― Original Short Story ―
『見つめているだけで』
by Sin


 俺、最近変だ。
 自分でそう思う。

 だってそうだろう?
 今まで毎日ずっと一緒にいて……
 殆ど兄妹同然に育って……

 そりゃあ、確かにあいつだって変わってきた。
 体型もどんどん女らしくなってきてるし、時々見せる仕草なんて、可愛い……とか思っちまう事も……って、それが変だっての!

 なんなんだよ、この感覚……

 わけわかんねぇ……

 混乱しまくった頭をどっかに一回ぶつけた方が良いんじゃねぇか?

 そんなことを考えていたときだった。

「なにやってるの?」

 唐突に窓の向こうから聞こえてくる声。

 見ると、窓枠に腰掛けた真菜がこっちを見て笑ってる。

「おい」
「なに?」
「パンツ、見えるぞ」
「え、嘘!?」
 慌てて隠そうとする真菜。
 と、その時、真菜がバランスを崩した!

「危ないっ!!」
 大慌てで駆け寄ると、窓から身を乗り出して真菜の身体を支える。
「せ、セーフっ!」
「あ、危なかったぁ……ありがと、駿くん」
「ありがとじゃね〜っての。少しは気を………つ……け……」
 言葉に詰まる……

 今、思いっきり慌ててたから気にする間もなかったんだけど……
 真菜を支えるとき……俺の手が、真菜の胸に……

 一瞬で顔が赤くなったのを感じる。

 かといって手を離す訳にも行かず、俺はそのまま硬直した。

「駿くん……?」
「………真菜、なにも聞かず、すぐに部屋に戻れ」
「え? うん……」
 俺の言う通りに、素直に部屋に戻る真菜。
 だが、ゆっくりと離れていく俺の手の感触に、今の現状にようやく気が付いたのか、真菜の顔が一気に赤く染まった。

 慌てて部屋に戻ると、胸を抱きかかえるようにして俺を睨む。

「えっち…」
「……すまん…」

 互いに一言……それ以上は言えそうにない。

 
 意識してしまう。あいつが女だって事を。

 妹なんかじゃ……無いって事を……


 その日の夜……夢を見た。

 真菜の夢……

「駿くん……私……私ね……」

 そっと俺の背中に回される真菜の手。
 押しつけられた胸の感触が柔らかくて……俺は……

「私のこと……」

 じっと見つめてくる真菜……
 その瞳がそっと閉ざされて近づいてくる唇が………

「うわぁぁぁぁっ!!」

 飛び起きた。

 心臓が爆発しそうなくらいに高鳴ってる。

「はぁ……はぁ……はぁ……なにやってんだ、俺はっ!!」

 あいつはただの幼馴染み。
 それだけ。それ以外なにもない……はず……

「駿くん!? ねぇ、大丈夫!?」

 窓の向こう、明かりが見える。
 そしてそこに浮かぶ人影。

 俺はゆっくりと窓を開いた。

「あっ、駿くん! ねぇ、大丈夫? 急に叫ぶんだもん。なにがあったのかと思ってびっくりしたよ…」
「悪ィ……ちょっときつい夢見たから……」
「夢? どんな?」
「………言えるかよ…そんなの……」
「あ〜っ、もしかして、えっちな夢見たんでしょ! ま、まさか、私の夢見たとか!? いや〜ん、駿くんのえっち〜!」
 冗談半分の真菜の言葉。だが、俺は思わず言葉に詰まった。

「………えっ? 駿くん……まさか……本当に………?」
 図星。
 当然顔に出てるだろう。
 付き合いの長い真菜にわからないはずがない。

「………そう……なんだ……」
 呟いた真菜の顔が赤い。
 もじもじと指を絡めては解いていく。
 
「あ、あは、あははっ、と、とうとう、私も駿くんの守備範囲に入っちゃったかぁ……」
「ば、バカ言ぅ……」

 また言葉に詰まる……

 今、俺達ってすっげぇ間抜け面晒してんだろうな……

「………ねぇ…」
「な、なんだ?」
「……今日…おじさん達……いないよね?」
「あ、ああ」
「……駿くん……一人っきりだよね……?」
「そ、それが……どうかしたのかよ……」
 嫌な予感……
 なんだか、とんでもないことを言われそうな……

「そっち……行ってもいい?」
「な、なぁっ!?」
「ば、ばかぁっ、大声出さないでよ!」
「わ、悪ィ……」
「………ちょっと……手伝って」
 そう言うと、真菜は窓枠に乗り出してこっちに手を伸ばしてくる。
「ほらぁ、駿くん」
「あ、ああ……」
 俺も身を乗り出して真菜の身体を支えると、そのままこちら側へ……
「しっかり掴まってろ……」
「う、うん」
 ギュッと俺に抱きつく真菜。
 そのまま持ち上げて、俺の部屋の中へ。

 窓の下はベッドだったから、そのまま俺達はベッドに倒れ込んだ。

 抱きしめあったままの真菜の温もりが俺の身体に伝わってくる……

 じっと見つめてくる瞳……

 微かに震えている身体……

 少し……濡れた唇……

 俺は、まるで吸い寄せられるように……その唇を…塞いでいた……

「ん……んんぅ……駿……くん……」

 初めての……キス……それは多分、真菜も……

「んん……んっ……ん………っ……」

 真菜は……全く抵抗しない……
 いや、より一層求めてくる……

 唇を交わし合ったまま、時間は流れ……

 やがて……

「………しちゃった……ね……キス……」
 そう言う真菜に、俺は答えられずにいた。

「……駿くん…後悔…してる?」
 不安げな声…
 俺はただ、首を横に振る…

「私は……嬉しい…よ……駿くんと……こうなれて……」
「真菜…」

 見つめ合う俺達。

「好き……だよ……駿くん……」
「……真菜……っ」

 触れ合った唇から伝わった互いの気持ち……

 今まで感じてなかった……感じようとしなかった思い……

「俺も……お前のことが……好きだ……」

 もう一度真菜に唇を奪われ……

 俺は……

 
 いつも見ていた真菜のパジャマ姿……

 だけど……今はまるで別のもののように見える……

 そっとボタンに手をかけて……ゆっくり……1つずつ外していく……

 そして……最後のボタンが外れた……

「………真菜…」
「……うん…」

 頬を赤らめ、そっと瞳を閉ざす真菜。

 ゆっくりと開かれたその中から現れる透き通るような白い肌……

「恥ずかしい……よ……あんまり…見ないで……」
「………スゲェ……綺麗だ……」
「……ばか…」
 真っ赤になった真菜。その頬にそっとキスをすると、照れくさそうな、嬉しそうな表情で微笑んだ。

 そっと触れる。
 白い肌の中で、色の違う場所が2ヶ所。
 その場所に触れるたびに、真菜の身体が反応する。

 それが面白くて何度も触れている内に、真菜の反応が段々激しくなってきた。

「駿……くん……っ」

 抱きついてくる真菜。
 お互いの肌が触れ合って……温もりを伝え合う……

「下……いいか?」
「……う…ん…」
 恥ずかしげに頬を赤らめて頷く。

 そっと下に手をかけて、ゆっくりと脱がせる……
 足に引っかかっていた部分は、真菜が自分で蹴り飛ばすかのように脱ぎ捨てた。

 残っているのは……お互い下着だけ……

 しっかりと抱きしめ合い、お互いの身体に触れていく。
 その温もりを感じながら……やがて…俺達は産まれたままの姿で抱き合う…

 そして………

 初めての痛み……
 感じる温もりと……喜び……

 重ね合った身体の間で、汗の滴が流れ落ちた……

 しばしの時が流れ………

「真菜……」
「……私…幸せだよ……駿くんとこうなれて……」
 涙ぐむ真菜。
 シーツに残る痕。それは2人が結ばれた証……

「……駿…っ」

 抱きしめ合い、唇を交わし合う。
 
 俺達は……こうして初めての夜を過ごした……

「駿〜っ!」
「遅いぞ、真菜」
「ごめんね〜、どうしても抜け出すのに時間かかっちゃって」
「……まあ、しょうがないか。じゃ、行こうか」
「うん♪」

 今では、俺達は周囲公認の恋人同士。
 こうなることを、俺はどこかで望んでいたのかもしれない。
 あの日、真菜の夢を見なかったら…
 いや、あの時、墜ちそうになる真菜を助けなかったら……
 今の俺達は無かったかもしれない。
 でも、こうなった。

 それは……陳腐な言葉かもしれないけど……運命って奴なのかもしれないな…

「駿、遅いよ〜」
「ああ、悪い、今行く」
 急いで真菜の後を追う。
 追いついた俺の腕に、ギュッと抱きついて真菜は……
「あはっ、駿、大好きだよ」
 そう言って笑っていた。

 あの笑顔を見るだけで、俺は満たされる……

 真菜……俺も……

 お前のこと…愛してるぞ!


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