DADDY FACE SS 『子猫さまの災難(1)』
by Sin



「じゃあ、鷲士くん。行ってくるね〜」
「行ってらっしゃい。美沙ちゃん」
「一緒に買い物行く約束、忘れないでよ〜」
「うん。ちゃんと急いで帰ってくるからね」

いつもの朝。いつもと何も変わらない朝。しかし、それが子猫さまに降りかかる災難の
幕開けであったとは、いかに九頭竜とて知る由もなかった。

その日の夕方・・
「あれ、まだ美沙ちゃん帰ってないみたいだ・・・珍しいなぁ・・」
授業が終わって早々に帰ってきた鷲士だったが、肝心の美沙はまだ帰っていない様子だった。
「まあ、しばらくしたら帰ってくるよね」
そう言って、のんびりと待つ事にした鷲士。

それから1時間が過ぎた。

「おかしいな・・いくらなんでも遅すぎる・・・ひょっとして、フォーチュンテラーの方で
何かあったのかな?」
そう思った鷲士は専用携帯で冴葉に電話をかけた。

『どうかしましたか? 鷲士さん』
「あ、すみません、冴葉さん。美沙ちゃん、そっちに行ってませんか?」
『ボスですか? いいえ、こちらには来られていませんが・・・』
「そうですか・・・」
『どうかなさいまして?』
「あ、えっと、すみません。今日、美沙ちゃんと出かける約束をしていたんですけど、
約束の時間から1時間経ってもまだ帰ってこないんで・・」
『・・・おかしいですわね・・他の事ならいざ知らず、鷲士さんとの約束より優先する事など、
無いはずですが・・・』
「そうですか・・フォーチュンの方で何かあったのかと思ったんですけど・・」
『大抵の事でしたら私が処理いたしますから、ボスが鷲士さんへの連絡もなしにこちらへ来る事は
まず、ありません』
「どこ行っちゃったんだろう・・・美沙ちゃん・・」
『えっ、なんです?』
「あ、あの、どうかしたんですか?」
『すみません、少々お待ちください』
冴葉がそう言うと、電話から保留音が流れてきた。

そうして待つこと数分。
保留音が途切れると同時に、珍しく取り乱した冴葉の声が聞こえてきた。
『しゅ、鷲士さん・・・ボスが・・・』
「美沙ちゃんに何かあったんですか!?」
『今・・フォーチュン宛に脅迫電話が・・・』
「脅迫電話!?」
聞き返した鷲士だったが、冴葉はしばらく言葉に詰まった。
「冴葉さん!」
『・・・・ボスを・・誘拐したと・・』
「なんだって!!」
『ボスの命と引き替えに、フォーチュンがもつ全ての権利を渡せと・・・』
「そんな・・・まさか、ミュージアム!?」
『いいえ・・どうやらどこかの国の過激派のようですが・・正体は未だ不明です・・・』
「それじゃあ、フォーチュンの乗っ取りを企む連中に美沙ちゃんは!?」
『どうやらそのようです・・・迂闊でした・・まさかこんなことになるとは・・』
「・・・美沙ちゃんの居場所はわかりませんか?」
『ボスには常に発信器を持っていただいているのですが、反応がありません・・どうやら電波妨害が
あるようです・・』
「何とか美沙ちゃんの居場所を突き止められませんか!?」
『・・・樫緒さんなら・・あるいは・・・』
「樫緒くんが!? 樫緒くんなら美沙ちゃんの居場所を突き止められるんですね?」
『おそらくは・・大丈夫だと思います・・』
「わかりました。じゃあ、僕は樫緒くんにお願いしてみますので、冴葉さんの方でも美沙ちゃんの
居場所を探してください」
『承知しました。なんとしても無事にボスを助け出さなくては・・鷲士さん、お願いします』
「絶対に美沙ちゃんを無事に助け出しましょう!」
そう言って電話を切った鷲士は執事の山岡に連絡を取った。


さらわれた美沙。
はたして、鷲士は無事に美沙を助け出すことができるのだろうか・・・。





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