DADDY FACE SS 『不死咎人(6)』
by Sin



 カト女に響く咆吼。
 校舎の入り口を背に、虎雄は迫り来る怪異と戦い続けていた。
 閃刀で切り裂き、雷掌で弾き飛ばす。
 幾度そうやって退けただろうか。だが、幾度退けても、化け物の数は減る事はなく、再生を繰り返して襲ってくる。
「はぁ・・はぁ・・一体、何度倒せば・・」
 その瞬間、化け物の一体が、不意に虎雄の足下から姿を現した。
「虎雄っ、危ない!!」
「え・・うわっ!!」
 背後からの声に、慌てて飛び退く虎雄。
 間一髪、身をかわした虎雄は、背後の声に近づいた。
「虎雄、大丈夫?」
「美沙!? なんで出てきたんだ!!」
「だ、だって、虎雄が心配で・・」
「あの化け物って絶対に女の子を狙ってる! 美沙が出てきても、標的にされるだけだ!」
「そんな事言ったって・・心配なんだからしょうがないじゃない!! あ、きゃあっ!!」
 突然の美沙の悲鳴に、虎雄は一瞬危険を感じて、美沙を抱きかかえると一気に跳躍してその場から飛び退いた。
 振り返って見ると、先程まで美沙がいた場所に無数の化け物の姿が。

「くそっ、やっぱりだ!」
「えっ?」
「前に犬が全然こいつに気付かずに側を通って襲われたって話しただろ?」
「う、うん・・」
「ってことは、気配が感じられなかったって事だ。いや・・気配なんてまるで無いんだ。存在していないみたいに!」
「じゃあ・・目で追うしかないって事?」
 美沙の言葉に頷く虎雄。
 その様子に美沙の顔色は青くなっている。
「後は直感・・その上、何度倒してもいくらでも再生しやがる・・くそっ、どうやったらこいつを倒せる・・」
 歯噛みする虎雄の背中に不安げに縋る美沙。
 その時・・虎雄は不意に何かを感じて、美沙を抱きかかえると飛び上がった。

「きゃっ、ちょ、ちょっと虎雄!?」
 突然飛び上がられて、悲鳴を上げる美沙。だが、先程まで立っていた所を見ると、大きな赤い水溜まりができていた。
「な、な、なっ!?」
 思わず美沙は絶句。
 美沙を抱きかかえたまま、壁の縁に手をかけてぶら下がっている虎雄に、赤い水溜まりから、何本もの手が生えて迫ってきたのだ。
「させるかよっ!!」
 更に反動を付けてもう一度飛び上がった虎雄は、更に空中に2歩分だけ蓮華歩舟で足場を作って方向転換。
 一気に化け物達を飛び越えて着地した。だが・・

− 助けて・・助け・・たす・・・
− おね・・が・・・い・・・

 バシャッという水を零したような音と共に、虎雄達の周りを10体の化け物が取り囲んだ。

「くっ!?」
 慌てて美沙をかばう虎雄。
 泣きながら苦しげな表情を浮かべてにじり寄ってくる化け物に、美沙は悲鳴を上げる事も忘れてガタガタと震えている。
「そこを・・どけーーーっ!!」
 雷掌が再び数体を弾き飛ばす。だが、その瞬間。
「い、嫌ああああああああっ!!」
 美沙の悲鳴。
 慌てて振り返ると、今にも取り込まれそうな美沙の姿が。
「虎雄・・助けてぇっ!!」
 必死に延ばしてくる美沙の手をがっちりと掴むと、閃刀で化け物を切り裂いて助け出す。
 そのまま雷掌を叩き込んで化け物を弾き飛ばした。

 それでも変わらぬ苦しげな表情のまま、化け物は次々と立ち上がってくる。
「くそっ、化け物め・・」
「虎雄・・虎雄・・っ!」
 今にも飲み込まれそうになった恐怖から、美沙は泣きじゃくっていた。
「必ず俺が守る・・だから心配するなよ」
 周りを警戒しながらもそう言ってくる虎雄に、震えながらも頷く美沙。

 必死に美沙を守りながら戦い続ける虎雄。
 だが、際限なく再生し続ける化け物に、いつしか2人は壁際に追いつめられていた。

「と、虎雄・・」
「くっ・・こうなったら、せめて美沙だけでも・・」
 呟いた虎雄の言葉に、息を呑む美沙。
 何かを言おうと口を開きかけた次の瞬間、虎雄の身体から今まで以上の激しい気が溢れ出す。
「一気に道を造る! 美沙は逃げろ!! せぃやぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
 全身に雷掌のエネルギーを纏った虎雄の右龍徹陣が化け物達を一気に弾き飛ばす。
「今だ! 逃げろ、美沙ぁぁぁぁっ!!」
 周りを取り囲んでいた化け物の全てを一気に吹き飛ばした虎雄は、そう言うなりその場に膝を突いた。
 これで美沙だけは助かる・・虎雄はそう思った・・だが・・・
「馬鹿! 虎雄を置いて逃げられる訳無いでしょ!!」
 美沙がそう言ってかがみ込んでくる。
 そして・・・
 2人が気がつくと、周りは再び再生した化け物に取り囲まれていた。

「くっ・・マジで・・やばいかもな・・」
「虎雄・・」
 不安げに見つめてくる美沙を虎雄は力強く抱きしめる。
「だけど・・それでも・・俺は絶対にお前を守ってやる・・たとえ・・何があっても・・!」
「・・・うん・・信じてる・・虎雄・・」

 迫り来る化け物。もはや逃げ場はない。
 苦しげに手を伸ばし、取り込もうとしてくる化け物。
 目の前に迫ったその不気味な姿に、美沙は思わず目を固く閉じた。


「美貴ちゃん! 樫緒くんとはまだ連絡取れないの!?」
「ダメ・・何度電話しても繋がらないの!」
「くっ・・なんでこんな時に・・」
「あの美沙が助けを求めるなんて、よっぽどの事だよね・・鷲士・・美沙、大丈夫かな・・?」
「冴葉さんが先に行くって言ってたけど・・美沙ちゃん・・虎雄くん・・無事でいて・・」
 大急ぎでカト女へと向かっている鷲士と美貴。
 全力で走る為に、鷲士は美貴を抱きかかえて走っている。
 やがて、遠くにカト女が見えてきた。

「気配がおかしい!? 嫌な予感がする・・美貴ちゃん、急ぐよ!」
「うん!」
 そして・・カト女に着いた鷲士達は思わず息を呑んだ。

「み、美沙ぁっ!!」
 美貴の悲鳴。
「美沙ちゃん・・虎雄くん・・こんな・・・」
 へたり込む鷲士。

 2人の視線の先には、抱きしめ合ったまま化け物の中に閉じこめられた美沙達の姿があった・・・









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