−Short story−
舞台へ…

by Sin

空中ブランコ………
いつも、当たり前のようにできていた……
だから失敗する事なんて怖いと思った事はなかった……
でも……
「はなしちゃダメだ!」
できて当たり前……過信していた私は勝也の言葉に耳を貸さなかった……
そして……
私は30メートルの高さから地面に叩きつけられた……

事故からもう3年……
あの瞬間、私にははっきりと勝也の顔が見えた。
何とか助けようと落ちていく私に駆け寄ってくる勝也……
でも、絶対に間に合わない距離だった……

幸い、命に関わる怪我はしなくて済んだけど……
私の足は、あの日からまったく動かなくなってしまった……
車椅子に頼るしかない私……
そんな事になったのも、あの時私が勝也の言う事に耳を貸さなかったから……
全ては……私の過信が招いた事……
なのに……

「ごめん……」
病室で落ち込む私に勝也がはじめてかけてくれた言葉……
「なんで……謝るの……?」
わけわかんない……なんで勝也が私に謝るの……?
あれは……私が勝也の言う事を聞かなかったから……
だから起こった事……自業自得なのに……
「俺、お前の事守れなかった……俺が守るなんて……大口叩いたくせに……」
そう言ったきり目をそらす勝也……
ふと、気付いた。
彼の目に光るもの……
私のせいで……私が勝也を苦しめてる……
そう思った時、一つの気持ちが湧き上がってきた。

「勝也! 私、もう一度舞台に立つ!」
「えっ………」
戸惑ったような彼の声。
そんな勝也の手をぐっと握る。
「だから、勝也! 私の事手伝って!! 私、もう一度舞台に立ちたいの!!」
いつの間にか私、泣いてた……
そっとその涙を勝也が拭ってくれる。
「わかった! 俺、絶対にお前をもう一度舞台に立たせてやるよ!!」
そう言って私の手を握ってくれる勝也。

じっと見つめ合う私達……
そのまま静かに唇を重ねた………

あれから2年……
毎日私達は練習を重ねた……
何度も泣いて……泣いて………それでも、彼がいてくれたから……
だから逃げずにここまでこれた……

「ようやくここまでこられたな……」
「うん……」
「でも、これがゴールじゃないぞ?」
そう言う彼に私はそっと口付ける。
「これが……始まり……私達の……ね」

彼にもう一度口付けて私は舞台に向かう。
あの日、もう二度と立てないと思った舞台……
でも、私は今日、ここにいる……

これからはずっと前に進んでいこう。
時には振り返る事があったっていいけど……
きっと後ろに下がる事なんて無い。
だって、これからはいつだって、彼が側にいるんだから………





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