DADDY FACE SS 『翔仔伝説 (2)』
by Sin



あの日から3ヶ月が過ぎた・・
私の身体は、あの忌まわしい中絶処置のせいで、重い内臓疾患を抱えてしまって、
入退院を繰り返すことになっていた・・・

その間、大ちゃんは一度も病院に来てくれることはなかったの・・
不安で・・悲しくて・・辛くて・・でも・・そんなある日、たまたま看護婦さんが話しているのを
聞いてしまった・・
「ほら、あの備藤さんの彼。お父さん、刺しちゃったんだって?」
「何でも、備藤さんに無理矢理中絶手術をしたのは、彼のお父さんだったらしいからねぇ・・
あんなに大切にしていた彼女を傷つけられたら、そりゃあ、怒るわよ・・」
「彼女、もう子供ダメなんだって?」
「可哀想よねぇ・・まだあんなに若いのに・・」
その話に、私はただ、泣き崩れるしかなかった。
あんな事をしたのが大ちゃんのお父さんだったって事もショックだったけど・・それ以上に、
大ちゃんが私の為にお父さんを・・その事が何よりも・・辛かった・・

お母さんも、私のことをひどく責めた・・
周りの人から色々言われて、お母さんも参っていたんだと思う・・
・・私には・・もう・・居場所がなかった・・・

そんなある日、いつものように何をするでもなく、ただ海岸線を歩いていた私の前に大ちゃん
が来てくれた。
「翔仔!」
「・・大・・ちゃん・・・・・大ちゃんっっ!!」
何も考えられなかった。
ただ、大ちゃんに抱きついて、胸の奥から溢れて来るままに泣き続けた。
やがて・・
「翔仔、一緒にこの街を出よう」
彼のその言葉に、私は迷うことなく頷いていた。

それから3週間・・
私達は隣の愛知県で小さなアパートを借りて暮らしていた。
全てを失った私に、たった一つ残された私の居場所・・
その間、私達は今までの分を取り戻すかのように何度も愛し合う・・
二度と出来ないことは解っていた・・でも・・それでも・・・
わずかな望みに賭けて・・私達は愛し合った・・

でも、そんな日々も長くは続かなかった・・
ある日・・大ちゃんがバイトに行っている間に、数人の男の人達が突然やってきて・・
私は身動きできないほど殴られ、足を折られ、暴行された・・・

また大ちゃんのお父さんが仕向けたこと・・・そう思ったのだけど・・
でも、それ以来また何も起こらず、私の心と体の傷は少しずつ癒えていった・・
犯人もあっけなく捕まって、もう安心できると思った矢先だった・・

大ちゃんがバイトに行っている間に、また前とは違う男の人達が家の中に無理矢理上がり
込んできて、私はまた、ひどく暴行され・・・そして・・・犯された・・
必死に抵抗して泣き叫ぶ私を・・あの男達は・・笑いながら殴り・・抵抗できなくなった私を
組み敷いて・・
何度も・・何度も・・・っ・・・

犯人はまたすぐに捕まった・・でも・・あの時私達は見たの・・
犯人の男達の口元に浮かんだ笑いを・・

その時、私達は知った・・
これが・・あいつらのやり方・・・警察なんて・・なんの役にも立たないって・・

私が暴行され・・犯されるたび・・病院で検査を受けさせられた・・
医者達はまるで・・汚された私をあざ笑うかのように・・私の身体をいじり回した・・

もう・・警察も・・病院も信用できなかった・・・
サイレンの音が・・またあいつらを連れてくるかのようで・・
私は恐怖のあまりに、サイレンの音が聞こえるたびに狂ったように叫び続けた・・・

何度も繰り返して犯されたからか、私の身体は・・いつしか子宮癌に冒されていた・・
もう・・生きる望みは・・殆ど残されていなかった・・

そんなある日のことだった・・
大ちゃんが、人魚の肉だと言って持って帰ってきた物・・
「これを食えば、きっと身体だって良くなる! そうしたら、どこか遠くの街で、お前と2人で・・」
「・・・赤ちゃんも・・出来る・・かな・・?」
「ああ! 伝説の人魚の肉なんだ! きっと出来るようになるさ!!」
「・・うん・・」
私には・・もう、大ちゃんしか残されてない・・これを食べれば・・また・・あの日のように・・
大ちゃんと・・2人で夢を見て・・生きていけるかもしれない・・
私は大ちゃんが調理してくれたその肉を、必死になって食べた・・・

でも・・やっぱり・・ダメだった・・

あれからしばらくして・・病院に行った私に、先生は・・
「癌が・・かなり進んでいます・・」
先生の言葉に私は何も言えなかった。
「もう・・ここまで進んでしまうと・・処置の・・しようが・・」
その瞬間、私は病院を飛び出していた。
溢れる涙を堪えられないまま・・私は大ちゃんの待つ家へ・・
「翔仔! どうだった!?」
期待に溢れた大ちゃんに私は目を伏せた。
「ダメ・・だったのか・・? くそっ! 何が人魚の肉だよ! どうしたら・・どうしたらお前を・・
翔仔を助けられるんだよっ!!」
そう言って拳を叩きつける大ちゃん。
私は・・もう・・限界だった・・

「大ちゃん・・・」
「翔仔・・」
「もう・・ダメ・・」
「えっ・・だ、ダメって・・・」
慌てて私の肩を掴む大ちゃん。
「もう・・これ以上・・生きて・・いけない・・・」
「しょ、翔仔!?」
「ごめん・・・ごめんね・・大ちゃん・・・」
泣きじゃくりながら私がそう言うと、大ちゃんは本当に強く・・壊れてしまいそうなくらい・・
強く抱きしめてくれた・・・
「大・・ちゃん・・?」
「俺も・・・」
「えっ?」
「・・俺も一緒だ・・」
「大ちゃん・・?」
「お前が・・もう生きていけないって言うなら・・俺も・・一緒に死ぬよ・・」
そう言うと、大ちゃんはしっかりと私を抱きしめて、唇を重ねた・・・

それからしばらくして・・
私達は最後にもう一度だけ愛し合い・・その夜・・海に面した崖の上にいた。
辺りには誰もいない・・
海から吹き上げてくる風が、私の身体を震わせる。

「翔仔、ほら、これ着ておけよ」
そう言って、自分の着ていたジャンパーを私に着せてくれる。
「大ちゃん・・ありがと・・」
彼の温もりの詰まったジャンパーをしっかりと抱きしめて、私は大ちゃんに寄り添った。

「・・生まれ変わっても・・俺は・・絶対にお前と一緒だ・・絶対・・離さないからな・・」
「生まれ変わったら・・今度こそ・・幸せになろうね・・大ちゃん・・」
崖っぷちに立った私達はそう言ってしっかりと抱きしめ合う。
心を決めていても・・やっぱりいざとなると身体が震えてしまう。
「怖い・・か?」
「うん・・・」
「俺が・・ついてる・・」
「・・うん・・・」
今までよりも・・ずっと強く抱きしめ合う・・決して離れないようにする為に・・
「翔仔・・愛してるよ・・」
「私も・・大ちゃんを愛してます・・・」
「・・・行こうか・・」
「・・うん・・」
強く・・本当に強く抱きしめ合って・・私達は・・崖の上から・・身を躍らせた・・・






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