DADDY FACE SS 『翔仔伝説 (4)』
by Sin



鷲士さんと一緒に紬屋の中に入ると、そこにはすごく綺麗な女の人が、仁王立ちで立って
いた。
なんだか・・すごく怒ってるみたい・・・怖い・・
私は思わず鷲士さんの腕にギュッと抱きついた。
「くっ・・・鷲士! 一体今までなにしてたんだっ!! それに・・その女・・っ!」
「み、美貴ちゃん、お、落ち着いて・・・説明・・するから・・・」
慌ててそう言う鷲士さん。

その時、綺麗な女の人−美貴さんの後ろから、何人も人が集まってきた。
「草刈〜っ、遅いぞ!!」
「どうせあのおばあさんの道案内でもしてたんでしょうけど・・団体行動はちゃんと守ってよね、
草刈君」
「う、うん、ごめん」
「ところで・・・その子は?」
「うん・・・実は・・・」
そう言って、鷲士さんは私と出会った時のことをみんなに話した。
みんなは呆れたような顔で鷲士さんを見てる・・私を助けてくれたのに・・
人助け・・しちゃダメなの・・?
それに・・美貴さん・・ますます怒ってる・・怖い・・

ギュッと鷲士さんに抱きついていると、なんだかすごく安心できる・・
絶対・・離さないで・・・
1人は・・嫌・・・

「で、来がけに女のコを拾ってきたっていうのか、キミは?」
「う、うん」
「・・・まあ、それはいいとしよう。いちおう人助けだし? ましてや人命がかかってるような状況
だったんだからね。でも・・・」
「で、でも・・・なに?」
「でも・・・その手はなんなんだ、その手は!」
そう言うと、美貴さんがいきなり立ち上がった。
「・・・もうっ! とにかく、まずは離れなさい!」
「あ! だ、ダメだよ、このコ・・・」
鷲士さんが止めようとしてくれたけど・・・美貴さんはそれより早く私の脇に腕を入れて、鷲士
さんから引き離した・・・

− い、嫌・・・離さないで・・・
その瞬間、私の脳裏に羽交い締めにされて何度も殴られる光景が・・・
押さえ込まれて・・・服を・・引き裂かれて・・・
− 嫌・・・嫌・・・っ・・・・い・・嫌あああああああああああああっ!!
「ああああああああああああああ!」
− 怖い! 誰か・・誰か・・っ!! 私・・・私ぃっ!! 鷲士さんっ、助けてぇっ!!

「なっ・・・?」
「お、おいっ、麻当! 放してやれ!」
「・・・え? あ・・・う、うん!」
誰かの言葉に、美貴さんの手が離れる。
私は必死に鷲士さんの所に這っていって、また、彼の腕にしっかりと抱きついた。

それからしばらくの会話はあまり耳に入らなかった・・
ただ・・鷲士さんの温もりが暖かくて・・優しくて・・

でも・・美貴さんの言葉が私の身体を貫いた・・
「とりあえずさ、わたしたちでどうこうっていう問題じゃないだろう、もう。素人が首突っ込んでも、解決を引き延ばすだけ。そのコのためにはならないよ。救急車呼ぶなり、警察に連絡するなり・・・」

− 救急車・・・警察・・・い、嫌・・・っ、怖いっ!!
私は慌てて鷲士さんの側から這って逃げ出すと、少しでも遠くに逃げようと部屋の隅まで行ったけれど、そこで動けなくなってしまった・・
どうすることもできなくて・・・でも・・すごく怖くて・・・私は震えるしかなかった・・

私はそれからの様子を呆然と見つめていた・・・
鷲士さん達が私のことを相談してくれている・・
みんな・・優しい人・・みたい・・

その時、1人の女の人が部屋に入ってきた・・・
手に・・お肉と・・野菜を持って・・

− お肉・・・っ? なんだろう・・私・・それを・・食べなくちゃ・・いけないような・・
『これを食えば、きっと身体だって良くなる!』
− 誰・・だろう? でも・・そう・・お肉・・食べれば・・私・・食べなくちゃ・・・っ!
気が付いた時、私はその女の人が持ってきたお肉に飛びついていた。
みんながどんな風に見ているかなんて気にする余裕もなかった・・
私はただ、その生のままの肉を・・貪った・・・

でも・・・
私の身体は・・・それを受け付けてはくれなかった・・・
「う・・・げえええええええええ!」
身体が・・吐き出した物で汚れる・・・
「え・・あ・・・う・・・・あ・・・・」
ようやく、周りのみんなの様子に気付いた・・
呆然と・・・見ている・・・

− なんで・・・私・・こんな・・事・・・
訳がわからない・・怖い・・どうして私、こんな事しちゃうの・・?
嫌・・こんなの・・私じゃ・・無い・・・
私は自分が自分でなくなってしまうような怖さに・・泣き出した・・・
その時・・・鷲士さんが私の前にかがみ込んできた。

「・・・大丈夫だよ。みんな・・ちょっとビックリしちゃっただけさ。だれも・・きみを嫌ったり
しない。だから・・悲しまなくていいから・・・」
「・・・う・・・あ・・・」
鷲士さんの優しい言葉が・・私の心に響いてくる・・・
必死に吐いた物を払いのけようとする・・爪が服に引っかかって・・痛い・・でも・・
こんな姿・・見られたくない・・・
そんな私を鷲士さんは汚れるのもかまわずに、そっと抱きしめてくれた・・・
こんな私を・・抱きしめてくれる・・・でも・・・そんな優しさにも・・身体が震えてしまう・・
「・・・落ち着いて。ゆっくり・・・心が身体を傷つけないように・・・」
そう言って優しく抱きしめながら、背中をさすってくれる。
いつの間にか・・私の震えは止まっていた・・・・
美貴さんも・・そんな私の様子を、溜息をつきながら見つめてくれていた・・





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