デモンベイン&リリカルなのはSS
機神飛翔リリカルベインA's-Strikers
 〜ミッシングリンク〜 改訂版

by アンヅ♂


Episode-0 Phase-4


シグナムから連絡につい声を出してしもた。九郎さんやなのはちゃん、ここにいるみんながうちに視線を向ける。

「どういうことや?!  詳しく聞かせて、シグナム!」

うちは、皆の目も気にせずにシグナムに声を荒げて問いかける。

『はい。我らは先程転移ゲートより目的世界に到着したのですが、到着と同時に我らは直ぐに先遣隊へ状況確認の連絡を入れました。しかし、返答が一切帰ってこない。管理局の方にも確認したのですが、向こうでもまるで応答が無いとのこと。ただ、招集されてからの時間経過を考えても全員が撃墜されたとはとうてい思えません。ですが、例の敵の反応に数の変更はほぼ見られません。ただテスタロッサたちの先行メンバーの反応はあるということは管理局の方で確認でき−ているだけで、その位置は救援要請が出た当初と動きが全くありません。現状況は以上です。』

的確で簡潔な回答が帰ってくる。うちはシャマルに頼んで管理局のエイミィさんの方にも確認取るように指示を出す。向こうも同じ様でまったく現状が判らないらしい。うちに内側にムカムカするイヤな感覚が広がってく………… 




「九郎………… 」

「九郎さん…………これって。」

なのはとアルが心配そうにオレに視線を向ける。

「坂道転がるみたいにかなり不味い事態になってるな。どうも、こりゃ一秒を争うぞ………… 」

今のはやての反応を見ていて、オレの長年の直感が最大レベルで警鐘を鳴らしてる。今直ぐに救出に動かないとかなりやばいと………… 

「はやて! 今、通信してる奴とオレをつなげ!」

考えるより先に口と体が動いた。はやての奴が驚いてるが、そんなこと構ってる暇はない。

無理に術式に介入して、こっちから念話をつなぐ。





『おい、誰だか知らねぇがオレの言うとおりにしろ!』

主との回線にいきなり他人が割り込んでくる。

『誰だ、貴様!』

『く、九郎さん?!』

主はやてが驚きながら相手の名を口にする。【九郎】………… そうか、なのはを治すと豪語した魔導師【大十字九郎】か。自ら【もぐり】と自負している輩か、なるほど礼儀は知らぬようだ。

『非礼なやつだな、貴様。他人の会話に無理矢理割り込んでくるとは………… 』

そう返してやる私だったが、こんな無理な割り込みで我らにまったく術反動の被害がないと言うのには正直驚く。

『んな、事は後でいくらでも頭下げてやらぁ! それより、先に今の事態を打破する事が先決だろが!』

私の言うことなど関係ないと言うようにがなる男。ここまで言い切られると逆に清々しい。

「では、貴様ならこの状況を打破出来るモノがあると?」

『ある!』

私の質問に即答する。すると別の声が聞こえてきた。

『おい、娘。ここからは妾が説明する。』

また聞き慣れぬ女の声………… おそらく、病室に訪ねた時に席を外したあの娘だろう。やれやれ…………

「よかろう………… 話を聞こう。それでよろしいですか? 主はやて。」

二人の乱入に驚いて、声も出ないといった感じになっていた主はやてに確認を取る。

『はぁ………… もうえぇ。一々この二人のやること、言うことに驚いてたら身がもたん。任せるシグナム。』

そういって、一歩引いたように念話は外す主はやて。どうやら、なのはの治療でもかなり驚かせて頂いていたようだ。こっちもすこし気を締めるか。

「では………… 内容を話せ。」

私の言葉を皮切りに、我らでは想像も実行も不可能な術式より転移召還をすることとなった。




先遣隊との連絡が未だ付かない。なかば、あきらめな感じにいらだってたオレだったが、横にいたシグナムがはやてに連絡入れた後、なにか厳しいというか、難しい顔をしながら話しているのを見て不思議に思う。しばらくして、

「では、私以外に同等の大きな力を持つ者がいるなら、確実となるのだな?」

といきなり独り言みたいに呟きだした。そして、あたしの方を見る。

「なんだ?」

「あの男がこちらに来て、我らと共に戦いたいそうだ。」

「あの男? …………あぁ。」

シグナムが言った【あの男】に一瞬、誰か判らなかったけど、はやてに通信入れてるので出た【あの男】なら、あいつのことだろう。

「それで? あたしにもなにか手伝って欲しいのか?」

なんとなくそんな言葉が口から出た。そんな気がしたからな。

「勘が良いな。そのとおりだ」

一瞬、シグナムが驚いた目をしたけど、直ぐにいつものしたり顔になる。そうして、あたしにあいつがシグナムに伝えてきたことを簡潔に伝えてきた。

大まかにはわかった。詳しくどうだと聞き返したけど、シグナム自体よく解ってないようだ。ま、あたしもその男とあの女に聞いてやったけど、説明難しすぎてよくわかんね。

なんにせよ。こいつとあいつの言うように変な事態になってるのはわかる。今は考えるより行動だ。また、なのはの時みたいな思いはしたくないからな。

「こっちはいつでもいいぞ。ささっと始めやがれ!」

気合い一発、そう返してやった。






ヴィータからの吐き捨てるような返事の後、九郎達はなのは達から離れ、先ほど術を施していた場所へ走って戻る。二人が背あわせに立つと、目で合図した後、

「行くぞ! ふたりともぉ!!」

『『おう!』』

二人の返事とともに、詠唱が始める。

「憎悪の空より来たりて」

『『憎悪の空より来たりて』』

「正しき怒りを胸に」

『『正しき怒りを胸に』』

「「我らは魔を断つ剣を喚ぶ」」

『『我らは魔を断つ剣を喚ぶ』』

「「汝、無垢なる翼 デモンベイン!」」

『『汝、無垢なる翼 デモンベイン!』』

召還呪を唱え終えたあたりで、お互いのいる場所に変化が起きる。九郎達のいる場所では九郎とアルのいる真下の床になのは達が見たことがない魔法陣が浮かび上がり、魔法陣内と外を隔離するように風の防壁が巻き起こる。次に魔法陣の中から巨大な機械の両手が表れ、二人を包むようにして魔法陣に沈んでいく。




二人が魔法陣に沈んだと同時に、シグナム達のいる真上の空が赤く染まると見慣れぬ魔法陣が出現。それと同時に突風が巻き起こる。魔法陣に紫電が巻き起こると巨大な機械の腕が何かを包み込むように表れると、その手を開く。開いた手の先に漆黒のボディースーツに身をまとった長髪銀髪で赤眼の男が現れる。

「よっしゃ! 転送成功!」

「うむ。計算通りだ。デモンベインをバイパスとして我等のみをこちらに移す。高い魔力を持つ者を座標とするから、位置を固定するのがたやすかったぞ。」

術の成功にガッツポーズするマギウス姿となった九郎と、チビとなって腕くむアルの姿があった

「よもや、あのような転送方法で来るとはな………… 」

すこしあきれ顔のシグナムが九郎達に話しかける。

「ていうか、あのでっかい手はなんだ?」

ふてくされたような顔で己が武器で肩を叩くようにして九郎達を睨んできたヴィータ。

「なんだ? こっちに居たのお前達だったのか………… 」

九郎が二人をみて、そう呟く。

「なるほどな、汝等か。我らが案に乗ってくれたこと。感謝するぞ。」

どうみても感謝するという言葉と裏腹な態度で礼を言うアル。チビ姿であるからどこかコミカルなのはご愛敬といったところか。

「答える気なしかよ………… まぁいいけどな。お前ぇ、ユニゾンデバイスだったのか?」

不満げに呟きながらヴィータがアルに近づき、指を指しながらアルに問いかける。

「ユニゾン? あぁ………… 汝等の囲いで言うならばそうなるか。我ら書は主人と一体となって初めて、その力を発揮するからな。」

アルの方は特に気にすること無く、サラリと返す。

「それより、これからどうするのだ?」

シグナムが二人のやりとりを無視して、話を始める。

「おう。そうだったな………… ちっ! 予想以上にやばいな。特に先遣隊がいるあたりが一番やばい………… ぐずぐずしてらんね。」

返事をしてあたりを見回した後、舌打ちをしてそう呟くと、眉間にしわ寄せたしかめっ面で考えを巡らし始める九郎。だが、元々策など講じるような頭は持ち合わせていない。

「よし! 一番ヤバげな奴に向かっていって、向かってくる奴を潰す! 単純明快。 よし、行くぞ。おい! そっちの部隊も付いてこい!!」

そう言い残すと漆黒の翼を広げて、ささっと一番近い魔力反応が有る方向へと飛んでいった九郎。急な展開について行けず、その場に固まってしまっているシグナム、ヴィータと隊士達。

「どうする?」

ヴィータが隣のシグナムに問いかける、シグナムはフッと笑い、

「付いていくしかなかろう………… それに」

「それに?」

「あの男の真価を見る良い機会だ。」

そういって、戦士が見せる笑みを浮かべる、ヴィータもどこか嬉しそうに笑い、

「そうだな。おい! お前達。後に続け!」

惚けている隊士達にそう声を掛けると、九郎に追いつかんとシグナム、ヴィータが飛んでいった。





先行して飛行する九郎。九郎の肩に捕まったアル。

「のう………… 九郎。」

「ん? どうした、アル。」

「この世界は………… いつぶりかの。」

そうアルが呟く。

「さてな………… この世界の時代からすると、いつぶりになるのかわからん。ただ、もう何十年ってスパンじゃ無いことは確かだな。オレも何時来たとか覚えてねぇし…………」

九郎が下を見て呟く。眼下には広大な砂漠が広がり、いくつか荒れ果てた都市だったものが見える。

「邪神から世界を救ったと言っても、世界自体を救うたわけでは無いからな。」

アルがどことなく寂しげに呟く。それを聞いて九郎がすこし笑う。

「なんじゃ、九郎。何がおかしい。」

九郎の含み笑いがお気に召さなかったのか、アルがむくれる。九郎は苦笑いを浮かべながら、

「いやな、お前と出会った頃なら、絶対に口にしないことをアルから聞いたもんでな。なんか、こう………… うれしくってよ。」

そう言って、アルに笑いかける九郎。アルが赤面して顔を背ける。

「何を申すか。妾をこう変えたのは汝ではないか。」

そう気恥ずかしそうに答える。九郎はそんなアルが愛おしくてたまらなかった。もう一度、眼下を見つめると、一部に残るオアシスに小さな町を見つける。

「ほら見ろ、アル。町だ。」

アルが眼下も町を見る。

「人はどんなときだって、未来が有る限り希望を忘れない。だから、お前が気に病むことはないんだよ。オレ達はオレ達がしなきゃならないことをしなきゃ。」

「そうだな………… さしずめ、今は!」

二人は眼前を見つめる。

「「あの腐れ神が関わる負の遺産をぶっ壊す!」」

九郎はそう叫ぶと、さらに飛行速度を増していった。




九郎達から遅れて飛行するヴィータ達。

「おい、エイミィ。あいつらは?」

管理局に通信を入れるヴィータ。

『えっと、もうすぐ例の個体の一つと交戦可能域に到達す………… いえ、到達。交戦開始って………… えぇ!』

交信を返してきたエイミィが別パネルを見て驚く。

「どうした? 状況を伝えて欲しいのだが………… 」

並んで飛行してたシグナムがすこし不思議そうに聞き返す。一瞬ポカンとしていたエイミィだったが、気分を切り替えるかのように首を振り、

『えと………… 例の自称『もぐり魔導師』と複製体との交戦。開始、20秒足らずで複製体がロスト。完全に反応が消えました。これを機に先導隊がいる辺りに集結していた2体の複製体以外は、その魔導師に近い数体から方向転換。明らかにその人の迎撃に向かってるわ。フェイトちゃん達の部隊が近くに居る個体は動き無し、そっちには動きを変えなかった残りの複製体も集まってる。』

報告に目を見張る二人。

「これは………… 」

「急がねぇとな。」

ヴィータとシグナムが顔を見合わせると、全速力で九郎達の後を追い始める。二人の手助けとか、助けないととかいう感情ではなく、二人ともこう思ったからだ。

((それほどの力、この目で確かめなくては!))






「でぇやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっつ!」

向かい来る敵からの攻撃を二刀の剣でなぎ払う九郎。

「さすがに、先ほどの輩のように大砲一撃で終わらすことは出来ぬか!」

九郎の肩に乗りながら、悪態を付くアル。

「そりゃ、そうだろうよッ! 個体として確立はしてても、元は一つ。どこかで情報の共有くらいあるさ。でなきゃこうまで必用に攻撃を連携させてぇっ! オレの武器を変えさせない様にはしないだろうぜ。」

二本召還したバルザイの偃月刀で、雑魚をなぎ払いながら九郎がそう答える。先ほどの初戦の一体目は大魔力砲撃を可能とする魔術法具【対霊狙撃砲<アンチ・スピリチュアル・ライフル>】によるイタクァ、クトゥグァの神獣攻撃【呪文螺旋(スペルヘリクス)】の直上砲撃を食らわしたのだ。元々アル本来の鬼械神である【アイオーン】用の呪装兵装である【対霊狙撃砲<アンチ・スピリチュアル・ライフル>】をマギウスである九郎が使えるように尺度を変換したものだ。そのため、通常の武装より召還時間が掛かりすぎるのと、発射までの魔力チャージに時間が掛かるのが難点となっていた。向こうもその事がわかっているかのように、【対霊狙撃砲<アンチ・スピリチュアル・ライフル>】が召還できるようなタイミングの間を開けさせないように攻撃を加えてきている。

「ま………… あんだけの大攻撃だ。そうそう打たせてはくれないし、用意もさせないのは定石だよな。」

「そうだな、定石だ………… しかし」

「「あの一撃が、まさかこの状況を作り出す布石だったは、思うまい。」」

そういって、ふたりは悪魔な笑みを浮かべる。

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁッツ!」

九郎は剣舞を舞いながら、両手に持った偃月刀を襲い来る奴らに投げつける。偃月刀は切り裂く円盤と化して飛行する雑魚なぎ払っていく。その間に九郎は、

「クトゥグァ! イタクァ!」

と叫びと共に大きく広げた両腕の右に赤黒い自動小銃。左に白銀のリボルバーが現れる。

「さぁ、こっからがおめぇらのブラッディダンスの開幕だ! まんまとおびき寄せられたことを、地獄の底で後悔しやがれ!」

二丁拳銃を構えた九郎がせまり来るデッドコピー達を迎え撃つ。




九郎に追いついたヴィータとシグナム。そして後方部隊は、その戦いぶりに見ほれてしまった。けして綺麗な戦いぶりではなかった。しかし、無骨ながらも精励され無駄を極限までなくした戦闘。

「いったい、どれほど戦えばあれほどになるのだろう。」

一人の隊士が呟く。皆同じ思いのように頷く。それは天歩の才が有って達する芸当ではなく、多くの下積みがあってこその戦い方だった。ゆえに皆が見ほれた。

「まさしく、『一騎当千』。エースを超える戦いぶりだ。」

そう呟くはシグナム。だが、そのままで終わるわけもなく、

「だが、あの戦いは共に戦い、身近で感じればもっと学べる。それに本来は我らの役目。このまま、どこぞのモノと判らぬ者に任せたと有っては名折れ。行くぞ!」

シグナムの号令と指揮の下に、空士隊、陸士隊がデットコピーに向かっていく。



戦いは熾烈を極める。デッドコピー達はコピーと言えど【あの】魔導書の一部であった者だ。その力は強力であり並の魔導師では単体で刃が立つモノではなかった。隊長格であるシグナム、ヴィータを中心とした4分隊の部隊に編成別れ、二隊で敵一体を相手する形をとる。力の差を考えてもそれが上等であった。敵の元がエース級八人相手でやっと押さえ込むことができた代物。たとえ、デッドコピーといっても侮ることはできない。だが、その相手を一人で二体、三体相手にしながら突き進んでいく九郎は、通常魔術師からみて異常でしかなかった。

「ヴィータ隊長!」

ひとりの隊士がヴィータを呼び止める。

「なんだ? 戦闘中だぞ。」

ヴィータが鋭い目つきで隊士にふり返る。

「あの男はなんのですか? 急に表れて、あの強さ、その魔力。 あれは………… 」

いくつも頭によぎる疑問を漏らすように隊士がヴィータに質問を上げていく。ヴィータは答えづらそうな表情をした後、

「詳しくは言えねぇ。だが、あいつはあの【高町なのは】と【八神やはて】がよこしたスーパー助っ人だってことだ。」

そう短く答える。

「あのエースオブエースの高町なのはさんと八神特別捜査官がよこした助っ人ですか………… 判りました。それ以上は何も聞きません。では!」

二人の名を聞いて、何か納得したように戦線に戻る隊士。ヴィータはそれを複雑に見送り、

「よこしたと言うより、無理矢理に助けに来たってのが正解なんだがな。」

そう呟くと愛機「グラーフアイゼン」を握りしめ。

「さぁ、胸くそ悪いコピー野郎をぶっつぶしに行くぞ! アイゼン!」

「Jawohr!」





九郎が駆けつけ、ヴィータとシグナム達と共にデッドコピー達の半数を消滅させていた頃。

先遣隊とその中にいたフェイトは危機に陥っていた。

「なんて………… やつなの。」

肩で息を切らせるフェイト。多くの隊士達が傷つき、倒れデッドコピーの触手に捕まっていた。

「フェイト君、無事か。」

ひときわ大きな体格をした隊士がフェイトの横に降り立つ。

「ガンツ三佐。」

フェイトと共に先遣隊として来ていた隊の隊長であるガンツであった。

「すまんな。研修生である君まで連れてきてしまって………… 」

「いえ。魔導師として、執務官候補として当然です。」

そういって立ち上がるフェイト。一瞬、ふらつきそうになった身体をガンツが支える。

「しかし、なんという力だ。このフィールドに囲まれた際の一体であったときはなんとか相手になったが、あのいきなり出現した別の一体を取り込んでから急激に強くなり負って。その上、魔導師の攻撃を吸収して、力を増していくとは………… しかもこちらが手をださん限りは相手もせん。まっこと不愉快せんばん。」

そう言って、忌々しそうに沈黙する巨体を睨み付けるガンツ。

「ですが、三佐。今はこのフィールドを何とかして突破しないと、こちらが消耗するだけです。もう多くの隊士が魔力を残していません。」

「そうだな。この化け物以上に忌々しい壁め。」

二人の前にいるデッドコピーは最初は隊に対して、応戦してきたモノの応戦の途中で一体と融合してからは、自分のまわり2キロにわたりフィールド張り、外界との行き来を途絶させた。先遣隊の狙撃部隊をのぞく隊の八割がそのフィールドの取り残され、現在に至っていた。長距離砲撃が効かないと判って、打撃近接攻撃に切り替えて隊長のガンツと共に前線にいたフェイトもフィールドに囲まれてしまったのだった。

フィールド外に残された狙撃隊は隊の救出を試みるも、このデッドコピーから作り出された小型兵力に全員撃沈されてしまっていた。

「このまま手をこまねいている訳には………… ん? どうしたと言うんだ?!」

ガンツが動きの無かったデッドコピーに不穏な動きを見る。すると、先程までなにも動きがなかった触手が動き出し、倒れている隊士や、捕まえている隊士を次々に身体に取り込み始める。

「むむっ! あやつ、ついに我らも糧にし出したか!」

そう言うが早いか、ガンツがその場を弾けるように気を失った隊士を捕まえた触手に向かって行く。

「ぬぅりぃぃぃぃやぁぁぁぁ! バスターーーー、ナァックル!」

両手に付けた小手型アームドディバイスが薬莢を排出する。構えた右手が灼熱して触手を爆発させる。

「私の目の前で、自分の部下を貴様などにくれてやるものかぁ!」

そう叫ぶとその向こうに捕まっている部下をまた助けに行く。フェイトもそれを見て立ち上がる。

「バルディッシュ。まだいける?」

「Yes.」

自分の愛機が即答する。今一度、息を整えると

「バルディッシュ。ザンバーフォーム。」

「Yes Sir  Zamber  Form」

フェイトの言葉にバルディッシュが変形して、大鎌から大剣の【ザンバー】と変わる

「ハァァァァァっ!」

フェイトもガンツの後を追うように、動き出した触手を切り裂いていく。だが、それは他の隊士のように疲労しているフェイトやガンツにとっては褒められた行動ではなかった。しかし、それでも二人は自分の信念に従い、身体を酷使していった。






フェイト達が奮闘している間に、九郎とシグナム達はフェイト達が取り込まれたしまったフィールドの近くまで来ていた。始めは先行していた九郎だったが、その力の圧倒的さに敵の方が集中的に攻撃をし始める。その結果、九郎が前に進めず、シグナム達の隊の方がフェイト達のいる場所に先に着いてしまっていた。今はフィールド内に入れる箇所や手段がないかと調査をしていた。

「どうだ? 中の様子はわかりそうか?」

「いえ………… 強力なフィールドのために完全に中と外は切り離されてしまっていて、フィールド中を確認することも通信を入れることも不可能です。それに、これを見て下さい。」

そういって、調べていた隊士が攻撃呪文を一撃、フィールドに喰らわせる。

「「こいつは………… 」」

ヴィータとシグナムがそれを見て驚く。

「はい。このフィールドは魔法攻撃を受け付けません。それと同時にそのエネルギーを吸収しているのです。」

そういって、ホログラム画面を操作してエネルギー値変動を見せる。

「もっと大きな攻撃でなんとかならんか?」

シグナムが質問をぶつける。

「ハッキリとしたことは判りませんが、先遣隊にはフェイト執務補佐官や他にAAランク以上の高位魔導師が三人いらっしゃいます。その方々が同じように砲撃を加えているはず。そう考えますと………… 」

隊士が言わんとする事を口ごもる。

「大きな砲撃だろうと、魔法攻撃はきかん。逆に大きければ大きいほど奴にエネルギーを与えると………… 」

詰まった答えをシグナムが答える。

「はい………… 」

返事をして暗くなる隊士。だが、そんなくらいであきらめる訳がないのがヴィータだ。

「ばっかやろう! 魔法が効かないなら打撃をで何とかする!」

「な! ヴァータ!」

シグナムの制止を聞かずにヴィータが上空に上がる。

「行くぞ、アイゼン! ギガントシュラーーク!」

「Jawohr Gigantform」

ヴィータの声に従い、アイゼンが巨大なハンマーに形を変える。ヴィータはそれを大きく振り回してから、その勢いでフィールドにハンマーを振り下ろす。

「砕け散れぇぇぇぇ!」

「Explosion」

ヴィータの攻撃に一瞬、フィールドがゆがむ。しかし、それも一瞬だった。直ぐに

「ウワァァァァァァァァァァァァァァ!」

フィールドはその衝撃自体を与えた対象にはじき返すように反射させた。その反動でヴィータがアイゼンごと大きく飛ばされてしまった。

「ヴィータ!」

シグナムがヴィータの身を案じるような顔で声を上げる。しかし、直ぐにその顔は安堵に変わる。ヴィータは飛ばされた。しかし、その先にいた男に軽々と受け止められたのだ。




「ひゅ〜 危ねぇな。まったく………… 」

「まったくだ。あのようなフィールド。貴様一人程度の力業ではどうにもならんぞ。」

アトラック・ナチャの糸で飛ばされてきたヴィータとアイゼンを受け止めた九郎。七体くらいのデッドコピーを一人で撃墜してきたので、多少疲れたような表情をみせているもののその魔力は幾ばくも減っていなかった。

「大丈夫か? おまえ………… 」

アトラックの糸にへばりついたままの姿のヴィータに声を掛ける九郎。

「なん………… とかな。助かった。ありがとよ。」

照れくさそうに目をそらして礼を言うヴィータ。

「気にすんな。お互い様だ。それよか、このままあの姉ちゃんとこに行けばいいか?」

「あぁ………… そうしてくれ。」

そんなやりとりしながら、九郎はシグナムの元に行く。たどり着いた共に術を解いて、ヴィータを開放する。





「で、どうする?」

眼前に見えるフィールドを見つめるシグナムに声を掛ける九郎。シグナムは視線を外さずに、

「どうするも無かろう。あのフィールドなんとかせねば。」

そう答えるシグナム。しかし、どうすればよいのか判らない。先程のヴィータの攻撃でもヒビすら入らなかったフィールド。魔法攻撃は以ての外。現状で打開策は見当たらない。

「のんびりと構えている余裕はない。なんとかせねば…………」

赤黒く包まれたフィールドを見つめながら私は思う。これだけのフィールド。持続させるにもエネルギーは必要だ。デッドコピーと言えどどこかで魔力を補充せねばなるまい。おそらくそのための吸収能力だろう。だが、取り込まれた者も魔法攻撃が吸収させるとは判っているはず。そうなれば、無駄な攻撃はせずに近接打撃に戦闘を替えているはず。砲撃魔法より魔力の放出は少ないがダメージを与えるには良いからな。だが、肉体も限界はあり、消耗はする。活動限界はすぐに来る。まして、これほどの魔力フィールドを張れる者が相手だ。反撃もかなりのモノだろう………… そのあたりは管理局員だ。なんとかする。しかし、こいつは「闇の書」のデッドコピー。他の魔獣の様にただ闇雲に反撃はしないはず。まして、攻撃は魔力を使う。フィールドを張りながらならば燃費の悪さは最上級だろう。なにかで補わなければ為らないはず。そうなれば、目の前に『蒐集』対象がいれば、それを取り込もうとするはず………… 

「だが、どうすればこのフィールドを破れる。」

我が「レバンティン」にもヴィータの「グラーフアイゼン」以上の攻撃力は無い。ほぼ同格だ。たとえ、二人同時に攻撃を加えたとしても先程のヴィータを同じ結果。ほかの魔導師全てで行ってもそうだ。だが、大人数になればタイミングを全て同じになどできない。どうすれば………… 

不意に、横にいるあの魔導師に目をやる。彼も同じ事を考えているのかフィールドを見つめている。ユニゾンデバイスとなにか話している。やはり、一朝で考えなどでるわけがない。そう思っていた。





九郎とアルもシグナム同様でフィールドを見つめてうなっていた。

「さて………… どうしたモノか。」

アルは自分が持つ力の中でなにが一番【これ】を突破するにはよいか悩んでいた。アルと九郎にとってはこの程度のフィールド破るのは苦ではない。なにせ、『破壊』に特化した魔術師だ。デモンベインを使って術を使えば簡単なことだが、中にいる人間事破壊しかねない破壊力であるために使う訳にはいかない。そうなると九郎のマギウス姿でとなるのだが、これを破壊するほどの威力があるのは砲撃系の魔術。このフィールドだけを壊すと言う訳にはいかない。

「さっきの姉ちゃんみたいに打撃と魔力を同時に与えられるのが、一番良いんだけどなぁ。」

そう九郎が呟く。九郎の頭の上でうなっていたアルがそれを聞いて、動きを止める。

(ん? 魔力と打撃を同時………… 有るではないか。我が鬼神にその攻撃に見合った装備が有るではないか! だが、デモンベインの攻撃はどれもこれも強力すぎる。なんとか威力自体を弱め………… そう。先程の【対霊狙撃砲<アンチ・スピリチュアル・ライフル>】による【呪文螺旋(スペルヘリクス)】のように九郎自体が使えるほどになればよい。しかし、あれはデモンベイン自体の装備というか一部だ。【対霊狙撃砲<アンチ・スピリチュアル・ライフル>】のように妾の記述とは違う。どうすれば………… ん? まてよ。まてよ、まてよ。あのナコト写本がやっておったではないか。機神の一部召還。デモンベインは一個体であるが、妾の鬼神。ならば、先程の媒介召還と同じように一部を書き換え、構成し直しさえすれば!)

アルの頭の中で、瞬時に算段が組み上げられる。手が決まれば、直ぐに自らの記述の一部書き換えと構成変更始める。

「九郎! 良いことを言ってくれた。これで、この薄汚い壁を破ることが可能だ!」

「はい?」

いきなり嬉嬉して叫びだしたアルに、リアクションに困った九郎だったが、説明を始めるアルの話を聞いて、内容に承諾。直ぐに横にいたシグナムと離れていたヴィータにその話をする。




「しかし、上手くいくのか?」

渋い顔でシグナムが質問する。

「うむ、大丈夫だ。心配するな。お主らが一点集中で攻撃を加えている処に妾達と、この娘の打撃を連激で加えれば中のモノには一切被害無く、このうっとしいフィールドのみを破壊出来る。」

シグナムの不安を吹き飛ばすかのように自信満面で言い切るアル。

「どうする、シグナム?」

ヴィータが見上げるようにシグナムに確認を取る。シグナムは一度考えて、

「わかった………… なんにせよ、今はおまえの案以外に打開策はない。やろう。」

真剣な顔でそう答える。ヴィータの方も了解したように口元を上げる。直ぐに狙撃班と調査班が集められ、事の詳細をシグナムから適切に指示を受ける。その間に九郎とアル、そしてヴィータが攻撃に最終打合せをする。

「じゃ、本当にその算段で良いんだな?」

「あぁ、あの姉ちゃんと魔導師達が集中放火した場所にオレとアルが攻撃を加える。あんたはその俺たちに向かって、さっき見せた攻撃を全力で叩きつけてくれ。」

「だけど、あたしの攻撃は半端じゃないぞ。それを生身で受けることができるか?」

すこしやり方に心配を浮かべるヴィータ。しかし、

「大丈夫だ。妾達の心配よりお前達の仲間を思え。それに妾達をなめるな。貴様の攻撃程度でどうとなるほど、弱くはない。」

とアルが呟く。これにはさすがにヴィータのこめかみが引きつる。

「よく言った………… なら、遠慮無くブッ叩いてやるよ。」

そう言って、持ち場となる場所へと移動していったヴィータ。

「おい、アル………… 今のは言い過ぎじゃないのか? あれはマジに全力全開でぶち叩くつもりだぞ?」

九郎が非常に情けない顔でそう呟く。

「ん? なに………… ああでもいわんとあの娘。手加減しそうだったのでな。」

さらりとそう答えるアル。

「わざとかよ! しかし、本当に大丈夫なのか?」

「心配するでない。たしかに試したことはないが、あのナコト写本ができた事。妾ができない訳がない。それにたとえ喰らったとしても命までは取られることはない。また、病院行きになるだけだ。そうなったら、そうなったで『どんまい』ということでな」

となぜか清々しい笑顔でサムズアップするアル。

「わ〜い。むかつく、その言い方………… しかもギャンブル性高い上にはずれはむちゃくちゃいいことねぇじゃねぇかド畜生! はずれたら、怨んで七代祟ってやる!」

「はっはっはっは、祟れるものならなぁ。」

これから人命救助という場面の割にいささか、緊張感がない二人だった。





数分後、九郎、ヴィータ、シグナムに狙撃隊が作戦位置に着く。調査隊から先程、一番フィールドエネルギーの安定が不安な箇所を攻撃目標と定めた。

「行くぞ! 狙撃隊は私に合わせろ。」

そう叫んで目標にレバンティンを【ボーゲンフォルム】に変え、魔力の弓を構えるシグナム。

「行くぞ、開始10秒前………… 5秒前………… 3,2,1。撃てぇ!」

シグナムの号令で、魔力砲撃が放たれる。それと同時に上空で待機していた九郎が魔力弾が向かう場所に向かって飛び込む。

「行くぞ、アル!!」

「うむ! 機神一部召還! 断鎖術式開放! 1号ティマイオス。2号クリティアス!」

アルの叫びと共に九郎の両脇に人型に小型化したデモンベインの脚部シールド現れる。シールドに刻まれた術式が広がり、空間を湾曲。九郎も周りに紫電を放ち始める。

「喰らえ! アトランティス、トルネード・ストライク!!」

湾曲した空間と共に九郎が回転して、フィールドに突っ込む。それを追うように、

「行くぞ、アイゼン! 全力全開、ギガントシュラーーク!」

「Explosion」

ヴィータの大槌が回転エネルギーを加えられて、九郎の頭上にたたき込まれる。

もろに九郎にヒットしたが、自体には当たっていない。なぜなら、九郎は断鎖術式で派生した湾曲空間に守られていたからだ。湾曲空間は九郎の周りを球形で包む。ちょうど、ヴィータがよく使う鉄球攻撃の状態だ。

そう、魔力で一点集中した攻撃の上に、魔力と打撃を持つアトランティス・ストライクの衝撃。そこにさらに魔力と打撃のヴィータの攻撃。シグナム達が傷を付け、ねらいを付ける係。九郎とアルが杭。そして、ヴィータが打ち手。杭役の九郎はタダの杭でなくドリルだ。それも強力無比な削岩ドリル。貫けない訳がない。

「どりゃぁぁぁぁぁ!」

九郎の叫びに答えるようにフィールドにヒビが入り、砕け散り、大きな穴が開いた。



中にいたフェイト達はピンチになっていた。フェイトは魔力と体力消耗のピーク。隊長であるガンツは利き腕を負傷。残っていた隊士も軒並みやられて、動けるのは数名。先ほど副隊長のゼファーも氷結魔法で氷柱の中に優秀な隊士2名と共に閉じこめられてしまったばかりだ。

「私の不甲斐ない性で………… 」

肩口を押さえながら、悔しそうに下唇を噛むガンツ。

「そうじゃないです。あいつが我々の予想を超えて成長が早かったんです。」

フェイトがそう告げる。諦めるつもりは残っている隊士も無かったが、打破する策もなく絶望的な状況だった。もう、多くの隊士達があの化け物にリンカーコアを丸ごと吸収されている。命はなんとかある。だが、今のままで放置すれば、助かる状態ではない。

フェイトは右手に持つ愛機バルディッシュを見る。もはや、ボロボロで形態変更もままならない。近接で戦うことは不可能。かといって、魔力砲撃が効かない相手。

「ごめん。なのは、はやて………… 」

なぜか、自分の友人達に詫びの言葉が出た。諦める気持ちはない。けど………… そんな心境がそうさせる。もはや、抗う術もない。万事休す。

だが、

「どりやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

大きな叫びと共に暗がりの中に破壊音と日の光が差す。




続く




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