−歌パロShort story−
なごり雪

by Sin

 冬も終わり・・暖かい春を迎えたはずの駅のホーム。
 辺りを季節外れの雪が包んでいた。

 僕は、幼馴染みの雅子を見送る為、ここにいる。

 ずっと一緒に育ってきた・・
 楽しいことも・・苦しいことも・・みんな一緒に・・

 だけど、彼女は今日、この街を去る・・

 永遠になるかもしれない・・別れ・・その時が近づく。

 汽車を待つ彼女の横で、僕は何度も時計を見ては今までの思い出を振り返っていた。

「季節外れの雪かぁ・・」
「ああ・・まるで雅子との名残を惜しんでいるみたいだ・・」
 僕の言葉に、雅子は寂しそうに「東京で見る雪はこれが最後ね」と呟く。

 例年に無い・・季節外れ・・
 そんな言葉が、ニュースで流れてた・・
 でも、きっと違う・・
 これは、雅子がいなくなってしまうことを、街が寂しがっているんだ・・

 なごり雪・・・

 街だけじゃない・・雅子と共に過ごした人達・・そして僕・・
 みんなが・・雅子との名残を惜しんだから・・
 今、こうして降っているんだ・・

 いつも楽しんでいた・・雅子との日々・・
 色々ふざけ合ったりもした・・
 そうして季節が巡り・・

 今、春が来て・・
 雅子はこの街を去ってしまう・・

 寂しげに僕を見ている雅子は、本当に綺麗になったと思う・・
 去年より・・ずっと綺麗になった・・


 やがて来てしまった汽車・・
 ゆっくりと乗り込んだ雅子は今にも泣き出しそうになっている。

 ドアが閉まり・・動き出した汽車。
 雅子は窓に顔をつけて、なにか言おうとしている。

 その唇が『さようなら』と動くことが怖くて・・僕は下を向いていた・・

 時が過ぎて行けば・・幼かった彼女だって・・いつかは大人になる・・
 そんな事にも、僕は気付かなかった・・

 気付いた時には・・もう・・雅子はいない・・
 大人へと近づき、綺麗になっていく彼女のことを・・僕は・・
 引き留められなかった・・

 
 雅子の去ったホーム・・
 僕はまるで気が抜けてしまったかのように、ベンチに座り込んだ僕は、
落ちては溶けていく雪を見ていた。

 雅子のことを思い、溜息をつく。
 ふと、僕は頬に冷たさを感じてそっと触ってみる。
 
・・いつしか・・僕は涙を流していた・・

 伝えたかったこと・・聞きたかったこと・・
 なにもできず・・なにもしてやれずに・・
 雅子は行ってしまった・・

 脳裏に浮かぶのは去年よりずっと綺麗になった雅子の姿・・

 止めどなく溢れる涙に、なごり雪がそっと舞い落ちた・・






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