−Short story−
アルバムの下の想い

by Sin

「懐かし〜これ、こんな所にあったんだ・・・」
それは、ほんとに偶然だった・・
ずっとほったらかしにしていた段ボール箱。
昔、引っ越しの時に詰め込んだまま、一度も開けた事の無かったその中に、とっくに通り過ぎてしまった日々が残っていたなんて・・

「何年前・・だったかな・・」
そう言って私は箱の中にあったアルバムを取り出した。

ページをめくる度に思い出が溢れてくる。
楽しかったあの日・・つらかったあの日・・・
そんな毎日の中で・・いつも一緒だったあの人・・・

「ふふっ、こんなに小さかったんだね・・私も・・あの人も・・・」

幼心に芽生えていた小さな想い・・
結局叶う事はなかったけど・・けれどそれは、決して幻なんかじゃなくて・・・

「幼稚園・・小学校・・中学校・・高校・・私達・・・ずっと一緒だったね・・・」
その時、ぽつりとアルバムに雫が滴った。
「あ・・・れ?」
目の前がぼんやりとしてる・・
胸の奥が熱くて・・・苦しくて・・・
気づいた時、私は涙を流していた・・・
「もう・・終わった事なのに・・・」
ずっと昔に終わった想い・・
伝えられなかった気持ちは、いつしか涙となって私の頬を濡らしていた。

どれだけの間、そうしていただろう・・
ふと窓の外を見ると、辺りは夕闇に包まれていた。
「いけない・・早く片づけなくちゃ・・」
と・・その時だった。

さっき、アルバムを取り出した箱の中に一通の封筒が・・・

「あれ? 私、こんなの入れたかな・・?」
首を傾げながらも封筒を手に取る。
そこには宛名も何も書かれていなかった。
「なにかしら、これ?」
不審に思いながらも、私は封筒を開ける。
そして中に入っていた一枚の便せん・・・
そこに書かれていた事に、私は・・・

「う・・そ・・・」

そう呟いて、泣き崩れた。

そこに書いてあった言葉は・・・
『言葉では伝えられなかったけど、俺、お前が好きだ』

初めて知った彼の想い・・
もう・・・ずっと昔に置いてきてしまった大切な日々・・
「私も・・・大好きだよ・・・」
そう呟いて私は強く手紙を抱きしめた・・・。


荷物の片づけも終わり、私は近所に引っ越しの挨拶をしに出た。
「えっと、まずはお隣に・・・」
初めて出会うお隣さん。
いい人だと良いけど・・・
呼び鈴を鳴らすと、扉が開いて、若い男の人が出てきた。
「はい?」
「あ、あの、今日から隣に引っ越してきた・・・」
「ああ、それはどうも・・・あ、あーーーーーっ!!」
突然彼が大声を出した。
ビックリして顔を上げる私に彼は・・・
「・・・会えたね・・・やっと・・・」
彼の声が震えてる・・
どこかで聞いた・・ううん・・とてもよく知ってる・・・とても大切な声・・・
私も、目の前がぼんやりしてきた・・・
胸の奥が・・熱くて・・苦しい・・・

「あの時言えなかった事・・今なら言える」
私の頬をゆっくりと涙が伝う・・・
そして彼は私の待ち望んでいた言葉を言ってくれた。

「・・・俺・・君が好きだ・・・」

もう、何も躊躇いなんて無い・・・
あの時伝えられなかった言葉・・・
ずっと伝えたくて・・・
でも・・諦めていたあの言葉・・・

「私も・・私も・・っ・・」

伝えたいのに・・言葉にならない・・
溢れてくる涙が、胸に詰まって・・
辛くてうつむいてしまった私の身体を、彼は強く抱きしめてくれた。

10年の月日は彼を大人に変えてしまったけど・・・
あの時の想いは・・どんなに月日を重ねても、変わってなかった・・・
彼の腕の中で、私の胸に詰まっていた想いが言葉になる・・・

「私も・・・貴方が・・好き・・」

とぎれとぎれに紡いだ言葉・・・
涙は止めどなく溢れて私の頬を濡らしていく・・・
でもそれは悲しいからじゃなくて・・・

見つめ合い、そっと瞼を閉じる・・・

「たとえ・・どんなに月日が流れたとしても・・・」

触れ合った唇が言葉を紡ぐ・・・

「愛して・・います・・」






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