狂科学ハンターREI SS 『桜の育児日記』 最終話
by Sin


春美と母親を見送った玲達。
2人の姿が見えなくなるまで、桜はいつまでも大きく手を振っていた。

やがて2人の姿が見えなくなると、桜はそっと玲に身を預けた。
その肩を玲が優しく抱き寄せる。
ゆっくりと暗闇に包まれていく景色の中で、2人はそのまま寄り添い合っていた。
そして完全に日が暮れた頃・・・ようやく桜が口を開いた。

「玲くん・・」
「ん?」
「いつか・・赤ちゃん欲しいね・・」
「そうだね・・・」
何気なく言った二人だが、唐突にハッと気づいて、二人そろって真っ赤になった。

「あ、え、えっと、その、そう言う事じゃなくって、その・・あの・・・」
慌てて言い繕おうとする桜だが、結局良い言葉が出てこなくて更に耳まで真っ赤になって俯いた。
「いつか・・ね」
そう言う玲の言葉に驚いて顔を上げた桜だが、玲はとっくに顔を背けてしまっていた。
だが、耳まで真っ赤になっている事に気づかない桜ではない。
「ね、今なんて言ったのかな?」
「気にしないでいいよ」
慌ててそう言う玲だが、こんな面白いネタをほっておくような桜ではない。
「気にする〜!」
「気にしなくていいから!」
「気にするって!!」
「気にしないでって!」
食い下がる桜を何とかごまかそうとする玲。
だがその位で桜が諦めるはずもなく・・・

「玲くん、白状しないとぉ・・・」
「な、なに?」
「玲くん、お婿さんにしちゃうぞっ!」
「別に良いけど?」
「え!?」
「あっ・・・」
思わず言ってしまった事に気づいたが、もう遅い。
「そうなんだぁ・・・ふぅん・・・」
にやつく桜に背を向けて歩き出した玲の腕に桜はスッと腕を絡めた。
真っ赤になった玲は、それを振り解こうとはしない。
そのまま二人は夜の銀座に消えていった。


その頃・・・

「うーっ、玲、遅い〜」
HIMEで玲達を待つアリシアは、さすがに待ち疲れていた。
「二人でのんびりしてようよ。桜さんと一緒だから、きっと二人でどこか出かけたんだろうし」
そう言いながら、タケルはテレビを見て楽しんでいる。
オーギュストに命令をされない時、タケルは殆どアリシアの元を訪れてはこうして一緒の時間を過ごしていた。
「春美ちゃんも一緒なのに?」
「あの、お母さんって人に返してたら、きっと二人でどこかに行ってるよ」
「返すかなぁ? 桜さん、春美ちゃんの事、ほんとに自分の子供みたいに可愛がってたのに・・」
「おいらにはわかんないけど・・・ね」

意味深なタケルの言葉通り、結局その一晩中、アリシアはタケルと二人っきりの夜を過ごす事になるのだった・・・

その翌日・・・・
タケルがオーギュストの呼び出しで帰ったのと入れ替わるようにして玲達が帰ってきた。
「ただいま〜」
「やっほー、アリシア、たっだいまぁっ!」
その声と共に、どことなく元気のない玲と、いつも以上に元気な桜が一緒に入ってくる。
「あ、お帰り、玲、桜さん。・・・あっ・・やっぱり、あの人に春美ちゃん返しちゃったんだ・・」
「ごめんな、アリシアに相談しなくて」
寂しげなアリシアに玲がそう謝ると、アリシアはそっと首を横に振った。
「ううん、春美ちゃんのお父さんとお母さんは玲と桜さんだもん。いくら妹でも口出しできないよ」
「ありがとう、アリシア・・・」
「それに・・ほんとに寂しいのは・・桜さんと・・玲だもん・・」
「・・そう・・そうかもね・・」
そう言うと、玲は疲れ切ったかのようにソファーに座り込んだ。

「それにしても・・・ねぇ、玲? なんだかすご〜く疲れてない?」
「う、うん、まあ・・ね」
「なのに・・桜さんはなんだかすっごく元気・・・なんで? 一緒にいたんでしょ?」
「あ、うん、まあ・・それは・・その・・・」
思わず口籠もる玲。桜も頬が赤くなったままそっぽを向いた。
「・・・変な玲・・」
小首を傾げながらもアリシアはそれ以上追求しようとはしなかった。
結局その場はそれっきりになったのだが・・

それから数ヶ月・・・
玲はのんびりとアリシアと2人で新しく仕入れた紅茶を飲んでくつろいでいた。
「ねえ、玲?」
「ん?」
「桜さんって、最近自分の事、『乙女』って言わなくなったけど・・なんでかな?」
そう言われて、玲は飲んでいた紅茶を吹き出した。
「ごほっ、ごほっ・・・さ、さぁ?」
すっとぼける玲の額に一筋の汗が浮かんでいた事は言うまでもない。

その数日後に、桜がHIMEに血相を変えて飛び込んでくるのだが・・・

それはまた、別の話・・・


− 完 −


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