デモンベイン&リリカルなのはSS
機神飛翔リリカルベインA's-Strikers
 〜ミッシングリンク〜 

by アンヅ♂


Episode-0 Phase-6


九郎、アル。そしてシグナムとヴィータが窮地に追い込まれかけていた頃、なのはとはやては不思議な少年と出会っていた。

私は一心に祈っていた。アルさんに身体異常の原因を治してもらったと言っても、今まで動くこともかなわなかった体ではその場に助けに行くことは叶わず、ただ恩人と友人の安否を祈ることしかできなかった。はやてちゃんは未だに通信が綱がらない事に苛立っていた。そんな最中で彼と出会った。
『聞こえますか? この世界で大十字九郎に関わりし魔導師達。』
ずっと砂嵐しか写していなかった通信画面に、アルさんに似た容姿をして、九郎さんと同じ雰囲気と意志を宿した眼をもった少年が映りだした。
「だ… 誰や? あんた………… 」
シグナムさんか、エイミィさんが映ると思っていたはやてちゃんが、不信感満々な表情で口を開く。謎の少年さんはすこし口元を上げるように微笑む。
『魔導師としてはいい反応だ。』
そう呟く。まるで反応を楽しんでいる様にも見えた。これにはさすがにここまでで色々てんぱってたはやてちゃんが切れる。
「なんや、その態度! こっちの事情もしらんでいきなり通信入れてきて、その薄ら笑いは…………モガモガ!」
興奮気味のはやてちゃんをシャマルさんが慌てて押さえる。今日はなにかと鬱積が溜まるような事が多かったからかな? はやてちゃんが異常に短気だ。
『失礼した。気を悪くさせる気はなかったのだが………… 謝罪する。』
そういって画面の向こうで頭を下げる謎の少年さん。かなりまじめな人みたいだ。さっき目を見たけど、なにか策を裏に抱えてる様な目はしてなかった。私のそう言った感はよく当たる。なら、
「それはいいです。それよりさっき『大十字九郎に関わりし魔導師』って聞きましたよね? 貴方は九郎さんと関わりがあるの?」
彼を見つめるように質問を返す。
『私は彼に連なる者。そして彼に追いつくため、共通の敵の反応を追ってここに来た。』
そう真剣な目で答えてくれた。そして、自分がどういう者でなんでこんな通信を入れてきたのかを話し始める。

「…………なるほどな。ちゅうことはあんた、今は九郎さん達が居る世界に近い次元空間おるんやな?」
『あぁ。我も共通の敵の反応を追ってこの次元世界に来たのだが、どういう訳か我らが次元に入ろうとすると別の世界か元いた次元空間に出てしまい、目的世界にたどり着けないのだ。そこで今『大十字九郎』と最も関わりを持った者この世界に居ると判ったのでつながりを取り、世界に入りたいと思って………… 不躾な願いとは思うが頼めるか? 出来ればお願いしたい。』
そういって頭を下げる少年。
「それは構いません。それより九郎さんやヴィータちゃん達が今、大変なの!」
『? 大変とは………… 』
私の言葉に、謎の少年さんが首を傾げる。私は今起こっている事を手短に彼に説明した。彼は少し考えると、
『なるほど、それでか………… なぜにあの男の反応がここまで小さいと思ったら………… ならば、状況は一刻を争うな。よし、紅朔! 紅朔! 』
『なぁに〜………… やっと世界に入れるの〜。』
彼の後から聞き覚えのある声が聞こえ、通信機の前に顔を出す。寝ぼけた顔では有ったが、その顔はアルさんに似ていた。違うのは髪色と瞳の色くらいだった。少年さんが彼女に手短に今の話をすると、一瞬考えたあと私達を見つめ、
『ん〜、とりあえずそういう話ならあなた達に【鍵】をもらって私達がそっちにいくより、あなた達にこっちに来てもらった方が手っ取り早いわね。』
というと通信画面に見慣れない魔法陣が浮かび上がり、
『一人だけ喚ぶの面倒だから、3人ともこっち来なさいな。』
と言うと指をぱちんと鳴らす。その瞬間私とはやてちゃん、そしてシャマルさんの下に画面と同じ魔法陣が浮かび上がり、声を上げる暇もなく彼女と彼の居る処へと強制転移させられてしまった。
 
「「「うわぁぁぁぁっ!」」」
奇声を上げて、コックピットに彼女たち3人が降ってくる。
「紅朔! お前やり方が有るだろう!」
「え〜? そうぉ? この方が手っ取り早いじゃない。どうせ、父様達を助けに行くんでしょ?」
悪ぶるでもなくそう言ってのける我が妹。まったく、あれで我と双子なのだから始末に悪い………… あの粗忽ぶりはくそ親父似だ間違いなく………… そう思い、ため息をつくとコックピットから飛び降りる。
「すまない。我が妹が手ひどい招き方をした………… 」
尻餅をついて痛がる3人に謝罪する。すると後から
「え〜、私がお姉ちゃんでしょ?」
我の『妹』発言に当たり前のように否定を入れる紅朔。
「お前が姉などいうことは断じて無い!」
ギッと睨み付けこれだけはどうあろうと否定する。こいつが同じ「だいじゅうじくざく」で有ることと兄妹であることは認める。だが、こいつが「姉」であるなどとは断じて認めん! 双子は後から生まれた方が上という説もあるが、それはそれであり、こいつの粗忽ぶりで『姉』などと言って欲しくはない!
「あの〜………… ここって?」
先程一番先に私の話を聞き入れてくれた『なのは』と名乗る少女が転送時に打った思われる辺りをさすりながら我を見つめて質問してくる。
「あぁ、すまない。ここは我らが機神の中だ。」
「【機神】…………ってなんですか?」
なのはという少女が首を傾げる。
「【機神】ってのは、さっきあなた達の説明に述べた大十字九郎が持ってるモノと同じ。たぶん何かしらで見てないかしら? 大きな人型兵器よ。簡単に言うと巨大ロボの中。」
紅朔のやつが他事をしながらあっけらかんとに説明する。
「巨大ロボぉ?!」
なのはと共に来た『はやて』と名乗る少女の方が驚いた声を上げる。
「戦艦とかやのぅて、ロボット単体で次元航行しとるんか?!」
「驚く事じゃないわよ? だってこの子は一般的に言うロボットとは違うモノ。【デウスエクスマキナ《機械仕掛けの神》】だもん。そこらにある魔導兵器とは格が違うんだからね。いい、この子はすごいとこはね………… 」
紅朔に詰め寄っているはやてに向かって、いかにも得意げに説明を始める紅朔。まったくこいつは本当に………… そんなこと考えて、頭痛げにため息をついていたが、
「この子が凄いのは判ります。それより九郎さん達を!」
今だ立ち上がらず、床に座っていたなのはという子がが力説する様に叫ぶ。一瞬、何故座ったまま?と考えたが、通信を入れる前にこの世界に関わるアカシックコード読み取った事柄を思い出す。
「そうでしたね、すいません………… 紅朔、そういった説明は後だ。今は彼女たちの友人の救助が先決だ。」
「もう、いいとこだったのに………… それと名目が違うわよ? 大好きな母様と父様の救助でしょ?」
我の言葉尻に茶々を入れる紅朔。
「うるさい! 名目の表題などどうでも良い!」
我はその後も続けて嫌みを言う紅朔を無視して、コックピットに戻る。
「紅朔、副座につけ! 彼女たちの遺伝子コードを鍵として、世界への扉を開くぞ!。」
「はいはい………… まったく、素直じゃないんだからぁ、九朔は。 それじゃ、行くわよ、コード、アクセス! コル・レオニス、フルドライブ!」

紅朔の声に反応するようにコックピット無いに翡翠色の光源ラインが走る。驚いているはやて、シャマルそしてなのはの3人の下にまた先程とは違う魔法陣が浮かび上がる。
「これって………… 」
「うちらの魔力を検索してる?」
「…………というより、魔力と一緒に身体から情報を読み取っているようです。」
三者三様の驚き方をしていた。
「これより、次元を切り開き世界に介入します。3人とも何かに捕まって!」
九朔の声に3人が従って、手短な機械にしがみつく。
「行くぞ、デモンベイン! おぉぉぉぉぉぉぉっ!」
九朔の咆吼に答えるように巨大なロボット『デモンベイン』が咆吼し、巨大な変形の黒剣を振り上げて、前に見える次元の壁に剣を振り下ろした。 

剣を振り下ろして、次元との境界に突入を初めて30分くらいは経っただろうか、なのは達を『鍵』としたことによって、腕先だけは難なく通り抜けた。しかし、そこから先が一向に進入出来なかった。
「九朔、ストップ! ストップ!」
副座に座っていた紅朔が声を上げる。
「なぜだ! もう少しなのだぞ!」
そう言って、進行を止めない九朔。
「このままじゃ埒開かないよ。それにあまり悠長にしてらんないよ。あれから30分くらいだっけ? とりあえず、手は入ってるんだから人だけは通る。デモンベインはあたしが後から何とか通すから、九朔とその子達で先に行って! どうもイヤな予感がする。」
「しかし………… ん、判った。それでいいか? 3人とも。」
紅朔のいつになく真剣な顔をみて九朔がおれる。
「うちらはいいけど………… 」
「なのはちゃんが………… 」
そういって、シャマルとはやてが相変わらず、座ったままのなのはを見つめる。そう、ここに連れてこられたとはいえ、なのはまだまともに身体が動かなかった。身体の激痛をアルの治療により無くなったが2ヶ月のブランクは戦闘について行けるほどの回復には至っていない。そして、今ここにはなのはの相棒である『レイジングハート』は居ない。複雑な表情をした後、意を決したかのように、
「行ってきて、はやてちゃん、シャマルさん。そして九朔さん。それで必ず、九郎さん達を助けて………… 」
そういって顔を上げる。不器用に笑うがその心を写す眼は『自分も行きたい、そして助けたい』と言っている。九朔と紅朔が互いに見つめる。なのはの気持ちが痛いほど伝わってきたからだ。九朔は一度目を閉じると、
「紅朔。ここには我が残る。お前はなのはさんと一時的に契約して、3人でくそ親父達の救出に向かえ!」
「「「「えぇ!」」」」
九朔の言葉に残り、4人が驚く。
「「「け、契約って?!」」」
「えぇ?! ちょっと、いいの?」
「それが現時点では最善だ。戦力となる力は多い方が良い。お前と仮契約すればなのはさんの莫大な潜在能力で身体の異常も一時的ではあるが通常に戻る。そうすれば、魔力も普通に使えるはずだ。それにお前より我の方がデモンベインを動かすことに慣れている。お前がこのまま進入させるよりは早く世界に進入できる。急げ!」
そう言うと九朔は上の席に飛び戻ると操縦桿をうごかして、デモンベインの腕を動かすと同時にコックピットハッチを開ける。慌てる3人とは別に、九朔を見つめていた紅朔が何かを感じ取ったように頷くと、座ったままのなのはの前に跪くとジーパンにTシャツといったラフな格好から粋なり薄いレースを基調とした赤いドレスに姿を変える。
「緊急処置で一時的に貴女と契約します。貴女のフルネームは?」
「え? なのは、『高町なのは』です。」
「そう………… 『高町なのは』ね。ん〜、あなた立てる?」
「え? あ、はい………… 」
そう言って、少し苦しそうにゆっくりと立ち上がるなのは。それを見て難しい顔をする紅朔。
「やっぱすこしあれね………… あ、そういえば、あなたは今自分のデバイスは持ってないの?」
「はい。ここには………… 今は局のデバイス管理棟に。」
そう答えるなのは。現在なのはのデバイスである【レイジングハート】はなのはが復帰するまで本局のメンテナンスエリアで眠っている。紅朔はなのはの肩に右手置くと
「ちょっとそこをイメージしてくれる?」
「え? はい?」
「いいから………… やってみて。」
その言葉に首をかしげながら、思い浮かべるなのは。紅朔はと言うとなにやらブツブツ呟いている。すると、紅朔の握っていた左手に先ほどなのは達を転送した時に出てきた魔法陣が吹き上がる。
「この子で良かったかしら?」
そう言って、手を広げる。そこには局に安置されているはずのレイジングハートがあった。
「えぇ?! レイジングハート?!」
「master?」
なのはもだが、レイジングハート自体も驚いている。紅朔はレイジングハートをなのはに渡す。
「 My master、 where am I?(マスター、ここはどこですか?)」
「私もよくわからないんだけど、次元航行をする機械の中だって。」
事故以来の相棒との会話であったが、あまり悠長に会話をしてる時間はなかった。
「ちょっと悪いけど、デバイスさん。単問うで答えて。なのはを武装できる?」
「Who are you?(あなたは?)」
見慣れない者からの問いに疑問を返すレイジングハート。
「私は紅朔。なのはの体を治した人の関係者とだけ言っておくわ。時間がないから詳しくは勘弁ね。」
そう返す紅朔。
「ま、そう言うことなんだ。レイジングハート、出来る?」
レイジングハートは一拍考えたように間を置いて、
「It is possible. But I cannot recommend the battle.(それは可能です。ですが、戦闘はお奨めしかねます)」
そう的確に返す。それを聞いてなのはは苦笑いを浮かべる。予想はしていた回答だ。しかし、
「そう………… 武装は可能なわけか。なら、そう深い契約を交わさなくても大丈夫そうね。魔力の身体負担もかなり軽減できそうだし………… よし。」
そう独り言のように呟くと、レイジングハートを持ったまま立っているなのはの頬に両手を添えると、
「では、今から私は貴女【高町なのは】と仮契約します。」
「ふえ? ふぐ!」
そう言うと紅朔はなのはの顔に手をあて、『契約の口づけ』を交わした。

次の瞬間、なのはたちが居た辺りが朱色の光に包まれる。光が収まった後、そこに立っていたのは真っ赤なバリアブルジャケットに身を包んだ赤い髪となったなのはだった。
「うぇぇ?! な、なのはちゃん、なんか?」
なのはの変化した姿をみて驚きのあまり呆然とするはやて、後にいるシャマルも驚いて口に手を当てている。俯いていたなのはが身体を振る舞わせる。そして、がばっと顔を上げると
「私のファーストキスぅ!」
第一声はそれだった。はやて、シャマルがこける。
「だいじょぶ、だいじょぶ。女の子同士のはキスに入らないから………… 」
半泣きの顔でわめき立てるなのはとその顔の横に浮かぶ人形なみに小さくなった紅朔が慰めに為らない慰めを言う。二人のやりとりに惚けているシャマルとはやてに九朔が叫ぶ。
「そのあたりの話は移動してる時にしろ! 二人も早く、魔術法衣を身につけろ!」
「え? あ、はい! シャマル、行くで!」
「は、はい! クラールヴィント!」
「Ja」
「「セットアップ!」」
二人はお互いのデバイスを掲げて戦闘服に変わる。相変わらずギャーギャーやってるなのはと紅朔を二人で即座に両脇から抱えると、
「九朔さんお願いします!」
「判った。デモンベイン!」
4人がデモンベインの右手の乗ると九朔は4人を守るようにフィールドを張り、デモンベインの左手で無理矢理次元をこじ開けると、右手を瞬時に差し入れた。

4人は無事に第77観測世界へとたどり着く。場所はさすがに現場の近くとは行かず。シグナム達が使ったゲートから数キロ離れた位置に出現する。シャマルが直ぐさま九郎達がいる位置を確定するとそのまま、移動を開始する。
「うわ〜ん、私の初めてが………… ファーストキスがぁ!」
今だ納得しないなのはが飛びながら泣いている。
「結構しつこいねぇ、あんた………… こうやって現場に行けることになったので良しとしなきゃぁ。」
やれやれといった感じになのはの肩に乗るのはチビサイズになった紅朔。
「それはそれとして、女の子にとっては大事なことです!」
「 master it, and please calm down(マスター、落ち着いてください)」
ギロリと睨むなのは。それを落ち着けようとなだめるレイジングハート。多少殺気立ったなのはの視線をどこ吹く風で返す紅朔。
「はいはい………… でも、軽く唇ふれただけだし、それでこんだけ怒るわけだから、本契約じゃなくてほんとよかったわねぇ、なのは。」
などと軽口で返事を返して、ポンポンとなのはの側頭部を軽く叩く紅朔。なのははその態度にぷぅっと顔をふくらかす。
「本契約やと違ったんか? 紅朔ちゃん………… 」
なのはの横に飛んでいた騎士服変わったはやてが興味本位で質問する。
「そうよ。本契約なら私となのはの情報を直接に交換し合うわけ。今回はその子のディバイスをバイパスとして、この子の生態データをデバイスさんからもらって、なのはの身体に私の魔術の効果を出させてる。それだから軽い口づけの仮契約ですましてるけど、本来の情報交換ってのは、口から本人の詳細な情報をもらうためには体液や血液を互いに交換し合うの。ま、ぶっちゃけめちゃくちゃ濃いディープキスね。そっりゃもう熱くて甘くて濃厚なやつ。お子様じゃその場で白目向いて気を失っちゃうかもね♪」
軽くそう答え、お茶目にウインクする紅朔。
「「ディープキスぅ!」」
なのはとはやてがシンクロするように叫び、目を丸くする。
「そういえば、現存する記載にもそういう記述がありましたっけ………… 」
シャマルがあきれ顔でそう呟く。はやてが錆び付いたロボットのように首をシャマルに向き返す。
「ほ………… ほんま、なん?」
「えぇ………… そういう直接接触で主からデータを移行して契約すると、私のかなり少ないデータに一文だけ残ってます。超古代の術はけっこう身体的な接触で契約をしていた様でしたから、けっこうグロテスクなモノやその〜………… Hなモノ多かったとか。」
そうすこし頬を染めながら説明するシャマル。
「そ、その辺後で詳しく………… 」
「はいはい、そこのおこちゃまは変なことを覚えるにはちょっと早いわよ〜。」
かなり興味津々な感じにシャマルに聞き返すはやてを紅朔がたしなめる。ちなみになのは聞いただけで顔真っ赤にして反対方向を向いている。その後、色々一悶着があったがちょっとしたじゃれにも受け取れる感じに現場への飛行を続けていくと、
「あれ? あそこに飛んでるの………… フェイトちゃんじゃない?」
「あ、ほんまや。あちゃ………… フェイトちゃん、めちゃくちゃ傷だらけやんか。」
なのはが、自分たちより低飛行で飛んでいるフェイトを発見する。はやてもなのはが指さして気付く。傷だらけで飛ぶフェイトを見て二人は直感する。先程、九朔の説明からフェイトはシグナムと九郎達に助けられて、転移魔法陣に撤退したと聞いたが、フェイトの性格からそのまま戻るとは思えない。なら、おそらくある程度治癒を受けてから直ぐにシグナム達の元に駆けつけるために飛んでいる途中なのだろうと………… それにしてもその姿はむごく、特に相棒であるバルディッシュの損傷は離れて飛んでいる二人に手に取るように判る。二人は眼で語ると無言で頷き合い、フェイトの元へ向かう。

フェイトはある程度治療を受けた後に、シグナム達の後を追った。愛機バルディッシュも応急処置は受けている。とはいえメインフレームまでの損傷ではないにしろ。激しい戦闘には耐えられる状態ではない。それはフェイトも一緒だったが、ガンツ達と一緒にシグナム達を置いて戻ることはできず、ガンツやエイミィの言葉も聞かずに飛び出していた。自分が行ったところでどれほどの助けになるかはわかっていた。しかし、駆けつけずには居られなかった。痛みを耐えながら飛んでいると、
「フェイトちゃん。フェイトちゃん!」
「フェイトちゃん、ストップ。ストップや!」
と自分を呼ぶ聞き慣れた声が上から聞こえて来る。フェイトは緊急停止して、上を見上げると目を疑う。
「え?」
そこには今はミッドチルダの病院に入院しているはずのなのはと、そのなのはをお見舞いに行っているはずのはやてが居た。それ以上にあることで目を丸くする。
「な、なの………… は?」
有り得ない者を見たかのような表情で動きをフリーズさせるフェイト。なのはや他の3人が何を驚いているのか首をかしげるが、すぐにはやてが軽く手を打つようなジェスチャーをして
「うちらがなんでここに居るんかで驚いたんか?」
と訪ねるが、
「そ、それもそうだけど………… え? はやてとシャマルさんは変と思わないの?!」
なのはとはやてを交互に見つめ、アワアワと慌てふためくフェイト。一瞬、なんのことやらと首をかしげるはやてとシャマルだったが、紅朔の会話で有る事を忘れていた事に気がつく。当のなのはさらに首をかしげている。
「あぁ………… そういや、そのことさっきの会話で、すっかりこっちの問題を聞き忘れとったわ。」
と今思い出したかのように呟くはやてに
「そういえば、なのはちゃんの姿のことを紅朔さんに聞き忘れてましたねぇ…………」
そうでしたそうでしたと言うように頷きながら呟くシャマル。
「ふえ? 私がな………… に。」
自分がどうしたのかと言って、自分の体に目を向けてフェイトの様に動きを固めるなのは。
「ふぇぇぇぇっ?! ど、どういう事? これ?! え? 胸ぇ?! えぇ?!」
そう言って、今更驚いたように自分の体を隅々まで見回して騒ぎ立てるなのは。
「あぁ………… そういえば、こっちの説明はしてなかったね。」
「Therefore I wanted a master to calm down(ですから、マスターに落ち着いて欲しかったのですが…………)」
いやに他人事のように呟く紅朔とすこしであるがあきれたような口調のレイジングハート。
その後、慌てふためくなのはをおちつけ、紅朔が手短に現状の状態を話し始める。

「えと………… つまり、今の説明からするとですね………… 今の姿は私の未来の姿ってことになるの、かな?」
手短ながらも専門用語や難しい単語のオンパレードだった説明を受け、なのはが多少ショート気味に聞き返す。頭が良かろうがまだ小学6年生。おつむの回路はそれほどに高性能ではない。
「正確な表現ではないけど、簡潔にまとめて例えるならそういうことかな? ま、本質的には違うんだけど、私のもってる魔術や魔力をうまく受け入れられるようにあなたのデバイスを通して、現状であなたが戦闘が可能な状態で魔力を酷使した場合となったときににもっとも適した生態構造に体を持って行ったってことなんだけどね。」
「ふ〜ん」
と判っているのかいないのか判らない生返事で返しながら、えらく大きくなった自分の胸を持ち上げたり、ぽんぽん叩いて触っているなのは。その横では自称おっぱい魔神が何かしたげにそれを見ているが、服の裾をお供がしっかり握っている。
「あ、そういえば、紅朔さんの魔力をレイジングハートに通してるって言ってたけど、レイシングハートの方は大丈夫なの?」
「 all right. There is not the problem for a function.(大丈夫です。機能に問題はありません)」
レイジングハート返答を聞いて、ほっとしているなのは。紅朔の説明に驚いてるはやてとフェイト。その横でやけに紅朔を見つめ考え込むような表情のシャマル。すると、
(こっちじゃ、かなりの大魔術であることはわかってるから、今は深く聞かないでね。)
とシャマルにだけに念話を入れる。
(それは後で詳しい話をしていただけると?)
(詳しくはどうかな? でも、その前にやること有るよ。あの子身体を治さなきゃ、どうせ付いてくるんでしょ? 私としては味方は多い方がいいから。あっちがうまく言ったら話すとするわ。覚えられるかどうかはわからないわよ? それでかまわないならね。あ、シャマルさんは治療系とかって得意?)
(えぇ、そっちが本業みたいなもんですから、私は覚えるのでなく知りたいだけですから術の本筋の話はこの件が終わったあとで………… )
二人だけの密談は少し成長したなのはをフェイトとはやてがなのはの体をつつきながら話をしている間、に終わらせる。そして、フェイトとバルディッシュを通常状態にシャマルが戻すと、急いで九郎やシグナム達がいる場所へと5人は急ぎ飛んでいった。

シグナム達の苦戦はまだ続いていた。元々、分の悪い勝負であった。それに加えて、敵の増援や九郎が捕縛された事による戦力ダウンなどが重なり、前にも増して苦戦を強いられていた。魔力や体力の現象により、相手に徹底的なダメージを与えてその場を離脱する隙も作れず、ただ気力のみで相手を粉砕していくだけの消耗戦。
九郎の方は相変わらず閉じこめられているがその周りをザフィーラのコピー達が離れずに取り囲んでいる。おそらくだが、あの数でしっかり術を施しておかねば、すぐさまに捕縛を九郎が解呪するのがわかっているのだろう。その場から一向に動こうとしない。
「くそ! あいつら攻撃をチマチマした奴に変えやがってぇ!」
騎士服もかなりボロボロとなったヴィータが愚痴る。偽物達は先ほどまでの連携で突撃してくるモノから、一体筒2,3撃加えては距離を置くと言った戦闘に変えてきた。
「ここからは我らの消耗を小さく削るつもりか。もはや、大火力魔法は我らの残存魔力では無理だからな。」
と、冷静に分析するシグナム。
「ばーろー! だからどうした!」
そう言って、自らの愛機を構えるヴィータ。その闘志に答えるようにグラーフアイゼンが光る。もちろんヴィータも自らの状態は判っていた。けど、ここでヴィータが心を折れる様なことはない。
九郎を閉じこめた全ての偽ザフィーラが未だにこちらの方に援軍に来ないと言うことは、凍結された状態でまだ諦めずに九郎が戦っていると証拠だ。消耗していると言っても動ける自分たちが先に諦めるなど、有ろうはずがない。それはシグナム同じだ。とはいえ、あまりに二人の消耗がここに来て激しさを増している。もはや、自らのリカバリーが追いつかなくなっているのだ。アイゼンやレンバンティンのカートリッジも残り僅か。
そうこう考えていると、相手の動きになにか不自然さを感じたシグナムが呟く。
「そういえば、あの私の偽物の残骸を吸収してバトルアックスに持ち替えたヴィータの偽物はどうした?」
「あ? …………そういや、あいつさっきから居ねぇ。周りは雑魚劣化コピーばっかだ。どこ行った? 」
ヴィータもあの偽ヴィータが居ない事に気がつく。先ほどからチマチマした攻撃を加えていたのは『騎士』から『兵卒』にダウンした自分たちの劣化コピーばかりだった。同じ『騎士』レベルの力を持ったコピーの姿がない。そしてだんだんとコピー達が間合いをとる距離を開けているのに気がつく。二人は何かに気がついたように上を見上げる
「「ーーーーっ!」」
そこにはバトルアックスをもった偽ヴィータがいた。持っていたアックスが変形して巨大なボーガンに姿を変えていた。
「レバン・アイゼン………… 」
「Jawohr Kometzerfallen 」
感情のない命令に融合デバイスが答える。そして巨大ボーガンから魔力強化した巨大な弾丸が解き放たれた。
「「しまっ………… 」」
攻撃はふたりに防御を張る隙も与えずに着弾して爆砕する。

完全にやられたと想った………… けど、爆発音は聞こえたのに痛みがない。つぶっていた目を開ける。そこには見慣れた大切な人がいた。
「シグナム。ヴィータ。大丈夫やったか?」
防御フィールドを張って、俺らを守ってくれたのは騎士甲冑に身を包んだはやてだった。
「シグナム大丈夫?」
はやての横には、置いてきたはずのフェイトが完全復活した姿で共にフィールドを張っている。
「さぁ、今の内に二人の治療よ。お願いね、クラールヴィント。《静かなる風よ。癒しの恵を運んで》」
そして、オレらの後ろにははやてと共にミッドチルダの病院にいたはずの『湖の騎士』シャマルがあたし達の体を癒す。
「はやて、シャマル………… いったい、どうして?」
驚きより、そっちの疑問が先立った。フィールドを張り続けるはやてがはにかみながらこう言った。
「ん〜、めちゃ説明しづらいんやけどな。うちらもこっちに連れてこられたんよ。九郎さんとこの絡みでな。あ、つうてもうちらとしちゃありがたかったんよ。なにもわからずに後で二人が傷ついてるんをみるよりはな。」
「そ、此処に来れなかったことを後で後悔するようなことにならなくてよかったから、これはこれでよかったんです。ほら、二人ともじっとして………… もうすこしだから。」
シグナム達を治すシャマルがそうなんでもないかのように述べる。
「そうだ! あの男の方は!」
シグナムがはやてに向かって叫ぶ。はやては一瞬きょとんとして直ぐに落ち着いたような笑顔で、
「心配せんかて大丈夫や。あっちにもうちらと一緒で助っ人行ってるからな。」

はやてとフェイト達がシグナムを救った時、その遙か上空で一人がデバイスを構える
「行くよ、レイジングハート。」
「All right. my master.」
「スターダスト………… フォール!」
ピンク色の魔力光が魔法陣を描く。その背後にはいくつもの岩塊が魔力強化され、眼下にうごめく黒衣の騎士目がけて高速で落ちていく。多くの黒衣の騎士が微動だにせず、魔力で防壁をはる。しかし、
「あまいよ!」
なのはが更なる魔力を上げる。更なる魔力のコーティングを受けた岩塊が光を増す。
「私からのおまけ付き!」
なのはの肩に乗った紅朔がレイジングハートを通して自らの術を岩塊に加える。二人の魔力強化された岩塊は盾の騎士の劣化コピー達を一撃で粉砕していく。九郎を囲んでいたコピーが今の一撃で消える。
「やり! 今よ、なのは!」
「了解! レイジングハート。」
「All right.」
残っていた大きな岩塊を氷塊に目がけて落下させる。

氷塊に閉じこめられていた九郎達は完全に閉じこめられていたわけではなかった。
「くそ! 自分の周り2pだけ膜状に防壁張ったとはいえ、微妙に動けるからきついぜ………… 」
「解呪繰り返しているとはいえ、未だに数が増えた敵の性で完全な解呪がむずかしい。」
同じように周りだけで身動きの出来ないアルが悪態を付く。そうこうしていると急に魔力が低下していくのが判る。
「ん? 外で何かあったな? 九郎、今だ!」
「おう!」
九郎は気合いを入れ、一気に捕縛術を解呪する。氷塊が一気に崩れ落ちる。
「よっしゃ! へ? ぐがほ!」
氷から飛び出した九郎だったが、上を見上げた瞬間岩塊が目に入り回避するまもなくそのまま衝突して落下。横にいたアルも呆然とそれを見送った。

「「あ…………」」
目が点になってしまう紅朔となのは。
「It is unexpected one.To simplify the protection of that(予想外な方ですね。あれの解呪を簡単にしてしまうとは)」
閉じこめられていた氷塊を壊す予定だった岩塊と一緒に落ちていく九郎。それをなのはたちと共に目を点にして見送るアル。
落ちて砕けた岩塊のがれきから九郎がむくりと起きあがり、
「ごらぁ! 誰だこんなおおざっぱな助け方慣行した奴は!」
頭から血を流して、いきり立って怒りまくる九郎。直ぐに翼を広げ、ハワハワと慌てるなのはの下に飛んでいく。
「おまえかぁ! 助けようという心構えはいいが、ちっとは先のこと考えんかい!」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい! まさかすぐに出てくるとは想わなかったから。」
がぁ〜っと怒る九郎に、平謝りを繰り返すなのは。そこの遅れてアルが飛んでくる。
「おちつけ、九郎。先ほどのことは仕方なかろうが………… ん? なのはに………… 紅朔、か?」
ふくれている九郎に声をかけると、二人をみて驚くようにそう呟くアル。
「へ?」
アルの態度に九郎が間の抜けた声を上げて、もう一度自分を助けた少女を見つめる。幾分身体が成長してるが自分が治療を手伝った少女に外見特徴が似ている。だが、姿が変わろうと変わることがない魔力波長はなのはだった。そして、その肩に座っているちびアルと同じ姿の真っ赤な髪の少女を見て驚く。
「おま………… どうして?」
「ごめん。父様、詳しくは後。それより先にあいつをやっつけなきゃ。」
色々聞きたげなアルと九郎の言葉を遮り、紅朔は真剣な眼で九郎達を見つめたまま眼下に居る化け物を指さす。九郎とアルは互いを見つめあうとなのはと紅朔たちに目をむけ、
「そうだな。今はそれを聞くべき時じゃねぇ。んじゃ、行くぜ、紅朔、なのは!」
そう言うと、再び二丁拳銃を握る治す九郎。
「了解!」
「はい、九郎さん。行くよレイジングハート。」
「All right. my master.」
九郎の言葉になのはと紅朔が答える。そして、4人+αは直ぐに行動を開始する。
「おらおらおらおらぁぁぁぁぁ!」
九郎が叫びながら、劣化コピーの群れを弾丸で駆逐していく。
「アクセルシュート!」
「Accel Shooter」
九郎の後に続いて、なのはが得意の魔力砲撃で九郎のフォローをしていく。二人の砲撃で数が減ったコピー達。そこに治療を終えたシグナムやヴィータに加え、フェイトやはやても増援に加わる。
「はぁぁぁ!」
火炎をまとった刃でことごとく切り捨てるシグナム。
「砕けちれぇぇぇ!」
ギガントフォルムとなったグラーフアイゼンを振り回し、ことごとく力で敵の劣化コピーを粉砕していくヴィータ。
「プラズマ………… ランサー!」
ザンバーフォームとなったバルディッシュでなぎ払いながら、次の攻撃へと移るフェイト。
「彼方より来たれ、やどりぎの枝。銀月の槍となりて、撃ち貫け。石化の槍、ミストルティン!」
広域型のはやても負けじと奮闘する。補佐役のリインフォースツヴァイが居ないため、やや操作に難はあるが確実に敵の数を減らしていっている。
「ありゃ? はやてまでこっちに来てたのか?」
「どうやらその様だな………… まったく、紅朔の口車に乗ってここまで良く着たモノだな。」
どこか微笑みながらアルがそう漏らす。背後にいたなのはが、
「乗ったんじゃないです。私たちが来たいって想ったから来たんですよ。」
「ま、発端は私ではあるけどねぇ。」
そう答え、紅朔が付け加える。
「にしたって、お人好しすぎる行動だな。」
そう言いながら、二丁拳銃を撃ち続ける九郎。
「にゃはは、それは九郎さんからは言われたくないですよ。あたし達以上なんですから………… 」
なのはの返事に苦笑いする九郎。心が熱く背中が妙に頼りになり温かかった。
(こんな………… 戦いはいつぶりだろうな。)
九郎は想う。幾千もの時を越えて邪神を追い続けた中。アルと共に戦い続け、倒れながら傷つきながら決して諦めない戦いを続けてきた二人だけの孤独な戦い。伴侶や仲間を、そして大切な人たちが暮らす世界を守るため。数々の世界を邪神の手から解放するために戦い続けた。そして、初めの戦い依頼、背を任せられる仲間と戦うと言うことが無くなっていた。一番大事な人が傍らに共に戦ってくれている。故に孤独な闘いでありながら寂しさなどはなかった。だが、全てに気を張り、一時も緊張のとぎれぬような闘いを続け、今のような背中が温かいと言った感情は忘れていたと思っていた。だから思う。いや、思い出す。
(結局オレはいつも誰かが支えてくれてるから、戦える)
マスターテリオンとの最終決戦で感じた「守っている」モノに実は守られていた感覚を思い出す。暖かいそして、絶望を希望に必ず変えてくれる力。一瞬眼をつぶり、カッと見開く。
「あの腐れ野郎までの道はオレが切り開く。オレ達の背中は任したぞ、紅朔、なのは! 行くぞ、アル!」
「うむ、九郎! ふたりとも任せたぞ!」
「はい!」
「任せて!」
九郎とアルにこぎ見よく返事を返すなのはと紅朔。九郎は前に向けて、クトゥグァを向ける。

「喰らえ、クトゥグァ神獣形態!」
高まった魔力と共に炎の獣が敵をなぎ払いながら、道を切り開く。その間に九郎は紅い装飾銃を漆黒の刃に持ち替え、刃と銃の二刀流で未だに高笑いを続ける狂った魔物へと突貫。
この世界に不完全な状態であろうと、九郎とアルの道を阻めるモノは数える程度もいないだろう。一気に間合いを詰め、官制人格とかした闇の書の主であった者の前に立つ。
「これで終わりだ!」
持っていた『バルザイの偃月刀』を魔銃『クトゥグァ』の変えて、銃口を相手に向ける。
これで終わるはずだった。しかし、
「やっときた………… 待っていたよ。」
官制人格は薄気味悪い笑みを浮かべてそう呟く。すると、その真下に大きな口が現れると大きく開き、周りを吸い込み始める。
「ぐぅ!」
「くぁ!」
九郎とアルは一時踏ん張ったが、そのあまりの吸引力にあっという間に吸い込まれてしまった。
「な?!」
劣化コピーを相手していたフェイトがその光景に眼を見開く。
「九郎さんが飲み込まれた?!」
はやてが広域攻撃呪文を唱えよと構えていたが、それを止める。
「あいつ、あれが目的だったの?!」
なのはの肩にいた紅朔が漏らす。
「どういうこと?」
なのはが聞き返す。
「私や、母様が超古代の書物だって事は話したよね?」
「うん。」
「さっきなのは達が教えてくれたこの化け物が同じ書物のコピーだって事を考えれば、あいつは力を求める事を主と考えて行動してる。かなりの力も取り込んでるけど、同じ書物で失われた力を記載してる私や母様は………… 」
「そっか! 私たちのリンカーコアを蒐集したのと同じ様に!」
「If it was the same book, I thought it to be busy(同じ書物であれば、取り込めると考えたわけですね)」
紅朔の言葉になのはとレイジングハートがその先を創造して、恐怖するように呟く。しかし、
「けどね。それは大きな間違いなんだよ。ほら………… 」
紅朔は冷たい口調で言い放つと怪物を指さす。そこには、
「「「「「「な!」」」」」」
紅朔以外の6人が驚愕する。先ほどまで高笑いしていた先代「闇の書」の主のコピー体が動きを止め、苦しみの形相に変わる。
「私たちが記載するものはね。本来なら人が知っていい事じゃないの。人の力だけじゃどうしようもなら無いことをそのどうしようもないことの根源の知識を知って力に変える。だから、その事柄を理解できなければ毒にしかならない。まして無理に取り込んだとなれば狂うか、その体を崩壊させるしかないの。」
どこか悪役じみた笑みを浮かべながら、紅朔は淡々と説明する。なのははそんな紅朔に恐怖を覚える。そうこうしていると、怪物の体がボコボコとふくらみ始め、変化し始める。そして、その一部から何かが飛び出してくる。九郎だ
九郎は飛び出して、変化が始まった怪物を見ると舌打ちをする。
「ちっ! 無理にアルを取り込むこもうとしやがって………… 」
「仕方有るまい。人格コピーといえど、その大本は壊れた魔導書。まして、自ら一部となった以上その根底機能からの衝動に勝てなかったと言うことだ。だが、あの変化と魔力増大は少しやばいな。」
狂いだした化け物は周りにいたヴォルケンリッターのコピー達を己の体から延びた光の触手で次々に光に変えて取り込んで行っている。一番大きな力を持っていたアックスを持った偽ヴィータもあっという間に取り込まれてしまっていた。まるで自分のかけているものを探すかのように名の二十歳などは見向きもせずにコピー達だけを取り込んで行っている。
「なんか、見た目がウェイトリィみてぇだな………… まだ変化は続いてるけど」
「そうかもしれぬな。魔力波長の形が奴の中にある何かと無理に読み込んだ妾の記述の一部が混ざり合った感がある。しかし魔力のふくらみ方が不安定で異常だ。今の内に叩かねばな。近くにいる残りのコピーを取り込むと面倒だ。」
と、アルが呟いた矢先に怪物がまるで残像を残すようにかき消える。その場にいた一同が目の前のことに度肝を抜かれる。その中でアルと九郎。そして、紅朔が何かを直感したように有る方向に目を向ける。その間に九郎の元になのはやシグナム達が集まっていく。
「奴はいったいどこに!」
とシグナム
「あんな巨体で瞬間転移ですか?!」
ハワハワと慌てながら、索敵を始めるシャマル
「それより、九郎さん身体の方は………… って、腕、腕! シャマル、腕、血ぃ! 治療!」」
はやてが九郎に話しかけ、腕から大量に出ている血をみて慌てる。
「これくらい、なんでもねぇ! そんなに慌てんな、はやて! それよりオレが吸い込いこまれたとで状況悪くしちまった。すまねぇ。」
そう言って、皆に謝罪する九郎。
「そんな、貴方だけの性じゃないです。それに貴方がいなかったら、ここにいるみんなだって今の状態じゃなかった。」
謝罪する九郎に直ぐにフォローを入れるフェイト。
「そうだぜ。それよりあの化けモンを追うのが先だろ、大十字。」
アイゼンを肩に担いですこし照れくさそうに言うヴィータ。皆が同じ思いだというように頷く。
「あぁそうだな。あいつの行った場所は判って………… 」
「た、大変! 残ってたもう一体のリインのコピーの元の出現。このままじゃ吸収されちゃう!」
九郎の言葉が終わる前に索敵をしていたシャマルが奇声を上げる。
「こりゃ、悠長にしてられへん。シャマル、転送魔法!」
はやてが直ぐに反応して、シャマルに指示を出す。
「ええっ?! でも、私の魔法じゃ、いきなりそんな的確な場所には………… 」
慌てるシャマルの横にちびアルが飛んでいき、
「そちらは妾がフォローする! 今は考えるより行動だ! 早くせねば大変なことになる!!」
「は、はい! みんな、私の周りに!」
シャマルが直ぐに転移の魔法陣を展開する。残りの皆が集まる。
「「転送!!」」
アルがシャマルの魔法のサポートに入って、転送を完了する。皆が転送され怪物のいる場所に現れる。そこではもう新たな戦闘が開始されていた。

「うおぉぉぉぉ!」
九朔が力を込めて、巨大な人形と対峙する。
「まったく………… 我の運の良さもここまで来ると恨めしいな。」
そう呟きながら、般若のような形相をした白髪の女の巨神を睨み付ける。
「自己崩壊を繰り返しながら、こうまで抗うか………… 」
目の前の敵を哀れにも似た目で見つめる。
「しかし………… 【あのモノ】の力を一部なりにも宿した以上、この地よりは消えてもらわねばならぬ。」
そう言うと、相手を思いっきり蹴り飛ばして、後方に離れると自ら操る巨神【デモンベイン】の両手に九郎が持つ銃と同じ型の二丁拳銃を振りかざす。
「仕る!」
そう叫び、銃を乱射し始める。

「あれって………… 」
「巨神と巨人の戦いか?」
ヴィータとシグナムが目の前にある戦いを見て、ぼそりと漏らす。
「改めてみるとすごいですね………… 」
「なんか、小さい頃みたTVアニメみたい………… 」
「そ、そやねぇ、なのはちゃん………… 」
「というか、あれはなに? 知ってるの? なのは、はやて?!」
巨神の戦いを見て、やけに落ち着いたそぶりのはやて、なのは、シャマル。それと対照的に見知らぬモノに慌てるフェイト。その横で九郎が渋い顔で戦いを見つめる。
「あらどういうこった? なんで、あんなに弱いんだよ。」
「それはしょうがないよ。私がここに居るんだから………… 」
九郎のつぶやきに紅朔が答える。それを効いて九郎がハッとする。
「そっか………… そうだったな。お前ら二人で一人前になるように調整してたんだもんな………… 」
九郎がすこし優しい顔でそう呟く。紅朔は直ぐに九郎の下に来るまでのいきさつを九郎に話し始める。
「そうか………… 確かにその状況ならば、九朔の判断は頷ける。この展開も有る意味ではその采配からの引きだろうな。九郎とは真逆の運だな。」
そう呟き、下を見つめるアル。九郎がなにか言い足そうに睨むが気にしていない。眼下で広がる巨人戦の傍らに引きちぎられたもう一体の劣化コピーの残骸が見える。おそらく九朔がこちらの顕現した際に倒したのだろう。それを取り込もうと転移した例の化け物が変化した巨人体の交戦しているさなかに九郎達が遅れて転移してきたのだ。だが、九朔が乗り込むデモンベインは現在、搭乗者は一人。本来は二人で操作して初めて、力を発揮出来る用に九郎とアルが創る際に調製している。九朔と紅朔は魔術師と魔導書のハーフであり、どちらかが乗り込めば、大半の敵とは渡り合えるのだがエンジン出力が50%までしか上がらないため、今回のように魔力が大きく、存在自体を滅殺しければないらないような敵の場合では奥義たる「レムリア・インパクト」が使用出来ない状態となり、戦闘に対してのアドバンテージが低い。(イタクァ、クトゥグァは使用出来るが破壊力が落ちる)アルがそれを含み、提案を出す。
「どちらにせよ。これは好気だ。近接で取っ組み合いしている中に紅朔にデモンベインも戻ってもらえば、そのままあの怪物をデモンベインがもつ近接昇華魔法で殲滅出来る。我らは紅朔と融合しているなのはが乗り込む手助けをしてやれば可能な手段だ。皆もそれで良いな?」
「あぁ………… こちらではあのコピーを消滅させる手だてもだが、現在の人員では捕縛する手段もない。そちらに殲滅出来る手段が有るなら協力しよう。あれは危険すぎる。」
「うちらもそれでええよ。」
シグナムとはやてが皆の替わりに答える。他の者も同じ意見のようで頷いている。
「なのはがその紅朔ってやつとと融合してるから、あたしらはなのはを援護しながらあいつに近づいていけば良いんだな?」
「そういうこった。傷だらけなオレらでもなのはの楯にはなるからな。なのはが今回の勝利の鍵ってわけだ。」
ヴィータと九郎がひにくげな笑いを浮かべ合う。
「そんな楯なるとかじゃなくて、もっと良い言い方が………… 」
なのはが困惑気味で呟く。横にいたフェイトが
「しょうがないよ。あんな事が有った後だもん。なのはを守って、融合してる紅朔さんを無事にあのロボットに届けるのがこの事件を終結させることならね。」
続いてシグナムが、
「そうだ。言い方は引っかかるかもしれんが皆がその腹づもりだ。高町も気を引き締めていけ。誰もまたお前の傷ついた姿など見たくはないからな。」
そう告げる。ハッとするなのは。皆をすっと見回した後、
「………… はい。」
真剣な顔でそう短く返す。皆が微笑む。
「そんじゃ、行くぜ!」
「「「「はい」」」」
「おう!」
「うむ。」
「おっけ!」
九郎とヴィータを先頭として、しんがりのシグナム以外がなのはを取り囲む陣形でとなり、互いに目で合図しあうと一気に突っ込んでいく。デモンベインと戦っている本体は相手が相手だけに九郎達を相手してる暇はなかった。自らが作り出した例の機械兵達だけの防御。力は先ほどまで居たヴィータ達の劣化コピーに劣る。ただ、何分数が多く、なぎ払うのに時間を食っていた。しかし、着実にデモンベインに近づいていた。あと少しと言うところで事件が起こる。一番先に気がついたのシャマルだった。
「え?」
防御に妙な違和感を感じる。そして、一部の攻撃が自分の頬をかすめる。言いようのない悪寒が走る。
「みんな! 攻撃をを防いで受けては駄目! 回避して!」
そう叫んだ。だが、
「くう!」
「うっ!」
シグナムとフェイトの声が聞こえる。シグナムの頬の切り傷。フェイトが肩を押さえる。
防いだはずの攻撃が防御を抜ける。
「実態弾にAMFやて?! あかん、みんな回避や!」
はやてが攻撃のからくりの瞬時に見極め指示を出す。その最中に直下からなのはに向けて、その攻撃が多数発射される。なのは、紅朔が気づくが回避出来るタイミングではなかった。
「なのは!」
誰よりも早くヴィータが動き、なのはをかばって盾となる。ほとんどがヴィータの背中に当たり、なのはも一撃だけが肩をかすめる。
「「ヴィータ!」」
「「なのは!」」
攻撃を食らって落ちる二人。はやてと九郎が落下する二人を追って受け止める。
「ヴィータ! ヴィータ!」
かなりの深手を受けて、気を失っているヴィータの名を呼び続けるはやて。シャマルが直ぐにヴィータを治療する。そこで皆は有る変化に気がつく。
「ヴィータの騎士甲冑が消えかけてる?」
攻撃を受けた箇所の騎士甲冑がまるでバグでも起きたかのように消えたり、戻ったりを繰り替えしていた。ふと、他の攻撃を受けたなのは、シグナム、フェイトたちを見る。やはり同じように攻撃を受けた部分のバリアブルジャケットが消えたり、戻ったりを繰り返している。
つまり、あの実態弾は魔力防壁を抜けるだけでなく、攻撃が当たると最後の砦であるジャケットの機能を奪う機能さえ携えていると言うことになる。そうなると、この先を完全に被弾せずにあの攻撃の嵐を突き進まなければならない。しかし、今の状況でなのはを守りながらそれを行うのは………… 事実上不可能な事だ。だが、それをしなければ、また大木な災いを復活させることになる。数々の悲しい物語をつづり、多くの者を不幸にしながら、笑顔の中、涙で終わらせた悲しい魔導書を、今度こそ「闇の書」として顕現させてしまう。それはこの場にいる者たちが一番させて為る者かと思うことだ。あきらめるなど出来ない。けど………… 考えがまとまらない。そうこうしているうちに現場は最悪の方向へと進んでいく。

「くっ! 力不足とは言え、デモンベインが押されるとは………… 」
せめぎ合いの中、九朔が苦言を漏らす。実際、力負けしている訳ではなかった。だが、その重量に違いからジリジリとデモンベインが押されていた。九朔は自分が出しうる限界まで魔力を上げる。だが、押し切ることが出来ない。そうこうしている内に何かが当たる感覚を覚える。九朔がチラリとそのモノが当たった右足元を見る。
「――っつ! しまった!!」
ここに来て自分が押されては為らない方向へと押されていたことに気が付く。なんたる不覚! だが、そのまま為す術もなく奴の策を成就して為るモノかと無理に右足を化け物にあてるとフルパワーで蹴り飛ばす。しかし、それは自分が奴から離れる形となっただけだった。後方にバク転するように離れて着地するデモンベイン。その間に化け物は己がコピーの残骸を喰らうそしてまた変化が起きる

「そんな次元震までおきるはじめるなんて………… 」
九郎さんの仲間が操るロボットがせめぎ合いに負けて、後方に離れる。その間にコピー体が他の屍を喰らう。そして、大きな魔力爆裂が起きるとその周りが母さんの消えたあの時と同じように亀裂が入り始める。
信じられなかった………… たしかにあの「自己修復プログラム」がまた復活することは大変なことだ。だけど、こんな事まで起きるなんて予想もした無かった。ここまで大きな魔力の塊になるなんて………… 現状でこれを打破出来るのかわからない。
「フェイトちゃん、フェイトちゃん。」
呆然と見つめていた私になのはが声を掛けてくる。
「あ………… なのは。」
私にとってこの光景は母さんの事件を鮮明に思い起こしていてすこし対応がおかしい。なのはが心配そうな顔で、
「大丈夫?」
そう聞いてくる。私はすこし顔を左右に振って、
「大丈夫………… すこし母さんの事思い出していただけ。みんな、あのロボットの処に集まるんだよね?」
「うん………… 行こう。」
そういって、私に手をさしのべるなのは。私はその手を取り皆がいる処に向かった。

「大丈夫か?!」
後方に離れたデモンベインのコックピットを開けて、九郎が叫ぶ。
「大………… 丈夫だ。これくらい………… 」
次元を超えるためと、この戦闘による魔力消耗が激しかったのか、九朔が返事を返す途中に気を失う。九郎が急いで九朔を受け止める。
「結構無茶してきたみたいなだな。」
「まったく………… 変なとこだけは似ておるな。姿は妾に似てるのに………… 」
アルのため息混じりの言葉に九郎が苦笑で返す。
「九朔さん、大丈夫ですか?」
気を失った九朔を抱き上げてコックピットから出てきた九郎に紅朔と合体したままのなのはが駆け寄る。
「これからどうするんですか?」
九朔をシャマルに任そうとしている九郎になのはの横にいたフェイトが質問する。怪我をしたヴィータは治療を受けた後シグナムに担がれたままだ。現状で負傷者が増えたこちらに暴走が始まった劣化コピーをどうこう出来る手段があるのだろうか。九郎はコピーとデモンベインを見つめると、
「こりゃ、やるしかないか。」
と独り言のように呟く。
「その様だな………… 紅朔、なのは。皆を引き連れこの場から離れよ。奴の始末は我らが着ける。」
そういって、九郎とアルは九朔が乗ってきたデモンベインのコックピットに入っていく。フェイトやなのは慌てて、その後を追う。
「どう言うことですか?!」
「言葉のとおり。オレとアルがこいつを操って、あいつを滅する。」
「爆発の余波に巻き込まれん様に早く離れろ!」
コックピットの入るなのは達の言葉に応えながらとアルと九郎が別れて、駆動調整を始める。
「なら、なんで離れるんですか? この場に残ってれば………… 」
「次元震動起こさせないために、二人でデモンベインでぶつかって、あいつを向こうの世界で壊す気ね!」
今まで黙っていた紅朔が声を荒らげる。驚いたなのはとフェイトが紅朔を見つめると紅朔が涙目で九郎とアルを睨んでいた。
「ずるいよ二人とも………… やっとやっと二人に追いついたと思ったのに………… 」
そういって、ヒックヒックと鳴き始める紅朔。それを困った顔で見つめるアルと九郎。フェイトやなのはもどうすればいいかわからないでいた。すると、アルがふわりとなのはの肩で鳴いていた紅朔に近寄る。
「鳴くな………… これは我らがやらねばならぬ事。汝は我らの希望。そしてなのは達はこの世界の希望だ。我らはその希望が通る道を切り開くモノ。それに今回は汝等の【刃】を借りていくのだ。仮名rず戻ってくる。」
「本当?」
「あぁ、それに…………」
泣いていた紅朔を優しく見つめるアル。そして、フェイト達ではわからない言語で紅朔と話を始める。泣いていた紅朔が驚いた顔をすると大きく頷き、
「わかった。待ってるよ………… 九朔と一緒に。なのは、フェイト。あいつの事は二人に任せてみんなと一緒にここから離れるよ。」
「え? でも………… 」
「そうだよ。さっき、次元震動を起こさせないように向こうにって、もしかして、虚数空間に突っ込もうとしてるの?」
「そうだ。」
紅朔の豹変ぶりにオタオタしてるなのはとフェイト。フェイトの言葉に九郎が応える。
「あのバカを何とかするのは、それしかない。そのためにはこいつで向こうまで持ってかねぇといけねぇからな。」
そういって、駆動の最終確認を終える九郎。
「そんな! 向こうは魔力が構築出来ない空間なんですよ?! そんな自殺行為…………」
「自殺行為じゃないんだよ、フェイト。この子は………… デモンベインはそれが出来る子なの。」
紅朔がフェイトをいさめる。紅朔の言葉にフェイトが驚く。
「そ、それって、アルハザードの………… 」
「ぐだぐだしてる時間はねぇ! すこし時間はかかるがオレ達は戻って来る。その時に質問はしっかり聞いてやる! 今は急げ!!」
九郎が叫ぶ。なのは、フェイト、紅朔が九郎を見つめる。九郎の瞳が言葉以上に多くを語る。3人は納得したように互いの顔を見て頷き合う。
「わかりました。だけど、絶対に帰ってきて下さいね!」
なのはがデモンベインのコックピットを出る間際に九郎に向かって叫ぶ。
「当たぼうよ! 約束破るなんて後味悪いことするかよ。」
そういって、皮肉下に笑ってみせる九郎。なのはも極上の笑顔で返す。
「じゃ、九郎さんまた!」
「あぁ、またな。」
デモンベインのコックピットが閉まる。
「これで良かったんだな? アル。」
「あぁ………… 我等がかの空間に入ることで、この世界となのは達がいる世界との彼奴とのリンクが完全に切れる。あとに残った種子の刈り取りは紅朔に伝えた。もしもその根元が現れれば我らのデモンベインが目覚めるとも伝えてある。我等はその時までしばし、この子の中で休むだけだ。一仕事終えてからな………… 」
「そういうこった。しばらく頼むな【デモンベイン・トゥーソード】。」
九郎の言葉に【デモンベイン・トゥーソード】が応えるように呻りを上げる。

「みんな! この場から離れるよ。」
デモンベインから出てきたなのはがそう叫ぶ。
「ど、どういう事?!」
はやてがわけわからずそう返す。
「九郎さんがあのコピーを次元空間の向こう側で爆裂されるって。余波があるから、急いでここを離れるの。急いで!」
フェイトがすかさずそう答える。
「バカな! あの空間は【虚数空間】。次元航行艦船ですら航行は不可能なはず! そん処に入って帰ってこれるものか!」
シグナムが驚いたように叫ぶ。
「そうですよ。いくら何でも無茶です!」
九朔を抱えたままのシャマルも同じように答える
「詳しくはわからない。けど、九郎さんは私達に『後味悪いことはしねぇ』って言ってくれた。なら、それを信じる。」
なのはが凛と答える。シグナムとシャマルが返答に困る。あの男がその言葉を口にしたならそれは約定ではなく確定事項。信じるしかない。
「…………わかった。各自、負傷者を抱えて、この場を離脱! 転送ゲートまで戻るぞ!」
シグナムの言葉に皆が頷く。シグナム達が退避行動に移ると同時に九郎が操るデモンベインが怪物に突っ込んでいく。
『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっつ!』
光の翼を広げた巨神が怪物に体当たりする。怪物の足下が崩れ、淡い光の空間へと落ちていく。開けた次元になのは達は知らないが、九朔たちはよく知った五芳の星が輝く。
『レムリア………… インパクトォ!』
九郎の叫びと共に光の柱が天を付く。天に五芳星の魔法陣が描かれると空間は元に戻り、その後には静けさだけが残った。



続く




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