狂科学ハンターREI SS 『アリシアの休日 (2)』
by Sin



 微かに月明かりが照らす河原。
 完全に日も暮れてしまっていたが、アリシアは花畑に夢中になって、
「アリシア、まだ帰らなくて大丈夫?」
 タケルにそう聞かれるまで、すっかり時間を忘れてしまっていた。

「やだ、もうこんな時間・・・ごめんね、タケルくん。こんなに
付き合わせちゃって・・」
 そう言って謝るアリシアにタケルは笑った。

「べつに俺だって好きでアリシアと一緒に居るんだから」
「ありがと、タケルくん」
 微笑むアリシアにタケルが照れくさそうに笑ったその時だった。

 突然、バイクの音が響いてきたかと思うと、アリシア達は周りを
取り囲まれてしまった。
 どうなったのか解らなくて、アリシアは思わずタケルの腕に縋り付いた。

「よぉよぉ、見せつけてくれるじゃねえの」
「ガキのくせに生意気だよなぁ」
「ひゅぅ〜、可愛い子じゃねえか。俺達と一緒に遊ぼうぜぇ」

 口々に挑発してくる男達をタケルは完璧に無視した。

「アリシア、行こう。邪魔が入ったし」
「う、うん・・・」

 歩き出そうとした2人だったが、すぐにその周りを男達に取り囲まれた。

「へへへ、逃げるこたぁねえじゃん。俺達と遊ぼうぜぇ」
「アリシア、行くよ。かまってたら、バカがうつる」

 そのタケルの言葉に激昂する男達。
だが、そんな輩の様子など歯牙にもかけずに、タケルはアリシアの手を引いた。

「このガキ・・一度痛い目に遭わせてやらねえと、わからねえようだなぁ・・」
「やめといたほうがいいよ、おじさん。痛い目見るのはそっちだから」
「こっ、このガキぃぃっ! 誰がおじさんだぁぁっ!!」
「お、じ、さ、んっ」
「わ、わざわざ強調するんじゃねえっ!」

 男達をからかって遊んでいたタケルだったが、アリシアに腕を引かれて振り返った。
「タケルくん・・・ここでこの人達暴れたら・・お花が・・」
「そうだね。場所変えようか」
「うん・・」
 そう言って2人が場所を変えようとした時だった。

 突然周りを囲んでいた男達の数人が、バイクで辺りの花畑を荒らし始めたのだ。
「ひゃははははっ! こいつはいいぜぇ! 最高の花吹雪だ!」
「やめて! お花が可哀想!!」
 アリシアの叫びが逆に男達の嗜虐心に火を付けてしまったのか、男達は奇声を上げて
花畑を荒らし回る。
 その時、踏みにじられ、ちぎり飛ばされた花がアリシアの足下にポトリと落ちた。

「ひどい・・どうしてこんなことするの・・・? お花が・・可哀想・・」
 ちぎられた花を胸に抱きしめたアリシアの頬を、涙が伝った・・。
 その様子に、とうとうタケルがキレた。

「アリシアを・・泣かせたな!! もう許さない!!」
 タケルの叫びと共に、重力子エンジンが回転を跳ね上げる。
「分子構造転換装置、作動! 吸引装置、レベル3! 識別装置精度、低!」
 心が激しく高ぶり、両肩が開いて重力子が放出され、吸引装置が音を立てて
吸い込み始めた。・・・男達のバイクを。

 突然の出来事に驚く暇もなく、男達はバイクから投げ出された。・・いや、
バイクそのものが消えて無くなったのだ。

 悲鳴を上げて転がる男達は、次の瞬間、目を疑った。
「お前達・・アリシアを泣かせたな・・」
 そう言いながら、まるで鉄砲でも撃つかのように指を男達に向けるタケル。
人差し指と中指の間に、電磁レールが形成されて、小さな鉄球が姿を見せた。
バイクを分解して作り出した鉄の弾丸だ。
「これでもくらって反省しろーーーっ!!」
 タケルが叫んだ瞬間、電磁レールから連続して弾丸が発射され、男達に襲いかかる。
 もちろん初めからまともに当てるつもりはなかったが、数発が体をかすめ、男達は
泡を食って逃げ出した。

「おまえら、今度こんなことしたら・・・」
 そう言って指を空に向ける。そして電磁レール内に、1o程度の反物質を形成した。
「こうしてやるからなっ!!」
 タケルが言った瞬間、反物質弾が打ち出され、遙か上空で大爆発を起こした。
 その様子に男達は腰を抜かし、情けない悲鳴を上げながら、まるでトカゲのように
這いつくばって逃げ出した。

 男達が去った河原・・
 綺麗だった一面の花畑は、無惨に踏みにじられてしまっていた・・

「お花が・・」
 アリシアが泣きながら花を拾い始める。
「ごめんね・・・守ってあげられなくて・・・」
 そう言って泣きじゃくるアリシアの手に、そっとタケルが手を重ねた。
「タケルくん・・」
 涙目で見つめるアリシアに、タケルは笑いかけた。

「さぁて、お立ち会い。この一面の荒れた花畑を見事生き返らせたら
拍手喝采お願いいたしま〜す♪」
 おどけてそう言うタケルを驚いたように見つめるアリシア。

「分子構造転換装置、作動! 吸引装置、レベル5! 識別装置精度、最高!」
 その言葉と共に、重力子エンジンがうなりを上げ、花の残骸を吸収し始めた。
そして、辺りに散らばっていた花の残骸を全て吸収し尽くしたタケルは、更に
エンジンをフル回転させる。

「そぉれぇっ!!」
 一気に両手を振りかざすと、激しい光がタケルの手のひらの間に生まれ、
それが周囲に降り注いだ。

 あまりの眩しさに一瞬目を閉じていたアリシアだったが、肩を叩かれて目を開けると、
そこには荒らされる前と寸分違わぬ、一面の花畑が広がっていた。

「へへへ・・どうかな? ちょっとくらいは違うかも知れないけど、大体同じように
できたと思うけど?」
「タケルくん・・・ありがとう・・」

 涙に潤んだ瞳でそう言ってくるアリシアにタケルが笑いかけた時だった。

「あ、あれ・・・? やば・・連続して分子構造転換装置使ったら・・エネルギーが・・」
 そう言うと同時に、タケルは動きを止めてしまった。
 そのままふらっと倒れるタケルを、アリシアが抱き留める。

「エネルギー切れちゃうくらいまで頑張ってくれたんだ・・タケルくん・・」
 アリシアはそう言って強くタケルの体を抱きしめる。
「あまり見られたくないみたいだったけど・・・ごめんね」
 ちょっと罪悪感を感じながらも、アリシアはタケルの服をたくし上げると、
胸のパネルを開いた。そして胸の内側に貼り付けられていた巻きネジを取り出し、
ゼンマイに突っ込んだ。

 静かな河原に、キリキリとネジを巻く音だけが響く・・
 そしてしばらくして、アリシアが巻きネジを抜くと、タケルは再起動した。

「・・・あれ・・・アリシア・・? 俺・・」
 まだ電子脳が完全に動いていないのか、タケルはしばらくボンヤリとしていたが、
やがて、目を瞬かせてアリシアを見つめた。
「アリシアが再起動してくれたのかぁ・・」
「う、うん・・でも・・・その・・中・・見ちゃって・・ごめんね・・」
「あ、ああ、うん・・」
 なんとなく気まずくて俯いたタケルだったが、いきなりアリシアに抱きつかれて
目を白黒させた。

「ア、アリシア!?」
「ありがとう・・タケルくん・・大好き・・」
 そう言うと、アリシアはいきなりタケルの唇を奪った。

 突然の出来事にパニックになったタケルは今にも電子脳がオーバーヒートしそうな
くらい、真っ赤になった。
 唇を離したアリシアも、頬を赤らめて微笑んでいる。

 それからしばらくして・・・

 ようやく落ち着いたタケルは、花畑に寝っ転がって空を見上げていた。

「ビックリしたよ・・・いきなりアリシアがあんなことするなんてさ・・」
 そう言ったタケルにアリシアはクスクス笑った。
「ふふっ・・多分、玲達の影響・・かな・・? HIMEに居ると、いつも見せられちゃうし・・ね」

 そんな事を話しながら、2人は花畑の中、いつまでも寄り添って空を見つめていた・・

 その後、玲達が心配して探しに来た時、そっと抱きしめ合って幸せそうな寝顔を浮かべているアリシア達の姿に、自分達の姿を重ねてしまって顔を赤らめたのだが・・

 これはまた、別の話・・



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