−相互リンク記念 クロスオーバーSS−
DADDY FACE & 斬魔大聖デモンベイン
『女装コンテスト
九頭竜式美女生成術 <vs 九郎>前編』
by Sin
「はぁ……なんでよりにもよって、冴葉さんに見つかるかなぁ……」
以前、怒れる兄貴対策に女装術を使った所を冴葉さんに見つかって以来、俺は世界各地の美女コンテストに出場させられていた。
現在、28連勝。しかも、俺が男だとばれたことは一度もない。
まあ、身体の造りそのものを変えてしまうから、当然と言えば当然か。
それでも、その度にファンが増えてしまうのは本当に困った話だ。
一番困るのは、俺と美月を勘違いして、美月の前で一番言ってはいけないことを言ってしまう奴がいること……
それは……
「なんだ、でかいと思ったのにパットかよ……」
あの言葉を聞いた後の美月の対応はいつも早い。
俺の目には留まらない程。
気がつけばその場にいたはずの輩は銃弾で髪を虎刈りにされた上、失禁する始末だ。
そのうえ…美月の機嫌は最悪まで落ち込んで、機嫌取りに苦労するのはいつも俺。
全く、どうにかしてくれよ……
そんなことを考えていた時だった。
「雪人さん。次の舞台が決まりましたよ」
「……冴葉さん、俺、べつに役者でもなんでも……それにそろそろこんな……」
言葉に詰まる。
微笑む冴葉さんの手には一枚のDVD。
その内容は……推して知るべし……
「さぁて、じゃあ次も優勝するかぁ………ぁぁ……はぁ……」
「では、今回の舞台ですが……アーカムと言う街をご存じ?」
「覇道財閥の街だよな? 結城やFTIとタメ張ってるスゲェ財閥が、たったの一代で築き上げたって聞いたよ。まあ、それはうちも同じだけどさ」
「ええ、FTIとも業務提携しているのですが…今回、そのアーカムシティーで、女装有りの美人コンテストが行われることになったので、そちらに参加して頂こうかと」
「へぇ……珍しいな。女装コンテストとか、美人コンテストとかなら沢山あるけど、女装有りの美人コンテストか……」
「もし、コンテスト終了時点までに女装がばれなかった場合、特別賞もあるらしいですよ」
「………まあ、どうせやらされるなら、それくらい面白そうな方がいいな…わかった。参加するよ。いつから?」
「すでに受付は完了しておりますので、明後日に直接参加して下さい」
「ん、わかった」
「では」
そう言って冴葉さんが部屋を出てしばらくの後…
俺は微かに口元を弛める。
「……今回は…少し楽しめそうだ…」
雪人がそんなことを呟いているのと時を同じくして……場所はアーカムシティー
「だ〜か〜ら〜っ! なんで俺がンなもんに出なくちゃならねぇんだよ!」
いきなり呼び出されたかと思えば、なにが、『美人コンテスト』に出ろ、だよ…
「何故? 何故と仰いますか、大十字様!?」
詰め寄ってくる執事さん。
いや、だから、マジ、マジに怖いって。
「う…な、なんだか怖いぞ、執事さん…」
「……失礼。ですが、この大会は貴方に出場して貰わねば、意味が無いのです」
「何故に?」
「この大会は、貴方のために、貴方の、あの、完璧なまでの見目麗しき姿を、あらゆる人々に知って頂くために開くのですから! ああ、彼程までに完成された美を、このまま世俗の中に埋もれさせてしまうなど、許されていいのか! いや、許されるはずがない!」
「ちょ、ちょっと、ウィンフィールド……」
1人で勝手にどんどん盛り上がっていく。
さすがに姫さんもでっかい汗浮かべて唖然と見つめている。
とりあえず執事さんの好きにさせて置いて今のうちに……
「どこに行かれるつもりです、大十字様?」
「俺はそんなもんに興味ないし、帰るわ」
「1000万……」
「へ?」
ポツリと呟いた姫さんの言葉に俺の動きが止まる。
あ、いや、わかってる。わかっては…いるんだ。
だ〜か〜ら〜、別にそんな、金に釣られたとかそういう事じゃ…
って、おい、ちょっと待て! 嘆くな! 喚くな! 囀るな!!
「もしも、女装がすでに知っている私達以外にばれなければ、1000万の賞金を出しましょう」
「い、い、一千万〜!?」
「ほぅ、面白そうではないか。九郎、やってみろ」
「アルまで、いきなりなに言ってやがる……」
「賞金額訊いて食指を動かしておる汝に言われる筋合いはない」
「ぐ…ッ……」
「それともうひとつ……」
「なんだ?」
「貴方が他に出場する女性達を押しのけて優勝した場合…貴方への契約を、恒久的なものとしましょう。簡単なペット探しから財閥の浮沈に関わる大仕事まで、様々な依頼を回させて頂きますわ。一層探偵らしくなるのではなくて? これでも、引き受けて下さらない?」
「引き受けましょう!」
0.0002秒。
金に釣られた訳じゃない……………信じれ。
「……汝、そう言う辺り、少しは成長せんか……」
呆れたようなアルの言葉。
……うるせェ……金のない人間は、切実なんだよ……
そして……様々な思惑が絡み合い……
コンテスト当日…
それぞれに割り振られた控え室で俺にメイクをしてくれる覇道財閥のメイド達。
「うわ、あ、あ、あぁぁぁ……」
「あ、あかん、九郎ちゃん、やっぱ完璧すぎやわ!」
「……男……男なの……男なのよ……固いの……臭うの……でも……はぁ……はぁ……ア、アァァァァアアァァッ、お姉さま……」
ぞぞぞぞぞぞぞぞくぅぅぅうぅっ!?
「それはやめろっちゅ〜に!!」
マジで怖い。他の2人はともかくとして…
息荒いし、なに考えてるかわからな……いや、わかりたくもない……
「……大十字さん……」
「おぉ……大十字様……なんと……なんと美しい……」
「……相も変わらず……洒落にならぬな……」
そう言いつつ部屋に入ってきたのは姫さんに執事さん。それにアルだった。
当然のようにマコトはアルをじっと見つめて……
「はぁ……はぁ……アルたん……可愛い……」
ぞぞぞぞぞぞぞくぅぅぅぅぅうぅぅぅっ!!
慌てて俺の背後に隠れるアル。
だが、今回に限っては逆効果だと思うぞ……
「あ……ああ………あ…あ…あ…あ…あ……お姉さまの後ろで怯えるアルたん……あはぁぁぁッ、か、可愛い……」
「なんとかせんか、この女ぁっ!」
泣きそうなアルの叫びに一斉に目を逸らす覇道家の面々。
無理ってか? 完全完璧に懇切丁寧に注意書きまでつけて不可能だってか?
思わず叫びそうになるが、とりあえず自制。
「ところで……大十字様」
「ん、なんだい、執事さん」
「今回のコンテストでは、女装であることがばれなければ特別賞が用意されているのは承知の通りですが…」
「其れが?」
「ならば、この場にて完璧なまでの女性らしさを身に着けるべきではないのでしょうか」
「え、あ、いや……そこまでしなくても……」
「するべきなのです! あの見目麗しき姿に、この上なき仕草まで身に着ければ……」
「まあ……確かにその方が確率は上がるだろうけどさ……」
あまりの押しの強さについ、押し負ける。
「では、コンテスト開始まで時間がありません。ソーニャ、チアキ、マコト。大十字様を立派な淑女にして差し上げなさい」
「は〜いですぅ!」
「しゃ〜ないなぁ……ほな、九郎ちゃん。きっちり教えたるから、しっかり覚えや」
「………はぁ……了解……」
溜息をついた俺だったが、直後、背後から感じたおぞましい気配に恐る恐る振り返ると……
「フフ……フフフ…あァッ、お姉さまを…調教…なんて素敵な……ひ・び・き♪」
「んどわぁっ!? マ、マコトさん? あ、あの…調教じゃなくて…教育なのでは……」
冷や汗混じりに言った俺をじっと見つめるその目……かなりヤバイ感じに……
「調教…調教…調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教調教……」
あ、また壊れた……って、怖い! マジに怖いって!!
「お、おい、止まれ…」
アルがそう言った瞬間…
「あ……あぁはぁぁぁぁああぁあぁぁぁああっ!!」
「のうわぁっ!?」
「にゃああっ!?」
突然の奇声。
怯えて抱き合ってしまう俺達……
だが、それこそが一番の引き金になってしまった…
「だ、大十字さん、そ、その格好は、冗談になりませんから、お止めになった方が……」
「へ?」
「うっわぁ……なんだか、美人姉妹の危険な世界って感じですぅ……」
「汝等……何を言っておる?」
姫さんとソーニャの言葉に俺達が首を傾げていると…
「大十字様、アル・アジフ様。こちらを…」
そう言って執事さんが持ってきた鏡を見る俺達。
「「あ……」」
その姿に、声が重なる。
そこに映っていたのは…
『姉』の胸に縋り付いて離れようとしない『妹』の姿。
しかも、『美女と美少女』の組み合わせ。
……完璧だ。
思わず納得しかける。だが…
「って! 違う! 俺にはそんな趣味はないっ!!」
そうだ。女装は単なる仕事……的なものであって、俺の趣味なんかじゃない。
絶対に違う。違うったら違う。
だけど、そこに写し出される俺達の姿はあまりにも見事な『禁断の愛』を描いていて…
― ヤバイ…否定しきれん……
ふと、胸に縋るアルの手に力が籠もった。
見ると、アルの方も顔を赤らめて俺を見つめている。
「く、九郎……」
その瞳はなんとなく潤んでいて……
「あ……あぁぁああぁ……アルたんと……お姉さまが……組んず解れつの絡み合い……」
「って! 勝手に妄想するなぁぁぁぁっ!!」
ヤバイ。このまま続けば、なんだか変な世界に連れて行かれそうだ。
「ひ、姫さん。コンテストまで時間ないんだろ? やるならさっさとしようぜ」
「は? あ、え、ええ」
「………忘れてたんかい……」
「い、いいえっ、そんなこと……ありませんわ」
「今の間は何っ!?」
「お気になさらないで下さい。それよりも大十字さん」
「ん?」
「まずは、その言葉遣いからですわ。徹底的に淑女として恥ずかしくない礼儀作法を身に着けて頂きますから、覚悟して下さいね」
そう言った姫さんの瞳が、一瞬怪しく光ったように思ったのは、俺の気の所為だったのだろうか……
いや、気の所為だろう……気の所為……お願い、気の所為って事にしておいて。
「チアキ、ソーニャ、マコト。大十字さんを立派な淑女に仕立て上げますわよ」
「了解! 腕が鳴るで〜!」
「了解(らじゃー)ですぅ!」
「了解(ヤー)」
なんだか、4人の目が怖い……
「って、おい、待った! それはヤバっ…まっ、待った、待て……待てっ、待ってぇっ!!」
その時、俺が見たものは……
いや、多くは語るまい。
ってゆーか、お願い、忘れさせて…
「……汝…」
なんだかアルが冷ややかな目で見てるし…
そして……1時間後…
そこには、すっかり様子の変わった俺の姿が……
「では、大十字さん……宜しいですわね?」
「ちょっと待て」
姫さんの言葉に、突然アルが割り込んだ。
「なんですの、アル・アジフ?」
「………九郎の声。そのままでは男だと丸分かりだ」
「……確かに」
「そのままでは、折角礼儀作法を身に着けても意味がないだろう。ならば……」
そう言うと共に、アルは何かの術式を紡ぐ。
そして……
「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」」」」
姫さんとメイド達の驚きの声が重なる。
執事さんは顔を真っ赤にして視線を逸らした。
……そう……突然、アルが俺に唇を重ねてきたんだ。
「ふむ、これで良かろう」
「いきなり何……を……!?」
思わず口を押さえる。
今の声は……!?
「フフ……」
「あ、アル、お前……一体何を……」
思わず声が上擦る。
「折角習った礼儀作法がもう崩れておるぞ。まあ…よい。今、汝の肉体の有り様を少し変化させた」
「有り様って……」
「男性的な因子を女性的な因子に変化させてやったのだ」
「なっ……!?」
慌てて股の辺りを探ってみると……
「な、無い!? なんで!?」
「声を変化させるだけでは面白くない。どうせならしばらく女の気持ちを味わってみろ」
「なっ……な、な、なぁぁっ!?」
「心配するな。術は一時的なものだ。明日の朝には元に戻っている」
アルの説明に、思わず安堵の溜息。
「つまり……今の大十字さんは本物の女性の身体って事ですの?」
「いや、完全ではない。男としてあるべきものを失わせ、肉体の有り様は九郎の中に元々存在する女としての因子を活性化させた結果の形だ。女としての基本的な能力も持ってはおらぬさ。妾の身体以上に不完全な存在だ。しかし…」
「……? なんですの?」
「…いや、なんでもない」
そう言ったアルの視線が気になってゆっくりとその後を追ってみると……
そこにあったのは…しっかりとその谷間まで露わになった……俺の、胸元。
「………ライカほどではないにしろ……汝、女の素養があるな……」
「んな事言われて……も………」
言葉が続かない。
何しろこの口から出てくる声は完全に女の声。
普段のしゃべり方じゃ、違和感有りまくりだ。
「そんなこと言われても……困ります……」
うん、こっちの方がしっくり来る。……って!
しっくり来たら拙いっしょ!!
「ア、アル、さすがにこの声は拙い……」
「そうか? 容姿に似合って、なかなかよい女っぷりだぞ?」
「だから拙いのですわ! って……あ、あら?」
「フフ……なかなか堂に入ってきたではないか。これは期待できるやも知れぬな」
「もう……」
な、なんだか、本当に心の中まで女になってきたような……
「はぁ……はぁ……お姉さま………ぁ」
「本当に……お美しい……大十字様……」
と、とりあえず、そこの危なそうな2人はおいといて…
「え、ええと……とにかく……頑張りますねっ」
俺がそう言って微笑んで見せた瞬間……
「お姉さま……お姉さまぁぁあぁぁぁぁぁぁ………はうっ…」
「あ……うぅ……こ、これは……凄まじいですね……」
失神するマコトさんと、顔を真っ赤に染めて蹌踉めく執事さん。
どうやら今の俺の微笑みって、かなりの威力があるみたいだな。
試しに姫さん達やアルにも向けてみる。
「あ……あぅ……そ、そんなに見つめないで下さいな……」
姫さん――真っ赤になって俯く。
「え、えと、えと、えと、え〜っと……」
ソーニャ――パニック状態。その後、何故か走り出した。
「あ、あははは……な、なんや照れるわぁ……美人って性別関係なく惚れさせるんかも知れへんなぁ……」
チアキ――微妙な視線。
「………た、頼むからやめてくれ、洒落にならん……」
アル――真っ赤になって、頭から煙出してる……って、燃えてるのか!?
「ん、これなら完璧ですわね。では、行きましょうか、皆さん」
その俺の言葉に、一斉に硬直するアル達。
「どうかしまして?」
「い、いえっ、なんでも……なんでもありませんわ」
「そうですか? では、行きましょう」
「大十字様、お手をどうぞ」
「ありがとう、執事さん」
「ウ、ウィンフィールドとお呼び下さい!」
「では、エスコート、よろしくお願いしますね、ウィンフィールドさん」
「は、はっ!!」
ガチガチに緊張して俺をエスコートする執事さん……って、メチャメチャ雰囲気良いんですけど……俺……男だぞ?
その時、背後で見つめていた女性陣の気持ちは1つになっていた。
「成り切り過ぎ(ですわ)!!」
立ち止まってじっとこちらを見つめる女性達に振り返って微笑みかけると…
「アル、瑠璃さん、急がないと、コンテストに遅れてしまいますわよ? ウィンフィールドさん、少し急ぎましょうか」
「お、お任せ下さい!」
「えっ? あ、きゃっ!?」
いきなり抱き上げられる。
そしてそのままお姫様抱っこで運ばれる俺。
い、いや、判ってる。俺は男、男なんだ。
忘れるな! なんだか染まってきてる気もするけどっ!
と、とにかく、今はコンテストの為に女になりきる必要があるからでこれから先もそうなるとか言う訳でもなくもないかも知れないようなしないような…
………大混乱。
「貴方ほどに美しい方など、他にいるはずもありません。客席にて応援しておりますよ、大十字様」
「ありがとう(はぁと)」
……女じゃない……女じゃない! 俺は女じゃないっ!!
だけど……う……なんだか……雰囲気に流され……
「流されるな、うつけが」
冷静な言葉で背後から声をかけられ思わず顔が赤くなってしまう。
「………汝、冗談抜きで洒落にならぬぞ」
「う…その……こほん…それでは、行ってきますね。ちゃんと応援して下さいよ?」
「その様子なら、問題なかろう。まあ、頑張れ」
「ふぁいとですぅ!」
「頑張りや、九郎ちゃん」
「お姉さま……あはぁぁっ」
「ご健闘をお祈りします、大十字様」
「大十字さん……頑張って下さいね」
みんなの応援を受けて、コンテスト会場へと向かう。
だけどまさかそこで、信じられない出会いがあろうとは、夢にも思っていなかった…
後編へ続く…