−来館者数300突破記念 斬魔大聖デモンベイン Short story−
翼を下さい……
by 梁 明

 びゅおおおおおおぉぉっ!!

 凄まじい竜巻が、九郎達の前に立ち上った。
「くそうっ!! こんなところで機械神を召還するなんて!」
「あははははははははっ!!
 テメェなんざ生身でも殺せるけどなぁ、それだけじゃボクの怒りは収まらねぇんだよ!!」
 天空から降りてくるロードビヤーキーを背後にし、クラウディウスは狂った笑いをぶちまけた。
「九郎! こっちも召還だ!!」
「応!!」
 耳元で叫ぶちびアルに、魔術を組み立てる九郎。


「憎悪の空より来たりて」
「正しき怒りを胸に」
「我等は魔を絶つ剣を執る!」

「「汝、無垢なる刃、デモ〜〜ンベイ〜〜〜〜〜ン!!」」

 大空に巨大な魔法陣が奔る。そして、圧倒的な破壊神が大地を揺るがして降り立った。
 その間にもクラウディウスはロードビヤーキーのコックピットに収まっている。
「はん! 地べたを這いずり回ることしかできない機械神が!
 この大空を征くロードビヤーキーに敵うものか!
 全力で! 瞬間的に! 壊して潰して殺してやる!!」
 クラウディウスが吼えると、ロードビヤーキーはたちまち音速を突破し、遙か高みから巨大なレールキャノンをデモンベインへと向けた。
「まずい! あんなモノを喰らったら一発でお終いだぞ!!」
「判ってる! だけど、あんなに速く空を飛ぶヤツに、どう対抗すればいいんだ?!」
 ティマイオスとクリティアスを駆使し、攻撃を避けながらアルと九郎が歯がみしたその時、
『なんやなんや九郎ちゃん、空が飛びたいンか?』
「チアキさん?」
『そうや! 九郎ちゃん、今、空を自由に飛びたい言うたな?』
「ああ、言ったけど」
『それならウチに任しとき!』
「全力で遠慮させて頂きます!!」
『何でやねんっ?!』
「前回のことを忘れたとは言わさねぇぞ!」
『あ〜〜、アレは若気の至りと言うことで、堪忍や。
 今度のはきちんと空を飛べるヤツやで!
 こんなこともあろうかと、デモンベインが飛べるように密かに準備しといたんや!』
「今度はまともなんだろうな?!」
『信用してぇな! 二度と同じ失敗はせんようにする言うのんが、技術屋の最低限のマナーや!!』
「そんなに言うのならやってもらおうか?」
『任しとき!』

 ピピピピッ!

 チアキがコンソールを操作すると、覇道邸屋敷近くの森の樹が一定方向へと倒れる。そして地面が割れ、そこから鉄骨のレールが空へと伸びてきた。

「あ、あれは……」
 モニターを見ながらウィンフィールドが呻く。瑠璃とソーニャとマコトは目と口をあんぐりと全開にし、真っ白な灰になっている。モニターに大映しのそれは、黄色い本体に真っ赤な鋼鉄の翼だった。
「ジェッ○スクラ○ダー……」
 ウィンフィールドの呟きをよそに、チアキは目を輝かせて、ジェッ○スクラ○ダーの発進ボタンを押した。


 ギイイイィィィィンッ!! ドオオオオオオオオォォォ……

 大空に舞う、紅の翼……
 それは自らの主を求め、街へと飛んでいった。


 ずどおおおおぉんっ!! ずしゃあああんっ!!

 ロードビヤーキーの攻撃が続き、デモンベインはそれを避けまくっていた。
「チアキ! まだかっ!」
『大丈夫やっ!! すぐ近くまで来とる!!
 九郎ちゃん、今の状態から左の方向に走って!』
「判った!」
 九郎は言われた方向へとデモンベインを向ける。
『今や! 断鎖式シールド全開! 飛び上がるんや!!』
「おう!!」
 デモンベインがすごい勢いで飛び上がった。その背後に、覇道邸から飛んできた紅の翼が急接近する。
『よっしゃあっ!! スクラ○ダー・クロス!!』

 ガッキョ〜〜〜〜ン!!

 スクラ○ダー本体がデモンベインの背中に付き、腹にカバーが回されてしっかりと固定される。そして、翼が前の方へと角度を変えた。

 ゴオオオオォォオオォォォッ!!

 デモンベインがアーカムシティの空を征く。ロードビヤーキーを追い、雲よりも高く、舞い上がった。
「なんだそのレトロなメカはよっ!! あんまりおかしくってヘソで茶が沸くぜ!
 ウジ虫はウジ虫らしく、地べたを這いずり回ってるのがお似合いなんだよ!!
 そ〜〜れ! 堕ちなっ!!」
 ロードビヤーキーのレールキャノンが火を噴くが、デモンベインは悠々と避けた。
「そりゃああっ!! お返しだ!!」
 両手に銃を召還し、ロードビヤーキーへと連続で撃つ。初めて見る銃の攻撃に、クラウディウスはいつものように紙一重で避けた……と思った。

 ズガガガガアアアンッ!!

「なんだ?! このくそったれがっ!!」
 クトゥグアの銃弾が方向を変え、ロードビヤーキーのエンジン部分を撃ち抜いた。錐もみ状態になった機体を立て直し、
「この次会ったら絶対に殺してやるからなっ!」
 の捨てぜりふを残してロードビヤーキーは自ら起こした竜巻の中に消えた。

「やったか……」
 息切れも激しい九郎が呟いた。しかし、アルからの返事はない。モニターに映るデモンベインの姿に、これまた真っ白になっている。九郎も改めてモニターに映るデモンベインを見た。
「ん〜〜〜、すっげぇ似合ってない……」
『だけどな、空は飛べたやろ?』
「まぁな……」
『今はそれだけで満足しとき』
「そうだな。これ以上贅沢を言ったら、何が起こるか判らないからな」
 気の抜けた状態での会話。だが、今のデモンベインは深刻な状態にあった。

 バスッバスッ……ヒュウウウウウゥゥン……

 ガス欠だった。

「うわわわわわわわっ!!
 落ちてる墜ちてる堕ちてる何だかどうにもならなくってティマイオスとクリティアスでも何ともならなさげでこのままだと街に落ちるというか落ちる先が何だか見覚えのある街並みだったりしてってオレの事務所じゃんっ!!」
「何ともならんな。衝撃を和らげることはできるが、こんな巨体が歩くだけでもあのぼろアパートは崩れそうであるからな。衝撃がゼロになるか別の所に落ちるようにしないと絶対に壊滅だろう」
 完璧に我を失っている九郎に対し、アルの方はと言うと冷静なモノである。よしんば九郎の事務所がなくなった所で、ある所(覇道邸)には部屋があるのだからとあっさり割り切っている。
「ぎゃああああああっ! 何を冷静に分析しとるかというかこの状況下でも何とかなるんだったら何とかして欲しいというのがささやかな希望であるわけでしてっつーか何とかしろおおおっ!!」
『九郎ちゃん、何とかできるで』
「ほんとかっ! チアキさんっ!」
『ん。あとで文句いわへんのやったら何とかなる』
「とにかく何でもいいからなんとかしてくれ〜〜〜っ!!」
 漢・大十字九郎。魂からの叫びだった。
『ほな、ポチッとな』

 チアキがコンソールのボタンを押した途端、デモンベインのトレードマークであるライトグリーンの髪がするすると短くなっていき、全て頭の角に収容された。そして、角の先を支点に、角が左右に開く。
 その瞬間、九郎とアルが心底イヤそうな顔になった。
 そう、あの笑撃の飛行ユニット「Tケ□×ター」である。
(BGMにドラ○もんの歌を脳内で流しましょう)


 ぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷる〜〜〜〜
 ふよふよふよふよふよふよふよふよ〜〜〜〜

 回転を始めたTケ□×ターによって、デモンベインは頭を掴まれた人形のようにぶらぶらとぶら下がった格好になる。だが、それでも目に見えて落下速度が遅くなった。ティマイオスとクリティアスの力場形成は順調に作動しているようだ。あとは徐々に方向転換をし、影響の少ない場所へと降りるだけだ。

 ぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷる〜〜〜〜
 ふよふよふよふよふよふよふよふよ〜〜〜〜

 ぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷる〜〜〜〜
 ふよふよふよふよふよふよふよふよ〜〜〜〜

 ぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷる〜〜〜〜
 ふよふよふよふよふよふよふよふよ〜〜〜〜


 遙か上空からゆっくりと降りてくるデモンベイン。再び、あのシュールというかアンニュイな光景がアーカムシティの上空で展開される。
 今度ばかりは恐ろしいことに、避難所のモニターにまで流されていたのだ。おかげで避難民達に走った笑撃はかつてないほどの大大大爆笑をもたらした。そのおかげで、笑いすぎて酸欠となり、病院に入院した者が数千名を超えたというのはちょっと笑えない数字だろう。

「やったやった〜〜〜! こんなこともあろうかと、密かに残しとったんや〜〜っ!
 こんなこともあろうかと……、こんなこともあろうかと……
 っく〜〜〜〜〜〜っ! ウチは何て優秀な技術屋なんやろなあ!」
 満面の笑みでモニターを見つめるチアキ。会心のガッツポーズだ。

「まあ、結果良ければ全て良しと言うことにしておきましょうか」
 デモンベインの落下という大災害を防いだことから、怒っていながらも黙認せざるを得ず、不自然な笑顔を貼り付けたウィンフィールドがチアキを向いていた。そんなウィンフィールドに、無邪気な笑顔を向けるチアキ。
 正面には、これまた引きつったような笑顔の瑠璃までがいた。だがやはり、
「御爺様のデモンベインが……、御爺様のデモンベインが……」
 うわごとを呟かざるを得なかった。


「く、九郎ちゃん……」
 避難所で再びその姿を見ることになったライカは、滝涙を流していた。
「あはははははははははっ!! 九郎のヤツ、おっかしいの〜〜〜っ!」
「ホントホント! 背中にあいしゅーが漂ってる〜〜〜!!」
 ジョージとコリンは腹を抱えて大爆笑中であった。
「九郎お兄ちゃん、楽しそう〜〜(純粋無垢な子供故の、大人の複雑な機微が判らない見たまんまの主観的感想)」
 アリスンだけは目を輝かせながら、モニターのデモンベインを見つめていた。その姿を九郎が見たならば、おそらくは魂の汗をかきながら、
「……アリスン……乗ってみるかい?……」
 と、訊いたに違いなかった。



 翌日。

「ねえねえねえ、ぼくものせて〜〜」
「あたしも乗りたい〜〜」
「だあああああああぁっ!! オレは飛行船の船長さんじゃねえぞうっ!!
 第一、アレの持ち主でも何でもないんだからなああああっ!!」
 ご近所のガキ共が、九郎を見つけるなり集まってきていた。
「え〜〜〜〜? けち〜〜〜〜〜〜」
 九郎の言葉にガキ共はご無体な悪態を吐く。しかし、ぞろぞろとその後をついて回ることだけはやめなかった。いつか召還した時に、乗せてもらえるかも知れないという可能性にすがっていたのだ。


 それから三日間、「ブッラクロッジ」や「アンチクロス」が出てもいないのに、デモンベインが空を飛び回るという怪現象が起き、大十字九郎は、二度目の「瑠璃ビンタ」を喰らうのだった。



  合掌


PS.それ以降、子供たちの間で、デモンベインの召還ごっこが流行ったそうな(笑)

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