DADDY FACE SS 『恐怖 -美貴-』
by Sin



津市から帰ってきて・・何日経ったんだろう・・
私はそんなことをぼーっと考えていた。
授業にも全然身が入らない・・
部活でも・・的を外してばかり・・・
それもこれも・・あの夢が悪いんだ・・・

ある夜・・
『しゅーくん、ダメぇ! やめてぇぇぇぇっ! そ、そのコは・・美沙は、わたしときみの−』
『うわあああああああっ!』
『か・・はっ・・鷲士・・くん・・・』
ゴキっ・・
「い、いやあああああああああああああっ!!」
バサッ!!
「はぁ・・はぁ・・・は・・ぁ・・・ゆ、夢・・だった・・の・・?」
なんて・・酷い・・
しゅーくんが美沙を殺してしまう夢を見るなんて・・・

真っ暗な部屋の中で、わたしは思わず泣いた・・・。


そして翌日の夜・・
『あら、残念。あなた、ガンの方は本当にダメなのねえ」
良かった・・・これで美沙は助かった・・・
わたしがそう思った矢先に・・
『フェイス、そこのSMGを構えて・・・狙いはお前の娘よ・・』
『や、やめろぉぉぉぉぉっ!!』
『撃ちなさい』
激しい音と共に薬莢がはき出されて・・・
トサッ・・
血にまみれた美沙が・・・
「う・・嘘・・・いやああああああああああああああああああああっ!!」
バサッ!!
「はぁ・・・はぁ・・・ま、また・・・夢・・・っ・・」
2日も・・続けてこんな夢を・・・っ・・・

ゴリッ・・・
鈍い痛みで私は自分がまたやってしまったことに気付いた・・・

「あ・・あはは・・・なにやってるのよ・・・わたし・・・」
指先に付いた血が、自分のしたことを嫌でも解らせる。

「しゅーくん・・・助けて・・・」
うめくように言って、わたしは・・また・・泣いた・・・


あれから2週間・・・
わたしは毎日のようにあの夢を見た・・
内容はいつも違って・・・でも・・最後は・・
しゅーくんが美沙を・・・・

だから・・眠るのが怖くて・・・
眠りそうになると・・
また、爪を突き立てた・・・

そんなある日・・
「美貴ちゃん・・・顔色悪いけど、大丈夫?」
「大丈夫・・・気に・・しないで・・」
「で、でも、その傷・・」
しゅーくんが何を気にしてるのか、解ってる・・
でも・・言えるわけない・・
しゅーくんが・・美沙を・・わたしたちの娘を・・殺そうとした夢を見てるなんて・・
いつものように・・そう・・いつものように素っ気なく・・
そう思って足を踏み出そうとした瞬間、世界が歪んだ。
「み、美貴ちゃん!!」
しゅーくんの声がどこか遠くに聞こえる・・・
このまま・・眠ってしまう・・・?
ダメ・・ダメっ・・・・眠ったら・・また・・・っ・・

そしてわたしは・・また・・あの夢を・・・
「い、いやああああああああああああああああああっ!!」
絶叫・・そして・・目覚め・・・
何度繰り返しただろう・・
そして目を覚ましたら・・真っ暗な部屋に・・一人で・・・
「美貴ちゃん!!」
「・・・っ!?」
ハッとして声のした方に振り返る・・・
いつもなら誰もいない場所・・そこには・・心配げなしゅーくんの姿が・・・
「しゅー・・・くん・・・?」
「大丈夫!? ひどくうなされてたから、心配したよ・・・」
そう言ってわたしの頬にそっと触れてくれる。
「怖い夢を・・見たの?」
心配そうに・・すごく優しい目で見つめてくれてる・・・
「しゅーくん・・・しゅーくんっ・・・・・」
もう・・言葉にならなかった・・・

気が付いたら、わたしはしゅーくんに縋り付いて泣きじゃくっていた。
そんなわたしをしゅーくんは優しく抱きしめてくれる・・・
「あのコが・・美沙が・・・撃たれて・・・首を・・絞められて・・・いつも・・
いつも・・・っ・・・」
震える声で言った・・わたしの言葉・・・
しゅーくんはそっとわたしを抱きしめながら、優しく・・大丈夫って・・言ってくれた・・


その日・・わたしは初めてしゅーくんの部屋に泊まった・・
美沙が心配そうにわたしの傷を手当てしてくれて・・
樫緒も話を聞いてすぐに来てくれた・・・
子供達があんなにわたしの事を心配してくれるなんて・・・
嬉しくて・・涙が止まらなかった・・・・

そしてなにより・・しゅーくんが・・・ずっと側にいてくれた・・・

その夜・・初めて家族全員で過ごす夜・・・
いつもならしゅーくんの隣を譲ってくれない美沙が・・・
今日だけは特別・・って・・・しゅーくんと二人きりにしてくれた・・・

多分・・この機会に・・ちゃんとわたしがゆうちゃんだって事・・言えるようにって
してくれたんだと思う・・・

でも結局朝まで・・言えなかった・・・
溜息をついて、しょうがないなぁ・・と困った顔をする美沙・・・
でも、いつもみたいにからかわないで、わたしがいつもするみたいに髪をくしゃくしゃと
撫でてくれた。
「今回だけ・・だからね・・・」
優しくそう言ってくれる美沙は・・まるでしゅーくんみたいな笑顔で、わたしを抱きしめて
くれた・・・

今回は・・言えなかったけど・・・
ただ・・真っ赤になって照れながら、しゅーくんが優しく側にいてくれたから・・・
そして・・子供達の優しさに触れたから・・
それ以来・・二度と・・あんな夢は見なくなった・・・


しゅーくん・・・美沙・・・樫緒・・・

・・・ありがとう・・大好きだよ・・・・





                     
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