−相互リンク記念 DADDYFACE Short story−
夢の中で…

by Sin

夜も更けてきたある日の事。
明日のテストの為に一夜漬けを頑張っていた美沙は、眠気覚ましにコーヒーを
飲んだ後、また部屋に戻ろうとしていたが、ふとその時、鷲士の部屋の様子に
気付いた。

いつもならとっくに寝ているはずの鷲士の姿がそこにはない。
かと言って、夜食を作ってくれている様子もなかった。
「………あれ? どこ行ったんだろ……鷲士くん……」
ちょっと不安になって家中を見て回る美沙。(と言ってもさほど部屋はないが……)
だが、部屋の中のどこにも鷲士の姿はない。

「鷲士くん………どこ……」

夜の闇……

トレジャーハントの時にはどんな暗い所に行っても平気なのに、こうして一人きりで
真っ暗な部屋の中にいると、不安が募ってきた。

「……やだよぉ……鷲士くん……一人に……しないでよ……」

鷲士が……大好きなパパがいない……
そう思うだけで、美沙は言いようのない不安に押しつぶされそうになっていた。

やがて、明かりのない部屋の中に美沙のすすり泣きが聞こえ始めた。

「ぐすっ……鷲士く…ん……帰って……きてよぉ………」

そう言って泣きじゃくりながら、美沙は玄関に座り込んでしまった。

「鷲士くん……いなくなっちゃ……やだ……やだよぉ………」

溢れる涙が押さえきれない。
拭っても拭っても涙はどんどん溢れて美沙の頬を濡らしていく。

その時だ。

まるで物音を立てまいとするかのように静かに扉が開いた。

ハッとそれを見つめる美沙。
そして、そこに鷲士の姿を見つけた瞬間、美沙はいきなり抱きついた。
「わわっ!? み、美沙ちゃん!?」
「鷲士くん……鷲士くん…っ………鷲士くーーーんっ!!」
いきなり抱きつかれて慌てる鷲士だったが、抱きついて泣きじゃくる美沙の様子を見て
そっと彼女を抱き寄せた。

「美沙ちゃん……」
「……やだ……やだよぉ……」
泣きじゃくりながらそう言う美沙を抱きしめながらゆっくりと頭を撫でてやる。
そうされている内に、ようやく彼女も落ち着きを取り戻してきた。
「ひっく……気付いたら……鷲士くん……いないし……どこ探しても……いないし……」
「ごめんね……美沙ちゃん寝てると思って、いつもの九頭竜の修行をしてたんだ……
心配かけて……ごめんね……」
「いなくなっちゃ……やだよぉ……」
涙に濡れた目でそう言う美沙を鷲士はしっかりと抱きしめた。
「心配しないで……絶対に美沙ちゃんをひとりぼっちになんてしないから……」
「ホント……?」
「うん。絶対に美沙ちゃんの事は僕が守るから……」
「………鷲士くん……」
優しく抱きしめてくれる鷲士の温もりに、いつしか美沙は眠ってしまった。
そっとベッドに寝かせて部屋に戻ろうとした時、鷲士の服の裾が何かに引っかかった。
「ん? あ……っ」
見ると、眠っている美沙の手がまるで絶対に離すまいとするかのように鷲士の服を
握っていた。

しばらくその様子を見つめていた鷲士だったが、やがて軽く溜息をついて微笑むと、
近くにあった椅子を持ってきて腰掛けた。

「仕方ない……今日はこのままここにいてあげるよ………美沙ちゃん……」

そっと見上げた窓から優しく輝く月が見える。

「もう心配しないで……たとえ夢の中でも僕が君を守るからね……」

優しい月の光が二人を包みこむ……

そして……翌朝……

「ふわ……あぁ………あ? きゃ、きゃあああああああっ!!」
いきなりの悲鳴にびっくりして飛び起きる鷲士。
「ど、どうしたの美沙ちゃん!?」
「なっ、な、何で鷲士くんがここにいるの!?」
あたふたと真っ赤になってそう言う美沙。
「えっ……それは……その……美沙ちゃんがずっと離してくれなくて……」
「え?」
首をかしげた美沙だったが、やがて自分の手が未だにしっかりと鷲士の服を掴んでいる
事に気付いた。
「あ、あ、あはは………ごめんね……」
慌てて手を離した美沙。
だが、先ほどまでの事で顔は真っ赤になったままだ。

しかし………
「あああああああああっ!!」
突然の美沙の悲鳴(?)
「こ、今度は、なにっ!?」
慌てて振り返った鷲士が聞くと、美沙は途端に涙目になった。
「わ、わたし、テスト勉強の途中だったのに〜」
そう嘆いてもすでに遅く、もはや登校時間も迫っていた。
「ま、また補習………うぅぅぅっ……」

結局、そのまま何もできずに登校する事になった美沙は、本人の心配通り、
補習確定となってしまうのだった。

それ以降、鷲士は修行の際、必ず美沙に居場所を教えられるように連絡メモを
置くようになった……

それによって、美沙の成績が………上がるはずもないのだが……

「鷲士くん……もう寝かせて〜。せめて夢の中だけでもテストの無い世界に……」

どうしようもない現状に、夢の中へと逃げようとする美沙だった。





戻る