−歌パロShort story− ロード全章SS
第六章【12月のワインディングロード】

by Sin

 あの日・・
 悠子は突然「海が見たい」なんて言い出した。
 理由は分からない。
 俺も眠くて、寝かせてくれ・・って言ったけど、頑として聞かなかった。
 仕方なく冬の寒空の中、高速道路に車を走らせる。

 やがて着いた夜の闇に包まれた海。
 波音を聞きながら、缶コーヒーを飲んで身体を寄せ合い、あたため合った。

「空の星が・・綺麗だな・・」
 俺はそう言って悠子の横顔を見つめ・・
 そんな俺に悠子は微笑んで頷くと、空を見上げる。

「私は・・夏の海より、冬の海の方が好き・・」
 吐息と共に吐き出された言葉・・
 ゆっくりと悠子の顔が近づいて・・初めて彼奴から唇を重ねてきた。

 そっと抱き寄せる・・

 シャツのボタンを外し、悠子の胸に触れて・・
 防波堤の冷たいコンクリートの上で、俺達はその温もりに生きている事だけを確かめ合っていた。

「今度来る時はバイクで来ようね」そう言って微笑んだ悠子・・
 なぜ? と問いかける俺に、「だってずっとしがみついていられる方がいいもの」
 そう言って何度も唇を重ねてきた。

 胸に湧き上がる彼奴への愛しさ・・
 永遠に続くと信じていた・・


 夜明け前のワインディング・ロード・・
 あの日の思い出だけを乗せて、1人走る。
 
 あんなに人を愛せた自分が好きだったから・・
 あの場所に帰りたい・・あの夜に・・帰りたい・・

 悠子が見ていた夢・・
 俺が見ていた夢・・
 掛け替えのない愛を失った哀しみを、降り出してきた雨が柄にもなく涙が・・
 冷え切った身体を・・俺の心を濡らす・・

「もしも、人の命だけが永遠だったなら、きっと・・時も季節さえも大切にしないね・・」
 そう言って優しく彼奴から重ねてきた唇・・
 永遠ではない命・・だけど、永遠に続くと信じていた運命・・
 でも・・・

 雨に濡れたワインディング・ロード・・
 忘れられない傷の痛みに・・もう二度と恋なんて出来ないかもしれない・・
 そんな事を思いながら、夜明け前の道・・思い出だけを乗せて走る。

 振り向くだけじゃ、なおさら彼奴を悲しませるから・・

 あの場所で「サヨナラ」を言う為に・・・

 あの場所に帰りたい・・
 あの夜に・・・帰りたい・・・



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