−20000HIT記念 DADDY FACE Short story−
狐と月と龍の騒音曲

by KAGURA


「・・・虚しいですね。どんな強力な力では、抑える事の出来ない・・。謂うなば【天災】に近い。僕達は、ただ通り過ぎるのを待つしかない」
 悲しい顔で周りを見ながら、榊原幽は呟いた。
 周りには、言い表す事が出来ない音が鳴り響く。
 すると隣に居る雪人が、涙目で訴えて来た。
「幽、あの三人を止めてくれ!! 俺達が巻き添えに遭う前に・・」
「無理です」
「言い切るな! 美月を止めれるのはお前しか居ないんだ」
「・・・・美月さんだけでは無いですよ? 弥生さんに操さんも居ますからね」
 雪人に謂うと、再び三人が闘っている方向を見た。
 「葉月 操(はづき みさお)」は本気モードなのか、黄金に輝く九本の尻尾を靡かせながら、灼熱の火炎を超圧縮して上空から雨の様に無数に降らしていく。最高熱量は、数千度〜数億度に達している。
 「水無月 弥生(みなづき やよい)」に至っては、魔法剣<プロヴィディンス>に体術・魔法を駆使しながら灼熱の炎を見事に避けながら操の間合いに入る様に努力をしていた。
 美月は、伏羲の父親である遥照の造った業物<月詠>と「結城の力」を駆使して、操と同じく空中戦で勝負をしている。しかし、操の半自律型の炎の壁に邪魔されて近付けていない。
「ぐぅ、凄まじい熱だぞ」
「・・流石は神に近い力を持つ妖怪・九尾の狐・・ですからね。下手に近づくと、血液でさえ沸騰してしまうでしょうね」
「お・・おい、美月は大丈夫なのか?」
「今の所は・・。結城の力を使って、熱その物を遮ってますからね。弥生さんも、風の魔法を使って似た様な事をしてますよ」
 心配そうに言った雪人に、幽はそう言った。
 確かに、結城の力を使う事によって熱を一時的に遮るが、全てでは無い。
 数千度を超える熱を遮った所で約数百度に為るだろう。
(はぁ、最初は唯のお茶会だったのに・・・)
 誰にも聴こえない程度の吐息を吐いた。
 全ての始まりは、今から数十分前に遡る。


                   ○        ○        ○


 草刈家の中庭では、美月・弥生・操に幽の三人がお茶会をしていた。
 最高級品の茶葉が手に入ったので、一緒に飲んでいる所であった。値段は150万程度だ。
『・・・・・・・・・・』
「―――うぅぅ」
 幽は、出来る事なら泣きたかった。
 三人の無言のプレッシャー。無数の妖魔・魑魅魍魎に囲まれたよりも更に重い重圧を感じる。
「ねぇ、幽。明日って暇?」
「えっ・・と。はい、用事は無いですけど」
「じゃあ、買い物に付き合ってくれる? 重い荷物があるのよ」
 良いですよ・・と返事をしようとした。
 だが、突然横から弥生と操の二人が反論をする。
「美月ちゃん、ずるいっんだ〜。また抜け駆けを使用とする〜」
「そうです。第一、お兄さんに手伝って貰えれば済む事でしょう!」
「・・・雪人兄さんは、FTIの用事があるのよ」
 美月は棒読みで言った。
 だが、確か雪人は家でゆっくりと身体を休めると言っていた。たぶん、咄嗟に思いついた嘘なのだろう
「ふ〜ん。そうなんだ〜。じゃあ、私達も付いてって良いよね〜」
「そうですね。幽、一人に任せるのは可哀想ですし・・・」
「・・・・・・大丈夫よ。幽は、男なんだから・・。付いて来なくても」
 またもや棒読みで言う。
「騙されないよ。どうせ、ホテルに連れ込んで、そのナイチチのツルペタな身体で幽ちゃんに迫るんでしょう〜」
「な・・ナイチチのツルペタは関係無いでしょう!!」
 美月は、自分の眷属の業物である<月詠>を召喚した。

――月詠流・月照(げっしょう)

 月詠は、光速を超える速さで操に向って行く。
 ――直撃をする。
 誰もが思った。
 だが、操に当る寸前で超高密度に圧縮された炎の壁に当り途中で止まってしまう。
「・・・訂正しなさいよ。私よりも、弥生の方がナイチチなんだから」
「如何いう意味です!」
 間髪居れずして、弥生は横に置いていた魔法剣<プロヴィディンス>を抜くと美月に向って斬りかかって行った。それを<月詠>で防いだ。
「その侭の意味よ、弥生」
「私には、まだ未来があります。だけど、○○歳を超えたアナタには一欠けらの希望もありません!!」
「ブチィッッ」
 傍観をしていた幽は、一瞬にして血の気が引いて行った。
 結城の血族であの美貴が為る事で有名な『幽鬼』。
 最近は、摩訶不思議な事に一番美貴から遠い存在とされていた美月に受け継がれている。
 その事に付いて、師匠である伏羲は『・・・お前は気付いてないかも知れないが、美月は精神面で美貴にある意味近いからな・・』と言っていた。
「ふふふ。弥生ィィ、操ォォ。幽を奪うのなら・・・・・・・・・・・・殺してやる!!」
「・・これが、巷で有名な『幽鬼』かな〜」
「たぶん、そうでしょうね」
 二人供、通常時の数十倍の殺気を放つ美月を凝視しながら、そう呟いた。
「美月ちゃんは本気か〜。こっちも、それ相当の実力相手しないと悪いよね〜」
 操は、背後に黄金に光り輝く九本の尻尾が生えた。
 まるで見る者を魅了させる程に、美しい。
「・・・操に美月が本気に為ったのは解りました・・。ところで、如何して二人供私に炎に槍を向けるのかな? 正当防衛だから・・死んでも恨まないでね」
 弥生の背後に龍の羽が二対四枚生えた。
 これは、弥生が<龍の因子>を受け継いでいる事から可能なのだ。
 本人がその気に為れば、己の姿を龍に換える事も可能である。その場合の実力は、龍族最強の種族「デス・バハムート」すらも寄せ付けない。
「操、弥生。死になさい!!」
「私は、この二人に負ける気は無いな〜。必然的に〜」
「アッパー狐に年老いた御婆ちゃんに負ける気は無いですね」
 そして、三人は一斉に闘い始めた。


                  ○         ○         ○


「・・・幽。お前の所為なんだから、責任を持って止めて来い」
「だから不可能ですよ」
「不可能でもだ。お前は、三國志に置いて最高の軍師<諸葛亮孔明>を凌ぐ才力に権謀術数が得意なんだろうが! 冴葉さんに紗慧だって、シュミレーションゲームじゃあ敵わなかった」
「・・・まあ、得意と言えば得意ですが。僕は師匠に勝ったこと無いですよ」
 雪人の言葉に、幽はそう反論した。
 確かに、幽は本当の意味で<文武両道>を成し遂げており、草刈家に居候する前はFTIに勧誘する人達が態々秘境と言われる所まで来たまでだ。
 その幽ですら、伏羲に敵う事は出来なかった。
 どんなに巧みな戦術・戦略を立てたとしても、少しばかりの隙で簡単に見破られてしまう。
「・・・良いから、お前が何とかしろ! 親父にばらすぞ」
「な・・なにをですか?」
「美月と一緒にお風呂に入ったり、美月と○○○をしそうに為った事を・・・」
「そ・・それは、美魚さんの悪戯で」
「・・・言うぞ?」
 更に雪人は、追い討ちをかけて来た。
 幽は、鷲士が苦手だった。心の闇が深すぎる。
 みすぼらしいが、それ以上に最近は威圧感が増して来たように思われた。
 何時も生活をしている家族には解らないが、怒った鷲士を見た時は久し振りに手に汗がにじみ出て、微かに震えた。
 ――出来たなら闘いたくない。
 それが素直な幽の感想だ。
「・・・・解りました」
 幽は、仕方なく三人に方向に向って行った。


 一方で、三人は熾烈な戦いをしていた。
 人知を大きく超えた闘いとは、こう言った闘いを言うのだろう。
「・・・龍の因子よ我が呼びかけに応えよ」

――闘龍波

 弥生の持つ魔法剣<プロヴィディンス>から、光り輝く龍が一直線に向かって行く。
 自分の闘気を圧縮して、それを瞬時に放つ『闘龍波』。その威力は「核」と同格。
「ふ〜んだ。甘いよ〜」
 操は相変わらず陽気な声で言った。
 左手に巨大な炎を圧縮していく。

――爆炎の槍(フレイム・ランス)

 光り輝く龍と爆炎の槍が、激しく衝突し合う。
 ホボ互角と言って良いだろう。
『はあああぁぁぁ』
 しかし、長時間同じ状態が続くとその空間は限界を超えて・・・・・爆発をする。
 予想した通りに、次の瞬間。大爆発が巻き起こった。
 瞬間の最大温度は、数十億度に達した。
「この瞬間を待ってたわ・・!」
 二人が体制を崩した瞬間、美月の所有している業物・月詠が輝きだした。

――月詠流奥義・月壊(げっかい)

 月が壊れる・・。その威力は、美緒の必殺技で有名な「天地竜杞憂」の数倍。その上、今は「幽鬼」と化しているのだ。威力は数十倍に跳ね上がる。
 もちろん、二人が気付いた時には体制が立ち直すのは無理に近かった。

――『天宙眼』・・・月壊・解析・完了・削除(デリート)

 破壊の力の塊は、まるで空気の様にパアーと消えさった。
 こりが天宙眼の能力の一つだ。解析する事により、技・術をコピーをいるだけではなく、削除してしまう。勿論、天使・悪魔・妖魔・魑魅魍魎に人間でも解析さえしてしまえば、存在自体を消してしまう事が出来る。
 まあ、他にも相手の能力を解析する事によって自分にその能力を植え付ける事が出来る。
「皆さん、もう闘うのは止めにしません? 皆に闘って欲しくないんだ・・・」
 優しく微笑みながら、美月・弥生・操の三人に言った。
 すると、美月は『幽鬼』が解けて、弥生は「龍翼」を、操は「九尾」を収めた。
「・・・近所迷惑は駄目ですよ? 一般人に迷惑が掛かりますからね」
『・・・・・・ごめん(なさい)』
 後ろの方で、雪人が『俺達の方が迷惑を被ってるんだよ』と呟いたが、この際無視だ。
「明日は、用事ないですから皆で遊びに行きません? FTIが新しく造ったテーマパークに」
『良いの?』
 コクッンと頷いた。
 そして、ようやく闘争曲は幕を閉じた。


 それから、FTIが経営するテーマパーク<デュラン>に来た四人は、草刈家の尾行(鷲士・美貴・美沙・樫緒・雪人・美花・美緒)に咥えて、神城高校嫉妬倶楽部の面々がオーパーツなどを持って邪魔をしに来て、血と爆音に奇声の最悪の休日になるのだが、それきまた別のお話


                           fin



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