― Original Short Story ―

窓の向こうの君へ
by Sin


 高台に立つ、取り立てて大きくもない家の2階にある弟の部屋。
 その更に上、そこのロフトが僕の部屋だ。

 狭いし、夏は暑いし冬は寒い。

 でも、いいとこ無いようなこんな部屋を選んだのには訳があるんだ。

 それは…


 彼女に逢えるから……


 始めて彼女に逢ったのはいつだっただろう。


 探し物をしにここに来た僕は、何気なく見た窓の向こうの景色にすっかり見とれてしまったんだ。

 どれだけそうしていたかな……

 気がつくと辺りは暗くなっていて、慌ててロフトを出ようとした僕は…

 天使を見つけた……


 窓の向こう。

 白く揺らめく1つの影……

 慌てて窓に駆け寄ると、そこには……真っ白な羽を風に揺らめかせて星を見つめる天使の姿が……

「天……使……?」

 思わず漏れる呟き。

 その僕の声が聞こえたのか、天使はそっと振り向いて『クスッ』と微笑むとふわりと空に舞い上がる。


「あ………っ…」

 行ってしまう……そう思って慌てて窓を開ける。

 でも……天使はどこかに消えてしまっていた。

「天使……だよな……」


 信じられない気持ちでいっぱいだ。
 でも、僕は確かに見た。
 真っ白な羽を大きく広げて舞い上がる天使の姿を。

 そして……あれからもう何年経ったんだろう……

 僕は毎日この窓を見つめている。

 学校から帰ってきた後は、殆どここでじっと……

 そうして……いつしか子供だった僕も大人になって……


 そんなある日……


 いつものように窓の外を眺めていた僕は、なんとなく窓を開いて風を思いっきり吸い込む。

 その時だった。


「うわぁ! すっごく綺麗な景色!!」

 突然横から聞こえてきた声に僕は慌てて振り向く。

 そこにいたのは……

「お母さ〜ん、私ここの部屋にするね〜っ!」
「そこって、ロフトでしょ〜?」
「いいの〜! すっごくここ気に入ったんだから!!」
「仕方ないわねぇ。良いわよ〜」
「あはっ、やったぁ!」

 あの時の……天使だ……

「う〜ん、良い風……ん?」

 ふと、何かに気付いたかのように振り返るその女の子。

「あ、お隣さん? 初めまして。今日引っ越してきた神楽崎です。よろしくお願いしま〜す」

 にこやかに微笑んでくる少女の笑顔。

「こ、こちらこそ、よろしく」

 この日、僕は窓の向こうに天使を見つけた……


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