−歌パロShort story−
ロード

by Sin

ちょうど・・1年前のこの日だった・・
あいつと二人きりでこの道をドライブしていたんだ。

あの日は珍しく大雪で、道路は大渋滞。
長く繋がる車のテールランプがやけに綺麗に見えた。

俺の横であいつはぐっすり眠り込んでいる。
いつもは結構きつい事言う奴だけど、こうしてると
可愛いんだよな・・
だけど、このままこいつだけ眠らせておくのも腹立つな。
俺は運転してるから寝るわけにも行かないし。
ちょっといたずら気分も出てきて、あいつのわき腹を
くすぐってやった。
「う〜ん・・・・なによぉ・・・」
やっぱり不満げだ。
恨めしそうに睨んでくるコイツのおでこをピンッと弾くと、
後ろの座席に手を伸ばした。
「なあ、何か欲しいものあるか?」
俺がそう言うと、あいつはしばらく考えた後で、いきなり俺の手を
握ってきた。
「な、なんだよ?」
「貴方の・・・愛が・・ほしい・・」
そう言ってじっと見つめてくるあいつを俺は抱きしめ・・そして・・・

そんなある日のことだった。
「あのね・・・」
青ざめた顔で俺に話しかけてくるあいつ。
いつもなら強気で睨みつけてくるのに、今日はやけにおどおどしている。
「どうしたんだ?」
俺の説いかけに、ようやく戸惑いながらも口を開いた。
「子供・・・出来ちゃった・・・」
その言葉に俺は思わず息を呑む。
それっきりあいつは俯いて黙り込み、深いため息を吐いた。
不安げなあいつの様子に、俺もこれ以上黙っているわけにはいかない。
「あのさ・・・」
俺の言葉にうつろに顔を上げるあいつ。
「この冬が終わったら・・一緒に・・暮らさないか?」
その瞬間、あいつの顔が涙でクシャクシャになった。
まるで飛びつくように俺に抱きついてくるあいつ。
俺達はそのままずっと抱きしめあっていた。

やがて冬も終わりに近づいた。
あいつとの約束通り、俺達は一軒の家を借りてそこに暮らし始めた。
いつもより遅いあいつの帰りを俺は何の不安もなく待っていた。
だが・・・
一本の電話が、俺を悪夢へと突き落とした。

病室に駆けつけた俺の目の前にいる彼女は、まるであの時助手席で眠っていた
時のようだった。
苦しむ表情もなく、穏やかに微笑を浮かべて眠っていた。
だが、それは永遠に目覚めることのない、眠りだった・・・

一年前、あいつと一緒にこの道を通った夜と同じように、空には雪が舞っていた。

なんでもないようなことが・・幸せだったと思う・・・

どこかで聴いた歌にそんな言葉があった・・・

なんでもない夜のこと・・二度とは戻らない・・夜・・

そう・・戻らない・・もう、二度と・・・

この夜、俺はこの街を出る。
行くあてなんてどこにもない。

ボストンバック1つ持って飛び出してきた。

ただ、あいつと過ごしたこの街を・・少しでも早く離れたかった・・・
悲しみが・・追いついてくる前に・・





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