狂科学ハンターREI SS 『HIMEの正月便り』
by Sin



 新しい年を迎えたギャラリー『HIME』の一室。
 ゆっくりと昇った朝日が部屋の中に優しい光を注いでいる。
 部屋に置かれた無数のぬいぐるみ、そして花々に囲まれて、アリシアが小さな寝息を立てていた。
「うぅん・・・」
 注がれる光に僅かに身じろいだアリシアは、ゆっくりとその瞳を開く。
 まだ眠そうな様子でボンヤリと天井を見上げていたが、やがて大きく伸びをして起きあがると、小さな欠伸をした。
「・・みんな、おはよっ」
 眠そうな声でそう言うと、ぬいぐるみ達を順番に抱きしめ、パジャマを着替えて玲の部屋に向かった。

 その頃、玲の部屋では・・・

「・・んん・・っ・・・・玲・・くん・・」
 薄い水色のシーツに二つの大きな膨らみ・・その一つが僅かに身じろいだ。
「もう・・朝・・?」
 その声と共にごそごそとシーツから顔を覗かせたのは桜だった。そしてその横には玲の姿が。

 眠そうな目で桜は辺りを見回していたが、やがて部屋の寒さに首をすくめ、温もりを求めるかのように玲の身体をギュッと抱きしめる。
 と、その瞬間、桜の背に玲の手が回されて優しく抱き寄せられた。
「・・ん・・桜さん、もう・・朝・・?」
「あ・・起こしちゃった・・?」
「桜さんの温もりで目が覚めたよ」
 そう言われて、桜の頬が赤く染まる。
 照れくさそうに微笑んでいた桜は、やがてそっと玲の胸に顔を埋めた。
「明けましておめでとう、桜さん」
「うん・・明けましておめでとう。これからも・・ず〜っとよろしくね、玲くん」
 そう言って唇をかわす2人。

 その時だった。

「玲〜〜っ、明けましておめでと〜〜っ!!」

 唐突に部屋に入ってきたアリシアは、いきなり布団を引っ剥がしてしまう。
 だが次の瞬間、その顔が真っ赤に染まった。

 なにしろ、そこには一糸まとわぬ玲と桜の姿があったから・・

「ごっ、ごめんなさいっ!!」

 そう言うと大慌てで部屋を飛び出していくアリシア。

 突然の事に、呆然としていた2人だったが、やがて桜が「や、やだ・・」と恥ずかしそうに身体を隠すと、玲も照れくさげに頬を掻いた。

「・・・・見られちゃったね・・」
 ベッド周りに散らばった服を着ながら、そう言う桜に頷く玲の頬も赤い。
「なんだか恥ずかしい・・玲くんとこういうコトしてたってバレちゃった・・」
「まあ・・もうここには僕達の子供がいるんだし・・してるって事はバレてるだろうけど・・ね。やっぱり照れくさいなぁ」
 そう言って玲は桜のお腹にそっと触れる。その手にそっと手を重ねながら、桜は「まだ半年も先だけどね」と言って微笑んだ。 

「玲くん・・」
 やがて服を着終えた桜は、玲にギュッと抱きつくと、そのまま唇を重ねる。
 背中に回された玲の手がそっと肩から腰にかけてのラインをゆっくりなぞっていく感触に、身体を震わせながら桜は何度も、何度も唇を重ねた。

 その頃アリシアは・・

「は、はぁ・・びっくりした・・」
 激しい動悸に息を落ち着かせるかのように、大きく息を吐いたアリシアは鏡に映っている真っ赤になった自分の頬に手を当てて「こんなに・・赤くなってる・・」と呟いた。
「玲と桜さん・・昨日の夜・・あんな格好で・・・」
 経験こそ無いものの、いろんな本を読んで知識だけは豊富なアリシアには、あの光景がなにを意味するのか、はっきり分かっていた。
 ふと、さっきの玲と桜の姿に自分とタケルの姿が重なってアリシアは耳まで真っ赤になる。その時・・

「やっほ〜、アリシア、明けましておめでとう!」
「たっ、たっ・・たっ、タケルくんっ!?」
 唐突にかかった声にアリシアは首の辺りまで真っ赤になって振り返った。
「あ、あれ、どったの? アリシア、顔真っ赤だよ」
「きっ、気にしないで!」
 そう言って慌てて顔を隠すアリシア。その背後から、くすくすと笑い声が聞こえてきた。

「あ、桜さん、ハンター、おはよ・・じゃなくて、明けましておめでとう!」
「あれっ、来てたんだ。明けましておめでとう」
「おめでと。新年早々、アリシアに会いに来たってわけ?」
「ハンターに会いたくて会いたくて、ずっと一緒にいた桜さんには負けるけどねっ」
 いたずらっぽく笑って言ったタケルに思わず顔が赤くなる桜。
 その様子に、玲もタケルも、そしてアリシアも笑った。
「もう・・玲くんまで・・いじわる・・」
 真っ赤になって呟く桜をそっと玲は抱き寄せた。

「じゃ、みんな揃ったところで、改めて・・明けましておめでとう。今年もみんな、よろしく」
「おめでとう! また1年、頑張ろうね!」
「明けましておめでとうございます。タケルくん、玲、桜さん、今年もよろしくお願いします」
「明けましておめでとう! ・・・えっと・・あ、そうそう、本年もご贔屓奉り・・」
 わざわざ難しい言葉を並べようとするタケルにアリシアはクスクス笑うと、「今年もよろしくお願いします、で良いのよ」と、お姉さんぶって教えていた。

 銀座の街に新しい夜明けが訪れて、HIMEにもまた新しい朝がやってくる。

 桜の中に息づく新しい命も、またひとつ、誕生へと向かっていく。

 みんな少しずつ成長しながら、新たな日々を迎え・・そして、また玲達の新しい1年が始まった・・・








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