DADDY FACE SS 『もうひとつの翔仔伝説 (最終話)』
by Sin



 あれから数ヶ月後・・俺の病院に1人の看護婦見習いが増えた。

「えっと・・・大ちゃ〜ん、江藤さんのお薬、3日分でいいんだよね?」
「5日分だ。それに、仕事中は大ちゃんはやめろって言っただろう?」
「だってぇ・・」
「・・・はぁ・・まあいいか。とにかく来年の大検と、看護学校の受験勉強もかねて、実地訓練
してるんだから、しっかりな」
「うんっ♪ 絶対に大ちゃん専属の看護婦になってみせるから、期待しててね」
「まあ、ぼちぼちな」
「あ〜っ、ひっど〜い!」
 そう言って膨れる翔仔と2人で笑い合う。

 全てはあの時・・樫緒の一言があったお陰だ。

「いっそのこと、大検を受けて、この近くの看護学校へ行ったらどうです?」
「で、でも・・私・・戸籍も・・何も残ってないよ・・」
「その程度・・結城の力をもってすれば、造作もないことです」
「ふ〜ん、樫緒も面白いこと考えるじゃない。私も乗った! じゃあ私は・・・」
「姉さま、今回は僕にやらせて貰えませんか?」
「・・・いいけど・・どったの? いつもの樫緒なら、他人のことなんて気にもしないのに」
「・・僕はあの時・・父さんが傷つきながら戦っていた時・・無力だった・・何もできなかったんです・・」
「だからって・・」
「これは、僕のプライドなんです。だから、今回は僕に任せて下さい・・」

 結局、そのままなし崩しに次の大検まではここで実地訓練を積んで、大検に合格できたら、今度は看護学校に入学。そしてこの小児科専属・・と言うより、俺専属の看護婦になることが、決まってしまった。当然、翔仔もすっかり乗り気だ。

「学費も、結城が援助します。もし、気が咎めるというなら、翔仔さんが看護婦になった後、少しずつ返してくれればそれでかまいません」

 樫緒のその言葉のお陰で、その後、翔仔は無事に看護学校に入学を果たし、3年後、立派に看護婦となって戻ってきた。

 俺と翔仔、2人で頑張る小さな小児科・・
 今日もまた、患者が運ばれてくる。

「だいちゃ〜ん・・あっ・・じゃなくて・・古谷先生〜急患です〜っ!」
「その気の抜ける声、なんとかなんねえのか・・? ったく・・で、どうした?」

 いつものように繰り返される日々・・
 そしてそれから半年後・・・

「大ちゃん・・・」
「ん? どうかしたのか?」
「今日ね・・ちょっと気になって・・・」
「ああ。で?」
「・・・行ってきたの・・」
「どこに?」
「・・病院・・・」
「なっ・・まさか、またどこか・・・!?」
 慌てて立ち上がって身体中を調べる俺を翔仔は顔を真っ赤にして止めた。
「ち、違う違うっ! 産婦人科!!」
「産婦人・・科・・・? ってことは・・まさか・・・!?」
「・・・3ヶ月です・・って・・・」
「・・翔仔・・」
「あ、あはは・・できちゃった・・もう・・無理だって思ってたのに・・」
「翔仔・・・」
「大・・ちゃん・・・」
 しっかりと抱きしめ合う俺達。
 どうやら海底で眠っていた間に、身体の病気はすっかり治ってしまっていたらしい。
 それどころか、中絶手術の痕跡すら、残っていなかった。

「人魚の・・おかげだな・・」
「うん・・・」
「ずいぶん時間かかっちまったけど・・あの時の夢・・もう一度2人で見よう・・」
「じゃあ、このコが産まれたら、もう1人・・ねっ」
「ああ・・そうだな・・」

 これからもずっと2人で・・いや、これから産まれてくる俺達の子供達と共に・・
いつまでも一緒に生きていこう・・

 たとえ何があったってきっと乗り越えてみせる・・

 だから・・

「ずっと・・俺の側にいてくれよ・・翔仔・・」
「うん・・ずっと・・ずっと・・ね・・」













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