機神咆吼デモンベイン&魔法少女リリカルなのはA's SS
『機神咆吼!リリカルベインA's』

by 梁 明


 真白な部屋。
 壁も天井もベッドも。
 異なる色を持つものはベッドで横たわる二人の男たちとそれぞれに繋がれた医療機器。
 ピッ、ピッと規則正しい音を繰り返しているが、表示されている数字やグラフは通常よりも低い。あるいは薬を投与しているせいで高くなっているのもある。
 ガラス一枚を隔てて二人の少女がいる。白いフリルのついた短いワンピースの少女と赤いフリルだらけのドレスの少女だ。
 白い少女がアル・アジフ。史上最強の魔導書『ネクロノミコン』のオリジナルである。
 赤い少女が覇道瑠璃。世界に名だたる覇道財閥の総帥である。
 二人は沈痛な面持ちでベッドに横たわる二人を見つめていた。
 一人はアル・アジフのマスターにしてデモンベインの操縦者、大十字九郎。先の戦いでアンチクロスの鬼械神に囲まれ、抗いようのないフルボッコととどめの一撃を受け、先ほどまで生死の境をさまよった。
 もう一人は覇道家執事にして瑠璃のボディーガードでもあるウィンフィールド。司令室に侵入してきたアンチクロスが一人、ティトゥストとの一騎打ちの末に文字通り奥の手を使われ、こちらもまた重傷だ。
 アーカムシティー上空には無限心母がクトゥルーに呑み込まれ、まがまがしい姿でショウキを漂わせている。一般人が目にするだけで発狂死すること間違いなしの凶悪さだ。だが今はブラックロッジの攻撃はなりをひそめ、小康状態にある。せめて九郎が目をさませば、デモンベインによる攻勢のチャンスもあるのだが……

「私のせいで、大十字さんが……」
「そうだ。汝のせいだ」
「…………」
「だがな、小娘。今は嘆いている場合ではない」
「!」
「我等だけでも反撃の準備は整えよう。今はそれしかあるまい」
 悲壮感漂う二人。瑠璃は涙をぬぐって立ち上がると、
「アル・アジフ、こちらへ」
「どこに行くのだ、小娘?」
 有無を言わさずにある場所へと移動する。
「こ…ここは……」
「お爺様の研究や収集物の倉庫です。この中に私たちでも使えるものがあるかも知れません」
「うむ。これならば役立つものが探せるやもしれぬな」
 二人は倉庫に入って行った。
「?!」
「こ…これは!!」
 中央に唯一ある作業台には、銃の弾丸とマガジン、そして小さな赤く丸い宝石のような玉と、金色の三角の形をしたバッジのようなものがあった。それぞれにメモ書きが添えられている。
「この赤いのは…レイジ○グハート・エクセリオ○?」
「こっちにはバ○ディッシュ・アサ○トとありますわ」
『Yes,Master!』
『Yes,Boss!』
 赤い宝石と金色のバッジが光りながら返事をした。
「な、なんだと?!」
「い、一体?!」
『Call me,Master』
『Call Setup!』
 戸惑う二人。だが、それぞれが“それ”を手にしたとき、使い方のイメージが浮かんだ。
「なるほど。これならば彼奴等に対抗できるな」
「私にも使えそうですわ」
 二人がうなずく。
「レイジ○グハート・エクセリオ○!!」
「バ○ディッシュ・アサ○ト!!」
「「セットアップ!!」」
 金色の光がそれぞれを包み込む。アルが手にした赤い宝石は直径十五センチほどの大きさとなり、周りを金色の枠が支える形になる。そこから下にはピンク色の棒が伸び、枠と棒の付け根になぜかマガジンがくっついていた。パッと見、魔法のステッキといったところか。
 瑠璃の持っていたバッジは一度分解し、金色のレンズのようなものになる。その片側に黒い金属の斧の刃が付き、さらに下へと棒が伸びた。そして棒の付け根になぜかリボルバーがくっついている。簡単に言い表すと、できた形は戦斧であった。
 更に、光の中でアルの服は一旦消え、新たに白い服へと変わった。上は長袖のセーラー服風で襟元に大きな赤いリボン、スカートは足首まで届くほどに長くなり、上下とも青のラインで縁どりされている。黒い小さいソックスに白い靴はかわいらしく、アーマーグローブもちょっと変わったアクセントになっていた。
 瑠璃の服も光の中で消え、黒の袖なしレオタードに白いミニスカート、黒いニーソックスに黒マントだ。靴は金属の鎧で、肘まで覆うアーマーグローブがあるところから接近戦向きなのかもしれない。
「むー」
「ちょっと微妙ですわねぇ」
 瑠璃は戦闘司令室での服装と似ているのであまり違和感はないが、アルはかなり違う姿にとーい目となっている。
「だけど、これで戦う目算が付きましたわ」
「ああ、不本意だがな・・・」
 ちょっと笑いをこらえてる風の瑠璃をにらみながら、アルはため息をつく。


「さーて、そろそろ次の段階に移行しても良かろう」
「ふむ、魔力の方も大部安定しているし、問題なかろう。ああ、問題なかろうさ」
 かつてマスターテリオンが主であった部屋にアウグストゥスとウェスパシアヌスが立ち、無限心母内のモニターを見ながら次の段階へと移行する相談(ほとんど確認だが)をしている。
 その時、無限心母と一体になったクトゥルーから奇妙な警告を受ける。
「む、何事かね?」
「うーむ、どうやらアル・アジフと覇道の小娘がこちらに向かっているらしい。邪神の頭が一部、やられたようだ」
「そうか、そうともさ。彼、否、彼女たちが黙っているはずもないさ」
「だーがそう簡単にやられるクトゥルーではないはずだ。一体何が起きているのだ?」
 二人が敵の映像をとらえたモニターを見たとき、
「のああああああっ!」
「な! なんと?!」
 この大仰な二人が言葉を失った。そのモニターには、生身で空を飛び回りながらクトゥルーと戦う二人の少女が映っていたからだ。空を飛ぶのは構わない、アンチクロスならば誰でもできることだからだ。二人が驚いたのは、クトゥルーと戦う二人が魔法少女だったことに他ならない。
 アル・アジフが白い服の、そして覇道瑠璃が黒い服の魔法少女だ。二人は足元に魔法陣を展開して立ち、強力な魔法で邪神の頭を撃ち抜いて爆散させたり、巨大なデスサイズで斬り落としたりしている。もう、でたらめな強さであった。
「何んだアレは?! 機械神よりも強いじゃないか!」
「これは・・・私にもわからぬよ。おおさ、このようなデタラメなものは初めてだ」
 ドクター・ウェスパシアヌスですら考えも及ばないものらしい。確かに、これまでの魔導とは系統からして違いすぎるのだから。
「全く! きりがありませんわ!」
「だが、やるしかなかろう! エクセリオン・バスター!」
 シューティングモードのレイジ○グハート・エクセリオ○を構え、魔法弾を打ち出す。狙いは過たず邪神の頭を砕いた。
「そろそろ本体を叩くぞ!」
「はい!」
 二人は無限心母の上空へと飛び上がる。そして足元に強力な魔法陣を展開した。
「「カートリッジ・リロード!」」
 レイジ○グハート・エクセリオ○とバ○ディッシュ・ザ○バーが一斉にカートリッジを全弾リロードする。一時的に脅威的な魔力がほとばしった。
「な、何だ、この魔力は!」
「わからん! この私にもわからないのだ! そんな馬鹿な!」
 アルと瑠璃の魔力を感じることができるため、余計に信じられない。
「雷光一閃! プラズマザンバー・・・」
「これが妾の全力全壊! スターライトー・・・」
「「ブレイカー!」」
 息の合った超強力な攻撃魔法が無限心母を含むクトゥルーに炸裂する。
「ぶるおおおああああ!」
「なんとおおっ!」
 激しく揺れる無限心母の中でアウグストゥスとウェスパシアヌスは、外なる神を封じた旧き神の声を聞いた気がした。

 ズドオオオオオン!

 クトゥルーが二人の攻撃で焼かれ、核となった無限心母ごと時空の彼方へと封じられていく。丁度、旧き神が邪神を封じたように。そして、全てが空間に呑み込まれて消えると、後には建物の崩壊した街と、青空が残った。
「・・・終わったの?」
「ああ、妾の長い戦いも全てな・・・」
 アルと瑠璃が地上に降りる。今までの長い戦いに終止符を打ったアルは、久しぶりに広がった青空をまぶしそうに見上げた。


「そ、そんなアホな・・・」
「デモンベインよりも強いんですかぁ・・・」
「魔法少女のアルたんもかわいい・・・ハァハァハァ・・・」
 二人の戦いを司令室で見ていたチアキたちは、開いた口がふさがらなかった。例外も混じってはいるが(笑)


 こうしてナイアルラトホテップの野望を挫いた二人は、別の計画を発動した新たな敵と戦うことになっていくが、それは語る機会があればお目にかかることもあろう。


追伸
アーカムシティーではその後、魔法少女のコスチュームと魔法のステッキが爆発的に売れたそうな。無論、覇道財閥の肝入り(笑)



 ある入院患者の魂の叫び。
「「オレの」「私の」出番がーーー!」


合掌



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