DADDY FACE SS 『翔仔伝説 (6)』
by Sin



鷲士さんと美貴さんが病院に向かった後、私は女将さんといづなさんに外出したいと言った。
初めは渋ってたけど、何とか納得してくれた・・

しばらく街を歩き回ってみる・・・
見たこともないような風景の中に、なんとなく見たことのあるような風景も混じっている・・
やがて、一軒のお店を見つけた。
− 駄菓子屋さん・・?
なんとなくそんな気がして中に入ってみる。
お店の人は1人しかいないみたい・・
すごい・・いろんな物が売ってる・・・
あっ・・本も・・・
私はなんとなくその中の一冊を手に取った。
そして、そこに書かれた言葉に私の中で何かが弾けた。
『翔仔伝説特集 10年前、少女に何が起こったか?』
私は必死になってページをめくる。
そのたびに、消えていた記憶がどんどん呼び覚まされてきた。

そして、その中の一つの写真に釘付けになった・・
そこには・・まったく変わらない私の姿と・・あの・・海岸であった人の姿が・・
− 大ちゃん・・だったんだ・・・あの人・・・大ちゃんだったんだ・・・
そう思った・・その時・・・

ポタリ・・

突然、雑誌に水が滴った。
慌てて上を見上げるけど、水なんて漏れてない・・
でも、なんだか額が冷たい気がしてそこに手をやると、そこはぐっしょりと濡れていた。
濡れた指を見てみようとした・・その時だった。
激しい痛みが突然私を襲った。

どれだけ痛みが続いただろう・・
ようやく痛みが治まった時、私はこのお店の人に手当てして貰っていた。
そして私がお礼を言ってお店を出ようとしたその時・・
突然怖い顔をした男の人がやってきて、私を無理矢理に連れ去ろうとした。
「なにをするんです! 警察を呼びますよ!!」
「やかましいっ!」
店員さんが私を助けようとしてくれたその時、その男の人は、いきなり店員さんを銃で
撃った。

私はその様子に、気を失ってしまった・・・

気が付いた時、私は車の中にいた。
そして・・・私の目を覚ましたのは、最悪の瞬間だった・・
「・・・うるさい」
その言葉と共に激しい音がして・・私の目の前にいた人の・・頭が・・吹き飛んだ・・・
「い、いやあああああああああっっっ!!」

それからしばらくの事はよく覚えていない。
ただ、何かが弾ける音がして、その後、私の乗せられた車が、急に何回転もしてようやく止まった。

「ふ、冬海ちゃん! 待って、いま出してあげる!」
鷲士さんがそう言うと同時に突然目の前の車のドアがぐしゃっと言う音と共に取れてしまう。
その光景に思わず呆然としていたけど、鷲士さんに手をさしのべられて我に返った。
必死に鷲士さんに縋り付いて、私はあまりの恐怖に泣いてしまった。

あれから・・どれだけの事があっただろう・・
あの後、警察官に囲まれて鷲士さんが撃たれて・・・私はそんな鷲士さんを・・利用するようなこと・・
考えてしまって・・

そんな私を・・鷲士さんは・・何度も・・何度も守ってくれた・・・
みんなが私のことを人魚だって言った時も・・鷲士さんは守ってくれた・・・
そして・・ウルスラ・ダリアンに会って・・そして・・鷲士さんの子供・・美沙ちゃんにも会えた・・

大ちゃんにも・・また会えたけど・・・私・・怖くて逃げ出した・・・
もしも大ちゃんに恋人がいたら・・子供とか・・いちゃったら・・私・・私・・

そんな中、私は鷲士さんから畑の経験値のお話を聞かせて貰った。
大切な『ゆうちゃん』と少しでも早く仲良くなりたくて・・子供心に必死だった昔のこと・・
私もつい、自分の失敗を話してしまった・・・
大ちゃんが欲しかったのは、普通の首に巻くマフラーだったのに・・私、勘違いして・・・
真っ赤に塗った『バイクの』マフラーをプレゼントしてしまった・・
そんな・・昔話を・・みんなは楽しそうに聞いてくれた・・・

でも・・・私の身体は・・・

今朝、私は激しい痛みで目を覚ました。
堪えきれないくらいにひどい痛みに私は転げ回った。

それからしばらくの時が過ぎて・・・今、私の身体には常に痛みが走っている。
堪えきれないほどではないけど、もう・・私に残された時間は・・あまり無い・・そう思えた・・

私は美沙ちゃんにお願いして、近くの浜辺に降ろしてもらった。
あの頃・・大ちゃんと一緒にここから沈む夕日を眺めたっけ・・

なんとなく懐かしくて、私はぼーっと水平線を見つめたいた。

「・・・翔仔?」
突然の声に私は緊張していた・・
誰の声かはすぐにわかったけど・・でも・・・
「ああ・・! なんてこった・・! ああ、なんてこった・・! なんて、なんて・・・!」
「あ・・あの・・! わ、わたし・・・!」
なんて言えばいいんだろう・・
こんな・・・こんな形で・・会うなんて・・・
私は、無理矢理に笑顔を作りながら、大ちゃんに微笑んだ。
「ご、ごめんね・・・だいちゃん・・・! わ、わたし・・・戻って来ちゃった・・・! アハハ・・
か、かっこわるいよね・・・! ごめんねぇ・・・!」
そこまで言って・・・私はもう・・堪えきれなかった・・
私の目から・・・涙がこぼれた・・・

それでも必死に私は笑顔を見せようとした・・でも・・こぼれてしまった涙は・・どうしても・・
止まらなかった・・・
その時、大ちゃんが突然私を強く抱きしめてくれた。
強く・・壊れてしまいそうなほど・・強く・・・

− 大ちゃんの温もり・・大ちゃんの・・大ちゃんの・・・っ!

私の顔から・・・笑顔が・・消えた・・・

「翔仔・・! ああ、翔仔、翔仔、翔仔、翔仔、翔仔、翔仔・・・!」
「大ちゃん、ごめんよぅ・・! ごめんよぅ・・!」
私は・・大ちゃんの胸に縋り付いて・・泣いた・・・





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