DADDY FACE SS 『翔仔伝説 (8)』
by Sin



意識を取り戻した私は、また痛みに苦しまなくてはいけなかった・・
もう・・私の体は・・
そんな私に、冴葉さんが告げた・・
「・・あなたには、死んでいただくことになります」
「なっ・・・!? お、おい、どういう事だよ!! 翔仔は・・もう助からないって言うのか!?」
大ちゃんが冴葉さんにくってかかる・・
私も・・必死に冴葉さんを見た。
「・・このままでは、いずれ翔仔さんは泡になって消えてしまうか、その前に循環器系の停止により、
自家中毒を起こして死ぬことになるでしょう・・」
「そ、それじゃあ・・もう・・っ」
− 助からない・・もう・・大ちゃんと一緒にいられない・・・
でも・・私が絶望感に包まれるよりも前に・・冴葉さんが口を開いた・・

「ですが・・一つだけ・・」
「あ、あるのか!? 翔仔を助ける方法が・・・!?」
「それは・・」
一瞬、冴葉さんが言いにくそうにした時だった。
その背後から、美沙ちゃんによく似た男の子が私達に告げた。
「あなたが、ナノロボットによって壊される前に、死んでいればいいのです」
「な、なんだと・・!?」
大ちゃんが訳がわからないって顔をしてる・・
私だって・・一体どういう事なのか・・わからない・・・
死んでいれば・・いいって・・どういう事・・?
混乱する私達に、冴葉さんが言った。

「あなたの体は、10年間もの間、海底にいたにもかかわらず、無傷でした。つまり、生物として
死んではいても、その状態をナノロボット達が維持していたのは間違いありません。ようは、死んだ
状態ならば、翔仔さん、あなたの身体は壊されることはないのです」
「お、おい、でもそれじゃあ・・・」
「今、翔仔さんの体の崩壊を止める手段は、これ以外にありません。もし、泡になって消えてしまえば、
手の打ちようがありませんから・・」
「それでも死んじまうことに変わりないだろうが!!」
大ちゃんが冴葉さんにくってかかった。
でも・・
「翔仔さんの体から、ナノロボットのサンプルはすでに入手しました。これから先、時間をかけて
更に今よりも技術が発達すれば、翔仔さんを蘇生し、普通の生活が送れるようにすることも可能
なのです」
「で、でも、そんな人魚の技術を人間が・・・」
「別に不死の技術まで解き明かす必要はありません。要は、ナノロボットが翔仔さんの体を壊さない
ようにコントロールできるだけでいいのです。それほど年月はかからずに済むと思いますよ」

冴葉さんの言葉は、私の中で大きな希望の光となっていた。
生きていけるかもしれない・・大ちゃんと2人で・・生きていけるかも・・・
「だ、ダメだっ! そんな、そんなことで、翔仔の命を賭けられるもんか!!」
必死になって反対する大ちゃん・・でも・・私は・・・
「大ちゃん・・わたし、やってみる・・・」
「しょ、翔仔!? お、おまえ・・まさか・・もう助からないなら・・なんて・・」
驚いた顔の大ちゃん。当然・・だよね・・自分から・・死んじゃおうなんて・・
でも・・今は・・あの時とは違う・・
「大ちゃん・・わたし・・もう自分から死んだりしないよ・・」
「翔仔・・」
「わたし・・生きるために・・大ちゃんと2人で・・生きるために・・今は・・眠るの・・・」
「・・・ああ」
「だから・・・大ちゃん・・わたしのこと・・ちゃんと・・起こしてね・・・」
必死に我慢したけど・・やっぱり・・涙が・・こぼれてくる・・
「ああ・・・絶対・・な・・」
そう言って・・大ちゃんはわたしをしっかりと抱きしめてくれた・・・

「それじゃあ・・冴葉・・準備して・・」
「・・・はい、ボス」
美沙ちゃんの言葉に、冴葉さんが準備を始めた。
でも・・どうせ・・眠りにつくなら・・・
「美沙ちゃん・・・」
「えっ? どうしたの・・?」
心配そうにわたしを見つめてくる美沙ちゃん。

「わたし・・最後に・・海が・・見たいな・・・」
「翔仔・・さん・・うん・・わかった・・・・冴葉、翔仔さんをライトニングの甲板に運んで。
そこで・・処置・・するから・・・」
「・・はい・・ボス」






 
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