−来館者数最高記録突破記念 斬魔大聖デモンベイン Short story−
空を自由に……
by 梁 明
どがしゃあああんっ! ごががあああんっ!!
今日もアーカムシティに破壊音が響く。言わずと知れた、
「えっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ〜〜〜〜〜っ!!
今日もまたまたやって来たっ!
超っ!
天っ!
才っ!
ドオオ〜〜〜〜〜クタアア〜〜〜〜〜ァッ!!
ウエ〜〜〜〜〜〜〜スット〜〜〜ォッ!!」
である。
相も変わらずのドラム缶ロボを駆り、あたりの建物を壊しまくっていた。
「憎悪の空より来たりて」
「正しき怒りを胸に」
「我は魔を絶つ剣を執る!」
「「汝、無垢なる刃、デモ〜〜ンベイ〜〜〜〜〜ン!!」」
大空に巨大な魔法陣が奔り、圧倒的な鋼が大地を揺るがす。
正義だけどアーカムシティを破壊する、機械神・デモンベインだ!
「毎度毎度毎度毎度毎度毎度……
何度街を破壊してはオレにやられたら学習できるんだ、この○○○○野郎!!
ちったぁ、ご近所様の迷惑を考えやがれ、こんちくしょうが!!」
この時の大十字九郎は切れていた。
無理もないだろう。ウ○コの最中にアルに引きずり出されてきたのだから。
ま、個人の都合は置いておいて。
闘いに臨む両者。片や破壊の美学を追究する探求者、片や日々の糧を得るために切羽詰まった仕事を続けざるを得ない困窮者。どちらが切実かは自明の理であろう。
とにかく、二人の間には得も言われぬ緊張感が高まってきた。
ズドドドドドドドド………
「ぬおおっ!? 何であんなのが飛び上がれるんだ?!」
九郎の驚きは当然だったろう。何せ、どう軽く見積もってもデモンベインの五倍は重量がありそうなドラム缶ロボットが、機体の底から巨大な炎を吹き出しながら空に舞い上がったのだから。そしてそんな非常識なモノが、頭頂部に“ドリル”を生やし、デモンベイン目がけて特攻をかましてきたのだ。
「おわああああぁっ!!」
辛うじて避けるデモンベイン。奴はそのまま、地面に潜ってしまう。
「な、何だかイヤな予感が……」
九郎は一瞬過ぎった勘に任せ、ティマイオスとクリティアスを起動し、地面の下から突き上げてくるドリルを避ける。
「はあ、はあ、はあ……
あんなのにやられたんじゃ、情けなさ過ぎて明日の朝日が拝めなくなるぜ」
「全くじゃな。九郎、とっととアヤツを片づけてくれようぞ!!」
「ああ、だがこんな時、自由に大空が飛べたなら……」
九郎がそう、呟いた時、
『なんや九郎ちゃん、空が飛びたいンか?』
「チアキさん?」
『そうや! 九郎ちゃん、今、空を自由に飛びたい言うたな?』
「ああ、言ったけど」
『それならウチに任しとき! こんなこともあろうかと、デモンベインに新たな機能を組み込んどいたんや!』
「それって、空を飛べるようになると言うことか?!」
『せや! アルちゃん、右の人差し指のちょい左側にスイッチがあるやろ』
「ああ、これか?」
『そいつをダブルクリックや』
カチカチッ!
アルがスイッチを押すと、デモンベインのトレードマークであるライトグリーンの髪がするすると短くなっていき、全て頭の角に収容された。そして、角の先を支点に、角が左右に開いたのだ。その姿は……その姿は………
「タ、Tケ□×ター……」
モニターを見ながらウィンフィールドが呟いた。瑠璃とソーニャとマコトは目と口をあんぐりと全開にし、真っ白な灰になっている。
モニターに大映しになっているデモンベインの頭には、まるで向日葵の双葉が乗っているように見える。どう贔屓目に見ても、ほのぼのした雰囲気だった。
チアキだけは目を輝かせ、次の指示を出す。
「今や! 断鎖式シールド全開!」
コックピットでは、モニターに映るデモンベインの姿に、これまた真っ白になっているアルと九郎が、チアキの声にただ従い、ティマイオスとクリティアスを起動した。
ぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷる〜〜〜〜
ふよふよふよふよふよふよふよふよ〜〜〜〜
回転を始めたTケ□×ターによって、デモンベインの巨体が宙に浮く。どうやらティマイオスとクリティアスの力場を頭の羽根に流し込み、その力を使って巨体を浮かべているようだ。方向転換は足のシールドの反発力を使っているらしい。
ぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷる〜〜〜〜
ふよふよふよふよふよふよふよふよ〜〜〜〜
ぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷる〜〜〜〜
ふよふよふよふよふよふよふよふよ〜〜〜〜
ぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷる〜〜〜〜
ふよふよふよふよふよふよふよふよ〜〜〜〜
ゆっくりと右に左に飛び回るデモンベイン。初めてTケ□×ターを使ったノ○タ君のようだった。
その姿を見てしまったドクターウェストは、ドラム缶ロボのコックピットで爆笑していた。というか、笑いすぎて死に瀕していた。
そんな様子を遠くから見つめる目があった。
「くっくっくっくっ……
見事に楽しませてくれる、大十字九郎………
こんなにおかしかったのは、今まで繰り返した世界でも類を見ないな、エセルドレーダ」
真っ白になっていたエセルドレーダには答えられなかった。
もう一つ、彼らを見つめる目があった。
「あはははははははははははははははははははっ!!
最高! 最高だよ、九郎ちゃん! 君ってヤツは、どこまで僕を楽しませてくれるんだい?!」
腹を抱え、目に涙を浮かべて混沌に浮かぶ闇は大爆笑していた。
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