−歌パロShort story− ロード全章SS
ロード 〜第九章〜

by Sin

 今日は悠子の誕生日…
 20本のキャンドルに火を灯す。
「いい雰囲気だな…」
「ふふっ、そうね……」
 揺らめく炎を2人でぼんやりと見つめる。
 しばらくそうしていて、ふと俺は思いついたことがあって立ち上がった。
「どうしたの?」
 不思議そうな悠子。
 俺はそっと唇を重ねるとステレオのスイッチを入れた。

 流れ出す静かな曲。
「あ、この曲…」
 聞き覚えのある曲に悠子はそう言って微笑む。

「少し、踊ろうか」
 突然の俺の言葉。
 悠子はきょとんと俺を見つめていたが、やがて…
「いつものことだけど…突然ね」
 そう言って笑った。

 広くもない部屋の中、寄り添い合った俺達の姿がキャンドルの明かりに照らされてぼんやりと浮かぶ。
 腰に回した手で強く抱きしめて唇を重ねる。
 足を止めて見つめ合う俺達。

「今の俺には…大してなにもしてやれないけど、今日は一晩中一緒にいよう」
 そう言った俺に、悠子の返事は満面の微笑みと熱い口づけだった…

 19本のキャンドルは違う色で輝いている…
 その内の1本だけが、俺達2人の人生なんだ…

 思い出されるこの1年の事…
 色々な想い出が溢れている…

 だから…今夜は教えて欲しい…
 残り18本に溢れる、君の想い出を…

 そう言った俺に1本づつ聞かせてくれた君の想い出…
 3本目の話は笑えたけど、12本目からは哀しいものだった…

「いつか遠い国へ、2人で行きたいね…ずっと…ずーっと北の方へ…」

 そう呟いて眠ってた悠子…

 あれから何年経ったんだろう…

 君との約束を守る為に、俺は来たよ…
 オーロラが見れるという、この街まで…

 雪のやんだ空を見上げると、君の好きな星がまるで涙のように降っていた…

 思い出すあの日のキャンドル…
 このキャンドルは永遠に燃え続けて欲しかった…

「……あの日…約束した通りに来たぞ……悠子……」
 そう呟いて俺はその場に頽れる。
「来たかったんだろう……ここに……なのに……なんでだよ……」
 溢れてくる熱い物が頬を濡らす。
 滴り落ちて、瞬く間に凍り付いた。

「何で俺を置いて…お前だけ…もっと遠くに行っちまうんだよ…」
 想いが胸を引き裂こうとする…
 満天の星空の中…
 
「悠子ーーーーーーーーーーーッ!!」

 俺の叫びが星になって…夜空を流れていった…





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