DADDY FACE SS 『翔仔伝説 (最終話)』
by Sin



波音が辺りに響く・・
わたしは・・・ここで眠りにつくのね・・・
「・・冴葉さん・・・美沙ちゃん・・樫緒くん・・みんな・・本当にありがとう・・」
「・・いつか・・またお会いしましょう・・」
そう言う冴葉さんにわたしも頷いて微笑む。
「絶対・・起こしてあげるから・・ね・・」
美沙ちゃんはなんとなく目が赤い・・泣いてた・・のかな・・?
「ありがと・・・美沙ちゃん・・」
「・・・目覚めたら・・一度・・先生と一緒に東京に来て下さい・・結城の経営するアミューズ
メント施設を、いくつか無料で招待しますから・・」
「・・樫緒くん・・だったよね・・・ありがとう・・・きっと・・行く・・からね・・」
「ええ、お待ちしています」
「翔仔ちゃん・・」
「美貴さん、色々ごめんなさい・・鷲士さんのこと・・」
「ううん・・もう・・いいよ・・」
「仲良く・・して下さいね・・・わたしが目を覚ました・・時・・ちゃんと・・鷲士さん・・と・・
一緒に・・いないと・・・・ダメ・・ですから・・ね・・」
「・・うん・・うん・・・・絶対・・しゅーくんから・・離れないから・・・」
「幸せに・・なって・・下さいね・・・」
そう言うわたしを、美貴さんは優しく抱きしめてくれた。
すごく暖かくて・・わたしは・・なんとなく・・お母さんを思い出していた・・

ふと、わたしは辺りに鷲士さんがいないことに気付いた。
「美沙ちゃん・・鷲士さんは・・?」
「・・・鷲士くんには・・連絡しなかったの・・」
「えっ・・・」
「父さんに話せば、必ず反対するでしょうし、下手をすれば実力行使に出かねませんから・・」
「・・そう・・なんだ・・・残念・・・鷲士さんには・・すごく・・いっぱいお世話になったから・・
ちゃんと・・お礼・・言いたかったのに・・な・・」
「しゅーくんには・・わたしが伝えておくね・・」
「うん・・・あ・・美沙ちゃん・・わたし・・鷲士さんにお手紙書いておくね・・」
「え、えっと・・じゃあ・・冴葉、便箋と封筒、用意して」
「はい」
冴葉さんから便箋と封筒を受け取ったわたしは、鷲士さんに宛てて手紙を書いた・・
これまで何度も助けてくれた鷲士さん・・まるで・・お父さんみたいに・・大きくて・・優しくて・・
そして強い人・・
わたしは精一杯の感謝を込めて・・鷲士さんへの手紙を書き終えた。
「大ちゃん・・これ・・鷲士さんに・・・」
「あ・・ああ・・」
「ちゃんと・・お礼言って・・ね・・・」
「ああ、わかった・・・」

「・・・じゃあ・・大ちゃん・・・・お願い・・・」
わたしを眠りにつかせる薬は・・大ちゃんが注射してくれることになった・・・
「あ、ああ・・・わかった・・・」
大ちゃんの手・・すごく震えてる・・・
「大・・ちゃん・・」
そっと大ちゃんの腕に触れる。
「翔仔・・おれ・・・っ・・」
「・・・これは・・わたしと・・大ちゃんが・・・もう一度・・一緒に・・生きていくために・・
必要な・・・事・・だから・・・」
「・・・あ、ああ・・じゃ、じゃあ・・やる・・ぞ・・」
「うん・・」

チクッとした痛みがして・・なにかが体に入ってくるのがわかった・・・
まだ・・何も起こらない・・・
薬が効いてくるまで・・時間がかかるのね・・・

「翔仔・・」
「・・・海だよ・・大ちゃん・・・」
「・・・ああ。景気の悪い海だ」
「・・・でも・・これが・・わたしたちの海・・よね・・」
「・・・ああ」
「フフフ・・ねえ・・わたしの夢・・聞きたい・・?」
「・・・聞かせてくれよ」
「家はね・・・海の見える・・ところに建てるの・・・」
わたしの言葉を大ちゃんは黙って聞いている・・
「・・でね・・旦那さまは・・お医者さんで・・。子供が・・いるの。2人・・。女のコと
男のコが・・1人ずつ・・。頭がすごくよくて・・両親想いで・・」
美沙ちゃんと樫緒くんの姿が目に浮かぶ・・
あんな子供が・・欲しいなぁ・・
「そのコたちも・・やがて結婚して・・・。わたしと旦那さまは・・落ち込むんだけど・・
すぐに孫ができて・・フフフ・・」
なんだか・・眠たくなって来ちゃった・・・
波の音が・・段々遠くなっていく・・
「近所でも・・仲がいいって評判の・・おじいちゃんと・・おば・・・おば・・・」
全てが・・遠くなっていく・・・
大ちゃんの・・泣き叫んでる声が・・・聞こえて・・・
そして・・・わたしは・・・・


・・・・・波の音が・・・聞こえる・・・
なんだろう・・・暖かい・・・
「・・・こ・・・しょ・・・こ・・・」
誰・・? 誰かが・・・
「・・しょう・・こ・・・・翔仔・・・っ!」
わたしは・・・その声に導かれるように・・目を・・あけた・・・

目の前に広がる海・・・そして・・・
「翔仔! 翔仔っ!!」
さっきから・・聞こえていた声・・・
「・・・大・・ちゃん・・?」
わたしは・・目を疑った・・・
だって・・・
あの時から・・大ちゃん・・殆ど変わってない・・・
「翔仔っ!!」
力強く抱きしめられる・・
大ちゃんの・・匂いだ・・・

「大ちゃん・・・っ・・・会いたかった・・・」
「ああ・・・翔仔・・・!」
じっと見つめ合った大ちゃんとわたしは・・そっと・・キスをした・・・

「もう・・離さないからな・・・翔仔・・・」
そう言う大ちゃんにしっかりと抱きついて・・わたしは何度も頷いていた・・・






 
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