−7777HIT記念 DADDYFACE Short story−

by 梁 明


 ざっざっざっ………

 枯れ葉舞うアパートの前、鷲士が落ち葉を掃いている。
「ずいぶんあるなぁ………」
 そう言いながら、落ち葉の山に火をつける。


 ぱちぱちぱち………


 ゆっくりじわじわと燃え広がり、細くたなびく煙が立ち上っていく。
 高い高い秋の空に、ヒツジ雲がぽっかりと並んで見える。

「ふう………、秋だねぇ………」
 しみじみと呟く。



「たっだいま〜〜〜〜!!」
「やあ、お帰り、美沙ちゃん」
「う〜〜〜っ、最近、朝夕冷える〜〜〜」
「ほら、たき火に当たるといいよ」
「あっ、あったか〜〜〜い♪♪」
 二人並んでしゃがむ。もう真上当たりは空もかげり、夕焼け色がそろそろ広がり始める時刻だ。


「やあ、鷲士」
「あ、美貴ちゃん。いらっしゃい」
 突然現れた麗女に、笑顔を向ける。
「途中で買ってきたんだ」
 にこにこ笑顔で持っている袋を見せる。
「あ〜〜〜っ、石焼き芋じゃん!」
「一緒に食べよう♪♪」
 頬を赤らめながら、一本取り出す。
「ああ、待って、美貴ちゃん。
 実は………」
 鷲士が枝をたき火に突っ込むと、焼き芋が出てきた。
「あ〜〜〜〜〜っ!! こういう魂胆だったんだ〜〜〜!!」
「最初は唯の掃除だったんだけど、お隣のおばちゃんに貰ったんだ。
 それなら美沙ちゃんが帰ってくる前に焼いておこうと思ってね」
「う〜〜〜〜ん、鷲士くん、アリガト〜〜〜♪♪」
 ゴロニャンと甘える美沙だったが、
「ふ〜〜〜ん、鷲士。あたしは?」
「う〜〜〜ん、実は、おばちゃんから貰ったのが『二人に』ってだったんで、二個しかなくってさ……
 だから美貴ちゃん、僕と半分こしようよ、ね?」
 立場的には不満があったが、鷲士と半分こというシチュエーションに、反対するはずがない。
「うん!!」
 実に嬉しそうに、鷲士の側にしゃがんだ。


「何をやっているのですか、揃いも揃って………」
「やあ、樫緒くん。どうしたのかな?」
 邪気のない笑顔を向けられ、一瞬気後れする樫緒だったが、
「こちらの業務が一息ついたので、ちょっと姉様に会いたくなったんです。けっして他意はありません」
 すまして言う。実は結城の帝王学の勉強の日取りについて、鷲士に話しに来たのだが、それをこの場で口にすれば誰かさんと誰かさんの機嫌を損ねるという、唯それだけというにはあまりにも大きなリスクを伴う理由ではぐらかした。
「じゃあ、こっちにきて樫緒くんもたき火に当たるといいよ」
 鷲士の手招きに何故か素直に応じ(後ろ暗いところがあった故に)、美沙の隣りにしゃがんだ。


 ぱちぱちぱち………

 がさがさがさ………


「そろそろ焼けたみたいだよ」
 鷲士が枝を使って転がした芋は、しっかりといい感じに焼けたようだ。
「ホラ、熱いから二人とも気をつけて………」
「ほ〜〜〜い」
「ありがとうございます」
 鷲士の手で二つに分けられた焼き芋は、割れたところからうっすらと湯気が上がり、見事なまでにホコホコだった。
「こっちは美貴ちゃんの分」
 もう一本の芋も分け、美貴に手渡す。
「ありがと、鷲士♪♪」
 そして四人が芋の皮を少しむき、一斉にかじりついた。
「はふはふはふ…………あっちちち………」
「ほふほふ………おいちい〜〜〜♪♪」
「ん〜〜〜〜、最高〜〜〜♪♪」
「こんなにおいしいなんて、思いませんでした」
 それぞれが舌鼓を打ち、ほくほくと幸せそうな笑顔になった。


 鷲士はたき火を始末し、燃え残りや灰をアパートの庭の角に埋め、たっぷりの水をかけた。
 これなら分解されて養分になるだろう。
 その間に美貴と美沙と樫緒はアパートに入り、テーブルを囲んで鷲士が来るのを待つ。
 鷲士が来たら、美貴の持ってきた石焼き芋をほお張りながらの会話になるのだろう。


 今日の草刈家は、穏やかに、ゆるやかに、ほのぼの〜としていた。




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