狂科学ハンターREI SS 『新たな年へ』
by Sin



 寒風吹きすさぶ銀座の街。
 その一角にある、ここ、ギャラリー『HIME』では、僕とアリシア。それに手伝いに来てくれたタケルが
大掃除に追われていた。

「玲〜っ、これ、どこ置いとくの?」
 そう言って、巨大な絵を軽々と持ち運ぶアリシア。
 さすがにあれは真似できないなぁ・・何しろ、あれ一つで200sあるし。
「あ、そうだなぁ・・じゃあ、奥の倉庫に入れておいてくれる?」
「は〜い」
 笑顔で答えたアリシアが奥に行くと入れ替わりに、桜さんが姿を見せた。
 それにしてもかなり大きな荷物を持っている。なんの荷物だろう・・?

「んしょっ・・ふぅ、重かった。やっほ〜、玲くん。頑張ってる?」
「やあ、桜さん。いらっしゃい・・って・・どうしたの、その荷物?」
「え? あ、えっと・・ね。せっかく・・その・・・だから・・玲くんと・・一緒に・・新しい年・・迎えたいな・・
って・・」
「あはは、そっか。それにしても凄い荷物だねぇ」
 照れくさそうに頬を赤らめて呟く桜さんに、僕はなんとなく嬉しくなった。

 桜さんとつきあい始めて・・初めての正月・・
 あの、春美の事から少しして、僕達はつきあい始めた。
 ・・と言うか、来年には僕と桜さんの・・子供が生まれる予定なんだけどね。

「1ヶ月分の着替えとか・・持ってきたから・・」
 更に頬を赤らめる桜さんを僕はそっと抱きしめた。
「そっか・・嬉しいよ。また桜さんが一緒にいてくれて」
「うん・・」
 僕の胸に顔を埋めた桜さんは、そのままギュッと僕に抱きついてきた。

 その時・・

「こら、玲〜っ! さぼってちゃ・・あれ? 桜さん、いらっしゃ〜い」
 突然の声に、僕達は慌てて離れる。
 見ると、桜さんの顔は真っ赤になってた。多分僕も・・
「ふふっ、2人とも真っ赤」
 そう言ってくすくす笑うアリシアの背後から、タケルも姿を見せた。
「おいらとアリシアにばっかり掃除させておいて、自分は桜さんとお楽しみ?」
 カウンターに頬杖を付いてそう言ったタケルに、アリシアはまた笑う。
「そ、そんなんじゃ・・ね、ねえ、玲くん?」
 耳まで真っ赤になった桜さんがそう聞いてくるけど、僕も照れくさくて頷くのが精一杯。
 そんな僕達を見て、アリシア達は顔を見合わせて笑った。

 あの後、桜さんも手伝ってくれて、『HIME』の大掃除はようやく終わった。
 辺りもすっかり暗くなって、吹きすさぶ風が窓を揺らしている。

「みんな、ごくろうさま。じゃ、とりあえず紅茶でも入れてくるね」
「あ、手伝・・」
「玲もアリシアも座ってて。私が入れてくる」
 そう言って桜さんはキッチンに向かった。
 来年・・結婚する事を意識しているからかも知れない。最近の桜さんは、前と違って色々僕の世話をして
くれるんだ。もちろん、嫌じゃないよ。
 初めの頃、色々失敗もしてたけど、最近はだいぶ慣れたみたいだ。

「はい、アリシア。一応入れてきたけど・・タケルは・・飲めたっけ?」
 2人にカップを渡しながら聞く桜さんに、タケルは頷くと、紅茶を飲んで見せた。
「この間、じいさんが食べ物をエネルギーに変換する機能を付けてくれたから、おいらも飲んだり食べたり
できるよ」
「そうなんだ! じゃあ、これからは一緒にお食事とかに行けるね!」
 タケルの手を握りしめて嬉しそうに言ったアリシアに、タケルは真っ赤になって頷く。

 そんな2人の様子を、僕達は微笑ましく見つめていた・・

「来年は、ずっといい年になるね、玲くん」
「そうだね、桜さん」

「来年になったら・・・」
 そう言って桜さんはそっとお腹に触れた。
 まだ殆ど目立たないけれど・・ここには確かに息づく命がある・・
「春頃には、ずいぶん大きくなってるんだろうね・・桜さんのお腹」
「そうだね・・早く大きくなってね・・」
 優しくお腹に触れる桜さんの表情は、お母さん・・そんな雰囲気を持っている・・

 産まれてくる僕達の子供・・早く会いたいな・・ 
 新しい年が・・もうすぐ始まる・・

 今年も・・あと少し・・







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