DADDY FACE SS 『恐怖 -翔仔(冬海)-前編』
by Sin



…大ちゃんの声が聞こえる…
『私』を抱きしめて、大ちゃんが泣いてる…
……そっか…死んじゃったんだ…私……

なんで周りのこと……解るのかな……?
死んじゃってるのに……

人魚の……力……かな……?

でも……

樫緒くん……だっけ?
美沙ちゃんの……弟……
あの子に言われた時から……覚悟してたけど……
やっぱり……寂しいよ……大ちゃん……

大ちゃんの涙が私の頬を濡らす……
抱きしめたいのに………拭ってあげたいのに……

その時だった。

「ターイム・アップ……ね」

その声と共に姿を見せた女の人……
あれが……ウルスラ・ダリアン………

それと一緒に大きなロボットが襲ってきて…辺りが炎に包まれた……

鷲士さんに話し始める彼女の様子は……不気味で……すごく…怖い……
そんな中、彼女の一言が大ちゃんを怒らせた……

「青臭いガキの恋愛って大嫌いなんだけど、サービスよ」
「て、てめえ! バカにするのもいい加減にしやがれ!」
そう叫んだ大ちゃんが近くにいた人から銃を奪った……

『ダメっ! 大ちゃん!!』
慌てて止めようとしたけど、何も出来ない……
「殺してやる!」
その時……
「あなたたちの体は動かない!」
彼女の言葉と共に、その場にいた全員の動きが止まった………

そして……笑いながら告げた彼女の言葉……
「もっと美談にしてあげるわ。そうね……10年後、再び死んでしまった彼女を想い、
医師になった男もあとを追うって言うのはどう?」
その言葉と共に銃声がして……
大ちゃんが……倒れた……

『い、嫌あああっ! 大ちゃん! 大ちゃんっ!!』

声の限りに叫んだ……
お腹から血を流している大ちゃんに駆け寄ろうともした………
でも……
叫ぶことも……駆け寄ることも出来なかった………

『嫌……こんなの……嫌……』

その時、鷲士さんが美沙ちゃんに銃口を向けた。

『やめて! そんなの……そんなのひどいよ!!』

私の叫びは誰にも届かない……
銃声が……轟いた……

辺りに飛び散るリボンの破片……
「アハハ……じゅ、銃の腕は……当分あのままでいいかな……!」
虚ろに笑った美沙ちゃんの髪が解けて肩に掛かる。
鷲士さんの銃が撃ち抜いたのは、美沙ちゃんのリボンだけだった……

『……良かった……』

思わずほっとする…
でも、彼女の……ウルスラの残酷さはこれで終わりじゃなかった……

「フェイス、跳ぶのよ! 自らの両手で娘を絞め殺しなさい!」

その言葉と共に鷲士さんの身体が一気に炎を跳び越えて美沙ちゃんの前に……

『そんな……やめて! やめてよ!!』

そして両手が美沙ちゃんの首を絞めていく………

『お願い……もうやめて!! これ以上……みんなを傷つけないで!!』

鷲士さんが叫んでる……自分の命を絶ってでも、美沙ちゃんを助けようと……でも……
誰も助けられない……
みんなも……私も………

『お願い……誰か……』
どんなに思っても……
『大ちゃんを……みんなを………』
どんなに叫んでも……
『誰か……』
誰にも声は届かない………
『誰か……助けて!!』
はず……だった……

− まかせて

突然の声に私は思わず辺りを見回す。
その時……

− やめなさい、ヒトの子よ。

さっきと同じ声が辺りに響き渡る。
すると、鷲士さんの手が自由を取り戻した。
崩れるように倒れる美沙ちゃんを慌てて鷲士さんが抱き寄せた。





        
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