DADDY FACE SS 『子猫さまの災難(4)』
by Sin

ヴラド達を倒した鷲士と樫緒は、美沙の元に駆け寄った。
「美沙ちゃん、大丈夫?」
「鷲士くん・・・うん・・なんとか・・ね・・」
「姉さま・・・」
「・・・なんて顔してんのよ・・樫緒・・このお姉ちゃんがそうそうやられる・・もんですか・・」
そう言って起きあがろうとした美沙だったが、足が震えて立ち上がる事ができなかった。
「あ・・あれ?」
「無理しないで、美沙ちゃん」
「酷い失血状態だったのですから、無理はしないで下さい、姉さま」
「・・・そっか・・私・・あの女に・・・」
思い出した途端、恐怖が蘇ってきたのか、美沙の身体が震え始めた。
「えっ・・やだ・・なにこれ・・・」
震える身体を抱きしめる美沙だったが、震えは収まらない。

だが・・・

「もう大丈夫だよ・・美沙ちゃん・・」
そう言って鷲士が抱きしめた途端、美沙の震えはゆっくりと収まっていった。
「鷲士・・くん・・・」
「もう怖いことなんて無いから・・僕が側にいるから・・」
その鷲士の言葉に美沙が頷こうとした瞬間・・

ポトッ・・・

「あ・・・っ・・・」
美沙の両目から一粒の涙が滴り落ちた。
「えっ・・・や・・だ・・・」
堪えようとしても、一度溢れてしまった涙は一向に止まらない。
拭っても拭っても溢れてくる涙をそれでも必死に堪えようとする美沙。
しかしその時、美沙は強く抱きしめられた。

「泣いていいんだよ・・美沙ちゃん」
「う・・ひっく・・・だ、だって・・・」
「僕はまだまだ父親らしい事なんてろくにできないけど、こんな時くらいは・・ね」
「鷲士くん・・・っく・・・う・・・ひっく・・・鷲士・・くん・・・」
優しく抱きしめられた途端、美沙はとうとう堪えきれなくなって大声で泣き出した。
「姉さま・・・」
立ち尽くしていた樫緒も、その様子に気が抜けたのか、柱にもたれるようにして座り込んだ。
「樫緒くんも、お疲れさま」
「いいえ・・姉さまさえ無事なら・・」
「ありがとう」
鷲士にそう言われて、樫緒は照れくさそうに顔を背けた。
その頬が僅かに赤くなっている。

それからしばらくの時が流れた。

ようやく落ち着きを取り戻した美沙は、事件のあらましを語り始めた。
「あの時・・私、鷲士くんと約束してたから、急いで帰ろうと思って一人で家に向かってたの・・・
でも、その途中であの奴らに囲まれて・・・」
「でも、どうして銃を使わなかったの? いつもの美沙ちゃんなら・・・」
「そうです。姉さまらしくもない・・確かに人外の力を持ってはいましたが、大した事のない輩です。
あの程度の者達になぜ姉さまがこうも簡単に?」
「だってぇ・・・」
そう言うと美沙はうつむいて地面に『の』の字を書いた。
「だって・・・余裕だニャンさまの肉球・・・」
「へ?」
「ね、姉さま?」
「だ、だってぇ、あいつらが余裕だニャンさまの肉球・・持ってたんだもん・・」
「・・・・それって、前にウルスラに幻を見せられて言ってた・・・」
「あ、そ、そんなこともあったわね・・・あ、あはは、はは・・」
「それで、結局はそれも幻だった・・と?」
「う・・・」
「吸血鬼の能力に幻術ってあったっけ?」
「魅了なら知っていますが?」
「あいつらの中に、そ〜ゆ〜の得意な奴がいたの・・・」
「・・それにしても、何度も同じ手に引っかからないで下さい、姉さま」
「あう・・・」
樫緒に言われて再び『の』の字を書き始める美沙。
その様子に鷲士は微笑んで、懐から冴葉直通の携帯を取り出した。

『鷲士さん、ボスは!?』
珍しく挨拶もなしにそう切り出す冴葉に鷲士は苦笑しながらも答えた。
「大丈夫です。少し怪我していますけど。僕達の居場所解ります?」
『はい』
「樫緒くんも疲れてるみたいなんで、冴葉さん、迎えに来て貰えますか?」
『ご心配には及びません。現在そちらに向かっています』
「えっ、どうして・・?」
『鷲士さんの位置は常に把握していますから、樫緒さんに連絡を取られるとの事だったので、瞬間移動された先がボスの居場所である事はすぐに解りました』
「なるほど。さすが冴葉さん」
『まもなくそちらの上空に到着しますので、少々お待ち下さい』
「じゃあ、お願いします」

こうして迎えに来た冴葉達、フォーチュンのスタッフによって、鷲士達は無事に帰ってくる事ができた。
フォーチュン専属の医師によって美沙の怪我は順調に回復し、懸念された顔のあざも一週間ほどで消え、痕も残る事はなかった。

ただ、かなり酷く殴られたのか、肋骨や手足の骨にひびが入っていて、その完治には1ヶ月を要した。
樫緒の力で治す事も考えられたのだが、美沙の
「だって、間違った繋ぎ方されたら、困るし〜」
との言葉によって、自然回復を待つ事となったのだ。

その後、退院した美沙は今まで以上にハントに夢中になっていた。
あまりに夢中なので、気になった鷲士が聞くと・・・

「だってぇ、余裕だニャンさまの肉球・・・二度も見せられるだけなんて、耐えられないもん・・絶対
ハントしてやる〜!」

だそうだ・・






        戻る    DADDYFACE SSトップ