DADDY FACE SS 『もうひとつの翔仔伝説 (1)』
by Sin



10年前・・俺と翔仔はあの崖から身を投げた・・
どうしてあんな事になっちまったのか・・
すべては・・・あいつと出会ったあの日から始まった・・・

いつものように仲間達と合コンに出かけた俺は、そこで1人だけ浮いてる女を見つけた。
妙に口数も少ないし、オドオドしていて落ち着かない。

− おもしれぇやつ・・

そう思いながらしばらく観察していると、その女と目が合っちまった。
慌ててそいつは目を逸らしたが、俺は余計に興味が湧いてきた。

「よぉ」

俺が声をかけると女は一瞬、びくっと身体を震わせて恐る恐る俺を見てくる。

「え、えと・・・あの・・・」
どうやら合コンには慣れてないみたいだな。
人数合わせで連れて来られたのか・・?
まあ、いいか。

「俺は塚原 大地。あんたは?」
「び・・備藤・・翔仔・・です・・」
「翔仔か。で、ここでなにしてんだ?」
「な、何って言われても・・その・・友達に連れられて・・来ただけ・・だから・・」

− やっぱり人数合わせか・・まあ、見た目もそれなりだし、人選としちゃあ悪くないな。

そう考えてながら見ていると、翔仔のヤツ、なんだか俺の方をチラチラと見てる。
知らない男と話したこともないお嬢様ってヤツか・・?

「よぉ、いつまでそうやってるつもりだ?」
俺がそう言うと、翔仔は途端に顔を真っ赤にして首を振りまくってる。

− なんでもないって言いたいのか・・・? ククッ・・おもしれぇ・・

「合コン初めてか?」
今度はコクコクと頷いている。

− 話すことが苦手みたいだな。いちいち態度で表すから、見ていて飽きねぇ。

それから俺達はしばらくの間、話し続けた。

話してみて解ったが、別に翔仔は話すことが嫌いなわけじゃなくって、ただ苦手みたいだ。
母子家庭であまり裕福ではなく、友達も少ないらしい。
しばらく話している内に気が楽になってきたのか、それとも話す相手が普段からあまり
いなかったのか、段々と翔仔のテンションが上がってきた。

その時・・
「塚原〜っ、そろそろお開きにするか?」
不意にかけられた言葉に時計を見ると、すでに10時を過ぎている。
そろそろ彼女たちは帰さないとまずいか・・。
「10時か・・そうだな、そろそろ終わるか」
俺がそう言ってふと見ると、翔仔はかなり残念そうだ。

− ククッ・・ホントにおもしれぇヤツだな・・気に入った・・・

その日、俺達はそれぞれ気に入った女を送っていくことにした。
しばらくはこの仲間同士で付き合って、それでマジになったら、それぞれが付き合えばいい。
グループ交際ってヤツだな。

あの日から、俺が呼び出すと、翔仔はよっぽどの用事がない限りは出てくる。
初めは好かれてるのかどうだか解らなかったけど、まあ、嫌われてる様子もないし、
まあいいか。

あれからしばらくして・・
その日も俺達は一緒にいた。
適当にバイクで海岸線を走ったり、のんびり話し込んだり・・
そして・・いつものように送っていく途中で、俺は海岸にバイクを止めた。

「・・・?」
翔仔は不思議そうに見つめてくる。

「なぁ、付き合ってる男、いるか?」

いきなり俺がそう言うと初めはキョトンとしていたが、やがて真っ赤になって首を振った。

「じゃあ、俺と付き合えよ」
その瞬間、翔仔の顔は耳まで真っ赤になった。
頭にヤカンでも乗せたら、一瞬で沸騰しそうだ。

そのまま俯いていた翔仔だったが、やがて俺をじっと見つめると、顔を真っ赤にしたままで
頷いた。

そして、その瞬間・・・

・・・ポタッ・・

「お、おい・・・な、なにも泣くこと・・・」
俺が慌てて翔仔の肩に触れると、翔仔は涙に濡れた瞳で俺を見つめて微笑んだ。
「・・・だって・・嬉しくて・・・」
そんな翔仔が愛おしくて・・俺は、そっと抱き寄せた。

夜の闇の中、波の音だけが俺達を優しく包み込んでいた・・・







 
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