DADDY FACE SS 『子猫さまの災難(2)』
by Sin



さらわれた美沙を救い出そうとする鷲士だったが、肝心の居場所がわからない。
発信器も役に立たない今、頼りになるのは人外の力を持つもう一人の我が子、樫緒だけだった。

急いで執事の山岡に連絡を取る鷲士。
数回のコールの後、誰かが電話に出た。

『はい・・ああ、鷲士さま。ご無沙汰いたしております』
「お久しぶりです、山岡さん。あの、樫緒くんは・・・」
『樫緒ぼっちゃまでございますね。少々お待ちください』
そして待つこと数分・・
『どうしたのです、父さんの方からかけてくるとは珍しいですね』
「樫緒くん・・」
『・・・・なにかあったのですか?』
「お願いがあるんだ・・・」
『は? お願いですか?』
怪訝そうな樫緒だったが、次の鷲士の言葉で固まった。
「美沙ちゃんが誘拐された。居場所を探してほしいんだ」
『な、なんですって! ね、姉さまが誘拐されたというのですか!?』
「うん・・詳しいことはわからないけど・・下校途中に・・・」
『・・・・・』
「もしもし・・もしもし、樫緒くん?」
「本当に姉さまが!?」
突然背後から声がして慌てて鷲士が振り返ると、そこには顔色を真っ青にした樫緒の姿があった。

「か、樫緒くん・・いつの間に・・」
「そんな事はどうでもいいのです! それよりも姉さまが誘拐されたというのは間違いないのですか!?」
「うん・・さっき冴葉さんと電話しているときに、脅迫電話があったみたいだから・・」
「愚かな・・・FTIと結城を敵に回すとは・・それで、何者なのです! 姉さまをさらった不届き者は!」
「フォーチュンの乗っ取りを企むどこかの国の過激派らしいって冴葉さんは言ってたけど・・」
「解っているなら、なぜすぐに助けに向かわないのです!」
「発信機の電波が妨害されているらしくて、どこにいるか解らないんだ・・それで樫緒くんに美沙ちゃんの
居場所を探して欲しくて電話したんだ」
「だったらなぜそれを早く言わないのですか! 貴方は悠長に構えすぎです! 姉さまが心配では無いのですか!? こんなことをしている間にも姉さまは・・・!」
怒髪が天を突く勢いで言う樫緒だったが、その瞬間の鷲士の顔を見て思わず言葉を失った。
そこにあったのはいつもの優しい鷲士の顔ではなく、あのウルスラ・ダリアンに向けた、殺意に満ちた怒りの表情だったからだ。
「と、父さん・・」
「僕だって・・本当は怒り狂いたいよ! でも、今はそれより美沙ちゃんを助ける方が先だ! 頼む・・
樫緒くん・・美沙ちゃんの居場所を・・」
「・・・解りました・・少し待っていてください・・・」
そう言って黙り込んだ樫緒だったが、やがて・・
「姉さまを見つけました。ここからかなり離れた海上です。どうやら偽装したタンカーで逃げるつもりのようですね・・愚かな・・・しかし、無抵抗で連れ去られるなど、姉さまらしくもない・・」
「うん、僕もそこが引っかかってるんだ。美沙ちゃんなら、もしそんなのに会ったら銃の一発や二発、絶対に撃ってるはずだし、もし撃っていたなら、フォーチュンが見逃すはず無いよ」
「確かに・・とにかく詮索は後です。今は姉さまを!」
「そうだね! じゃあ冴葉さんに連絡を・・」
「父さん、掴まってください。姉さまの所まで跳びます」
「えっ、あ、う、うん」
慌てて鷲士がカーボン・ナノチューブ製のコートを着込み、アーマーグローブをはめて樫緒の肩に掴まると同時に景色が一変した。
今まで目の前にあった見慣れた部屋は、いつの間にか薄暗い鉄の壁に囲まれた場所に変わっていたのだ。
そして鷲士達の目の前には・・・青ざめた顔で柱に張り付けられた美沙の姿があった・・

「美沙ちゃん!!」
「姉さま!!」
二人の呼びかけにも美沙は全く反応しない。
よく見ると、美沙の手足には無数の傷があり、顔にもひどいアザがあった。
「ひどい・・誰が一体こんな・・・」
「姉さま! しっかりしてください! 姉さま!!」
「樫緒くん、離れて! この柱を叩き壊すよ!」
その言葉に樫緒が離れると、鷲士は柱に右竜徹陣を叩き込んだ。
砕けた柱からずるりと滑り落ちるように落下する美沙の身体を鷲士はそっと受け止める。
「しっかりするんだ、美沙ちゃん!」
呼びかけ続ける鷲士。それに答えるように美沙はうっすらと目を開いた。
「う・・うぅっ・・・」
「しっかり! 美沙ちゃん!」
「姉さま!! しっかりしてください!」
「う・・あ・・・鷲・・士・・くん・・・」
「美沙ちゃん! 気がついたんだね!」
「姉さま!!」
「鷲士・・くん? 樫緒・・?」
意識が朦朧としているのか、美沙の目はどこか虚ろだ。
「姉さま、どうしたんですか!?」
「美沙ちゃんの気の流れがおかしい・・・まさかこれは!?・・樫緒くん、すぐに美沙ちゃんを連れて
病院に!」
「ど、どうしたのです、父さん!?」
「美沙ちゃんの血液の量が、致死量ギリギリまで減っているんだ! このままだと危険だ!!」
鷲士の言葉に樫緒は顔を真っ青ににしたが、ふと何かを思いついたのか、美沙の腕に手を添えた。
「樫緒くん、何してるんだ、早く!」
「・・・僕と姉さまの血液型は全く同じです・・僕の血を姉さまに輸血すれば、とりあえず今は・・」
「で、でもそれじゃあ今度は君が!」
「大丈夫です。危険のない程度にしておきますから・・・」
そう言うと樫緒は目を閉じた。
血液が減っていくに従い、普段から色白の顔がさらに青ざめていく。
だが、それに伴うように蒼白だった美沙の頬に少しずつ赤みが差した。
「うぅ・・樫緒・・?」
「姉さま、気がついたのですね!」
「私・・一体・・あっ!」
捕らわれてから今までの記憶が蘇ったのか、美沙は震える肩を抱きしめてその場にへたり込んだ。
「美沙ちゃん・・・無事でよかった・・・」
「鷲士くん・・」
優しく抱きしめられて張りつめていた糸が切れてしまったのか、美沙の頬に涙が伝った。
だが、その時だ。
「どこから入ったのかは知らんが、そこまでにしてもらおう」
突然響いてきた声に慌てて鷲士達が見ると、いつの間にか40人以上の覆面を被った者達に囲まれていた。






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