DADDY FACE SS 『もうひとつの翔仔伝説 (2)』
by Sin



あれからどのくらいの月日が流れただろう・・

俺達は毎日のように会っていた。
いつだって・・一緒だった・・

そして、あの日・・

俺達は初めて結ばれた・・・

シーツに残った赤い印・・
俺の腕の中にいる、翔仔の姿・・・
今でもはっきりと思い出せる・・

照れくさそうに俺の胸に頬を押しつけてくる翔仔の温もりが愛おしくて・・・
俺はしっかりと抱きしめていた・・・

あの頃・・翔仔はいつも言っていた・・
『絶対、元気な子供を産んであげようね、大ちゃん』
俺もその言葉に頷いて・・そしてまた抱きしめ合う・・
そんな日が続いて・・・やがて・・

「大ちゃん・・・私・・・私・・・」
「お、おい、どうしたんだ?」
「・・・赤ちゃん・・できたの・・」
頬を赤らめながら涙ぐんでそう言った翔仔・・
俺も翔仔をしっかりと抱きしめて・・・
「絶対にその子が産まれるまでには結婚しような!」
そう・・言っていた・・・


少しでも早く結婚しようと・・俺達は会う時間を減らし、そしてバイトに専念していた。
だけど・・・そうした事が、結果的に俺達から全てを奪ってしまうことになるなんて・・

あの日・・いつものように翔仔を連れて産婦人科へ行ったときのことだった・・
「そんな・・・そんなっ!」
突然聞こえてきた翔仔の叫び・・・俺は慌てて診察室に駆け込んだ。
「どうした、翔仔っ!!」
「大ちゃん・・・赤ちゃんが・・・赤ちゃんがっ!!」
俺が入っていくと、いきなり翔仔が俺に抱きついて、泣き出した。

「翔仔! おい、翔仔っ! 一体何があったんだよっ!!」
いくら聞いても、翔仔は泣き続けるだけで答えることができずにいる・・
「先生! 一体何があったんだ!?」
仕方なく先生に話を聞いた俺は、あまりのことに言葉を失った・・・

「中絶・・・だと・・?」
「はい・・」
「ば、バカな! 誰がそんなことをっ!!」
「解りません・・備藤さんも・・知らなかった様子で・・・」
項垂れる先生をそれ以上問いつめることもできず、俺はただ、翔仔をしっかりと抱きしめるしか
なかった・・

傷ついた翔仔の心を慰めることはできないけれど・・せめて・・今は・・
「・・いったい誰がそんな事しやがったのか解らないけど・・翔仔・・もう一度・・もう一度
作ろう・・誰かに殺された俺達の子供の分までその子を愛してやろう・・」
「大・・ちゃん・・・」
俺の言葉に、翔仔がようやく顔を上げたその時だった・・

「無理・・なの・・」
先生の言葉が俺達を凍り付かせる・・
「無理って・・・? せ、先生、無理って・・どういう事なの!?」
叫ぶように問いつめる翔仔に先生が告げたのは・・悪夢のような・・話だった・・

「・・・あなたの身体は・・無理な・・中絶処置のせいで・・もう・・子供は・・」
その瞬間、翔仔の身体から力が抜けた。
崩れ落ちるように倒れる翔仔を支えて抱き起こすが、翔仔の目はうつろで、まるで何も見えて
いないかのようだ。
「翔仔! 翔仔っ!!」
いくら呼びかけても・・翔仔はまったく反応しない・・
ただ・・開かれた翔仔の瞳からは、いつまでも涙が溢れ続けていた・・・







 
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