DADDY FACE SS 『もうひとつの翔仔伝説 (4)』
by Sin



あの日から3ヶ月・・・
俺はようやく見張りの奴らの隙をついて家を出る事に成功した。
持ってる物は今までに貯めた金と、必要最小限の物・・そして相棒のバイクだけ。

翔仔が今どうしているのかまるで解らない・・
あいつの家に電話しても、発狂寸前みたいな母親の怒鳴り声しか聞こえないし・・
仕方なく俺は海岸線にバイクを走らせた。

− 翔仔・・・今どこにいるんだ・・・

二度と子供を産む事ができない身体にされてしまった翔仔・・
一番辛いその時期に・・俺は側にいてやる事ができなかった・・
あいつが・・今どうしているのか・・元気でいるのか・・
思う度に不安が胸の中を渦巻いた。

どれくらいの間そうして海岸線を走っていただろう・・
俺は不意に海岸沿いを歩く人影を見つけた。
あの制服姿は・・間違いない・・翔仔だ!

ガードレール際にバイクを停め、俺は翔仔の元へと走った。
「翔仔っ!!」
俺の声に、翔仔が振り返る。
だが、そのやつれ具合に、俺は思わず息を呑んだ。
3ヶ月前、笑顔の無くなっていた翔仔だったが、ここまで酷くはなかった・・

駆け寄った俺を翔仔は呆然と見つめていたが、やがてその瞳から涙が溢れた。

「・・大・・ちゃん・・・・・大ちゃんっっ!!」

俺の名を呼びながら激しく泣き続ける翔仔を、絶対に離すまいと俺は強く抱きしめた。

− もう・・二度と離れたくない・・

その思いが、俺の口を開いた・・

「翔仔、一緒にこの街を出よう」

俺の言葉に、翔仔は泣きながら、何度も頷いていた・・

そしてそれから数日後、俺達は隣県で塚原の家や翔仔の家の目を逃れるようにして、小さな
アパートで細々と暮らしていた。
二度と子供を作れない事は解っていたが、俺達は微かな希望に賭けて、何度も愛し合った・・

豊かな生活ではなかったし、むしろ毎日の食べる物にも苦労する日々だったが、それでも
俺達は幸せだった・・
たとえ暮らしは辛くても、最も愛する人が側にいる・・
ただそれだけで・・俺達は幸せだったんだ・・・

俺達の駆け落ちの話は、いつの間にか有名になってしまっていたんだ。
塚原の家が、俺を捜し出そうと大騒ぎして、県警を動かしたかららしい・・

だけど・・いつまで経っても、塚原の家からの迎えは来なかった・・
だが・・それに安心していたある日の事・・

いつものようにバイトから帰ってきた俺は・・・一番見たくない光景を目の当たりにした・・
「あ・・うぁ・・・・」
「しょ、翔仔っ!?」
酷く暴行されて、話す事もままならない状態の翔仔・・
「翔仔! しっかりしろ!! 誰にやられたんだっ!!」
虚ろな視線で俺を見た翔仔は、しばらく呆然としていたが、やがて俺に抱きつくと、大声で
泣き出した。

それから間もなく、犯人はあっけなく捕まった。
暴力団風の数人の男達だった。

塚原の家からの差し金だって事は解っていた・・
ただ、それでもまだ、迎えが来る事はなかった・・

− 一体何をたくらんでやがる・・あのクソ野郎・・・

ジリジリと追いつめられていく気がする・・
入院した翔仔に付き添いながら、俺は漠然とした不安を抱えていた・・・

やがて翔仔が退院し、足の怪我や心の怪我も癒えた頃・・・

俺の留守中に・・また、翔仔は襲われた・・・
家に帰った俺が見たものは・・激しく傷つけられた翔仔。
そして・・原形を留めないほどに引き裂かれた服・・
俺に気付いた翔仔は、動かない身体を無理に動かして、まるで俺の視線を逃れようと
するかのように身体を隠して・・泣いた・・・

犯人は、またすぐに捕まった・・
そして・・・あいつらは捕まりながら、俺達の姿を見つけて・・嫌らしい笑みを浮かべて
いたんだ・・

俺達はあいつらのやり方を知った・・・
こうして・・俺達の心を、ズタズタに引き裂いていくのが・・あいつの・・塚原大一郎のやり方
なんだ・・

警察など、なんの頼りにもならない・・
何度捕まえても、またすぐ次の奴等がやってくる・・・その繰り返しだ・・

捜査とは名ばかりのセカンド・レイプ・・
検査とは名ばかりの物扱い・・

翔仔の心は・・もう・・ズタズタに引き裂かれていた。

全ては・・最悪の方向へと・・向かっていた・・・







 
 戻る  DADDYFACE SSトップ  次頁