斬魔大聖デモンベインSS
『アルの奮闘記
 〜〜恋敵は執事?〜〜』

by タカタカ


アルは帰ってきた

九郎のもとに帰れた

だから力一杯抱きしめた(抱きしめられた)




「もう何処にも行かせねぇよ、馬鹿」
ようやく遭えた俺の恋人

「馬鹿と言うな馬鹿と」
ようやく遭えた妾の恋しい人

「仕方無ぇだろ、お前には最後の最後で裏切られたんだからよ」
それでも嬉しさの方が大きい

「うっ!・・・・それを言うな、言葉に詰まる」
本当はそう言われても構わない

「まあ良いや、とっとと帰ろうぜ。こんなトコ警備のオッサンにでも見られたら言い訳出来ねぇしよ」
早く帰ろう、あの家に

「その時は汝にロリコンの罪でも被ってもらうか」
そんな言葉でも心から愛している

「オイ、さっきの仕返しか?」
そんなアルが愛しい

「さあな」
こんな会話をしたのは久しぶりだ

「へいへいそうですか、それじゃあ帰るか」
俺達の家に

「うむ、帰るか」
我らの家に







「「あの薄汚れた探偵事務所に、な」」



そんな再開をして早くも三ヶ月が過ぎた

まあその後はアルと姫さんの時間無制限ガチンコバトルとか、ライカさんが俺を性犯罪者呼ばわりだのぺド降臨だの言ったり、ウェストを見たアルが魔術で破壊ロボを一撃で仕止めた所為でウェストからライバル宣言されたり、エルザは「間女出現ロボ!」だの言ったりなど色んな事があった。

他には一晩で、抜かずの十連発に挑戦したりな♪(爆)


まあ、至って平凡(?)な日常が流れている・・・・・・筈だったのに。
今朝は違った。

いや、べつに起きたら隣にマスターテリオンが寝てたとかそういう訳じゃねぇんだけどさ。
ある意味それ以上の怪異がテーブルにあった。それは。

「うむ、上出来だな」

アルの手料理だった(涙







朝のアーカムシティ。
それは一言で言うなら{希望}に溢れている。
町を行く人々には、皆今日はどんな事があるのだろう。と考えているのが目に見えているからだ。朝刊を読みながら電車を待つサラリーマン。真新しいランドセルを背負い、友達とはしゃぎながら登校する子供達。
そう、この町には邪悪なんて微塵も無い。そんな町を俺は・・・・




「さて九郎。起きて早速だがこれを食してもらうか・・・・・・クカカカカ」
人のモー二ングタイム(?)を邪魔すんなアル。つーかその怪しすぎる笑いは何?

「この料理を妾が作ったと聞けば、さしものお主とて頭を下げずに居られまい」
何を考えている、この古本娘め。

「この稀代の魔導書であるアル・アジフが作ったのだ。マズイ筈があるまい」
いや俺が聞きたいのはそこじゃない。しかも聞いてないし。

「アル、これなんか青紫色なんだが、何の料理なんだ?」
するとアルは。
「・・・・・・・・・パン?」
「いや、パンってこれどう見ても肉系だぜ?!つーか今の間はなんだ!?間は?!しかも疑問系だし!」
「気にするな。ダンセイニは喜んで食ったぞ」
アル、それは。
お前の後ろで、オレンジから緑に変色しちゃってる奴の事か?

何だ?!これ食うとあんなのに成るのか?!
・・・・・・・無理。超無理。渇かず、飢えず無理還る(?)。
「いらねぇ」
こうなりゃ断固拒否しちゃる。

「そうか・・・食えんか」
ん?なんかアルの様子が・・・・・・?

「ならば、冥界一周ツアーの片道切符をやろう」
「・・・・・・へ?」
それってつまり。

「平たく言えば死ねと言う事だ」
「平たく言い過ぎだァァァ!!!」
つーかそんな事で殺されてたまるか!

「わかったアル、食うからさ。とりあえずその手に持った危険な光を発しちゃってる球を消してくれ」
「ふん。よかろう。ただし残す事は許さんぞ」
ぶつくさ言いながら光球を消すアル。

フォークを片手にいざ勝負!(?)
「そんじゃいただきま〜うっ!」

何だ?!この形容し難いにおひは?!
つーか産廃臭(産業廃棄物臭)じゃんこれ!!
やばいぞこれは!食ったらヘルアンドヘブン!!(意味無し)
つーか無理!!!

「悪いがアル。俺腹の調子が」
「冥界への片道切符」
「イタダキマス」
ど畜生!こうなりゃあ食ってやる!!!




そして俺は。


海老と苺ジャムのハーモニーに負けた。






その日の夜。
ようやく俺は目を覚ました。

著しく衰弱し、頭がやばいくらいにボケ気味であったが

まあ具体的に言うと、どっかの某騎士王の宝具を直撃で食らって尚且つブ〇ークン・ファン〇ズムを五連射で食らって、メソポタミアの王様が持っているギュルンギュルン回り続ける剣で串刺しされたのと同じくらいのヤバさだ。(元ネタ解らない人スイマセン)


「まったく我が主ともあろう者が、なさけない」
なんだとコラ。
「もういい。アルお前もう飯作んな」
次があったら今度こそDEAD ENDだ。

「なんだとぉ!?ええい!もう金輪際お主には飯を作ってやらん!路頭に迷って己の愚行を悔やむが良い!」
いや、そうなったらまたライカさん所行けば良いし

「大体お主には解らんのか?!妾がどれくらい九郎、もとい苦労したのか!」
ついにキれたアル。やばい。このままじゃまた光球だ。

その時。


ピンポーン。

普段鳴らないチャイムが鳴った。

つー事は客?

「はいは〜い♪」
「あ、こら九郎!」
アルうっさい。俺は今、勤労意欲に飢えてるんだ(嘘)

「はい、どちらさんって・・・・・・執事さん?」
「御無沙汰しております。大十字様」
ドアを開けるとそこには、両手に紙袋を抱えた執事さんが立っていた。

とここで説明。
執事さん。本名はウィンフィールドって言うんだけど、何となくそう呼んでいる。
理由?いやだって執事やってるんだし良いじゃんソレで(単純)


「どうしたんだよ執事さん。何か用?」

「ええ、実は最近、大十字様を調査させて戴いたのですが」
聞き様によっては怖い執事さんの台詞。
「大十字様はここ最近まともな食事をしていらっしゃらないようですので」
どこまで見てるんですか覇道財閥の皆さん。
カムバック。俺のプライバシー。

どーでも早く帰ってくれないかn
「そこで僭越ながら私が大十字様の夕食を作りに参りました」

「ようこそ我が事務所へ!!!!」
全力で歓迎する俺。

「では、お邪魔致します」
「どうぞどうぞ!」

よっしゃ!これであの怪奇!青紫の肉火山(今命名)から免れるぜぇ〜♪。

ってよく考えたら。俺執事さんが料理してるとこ見た事無いや(汗)
いや、そりゃあ頭は他の連中(主にメイド三人衆とか)に比べればマトモだけどさ。
あの女装時の台詞を考えると・・・・・・






やばい!今度はシーラカンス辺りが出そうだ!

「執事さん!失礼かもしれねぇけど、料理できんの?」
普段滅多に使わないキッチンで、袖を捲ってた執事さんに聞いてみる。

「ご心配なく。こう見えてもお嬢様が幼い頃は、間食等を担当しておりましたので。最近は執務が忙しくて他の者にやらせていますが」
それを聞いて安心する俺。

「そっか。なら頼むわ」
「まて」
何だよ。ってアル?

「従者よ。今夜の飯は妾が作ると決まっているのだ。お主が作る必要は無い」
オイ!アル!余計な事を言うな!
つーかお前さっきと言ってること違うぞ!
畜生!せっかくのチャンスなのに、また{アレ}食わなきゃいけないのか!?

「お待たせしました。先ずは前菜でございます」
早!つーか俺待ってないよ?!執事さん!

「こちら前菜の胡瓜の浅漬けでございます。大十字様は和食を好むとの事ですので、覇道財閥にて製造した物でございます」
「へー、懐かしいなぁ」
この微妙な塩加減にポリポリいう歯応え。覇道財閥って凄ぇ。

「次は赤味噌と白味噌を合わせた味噌に、ワカメと大根から採った出汁で作った味噌汁でございます」
「へぇー。って執事さんさっきの浅漬けといい、あわせ味噌といい、よく知ってたな」
だって此処、日本じゃないし。
「はい。以前大旦那様から日本食について御教授して戴いたので」
「あー、成るほどね」
覇道鋼造って名前からして日本人だしな。
これなら後も期待出来そう・・・・・・ん?

なんだこの地響き?

「従者よ・・・・・・」
あっアル!すっかり忘れてたよ!
「お主先程から妾に対して、侮辱の他でも無い事をしている。と思わないのか・・・?」
「侮辱でございますか・・・?」
何の事でしょう?と言わんばかりの執事さん。

「先程から妾に見せびらかしているとしか思えんぞ。汝の行動は」
いや、実際そうだから。
「これは!・・・・・大変失礼致しました。私まったくそのようなつもりは無かったのですが」
え、違うの?執事さんどう見ても、アルに挑戦してるしか見えなかったよ(汗)

「まあ良い。従者よ、お主も食ってみるが良い」
アルお前何を・・・ってアレ(青紫の肉火山)やんけそれ!

「では、頂きます」
待て執事さん!それ食ったらやば

「うっ!」
ブクブク・・・・・・バタ。

泡吹いて倒れちゃった。


「・・・・・・って執事さん!しっかりしてくれ!執事さん!」
やべぇ!執事さんの顔が緑色になってるよ!

「おい!執事さん!しっかりしてくれぇ!アルお前も手伝え!」
「まったく近頃の人間は。貧弱にも程が」
「やかましいわぁ!!!」





果たしてウィンフィールドは助かるのか?!
そして九郎の運命は?
次週のブ〇ックジャックにご期待あれ。








嘘です。続きをどうぞ。





「あ〜なんとかなったな」
あれから、魔術で解毒を施した俺だったがあの肉火山、強力だったのか、解毒にかなり時間が掛かった。

その後はその後で、姫さんから軽く小一時間説教を喰らった。
でも一番辛かったのは。
「家のウィンフィールドに何を食べさせたのですかぁ?!」
「ふん。貧弱なヤツが悪いのだ」
「何ですってぇ!この再生紙女!」
「何だとぉ!!この小娘!」
この二人の喧嘩を止めるのは命懸けだ。

それからやっと開放され、事務所に帰る途中の俺たち。
横には頬を膨らましたアルが居る。

「ふん、まったくあの小娘は。世界が変わっても生意気よのう」
「いや今回はお前が悪い」
ったく自分の非が認めろっての。

「大体お前自身が一番、料理苦手なのは解ってるだろうが」
なんだって急にあんな事を。
「お主だ」
「は?」
突然の台詞についていけない俺。

「お主の為に妾はあのような事をしたのだ。お主と妾は愛し合う仲では無いか・・・!」
「っ・・・・・・」
アルの悲痛なそれが、俺の耳にはやけに大きく聞こえた。

「妾は人間では無い!お主との間に子を為す事も出来ない!ならば妾がお主へ何が出来るかと」
「アル・・・・・・」

「だからせめて料理だけでも。ってか」
俺の言葉に無言で頷くアル。
さっきから俺と目を合わせようとしない。

結局お前は。
「俺にベタ惚れって事か♪」
「にゃ、にゃあ?!」
アルを抱き締める俺。例によってアルの顔は真っ赤になっている。可愛いヤツだなぁもう。

「よし、じゃあ今日は朝までヤルか」
「なっ?!何で汝はそこでそういう方向に行くのだ?!お主にはデリカシーという物が無いのか?!」
「そんなモン無い。じゃあこのまま事務所に帰るぞ」
「嫌じゃ!降ろせ九ろ・・・むううっ!
強引に口を塞いだ。勿論俺の口で。

「んっ・・・!んん!むうううう!!」
しかもかなりディープなヤツを。

「ぷはぁ・・・く、くろおぅ・・・」
「はいはい、んじゃあ続きは仲でな♪」
頬を紅潮させたアルを抱きながら、俺は事務所への道を歩んで行った。

まあその後は秘密って事でよろしく。


END






おまけ



鳥の囀りと朝日の眩しさで、俺は目を覚ました。
隣では、肢体にシーツのみを羽織ったアルが寝息を立てている。
思わずルパンダイブ(笑)をし掛けた俺だが、流石に昨夜のが祟ってもう無理だった。

ジュー・・・

ふとキッチンから何かを焼く音がした。
アルは隣に居るし・・・じゃあ誰だ?

寝間着のまま、用心の為にクトゥグアを取り出して、キッチンに向かう。
「誰か居るのか?」

キッチンに向かって声を出す俺。

そこで俺が見たのは。




「てけり・り」
触手の先で、器用にフライパンを返すダンセイニだった。

なんてこったい。

「お前、料理できんの?」
もはやクトゥグアを持ち上げる気力も無い俺。


「てけり・り♪」
どこか嬉しそうに鳴く(?)ダンセイニ。

「・・・・・・・」
昨日の苦労は何だったんだ?という九郎の呟きには、何処か虚しさが漂っていた。



今度こそEND。



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