−相互リンク記念 DADDYFACE Short story−
寂しい夜は…

by Sin


虫の声が静かに響いている。
足音を殺して歩いてる筈なのに、軋む床がなんだか怖い……
「鷲士くん……」
静かに襖を開けると、そこにはいつもと違う、眼鏡を外した鷲士が
かすかな寝息を立てて眠っていた。

そっと近寄る美沙。
普段は眼鏡をかけている所しか見ていないから、こんなに間近で
眼鏡を外した鷲士を見る事は滅多にない。

しばらくぼーっとその寝顔を見つめていた美沙だったが、やがて……
「鷲士……くん……」
何となく触れたくなって、そっと鷲士の頬に手を伸ばす。
だが、その瞬間。
「きゃっ! しゅ、鷲士くん!?」
唐突に布団の中に引き込まれてしまった美沙は思わず悲鳴を上げそうに
なったが、とりあえずパニックになりそうな気持ちを落ち着けて見てみると、
鷲士はいまだに眠っている。
「な、なぁんだ、寝ぼけてたんだ……」
ほっとしたのもつかの間、美沙は今の自分の状態に気がついた。

「しゅ、しゅしゅ、鷲士くん!?」
大慌てで離れようとするが、今の美沙は完全に鷲士に押さえ込まれている
状態だから、逃げようにも逃げられない。
大好きなパパとはいえ、いきなり抱きしめられて平気でいられるほど、
美沙ももう幼くはない。

「しゅ、鷲士くんのエロぉ! 早く離してよぉ!!」
そう言ってポカポカ。
だが、鷲士は日頃のバイトで疲れ切っているのか、起きる様子がない。
しばらくジタバタしていた美沙だったが、どう頑張っても抜け出せない現状に
とうとう諦めた。

「はぅぅぅ………鷲士くん……重いよぉ……」
そう言いながらも美沙の頬が赤いのは、重さの為だけではないのは明らかだ。

その時……
「う……うう…ん……?」
わずかに身じろぎすると、鷲士はゆっくりと目を開けた。
「………美沙……ちゃん?」
そして辺りを見て……再び美沙に視線を戻し……現状を把握して……
「うわわわぁぁぁぁっ!?」
大慌てで飛び退いた。

「み、み、み、美沙ちゃんっ!? な、なんでここにっ!?」
「あ、え、えっと……ね……」
ごにょごにょと口籠もりながらも、美沙は現状に到るまでを話した。
それと共に真っ赤になる2人。
気まずい沈黙の時間が過ぎていく………

やがて……
「あの……ね……鷲士……くん……」
「えっ?」
「その……一緒に……寝ても……いい?」
真っ赤になりながらそう言う美沙に鷲士も思わず顔が熱くなったが、
そっと美沙の頭に手を置いて、ポンポンと撫でてやった。

「寂しくなったの?」
「……なんとなく……」
照れて更に真っ赤になる美沙。
そんな彼女を鷲士は優しく招き入れた。
さっきまで一緒にくるまっていた布団……
でも、今からは全く別……

喜んで鷲士の布団に潜り込む美沙。
その横に鷲士も身体を横たえた。
「ねぇ……鷲士くん……?」
「どうしたの?」
じっと見つめてくる鷲士に美沙はちょっと照れくさそうに微笑むと……

ちゅっ

「な、なにをっ!?」
真っ赤になって慌てる鷲士。
その様子に美沙はくすくすと笑っている。
「あは、ほっぺに『ちゅ』くらいでそんなに慌てなくても良いのに……」
「だ、だけど……」
「ほらぁ、鷲士くんも〜」
「ええっ、ぼ、僕もするの!?」
「するの〜。おやすみのキスぅ!」
そう言っていきなり目を閉じる美沙。

− こ、これじゃ、まるで……

思わず汗ジトになる鷲士。
だが、美沙はそのまま動こうとしない。
どうやらするまで許しては貰えないようだ。
「え、えっと……じゃあ……」
躊躇いがちにゆっくりと美沙の頬に唇を触れる。
そしてすぐに真っ赤になって離れた。

「唇でも……良かったのにな……」

ぼそっと言った言葉に鷲士は聞こえてないふりをしていたが、しっかり
聞こえていた事は、その真っ赤になった顔を見れば一目瞭然。
だが、それでも嬉しかったのか、美沙はもう一度鷲士の頬に…

ちゅっ

「……おやすみ、パパ」

そう言って鷲士の胸に抱かれたままゆっくりと眠りについた……


その後、美貴にこの夜の事を話してしまった美沙が、嫉妬の炎を燃やした
美貴ちゃんから数日逃げ回ったのだが……

それはまた、別の話……





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