斬魔大聖デモンベイン SS 『魔導探偵物語』
by Sin
第11話 3つの心を1つに合わせて
「一番恐れていた事が現実になってしまったか……」
呟くアル。
「ああぁぁぁあああっ!?」
「お嬢様!?」
あまりのその醜悪さに失神しそうになる姫さんを慌てて支える執事さん。
ガキんちょ共は完全にパニック状態で、ライカさんはそれを宥めるのに必死だ。
そしてリルの姿はさっきから全然見えない……
心配でしょうがないんだが……
「――っ!? 来るぞ、九郎!!」
舞い上がる粉塵の中から巨大な腕が突き出されてくる。
「ちぃっ! マギウス・ウィング!!」
翼を広げて空中に舞い上がると、そこには不気味なベルゼビュートの顔があった。
『おーっほっほっほ! どうしたの、さっきまでの勢いは? このベルゼビュートの前には、アンタなんて虫けらも同然だから仕方ないかしらねぇぇ?』
ティベリウスの高笑が辺りに響く。
「くっ……」
「拙い! 拙いぞ、九郎! いかに我等とて、相手が鬼械神では手の打ちようがない!」
「んな事言っても、やるしかねぇだろうが! やれるだけやってやる!! 行くぞ!!」
「……致し方あるまい……だが、命を捨てるような事はするな!!」
アルの言葉に頷くと、俺は両手に魔銃を召還する。
「クトゥグァ! イタクァ!!」
撃つ。撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ。
弾が切れるたびに再びリロード。
それを繰り返す事数回。
そして…
「少しは効いたか?」
「否! 駄目だ!!」
絶望的なアルの言葉。
そして晴れた爆煙の中から現れたのは、完全に無傷のベルゼビュートの姿だった。
『うふふ……それでお終い? なら、今度はこっちから行くわよ〜ん♪』
その言葉と共に、ベルゼビュートの目の前の空間に凝縮される魔力……いや、あれは!?
「怨霊呪弾!? 拙い、アル!! あんなもの食らったら、みんなが!!」
その時だった。
――クルシイ
「なっ!?」
――タスケテ
「こ、これは!?」
アルも表情を引きつらせる。
――サムイヨ
「いや、いや、いやだよぉぉぉぉっ!!」
「うわ……わあああぁっ……うわああああああああっ!!」
「きゃああああああああああああっ!!」
「み、みんな、しっかり! うっ、くうぅぅっ!?」
病院の方でもライカさん達に影響が出始めてる!?
――シニタクナイ
あんなもの食らっちまったら……
狂気、絶望そんな生易しいもんじゃない。
実際に食らった事があるからこそ言い切れる。
あれをライカさん達やガキんちょ共が食らったら間違いなく……
『この怨霊呪弾のことも知ってるみたいねぇ? うふふ…良い出来でしょう? 2つの街で、たぁっぷり溜め込んだ特製よっっっ!』
ベルゼビュートから吹き出す思念の嵐。
それは荒れ狂いながら俺達を、そして病院までもを襲う。
深く、暗く、冷たい闇の中で、俺は無数の声を聞いた。
――死にたくない
――熱い
――苦しい
――痛い
――冷たい
――暗い
――寂しい
――寒い
――怖い
――痛……
――怖……
――死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない……
一体どれ程の苦しみを……どれ程の哀しみを……どれ程の恐怖を飲み込んだのか…
幾千……幾万もの断末魔の叫びが、俺達を襲う。
「ぐああああああああああああああああっ、あああああああああああああああ!!」
「きゃあああああああああああああああああああっ!!」
魂が、肉体が悲鳴を上げて、頽れる。
「ぐっ…あ……テメェ……何処まで腐って……」
『うふふ……どう、アタシ特製の怨霊呪弾の味は? 堪能して貰えたかしら? まだまだおかわりあるから、た〜んと召し上がれ♪』
「く、九郎、拙いぞ! もう一度あの瘴気を食らえば、いかに我等とて耐え切れん」
「くそっ、なにか打つ手はないのか!?」
その時だ。
「これはこれは、随分と楽しんでいるようだな、ティベリウス」
『あ〜ら、なにしに来たの? 影でこそこそしてる方が好きなあんたが』
「君が、とても、とても楽しそうだったのでね。私もついつい覗きに来てしまったのだよ」
『まぁ、いいけどね』
そう言うティベリウスの…ベルゼビュートの視線の先。そこにいたのは…
「て、テメェは!? ウェスパシアヌス!?」
『へぇぇ、ウェスパシアヌスの事まで知ってるとなると、いよいよ本物ねぇ……』
「なるほどなるほど。ネクロノミコンの主は時のくびきから外れ、異なる時を生きた存在であると聞いていたが……事実であったか。ふむ、これは、これは興味深い」
楽しげに笑うウェスパシアヌス。
クソッ、冗談抜きにやばいぞ……
ベルゼビュートだけでも勝ち目無かったのに、もしもサイクラノーシュまで出てきたら、万に一つも…
「九郎……この状況は……」
「………アル…俺達は……あの戦いを勝ち抜いたんだよな……」
「ああ、勿論だ。妾達は邪神の謀略を打ち破り、そして長きにわたる苦しみを越えて……こうして平和を手にした……手にしたのだ……」
答えるアルの声が、震えている……
そうだよな……俺達は手にしたんだ……平和を……
そして……アルとの幸せな暮らし……
まるで奇跡のような……夢のような出来事……
いくら望んでもけして適う事はないと思っていたのに…
アルとの子供まで手にする事が出来た……
これから……これから更に多くの幸せを掴んでいける……
そう思っていたのに……
「妾達には……幸せを掴む事すら……許されぬと言うのか……? なんの為にあんなに辛い思いを重ねて……戦い抜いたのだ……」
頬にあたる冷たい感触。
泣いている……
アルが……俺の最愛の女が……
これで終わる?
……アルと……俺……そしてリル……
俺達の幸せが……ここで……終わる?
『ふふふ……じゃあ、そろそろトドメをさしてあげるわ。精々苦しんで頂戴よん♪』
ベルゼビュートの腕が振り上げられる。
あのまま潰されるか……
それとも、怨霊呪弾で狂い死にさせられるか……
なんにせよ、もう打つ手は……
「九郎……妾は……例えこの身が滅んでも……汝を愛し続けるぞ……」
いつの間にかマギウス・スタイルは解除されていた。
アルは俺に抱きついたまま、そう呟くとそっと唇を重ねる。
「大十字様!?」
「大十字さんっ!? アル・アジフ!?」
「まさか……九郎ちゃんっ!?」
慌てた様子の執事さんや姫さん。ライカさんの声……
『これで終わりよ……仲良くアタシの糧になりなさぁい♪』
ティベリウスの高笑いが響き渡る……
「九郎―――――――――――――――――――っっっ!!」
しがみついて涙を流すアル…
本当に終わりなのか? こんな事で……こんな所で……
死ぬ? 俺が……? アルが……? リルが……? みんなが……?
終わる……?
そう思った瞬間、俺の中で何かが弾けた。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
『なっ!?』
「なんだと!?」
ティベリウスと、ウェスパシアヌスの驚きの声。
「………く、九郎?」
しっかりと抱きしめた腕の中、アルも呆然と俺を見つめている。
「大十字……様……」
「………なにが……起こっているの……?」
「九郎…ちゃん……」
「すっげ――っ……」
「九郎……凄い……」
「お兄ちゃん……」
呆然と窓から見つめる姫さん達。
「汝……一体……どうやって………」
震える唇で呟くアル。
そして俺は……
「こんな事で……諦めてたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
叫び。それは言霊となって魔術の式を編み上げる。
俺から溢れた魔術の流れは腕の中のアルを介し、俺達の周囲に魔法陣を展開した。
「九郎………一体これは……!? まさか、汝!? 召還する気なのか!?」
どうやら、ようやくアルが俺のしようとしている事に気付いたらしい。
「無茶だ! あれはこの世に存在しないのだぞ!? いかにあの戦いを経て、強大になった汝と妾とは言え、そんなものを召還するなど、不可能だ!!」
涙目で訴えてくるアルの髪を、くしゃくしゃと撫でてやる。
「なっ、なにを!?」
「やんなきゃ、ここでみんなお陀仏だ。俺もお前も、みんなも……そして、リルも」
「――っ!? し、しかし、ありもしないものを召還する事など……」
「出来るさ……俺達なら……」
確信を持って答える。
そうだ。出来る。
あの絶対に勝てるはずもない戦いを俺達は勝ち抜いた。
絶対に再会出来るはずもない運命さえも打ち払い、再会した。
決して産まれるはずのない俺達の子供さえも手に入れた。
「俺達に、不可能なんてあるはずがない。どんな不可能さえも、現実にしてきたんだ。俺達に子供が生まれるって奇跡を起こしておいて、出来ないなんて言うなよ」
「九郎……」
しっかりと抱きしめる。
俺の心が、想いが、全てがアルに伝わるように……
そして、アルの全てを受け止めるように……
唇を……重ねた……
「………アル…いいな?」
「……本当に……汝は最高の男だ……妾は、汝を主に持った事、心底誇りに思うぞ」
「やるぞ、アル!」
「もちろんだ! 必ずやり遂げて見せよう!!」
涙を浮かべた瞳に、微笑みを浮かべてアルは力強く頷く。
再び唇が重なって俺の身体にアルの魔力が満ちた。
「九郎、バルザイの偃月刀を使え! あれなら汝の術をより高めてくれる!」
「判った! バルザイの偃月刀!!」
目の前に走る焔。
そしてそれを掴むと一気に振り抜いた。
舞い上がった炎が消え去ったとき、俺の手の中に一降りの刀が残される。
「やるぞ………うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
『な、なにを……なにをする気なのぉッ!?』
「これは…これはまさか……まさか、召還陣だというのか!?」
うろたえるティベリウスや、驚愕しているウェスパシアヌスを横目に、俺は魔術の式を走らせる。
思い出せ。
いつも描き出していたあの陣を。
そして……時を、世界を、次元を越えて……
彼奴に届く魔術を編み上げろ!
奔る……奔る……奔る……奔る……奔る……奔る……奔る……奔る……奔る……
編み上げた術式が幾重にも重なって俺の周りを取り囲み、遙か天空まで広がっていく。
「くぅっ!?」
突然、俺の身体のあちこちが裂け、血が噴き出した。
「拙い! これ以上の魔力に、汝の身体は耐えきれんぞ!! このままでは、術が完成する前に汝は……!!」
「それでも……それでもやるしかねえだろうが……俺は……」
「「後味悪ィのは嫌いだから」」
2人の声が重なる。
思わず苦笑する俺達。
「本当に……汝は…」
「悪ィな……アル……つき合わせちまって……」
「うつけ…何を言っておる……言ったではないか。例え何があろうとも、いつまでも汝と共にいると……汝を命をかけて守ると……」
「……アル……」
「……こうなれば、やれるだけやるまで! 九郎、覚悟を決めろ!」
「いつだって覚悟くらい決まってるさ!」
もう一度顔を見合わせて苦笑する。
「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」」
俺達の中を術式が駆け巡り、押さえきれない魔力が俺達の身体を引き裂いていく。
それでも、術をやめようとは思わない。
ここでやめれば、一時的には助かっても結局奴等の餌食になるだけだ。
それなら……僅かでも残された可能性に……
その時だった。
「パパ! ママ!!」
突然の声。
思わず振り返った俺達の視線に飛び込んできたのは、あちこちを擦り剥きながら、必死に走ってくるリルの姿。
彼奴、姿が見えないと思ったら、病院の中を駆け下りてきたのか!?
「「来るな、リル!!」」
必死に上げた叫び。
それでもリルは足を止めることなく、泣きながら俺達の元へと走ってくる。
『へぇ……魔導書のアルちゃんに子供……? うふふ……なんて可愛い子なのかしらぁん。ホント…念入りに嬲ってあげるわ……』
「逃げろ、リル!!」
動き出すベルゼビュート。
その巨大な手が振りかぶられ、リルに……
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
「リル―――――――――――――――――――っ!!」
俺達の叫びが辺りに響く。
そして……
リルの姿がベルゼビュートの腕の下に……消えた……
「あ……あぁ………ああぁぁ………っ………」
「い、嫌あああああああああああああああああっ!!」
感情が制御出来ない。
もう……
どうでもいい……
ただ………目の前の彼奴を……
いっぺんの欠片1つ残さず、消し去ってやる……
「フングルイ……ムグルウナフ……クトゥグァ………フォマルハウト……」
俺の周囲を取り囲んでいた未完成の魔法陣が大きく荒れ狂い始める。
泣きじゃくるアルの声が、俺の中で、更になにかを砕いた……
「ンガァ・グア……ナフルタグン……」
俺の怒りを……アルの哀しみを……
思い知れ!!
「イア! クトゥグァ!!」
未完成の魔法陣が、唐突に形を持って天空に巨大な炎の柱を吹き上げる。
そしてそこから現れたのは……燃え滾る魔獣。
『な、なんですってぇっ!?』
顕現したクトゥグァが、ベルゼビュートを襲う。
その強大な破壊力を持って、灼き、抉り、燃やし尽くす。
「灼き尽くせ、クトゥグ……がはっ!」
唐突に込みあげてきた灼熱感。
それが喉元を過ぎて、俺は大量の血を吐き出した。
「く、九郎!?」
アルの叫び。だけど、それは何故かとても遠く感じて……
俺からの魔力が途切れたせいか、クトゥグァは一度大きくベルゼビュートを抉ると、そのまま天空へと消え去ってしまう。
このままじゃ……奴はすぐに再生して………
「嫌だ…こんなのは……嫌だ……折角授かった我が娘を失い……汝まで失ったら……妾は……妾はもう……生きていけぬ……死ぬな……死なないで、九郎!!」
泣き叫ぶ声……
俺は……アルを抱きしめ………
その時だ。
「え――――っ!?」
戸惑ったようなアルの声。
そして……俺の身体に暖かい何かが注がれる感じがして……痛みが………消えた……
「……九郎……?」
「……アル……俺は……一体……?」
「………えへ……パパ……」
アルとは反対の肩から聞こえてきた声。
思わず振り返るとそこには……
「来ちゃった♪」
アルよりも更に小さくなったリルの姿が……
「えへへっ、ママとおんなじ〜♪」
「リル!?」
「生きて、生きておったのか!?」
「うんっ♪」
愛らしく微笑むリル。
思わず涙が溢れた……
「馬鹿野郎……心配させやがって……」
「リル……よく生きて……ううぅっ……」
「ママ、どうして泣いてるの……?」
「お前が心配させるからだよ。あんまりアルを泣かすな、リル」
「はうぅ……ごめんなさぁい……」
「もうよい……それにしても……これは……」
そう言って俺の身体を見回すアルにつられるように俺も自分の身体を見る。
リルの様子を見る限り、どうやらアルの魔力の他にリルの魔力まで加わった新しいマギウス・スタイルの様だ。
いつものマギウス・スタイルで身に纏う黒のボディースーツのあちこちに、赤い模様が入っている。
これじゃあ、まるでファ○ズだな。
『な、なによ、なによ、なんなのよ、それはぁッ!!』
狂ったようなティベリウスの叫び。
そして………
「詠え、オトー!」
背後からの攻撃。
だが……
「緩い!」
一喝するアルの声。
そして背後に展開された五芒星形………旧き印。
その魔法障壁によって、ウェスパシアヌスの攻撃は完全に無効化される。
「なんと!?」
驚愕するウェスパシアヌス。
だけど、驚いているのは俺も一緒だ。
今の攻撃、アルと2人だけだったら間違いなく食らっていた。
それなのに今は、なんの抵抗もなく攻撃を無効化している。
「ならば、ならばこれならば!!」
ウェスパシアヌスがそう言うと同時にあの邪神の眷属共が大量に溢れてきた。
「いかに、いかにマスター・オブ・ネクロノミコンとは言え、これだけの、これだけの数を前にしては、どうする事も出来まい!!」
高笑いするそれと重なるように、背後から迫る殺気を感じる。
「パパ!」
とっさにリルが背後に迫った触手を魔法障壁で弾き返した。
即座に俺はマギウス・ウィングを展開。
近づいてきた触手と邪神の眷属を一気に切り裂く。
ふと見ると、いつの間にかマギウス・ウィングの数が増えてる。
これまでは1対しかなかったのが、2対4枚になっていた。
「九郎、これを使え!」
「パパ、これ使って!」
そう言って2人が召還して渡してきたもの。
それはなんと、二振りのバルザイの偃月刀だった。
「これは……!?」
「なんと……二重召還か!?」
驚く俺達。
きょとんとしているリルに微笑むと、俺は両手に持ったバルザイの偃月刀を十文字に構えた。
「なるほどな、段々判ってきたぜ!! そぉりゃぁぁぁぁぁっ!!」
両手のバルザイの偃月刀を、一気に投げつける。
ブーメランのように旋回しながら邪神の眷属達を切り捨てていくのを尻目に、俺は更に両手に魔力を集中、
「イタクァ! 二重召還!!」
同時に両手に現れる二丁の拳銃。
いつもならクトゥグァとの組み合わせで使うが、今回はイタクァのみ。ただし、二倍だ。
「ニトクリスの鏡!」
辺りを包み込む鏡の輝き。
そして……
「イタクァ、一斉発射!!」
左右合わせて12発の弾丸が、一斉に邪神の眷属に襲いかかる。
そして鏡に当たると同時に乱反射。
イタクァの光が辺りを蠢く邪神の眷属全てを襲う。
やがて閃光が治まったとき、もはや生きている眷属は一匹もいなかった。
「おぉぅ………」
「パパ、すご〜い!」
歓声を上げる2人に、微笑みかける。
「ば、バカな、バカなっ……こんな、こんな事が……」
『……ムカついたわ……かんっぺきに。アンタは原形留めないくらいにズタズタにして、アルちゃんとそっちの子はアタシが念入りに、ネチョネチョと嬲り尽くしてあげるわ! ベルゼビュート!』
愕然とするウェスパシアヌス。
ティベリウスは完全に切れてるみたいだな。
目の前までベルゼビュートの腕が迫っているというのに、俺は完全に落ち着いていた。
「クトゥグァ、二重召還!」
俺の両手に現れる二丁拳銃。
そして……
「クトゥグァ、神獣形態!!」
同時に、二匹の魔獣が炎と共に姿を現す。
そしてそのまま巨大な咆吼を上げてベルゼビュートに襲いかかった。
この前神獣形態で召還したときには恐ろしいほどの負担がかかったのに、今回はまるでただ引き金を引く程度の労力で出来てしまった。
そのあまりの力に思わず驚愕する。
『ぎゃぁあああああああっ! よ、よくも、よくもやってくれたわねぇぇっ!!』
もがくティベリウスを尻目に、俺は戻ってきた偃月刀を両手で受け止め、天空に向かって掲げた。
「九郎、何を?」
「今なら出来る……さっきは出来なかったけど、これだけの魔力と安定性なら、必ず出来る!」
「………そうだな……可能性はかなり増したはずだ!」
「うゆ? 何をするの?」
「汝なら、判っておるはずだ。妾の魂の欠片を受け継いだ汝なら」
「…………うん♪」
「なら……やるぞ、アル! リル!」
「判った!!」
「は〜い!!」
天空に掲げた偃月刀でまさに舞うように空を切り裂いていく。
そしてそこに浮かぶは魔法陣。
複数に組み合わされ、いくつも、幾重にも重ねられて魔法陣が描かれていく。
「憎悪の空より来たりて!」
巨大な魔法陣の中央で、俺はその巨大な術を制御しながら言葉を紡ぐ。
それは言葉。それは祈り。それは誓い。
「「正しき怒りを胸に!」」
アルとリルの声が重なり、不思議な響きを持った1つの声となる。
「「「我等は魔を断つ剣を取る!」」」
言霊が魔法陣を貫き、そして……
遙か遠く……
世界を越え……時を越え……次元を越えて……
その呼び声に答えるかの如く、鋼の瞳に光が宿る。
I'm innocent rage.
I'm innocent hatred.
I'm innocent sword.
永遠を戦い抜いた友の為……魔を断つ剣は…今再び、戦場へ…
かの者の名は……
I'm DEMONBANE.
「「「汝、無垢なる刃、
デモンベイン!!」」」
今、魔を断つ剣が、新しき世界に顕現した。
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