−200000HIT記念 Original Short story−
約束の丘で…

by Sin

 あの日・・・

 この街を見渡せるあの丘で・・私達はたった一つの約束を交わした・・


「3年・・3年経ったら、この丘でまた会おう・・」


 そう言って転校していくあの人に・・私の精一杯の想いを込めたキス・・

 やがて風が2人を分かつまで・・私達はずっと抱きしめ合っていた・・・


 あれから・・・3年・・


 いつしか、私はあの約束の丘に行くのが日課になってしまっていた。

 雨でも・・・雪が降っても・・台風の時だって・・私はあの丘にいた・・


 けれど・・いつまで待っても・・彼は・・来なかった・・・


 友達は、きっと向こうで好きな人ができたんだよって言うけど、私は・・
彼を信じてる・・絶対・・帰ってきてくれるって・・・

 来る日も・・来る日も・・私は彼を待ち続けた・・・

 1年経ち・・2年が過ぎ・・・そして・・・また3年が過ぎた・・・

 そんなある日のことだった・・・

 いつものようにあの丘へ向かった私。
 そして木にもたれて町並みを眺める・・・

 その時、ふと私は誰かに見られている気がした。

「誰!?」

 慌てて振り返っても誰もいない。
 首を傾げて視線を戻した時・・私は思わず息を呑んだ・・

 目の前には、さっきまで誰もいなかった・・・なのに・・
 手を伸ばせば届く距離に・・彼は・・いた・・

「あ・・ああ・・っ・・・」

 言葉にならない・・

 驚きじゃない・・・恐怖でもない・・

 ただ・・ただ・・嬉しくて・・

 ずっと・・待ち焦がれていた人が・・今・・目の前にいる・・・

 思わず抱きつこうと駆け寄って・・

 
 ・・・通り抜けた・・・


「・・・えっ・・?」

 訳がわからない・・

 一体何が起こったのか・・・

− ごめん・・・

 不意に彼が口を開いた・・

− 君を・・抱きしめられない・・・

 そう言って私の頬に触れようとして・・すり抜ける・・

「どういう・・こ・・と・・?」

− 君に・・ずっと・・・会いたかった・・・

 その瞬間、私は彼の姿が少しずつ薄れていることに気付いて息を呑んだ。

「・・・なんで・・・なんでっ!?」

− ごめん・・な・・・好きだよ・・・夏希・・・

「克海っ!!」

 叫ぶ私の声は風の音にかき消され・・
 そして・・・彼の姿は完全に消えてしまった・・・


 私は・・ただ・・泣いた・・・泣き続けた・・


 それから数日後・・・


 私は彼の・・・克海の消息を調べて・・・

 そして・・彼が・・今でも生死の境を彷徨っていることを知った・・・
 


 いても立ってもいられなくなった私は、すぐさま彼の入院している病院に向かい、
そして・・

「・・・克海・・」
 目の前に眠る彼の姿・・・

 私が着いた時・・そこには彼の両親と・・妹がいた・・

 すでに・・医者はさじを投げたらしい・・

 彼は・・もう・・・


 でも・・私は信じられなかった・・ううん・・信じない・・

 だって・・彼、私に会いに来てくれたもの・・・

 あれは・・お別れなんかじゃない・・

 絶対・・絶対に・・・お別れなんかじゃない・・・!


「克海! 言ってくれたよね!! 私のこと好きだって! だったら・・・だったら私のこと、1人になんてしないでよ!! ずっと・・ずっと側にいてよっ!!」

 いつの間にか・・私は・・泣いていた・・・
 ううん、私だけじゃない・・

 彼のお父さんも・・お母さんも・・妹も・・そして・・・

「・・・ない・・て・・る・・!?」

 その様子に・・私達は・・思わず息を呑んだ・・

「・・夏希・・泣く・・なよ・・・」

 優しく頬に触れる温かい手・・
 
 もう・・言葉にならなかった・・・

「克海ぃぃっ!!」




 数ヶ月後・・

 あの約束の丘に、私は克海を連れてきていた。

 医者もさじを投げた克海の身体は、膝から下が二度と動かないという後遺症こそ残したものの、命は取り留めることができた。
 
「ずいぶん待たせてしまったな・・」
「・・うん・・」

 彼の乗る車椅子を押しながら、私は頷いた。

「・・こんな身体になってしまったけど・・それでも・・」
「愛してる・・」

 迷いなんて何もない・・
 たとえ克海の身体が、膝から下だけじゃなく、全身動かなくなったとしたって、私はいつまでだって側にいる・・

 だって・・・

「あなたを・・愛してるから・・・」






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