で体操座りでいじけそうなんだもんな。ここにヴィータちゃんやシグナムさん居なくて良かった。まず間違いなく、私が思ったセリフは言ってると思う。まぁ、九郎さんって、かっこいい処あるのに普段はてんでおっちょこちょいで子供っぽい。だから、女の子としてはちょっとからかいたくもなっちゃう処なんだけどね。それはまたの貴会にしておこう。今はこっちに集中しなきゃね。

「さて、始めるとするぞ。」

そういって、ベットの寝かされた私を不敵に笑って見つめるアルさん。なんか、あれだ………… マッドサイエンティストに改造されようとしてる昔のヒーローさんみたいな気分になる。

「ははははは………… お手柔らかにお願いします。」

ちょっと引きつった笑いを浮かべる私。

「おい、アル………… そんな顔してると患者のなのはが不安がるだろが、馬鹿ちん。変なスイッチ入ってんじゃないのか? おまえ、格好から入っては性格もつられるからなぁ。」

と大きな八角形の鏡を持って、ため息をつく九郎さん。

「ふん………… いらぬ世話だ。」

そう言って、すこし頬を赤らめるアルさん。あ、やっぱりちょっと悦に酔ってた? 
気を取り直すように咳払いをすると、

「さて………… では改めて、なのはの魔力神経を治療する術を始めるとしようか。」

そう言って、真剣な表情に変わるアルさん。

「はい、お願いします。」

私も真剣に返事を返した。

「では、まず精神を壊さぬためにお前の体と意識の時間を止める………… 開け、我がページ。彼の者の刻を写し、止めよ。『ド・マリニーの時計』」

アルさんがそう呟くと、まるで何かがストップボタンでも押されたかのように私の意識が急停止した。後はどうなったのかは、術が終わるまでの記憶はない。



なのはの体の上で、アルの右手が金色に光り、何かが舞う。それと同時になのはの動きが完全に止まる。

「さて行くぞ、九郎。お前が持っている鏡を術でなのはの体の上に水平に置け。魔力を通してからな。おい、ぼけっとするでないわ!」

一瞬、訳がわかっていないのか呆けている九郎。アルがそれをどぎつく睨む。それで何かを察したのか、慌てて何かを唱え始める九郎。鏡は九郎の前で、宙に浮くと回転を始めてなのはの体の上に滑るように移動して停止する。

宙に停止した鏡を見つめるアル。そして、もう一枚鏡を取り出すと九郎が唱えたモノに似た呪文を唱える。また鏡が同じ動きを始める。ただ違うのは今度は鏡面が九郎のモノとは反対に上に向いている事。

「九郎………… 次はバルザイの偃月刀多重投影して、魔法陣を強化。」

「了解………… バルザイの偃月刀、多重投影。ヴーアの無敵の印において、力を与えよ。力を与えよ………………………… 」

九郎がアルの言葉どおりに動き、多くの偃月刀を呼び出し、アルが画いた魔法陣を取り囲む様に配置させる。そして呪文を繰り返し詠唱。それに答えるように魔剣は周り、周囲との隔離を開始する。



「なんちゅう、魔力の上げ方や………… 」

九郎達の術を目の当たりにして、はやてが息を飲む。

「こりゃぁ、ひとっ刻も目を離せへん。」

後ろに控えているシャマルも同じ思いだ。

「まさしく、ロストロギアに勝ると劣らない術式。足りないモノを外界から取り込み、それを自分の魔力に変えている………… 似た術はいくつも知ってるけど、これほどの大容量は見たこと無い。」

この世界においては、失われた呪文。シャマルの意識とは別に、根本に残るプログラムの一部が無意識に働こうとし始めた。その時、

【やめとけよ………… いきなり全てを理解しようなんてすれば、お前の意識が根本から汚染されっちまうぞ。】

厳しさと優しさがあふれた声が頭に響く。シャマルの意識が覚醒する。ハッとして、その声の主を見る。

視線の先には目をつぶって印を組む九郎の姿。右目だけ薄目を開けてシャマルを見ると、口元だけで笑う九郎。

【そんなことしてぶっ倒れちゃ、はやてが泣いちまうぜ。】

今度はおちゃらけたような声が響く。続いて、

【だが、どうしても知りたいのなら、覚え写し取ろうとするな。ん? お前、風の属性もってるか?】

九郎の声にとっさに、

[は、はい。]

と返事してしまうシャマル。

【そうか………… なら、風の声を聞け。オレが吹き起こす風の声を聞いて、その流れに意識を乗せろ。流れに意識を任せ、理解しようとせず、流れる風と共に術から流れ出る風の中から術の輪郭を感じて学べばいい。そしてそこから組み上げろ。君ならそれが出来るはずだ。】

[ヮ………… わかりました。]

シャマルは九郎の言葉に従い、回転する刃の巻き起こす風に己の魔力と共に意識を乗せる。

【その魔力流れの中で、術の根源を………… その流れを感じろ。けして、流れに抗うな。】

九郎の指示に従うようにシャマルの魔力が風に乗り、辺りを包み始める。

「シャ………… シャマル?」

はやてが驚いてふり返るが、シャマルの意識は今は風の中。うつろな目で術を施すアル達を見つめている。

アルが術を施しながら、

【こら、九郎。】

【ん? なんだ、アル。】

互いに眉すら動かすことなく、術を続けながら念話で会話を続ける二人。

【お前………… 一体何をしておる。あのような助言などしおって………… 】

【いやな。覚えたそうだったし、あのままじゃ逆に危なかったからな。】

【ふぅ………… まったく、そのお人好しも互いにせよ。あまりこの世界に我らの痕跡は残さん方がよいのだぞ? 後の未来のためにはな………… 】

【そうは言っても、学べる処は知っていてもいいんじゃないか? あいつらの記述とかじゃないんだ。知って悪い事じゃない。むしろ知っておくべきだ。このせかいの住人は特にな。】

アルは九郎の言葉に心でため息をつくと、

【まぁ、見て盗むだけであれば、さほどの干渉にはならんかな。】

そう呟いて、術に専念するアル。九郎は魔法陣の強化を施しながら、口元に微笑みを浮かべた。

【さて、これからが一仕事だ。肉体と精神対の分離。そのまま、精神対のさらなる分離。強化に補助に精神防御と時間制御。術式の多重使用だ。いくぞ、九郎!】

【おう! まかせとけ!】

二人の意識がリンクして、術の施工に入った。

背面で合わさって宙で制止する二つの鏡。鏡から光がなのはの身体に当たる。次の瞬間、鏡を中心として、なのはと鏡の距離と同じ間隔で、なのはの身体がもう一つ浮かび上がる。その姿はホログラフの様に半透明でユラユラと揺れていた。ベットの前にいたアルがそれを確認すると、胸のまでなにから手を複雑に動かし始める。すると合わせ鏡が少しずつ離れだし、互いに反対方向で回転を始める。鏡が半透明の身体とベットに眠る身体に拳が1つ入る程度まで近づくと、その鏡と鏡の空間にまるで何かの人体模型かのような輪郭を持ったモノが浮かび上がる。その模型のような透明なシルエットの中には小さな玉と大きな玉が光る糸のようなモノでつながり、透明な身体を隅々までつなげていた。

胸の玉の付近に光る星のようなモノが見える。術の施行を凝視していたはやてが呟く。

「あれ………… リンカーコア? 」

見知っている訳ではなかった。ただ、直感的にあれが【リンカーコア(魔力素体)】であるとわかった。

「そんで、あの金色の糸が【魔力神経】なんや………… 」

はやては眼を懲らして、それを見つめる。自分の立ち位置では何がどうなっているのかは判らない。ただ、感覚的にだがあの糸に不自然な流れが有るというのだけはわかった。

「頼んだで………… アルさん。九郎さん」

手を力一杯握ってはやてはそう呟いた。術の施工はクライマックスを向かえる。




術は成功した。アルと九郎からは安堵のため息が漏れ、はやてとシャマルからは歓声が漏れる。

「おつかれさん、アル………… 」

「うむ。」

大きく息を切らせるアルの方を九郎が優しく抱きしめる。アルが満足そうに笑みを浮かべる。ベットの上に横たわるマネキンの様に動かなかったなのはの眼に光が戻る。

「ふ、ふぇ?」

意識を取り戻し、目をパチパチさせるなのはの視界に、はやてとシャマルの顔が見える。

「どうなん? どうなん? なのはちゃん。」

まるではしゃぐ子供のようにはやてが声を掛ける。

「はやてちゃん、なのはちゃんもまだ意識が戻ったばかりなんですから………… 」

やや興奮気味のはやてを押さえるように諭すシャマル。まだ、状況がつかめずすこしボ〜ッとしたなのはが自然にむくりと起きあがる。シャマルとはやてがそれを見て、眼を見開き笑顔に変わっていく。疲れ気味のアルは口元だけを上げて満足そうに笑う。九郎もそれをみて嬉しそうだ。一瞬、なんで4人が自分をみてそんなに嬉しそうなのか判らなかったなのはであったが、やっと自分の状態に気が付く。

「痛くない………… あんなに動かすたびに酷かった痛みが無い。普通に………… 普通に動けるよ、はやてちゃん! シャマルさん!」

目を潤ませて歓喜の声を上げるなのは。はやてとシャマルが抱き合って喜び合う。九郎に支えられて、アルがなのはの横に来る。

「魔力神経は完全に修繕した。あとはこの二ヶ月で退化した筋力等をリハビリするだけだ。お前の根性なら後、3ヶ月くらいで完全に完治するであろう。」

「ありがとうございます、アルさん! 九郎さん!」

本当に嬉しそうに泣きながら、礼を述べるなのは。

「いいって、そんな対したことしてないんだ。これだけ上手くいったのはなのはの素質もあってこそだ。オレやアルはそれにちょっと手助けしただけだしな。」

「かなり、お節介はなはだしい【ちょっと】ではあるがな………… 」

九郎の言葉に、嫌みが少し入ったつっこみを入れるアル。九郎が不満そうに半目になる。

「そやで〜………… あないな偉業やっといとちょっと言うんは、九郎さんくらいや。」

はやてが九郎とアルの前にそう言いながら歩み寄ってきた。そして、真顔で二人を見つめ、深々と頭を下げた。

「お二人にはほんまになんていったらえぇか、わかりません。なのはちゃんの友人として、そして、時空管理局の同僚として、なのはちゃんを心配してくれる人の全員に成り代わり。お礼を言いたいです。ほんま…………、ほんま、ありがとうございました。」

そういっていつまでも頭を下げ続けるはやて。たぶん、礼など言っても良い足りないのか頭を上げようとしない。そんなはやてに九郎が近づき、しゃがみ込み、

「ほら………… 仮にも管理局のえらいさんが一介のもぐり風情にそんな頭さげるなって…………な。 」

そういって、顔を上げたはやての顔を見つめ、極上の笑顔を見せる。それははやて、なのは、シャマルもなぜか赤面してしまうような甘い、やさしい笑みだった。アルがなにかを感じたのか、ツカツカと歩み寄って九郎の頭を押さえ込むと、ぎりぎりと九郎の頬肉をつねり出す

「その程度にしておけ、どのみち、こやつと妾のお節介だ。礼を言われる筋はない。」

「でも………… 」

「でももへったくれもないわ。良いと言ったらよい。それ以上は聞かん。」

そういって、九郎をひねりながら横にそっぽを向くアル。

「それでもやっぱ、ありがとや。アルさん、九郎さん………… 」

そう言って、もう一度頭を下げるはやて。自分の友人で、恩人でもあるなのはを救ってくれたのだ。礼はどれだけ言っても言い足りない。アルは相変わらずそっぽを向いている。元々、礼など言われ慣れていないから恥ずかしくてしょうがないのだ。九郎はひねられたほっぺたをさすりながら、

「そういや、シャマルちゃんだっけ? 術は覚えられたかな?」

「え? あ………… え〜………… その〜………… あの〜、ですね。」

九郎の問いかけに、一瞬、とまどったシャマルだったが、歯切れの悪い返事を繰り返し始める。

「術って………… もしかしてシャマル、あの術覚えられたん?!」

はやてがすばやい転身でシャマルに食らいつく。

「い、いえ、覚えるのはちょっと………… ただ、その、なんというか………… 」

はやての迫力にたじたじのシャマル。はやては見て覚えるつもりだったが、あまりに術が複雑で高度なため、覚えきれなかったのだ。

「ま、一見程度ではそうだろうな。だが、娘。術の流れは完全に把握できてであろう? なにせ、九郎が上手く導いておったからな。」

アルが含み笑いを浮かべてそう呟く。はやてが素早く反応。

「ちょ………… なにそれぇ?! どういう事? ちょ、九郎さん、シャマル!」

はやての剣幕に、九郎とシャマルが困ったように引きつった笑みを浮かべる。

「まぁまぁ………… 落ち着いて、はやてちゃん。」

なのはがはやてをなだめる。

「そやかて、なんか不公平やんか。同じ様に見とったうちにはなんも教えへんで、シャマルには教えてるって言うんは!」

はやての収まらない憤りは宥めたなのはにも止めることはできない。苦笑いでそれを受け止めながら、

「とりあえず、話は聞こうよ。たぶん、理由はあるはずだからさ。」

そういって、ちらりと九郎の方を見つめるなのは、九郎は短く笑うと、

「単欠に言うと、属性の相違ってやつなか? ほら、その子………… シャマルちゃん、治癒系とか、補助術が得意だと思ってさ。魔術の流れが「風」だったし………… 術強化のために使ってた術とあの場で上手くリンクできそうだったのが、彼女だった。からかな? まぁ、彼女自体も術を見たがっていたわけだからさ。それに見方が危なかったから、見るに見かねて………… ね?」

「なら、うちにも教えてくれてもええやないですか。うちはシャマルのマスターなんやし………… 」

頬をふくらませて講義するはやて、すると、

「汝の術は遠距離攻撃、遠隔発生、広域攻撃を主体とする後方支援魔術である言っていたであろう? 勉学熱心なのは感心するが、あの場で九郎がその娘を選んだのは正解だ。なにせ、妾の記載されし術は初見全てで身に付く様なモノでは無い。適正が無ければ覚えるどころか、身体の害にしかならんと言う代物だ。現にその娘も覚えたのではなく、流れが判っておる程度だ。術その物は身に付いておらん。」

そうアルが提言する。はやては目をパチパチまたたたき、ゆっくりとシャマルを見つめると

「そうなん?」

と短く聞き返す。シャマルはコクリと頷くと、

「はい………… 九郎さんに術の流れの読み方を教わったので、なんとかアルさんが施工している術の流れと外郭とかは読めたのですが、その本質が何であり、どういう術式で、基本プログラムがどういった詳しい構成がなにかはわかりませんでした。比喩的に簡素にまとめるならCGで表した古代生物とか建造物の想像図ができてるといったかんじでしょうかね。それを現実に仕様したりする際の差異とかは対処出来ない。似たようなモノは別の形で創る事はできますが、その術自体を表現したり、創り出すことはできない状態です。」

「なんや、そっかぁ………… 」

申し訳なさそうなシャマルに、はやてが落胆したように頭を下げる。

「そう悲観的になるな。術の途中で九郎が誘導したからこそ、その娘も無事なのだ。それに輪郭とは言え、そこまで判ったのならば、妾のように魔力神経を治すことはできずともどこが破損して、どの様に自己修復に至る長期治療すればよいかといった事は自ずと判ろう。」

ニヒルな笑いを浮かべるアルに対して、シャマルが答える。

「はい、たしかにアルさんの言うとおりですね。あのまま、九郎さんが注意してくれなければ、私も術の余波で自身構成に欠落をきたしていたかもしれませんから…………最悪、消えていたかもしれません。 それに流れが読める程度といっても、魔力神経でしたっけ? その存在を知り、その魔力の流れ方が読めるというのは今までに比べれば格段の進歩であることには変わりないです。逆に通常の診断に意図的にそちらを診ることにすれば、なのはちゃんのような症例無くす予防にもなります。」

と端から聞いていれば、多少危ない発言が入る。はやてとなのはが、

「ちょっと?! 内容的に聞き流せないような事、さらりと流すようにそんな話しないでくださいよ、アルさん。」

「ちょい、さらりと危ない話せんといて、シャマル。消えとったって、どういう事?!」

と慌てる。間違えていたら、関係ないモノが死んでいたかもしれないと言うのだからそれは慌てるだろう。だが、二人以外は特に慌てるような節はなく、逆に慌てる二人を見てほほえましく笑っていた。そこへ、はやてが持つ端末からエマージェンシーコールを表す音が鳴り響いた。

シャマルとアルさんの言葉聞いて、慌てるうちとなのはちゃん見て笑ってる九郎さんたち。ほんま、ちょっと人悪いで………… あないなことサラリと言うもんちゃう。しかも慌てるうちらを完全におもしろがってるのがなお悪い。ちょっと抗議したろう思うとったら、緊急用の端末が鳴り出した。うちは直ぐに端末を開ける。写ったんはエイミィさんやった。

「どないいしたんです?」

『大変よ、はやてちゃん! とにかく、これを見て!』

慌てるエイミィさんが有る映像をデバイスに送ってきた。その映像にうちは愕然とする。

「なんや………… これ。」

そこに映っていたのは、ウチが最も見慣れた者の姿やった。

「なんで………… なんで、リインと同じ顔の奴がおるん?」

そこに映っていたのは、初代リインフォースと同じ顔をして、大きな蛇と同化した怪物やった。

「どうしたの? はやてちゃん………… っ! これって。」

ホログラフスクリーンに映っていた者を視て、シャマルも驚く。驚くなんてもんやない。有り得ない者を視たといったとこや。そりゃ、そうやろ………… だって、

「あの子のわけ………… 有るわけないやないか。」

ウチは画面を見つめながら止まってしまった。九郎さんとアルさん。それになのはちゃんが画面をのぞき込む。

「っ! はやてちゃん、これ!」

なのはちゃんもシャマルと同じ反応や。

『ごめんね。こんなの見せて、だけどこれ………… 第77観測世界の映像なの。いきなり、大きな波動が現れたと思ったら、突然出現したの。なんとか近くに居た別部隊と、ちょうど研修に行っていたフェイトちゃんが現場に向かってる。けど、こいつ一体だけじゃなかった。』

エイミィさんがウチらの心情を気遣いながらも話を続けてくれる。画面がいくつか開き、さっきのと同じかで融合した動物が違うのが数体映る。

『おそらくなんだけど、ここ夜天の書のマスターが居たって言う記録があるの。もしかすると何かの形でデットコピーみたいなのをストックしていたのかもしれないらしいのよ。』

エイミィさんがそんな説明をする。

『夜天の書』のデッドコピーが何かの形で復活してもうた………… うちがマスターになるまでに多くの犠牲とマスターを飲み込み、『闇の書』といういまわしき忌み名で呼ばれ続けた魔導書や。その長き経歴の中でそういった輩のもとにおったとしても不思議やない。そんなことを考えとったら、九郎さんが、

「おい、はやて………… 今、こいつと戦ってる奴らをもっと増やせないのか? それかもっとレベルの高い奴を投入しないとやばいことになるぞ?!」

横から、そんなことを言ってきた。

「なにが、やばいんですか?」

うちには九郎さんが言う『やばい』の意味がわからんかった。そりゃ、なにかきな臭い感じはしとったけど、

「おい、気づいてないのか? こいつら、暴れながら互いにある一点に集まり始めてる。まるで互いを求め合いようにな。この地図に載ってる進路経路を視てみろ。」

そういって、画面上の地図に指さす九郎さん。たしかに、バラバラに動いてはおるけど、徐々に行動範囲が狭まってきてるのはわかる。うちがまだわからんと言わんばかりに九郎さんを見る。エイミィさんは途中で出てきた九郎さんに驚いてる。

「やっぱ、お前のレベルじゃ画面越しじゃ気がつかないか。いいか聞け。こいつらはお前さん達が言うなにかやばい奴のデットコピーなんだろう? どうもその中に他になにか大きな力を取り込んでるみたいな奴がいるみたいだ。そのエネルギー体本体を持つのはこの数体の内、一体のみ。さすがに、どれかはオレもわからん。他の奴らは、その一体からお互いにつながる何らかの回路で流れ込んだ余剰エネルギーか何かで出来た奴らだろう。一体一体はめちゃくちゃ強くはないかもしれん。けど、もしそいつらが互いの破損を補いながら合体なんかしたらどうなると思う?」

その言葉に、ウチも、エイミィさんも、シャマル、なのはちゃんもハッとする。そいつはやばいなんてもんじゃない。いつの時代かはわからんけどコピーって事は、ウチらが先代リインフォースを犠牲にしてまで元を断った『自己防衛プログラム』持ってると言うことや。九郎さんの言うとおり、今一体一体は欠損箇所の激しいデットコピーやけど、それが数体集まって足りん部分や無い部分を補って修復してしまったら………… 

「『闇の書』の再来………… 」

シャマルがそう呟く。皆が一気に動く。

「エイミィさん! なんとか、そいつらを足止めできる様になんとか、各部署に要請してください!」

『わかったわ! 近隣の部隊に増援要請頼んでみる。あと、はやてちゃんの部隊の方にも、現地に飛べるか調整駆けてみるわ。』

そういって、一時、通信を切るエイミィさん。ウチはジッとしてられず、その辺りをぐるぐる回り出す。なのはちゃんもえらく心配な面持ちや。怪我がなかったら、直ぐにでも飛んでいきたいとこなんやろ。うちも出来るならそれがしたい。けど、うちは組織の中におる人間や。それはやりたくても出来ん。しばらくして返信が来る。

『要請はなんとできたよ。ただ、直ぐに動けたのは陸士部隊に派遣されてたシグナムさんとヴィータちゃん。後は待機任務だった陸士隊2チーム。他の要請もしてるけど、まにあうかどうか………… はやてちゃんのとこは今調整中。ナカジマ一尉が上層部に駆け込んでるって、けどかなり難しそう。』

エイミィさんが難しい顔で通信を入れてくる。さっきはおらんかたけどエイミィさんの後で支持を出しながら、渋い顔のクロノくんも見える。エイミィさんの話よると、どうもさっきの77観測世界を管理してる部署が、なるべく事件自体を大きくしたくないらしく、最低限の人員だけで対処して欲しいと連絡あったそうや。出てきた正体を知ってしまったうちらは気が気ではない。

なんせ、ちょっと加減間違えば第2の『闇の書』を完成させるようなもんや。

2年前の時は、うちにシャマル達4柱と初代リインフォース。それとフェイトちゃん、なのはちゃん、アルトにユーノ君。それと戦艦アースラに館長であるリンディーさんがおったからなんとか、『自己修復プログラム』だけを分離させて倒せたんや。現状ではなんとか、デッドコピー達が合体して取り返しのつかんことにならへんように祈るばかりや。通信終えた後も。心配で辺りをウロウロと歩いているしかなかった。情報は官制を引かれていて、最新情報を得ることができない。シグナムもヴィータもまだ現場には着いていないようや。連絡がない。落ち着けずウロウロしてるうちに、

「おい、はやて。あの世界にお前達の知り合いか、何かはおらんのか?」

今まで黙っていたアルさんが声をかけてきた。

「居るけど、一人だけや。うちとなのはちゃんの友人で、特別捜査官の研修に行ってるフェイトちゃん。『フェイト・テスタロッサ・ハラオウン』って子。今唯一、その世界で奮闘してる部隊に協力してる子や」

そう答える。すると、

「よし。ならば、そいつに妾達を召還してもらおう。そうすれば、妾達が直ぐにその場で奴らをなぎ倒してこよう。」

なんて、みんなが奇声を上げるようなことをのたまってくれた。

「なに、言ってるんですか! 召還師でもない者が召還なんて………… それに次元を超えるにはそれようのゲートとそれを配置するのに適切な場所が必要なんですよ。まして、魔導師自体を召還魔法を持たない者が召還できるわけが………… 」

いち早く、つっこみ入れたんはシャマル。うちも同じ意見や。だけど、

「間抜け。だから、貴様らが使う術式と、妾が使うモノと根元が違うのだ。試したことはないが、やってやれぬ事はない。かなり変則な術になるが、妾の方で何とかなる!」

そう言って、不適に口元つり上げ笑ってるアルさん。この人はなんでこんなに高飛車というか、自信満々なんやろなぁ………… 

「ですけど………… 」

シャマルが何か言いたげだ。シャマルの能力は癒しと支援。その中には召還もある。うちらの召還や転送で異世界に行くにはゲート魔法が必要。召還は特に体型自体が違うから扱う術式によっては扱うことすら難しいもんや。そんなこんなしてるうちに事態は最悪の方向に展開していく。

急に言いようの無い悪寒に襲われる。これはあの時に感じたモノ。そう………… 夜天の書が完成する手前の。ヴィータ達を一時的にも失ったあの時の前に感じた感覚。そんな悪寒を感じた後、

『主………… 聞こえるか、主はやて。』

不意にシグナムから念話が届く。

『どないしたん? いきなり』

シグナムの口調はいつもと変わらんのやけど、どこかせっぱ詰まった感じがあった。

『緊急な知らせです。例の世界に先程我らも転移してきたのですが、先行してるフェイト達を含む陸士、空挺部隊と通信も念話も通じません。ヴィータや他の魔導師たちも試しているのですが、どの部隊とも連絡がまったく付かない状態です。』

「なんやて!」

当たってほしない嫌な予感が的中する。




続く




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