狂科学ハンターREI SS 『桜の育児日記』 第9話
by Sin


激しい熱波が辺りを包み、桜はそこから春美を守る為に服で包み込んで守っていた。
「・・・ふぅ、なんとかなったみたいね・・・春ちゃん、大丈夫?」
そう言って春美の様子を見ると、わずかにのぼせてはいるようだが、無事のようだった。
「ふふっ、丈夫だね。あんなに暑い中にいても平気なんて。私に似たのかな?」
そっと春美を抱きしめる桜。その背後に唐突に人影が現れた。
「けほっ、けほっ、ひ、ひょえぇぇ……すっごいね……」
「も、桃!? あんたいつの間に!?」
驚いて振り返る桜の目の前に、埃まみれになった服を払いながら桃が姿を見せた。

「ついさっき。でも玲さんってすっごいね。あれって魔法?」
「見てたんだ・・・う・・ん・・・ま、似たようなもんかな・・・?」
どう説明して良いか解らず、とりあえず桜はそう答えた。
「ふ〜ん・・・あ、それより、お姉ちゃん、その手、大丈夫?」
桜の説明に納得したのかしてないのか・・その時、桃は桜の手の傷に気づいた。
そっと手を掴んでみると、桜は傷みに顔をしかめた。
「つっ・・・ま、まあ、慣れてるから・・」
「慣れてるって・・・そんなのに慣れちゃ駄目だよ〜。女の子が嫁入り前に・・」
その桜の言葉に桃は呆れたように言った。

と、その時、襲撃者達を駆逐した玲が慌てて桜の下に駆け寄ってきた。
「桜さん、大丈夫?」
「あ、うん、大丈夫だよ、玲くん。ほら、春ちゃんも」
「そうか・・傷、痛む?」
「少しね。でも、大丈夫だって、このくらい」

そう言って笑う桜。それでも痛みをごまかしきれなくて、額には汗が浮かんでいる。
そんな様子にそっと桜の肩に手をやる玲。
と、その時、玲は桜の背後にいる桃に気づいた。
「あれ、君は確か桜さんの・・・」
「妹の桃で〜す。こんにちは、玲さん」
「こんにちは。ところで、どうしてここに?」
「そう言えば、聞き忘れてたけど・・・桃、あんたどうしてここにいるの?」
玲の言葉に思い出した桜も不思議そうに聞いた。

「ああ、お父さんに頼まれた買い物をしに来てただけ。そしたら偶然ここで騒ぎに
巻き込まれたってわけ」
「ちょ、ちょっと、あんた、怪我してないの?」
桃の言葉に、桜は慌てて妹の様子を確かめる。だが、どうやら怪我はないようだ。
「無事・・みたいね」
「離れたとこにいたから大丈夫。あ、赤ちゃんも無事みたいだね」
溜息をつく桜にそう言って桃は笑う。

だがそれが藪蛇だった。
「そうだ! 桃、あんたが親父に余計な事言ったから、あとでとんでもない事になった
んだからね!!」
「あ、あはは、ごめんごめん。てっきりお姉ちゃんの子供だとばかり思ったもんだから」
桜の剣幕に桃は冷や汗混じりにそう言って拝み倒した。
そんな様子に桜は溜息をつく。
「もぅ・・・あ、それより玲くん! 危なく春ちゃんまで巻き込むところだったじゃない! 
いきなりあんな大技使わないでよ!」
「ごめん・・・桜さんが傷つけられたのを見たら、我慢できなくて・・・」
「う・・そ、それは・・・その・・・嬉しいけど・・・」
気まずい沈黙が二人の間に流れる。
背後でその様子に桃が含み笑いをしていたのは置いておくとして・・・
それを破ったのは・・・

「桜さん! 玲!!」
という、アリシアの声だった。
「アリシア!? どうしてここに?」
「タケルくんと、この先でデートしてたの。そしたら銃声が聞こえたから・・」
アリシアがそう言っていると、やがてタケルが後ろからやってきた。
「やっほ〜、桜さん。うわ、ハンター、また派手にやったね〜」
「タケル! ちょうどよかった。ここ、直しといてよ」
そう言う桜の言葉にタケルは周りを見回したが・・・
「え〜っ、こんなに広い範囲は無理だよ。おいらに出来るのはひとつの物だけなんだからさ」
「そっか。それじゃしょうがないな〜」
あっさりと引き下がる桜。
こういう事に対して、食い下がっても仕方ない事を知っているからだ。

「お姉ちゃん、その子達は?」
「ああ、桃は初めてだったよね。アリシアは玲くんの妹で、タケルはその・・・」
そこで言いよどんだ桜は、アリシアに耳打ちした。
「ね、アリシア。タケルって、アリシアの友達? それとも・・彼氏?」
その言葉にアリシアの頬がポッと赤く染まる。
「え、えっと・・ね。その・・・彼氏・・かな?」
アリシアはそう言うと、わずかにタケルに視線を移し、再び赤くなってうつむいた。


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